地中海に浮かぶクレタ島。
昔々、そこにはポセイドンのペットである神牛と王妃の間に生まれてしまった、不幸な子供がいました。
彼の誕生は、島の王様がポセイドンから与えられた神の牡牛が惜しくなり、彼の神に別の牛を送った事に始まります。
約束を反故にされたポセイドンは怒り、王ではなくその妃へ牡牛への恋心を植え付けます。
その結果、この世に生を受けたのがその子でした。
ミノス王は生まれた子供を化け物と呼んで忌み嫌いました。
子供は普通の人間とは違って頭に立派な角があり、身体も人より大きく力持ちだったのです。
ですが彼の心根はとても優しく、困った人を助ける事に力を使っても、無闇に暴れたりはしませんでした。
ある日、自分の罪の象徴にして王妃様の不義の証である子供を見るのに耐えかねた王様は、子供に『ミノタウロス』という忌み名を与えて地下に作った大迷宮に追い遣ってしまいました。
身体は大きくてもまだまだ幼児だった子供は、灯りも食べ物も無い中を泣きながら歩きます。
自分にお爺ちゃんの物であった『雷光』という意味の名を付けてくれた、大好きなお婆ちゃんはもういません。
お母さんもお姉さんも、牛の子供である自分を恐れ嫌っていました。
自分の居場所はこの迷宮の中だけだと分かっていても、子供にはそれを受け入れる事はできませんでした。
そうやって泣きながら歩いていた子供は、どこからか漂ってくる美味しそうな匂いに気付きました。
迷宮に入れられて丸一日は何も食べていない彼は、お腹の虫を鳴らしながら匂いの元に向かいます。
すると、そこには旅人が着けるマントの下にゆったりとした服を着て、頭の後ろで三つ編みの髪を垂らした男の人が、焚き火で鍋を炊いていました。
彼がぐうぐうとお腹を鳴らしているのに気付いた男の人は、鍋の中身をお椀に盛ると『食べなさい』と子供に与えました。
鍋の殆どをぺロリと平らげて満足した子供は、男の人に尋ねました。
「おじさんはここで何をしているの」と。
男の人は旅の武芸者で、この迷宮を巡りながら修行をしているのだと言います。
変わった人だ、と男の人を見つめてました子供でしたが、むこうから『ここで何をしているのか』と尋ねられると、答える事が出来ずに泣き出してしまいました。
今までの悔しかったことや悲しかったことが蘇ってきて、我慢が出来なかったのです。
それでも詰まりながら必死に言葉を紡ぎだすと、男の人はゴツゴツと硬いけどとても暖かい手で『がんばったな』と頭を撫でてくれました。
大好きなお婆ちゃんが天に召されてから頭を撫でてもらう事のなかった子供は、迷宮中に響き渡るほどの声で大泣きしたといいます。
そんな事があって男の人に懐いた子供は、彼を『お師匠様』と呼んで一緒に武術の修行を始めました。
彼の武術はとても不思議なものでした。
子供に比べれば細枝のような身体でも子供より強い力を出したり、ただの手で硬い岩や木を刃物よりも綺麗に切る事もできました。
男の人は武術のほかにも、迷宮での食べ物の取り方や家や道具の作り方。
文字や計算など、生きて行くための様々な知恵を教えていきました。
一緒にすごす間に子供にとって男の人は師父、まさに『父親のような師』と呼べる存在になっていたのです。
そうして数年が経ったある日、師匠は少年となった子供に尋ねました。
「自分は他の場所に行かねばならない。一緒に来るか?」と。
それに対して少年は否と答えます。
辛い記憶の方が多くても、ここは彼の故郷です。
それに自分がいなくなったと知れば、王様がどのような手段に出るか分かりません。
自分の為に民が迷惑をこうむるのは、心優しい少年には耐えられませんでした。
それを聞いた師匠は少年の決意を
『ミノタウロス』という忌み名を気にしていた彼は、師匠から与えられた名を大層喜んだといいます。
その後、彼は自分の食料と称して、王様が迷宮に送り込んで来た子供達を引き取り、かつて師匠が自分にしてくれたように育て導いていきました。
彼は教え子達に『牛先生』の愛称で親しまれ、彼の教えを受けた子供達は迷宮を出た後に世の中で優れた結果を出したと言います。
師から武術の
彼の対戦成績は1戦1勝。
対戦相手は迷宮の怪物と言う噂に踊らされ、名声を求めて現れた王子様だといいます。
彼の生涯が幕を閉じて幾星霜。
人理焼却という未曾有の危難の中、英霊として昇華された彼は第三特異点に召喚されます。
そこでゴルゴン三姉妹の次女、エウリュアレと出会った彼は海賊に追われていた彼女を保護。
そして、人理修復の為にこの地を訪れたカルデアのマスターに手を貸す事になりました。
フランシス・ドレイクやカルデアのサーヴァントの助けを得て、黒髭の船を撃退した彼らですが、そこに新たな敵が立ち塞がります。
英雄イアソンを初めとするギリシャ神話に名高い船、アルゴノーツです。
中でもギリシャ最強の英雄と言われるヘラクレスは圧倒的な強さを有しており、瞬く間に彼らは劣勢に追い込まれました。
勝ち誇るイアソンと猛り狂うヘラクレス。
エウリュアレを奪い去ろうと手を伸ばす彼等の前に、彼は敢然と立ち塞がりました。
「退きなさい、アステリオス! 貴方ではヘラクレスには勝てない!!」
普段の小悪魔的な態度とは打って変わって、悲痛な声を上げるエウリュアレ。
しかし、彼は退く事はありません。
「確かに君の言うとおりだ。『
言葉を切った彼は師匠のモノを模していた上着、今で言う中華服を脱ぎ去ります。
すると、現れたのはヘラクレスに勝るとも劣らない鍛え抜かれた身体に、右肩に付けられた『猛』の字が刻まれた肩当。
これこそが、彼が師匠から受け継いだ卒業の証。
そしてもう一つ、彼には師より与えられた物がありました。
「今の
その叫びと共にアステリオス、いやバッファローマンはアルゴー号の甲板を踏み砕きながらヘラクレスへと突進します。
「食らえ、必殺───」
「!?!?」
「ハリケーンミキサーーーーーッッ!!」
「■■■■■■!?」
神牛から受け継いだ力と超人拳法の技術。
その二つを込めた頭の角を突き出しての強烈なタックルをまともに食らったヘラクレスは、錐揉み回転で宙を舞い、轟音と共に頭からアルゴー号に突き刺さります。
「ゲェーーーーーッッ!? ヘ、ヘラクレスぅぅぅぅぅっ!!」
バッファローマンの一撃の威力に、悲鳴を上げるイアソンの悲鳴。
なぜだか分かりませんが、バッファローマンの肩当を見ているとダラダラと冷や汗が出るのです。
生前は無かったはずの『ラーメンにして食われる』という謎のイメージが頭を過ぎり、彼はパニック寸前でした。
一方のバッファローマンですが、会心の一撃を放ったにも
そしてそれに応えるように、上半身を甲板に埋めていたヘラクレスはゆっくりと身体を起こします。
顔を上げた大英雄の双眸に光るのは、狂気の眼光ではなく理性の光。
「さあ来い! 1000万パワーを見せてやる!!」
伝説の船をリングに、両雄相討つ超人バトルのゴングが今鳴り響きます!!
アステリオスを牛漢にするという、何番煎じ的な使い古されたネタに走ってすまない……。
あと、ゆで先生のネーミングセンスには脱帽。
以下ウソ予告
バッファローマンの放った『ハリケーン・ミキサー』によって理性を取り戻したヘラクレス。
真の復活を遂げた大英雄が放つケイローン仕込みの殺人技『人馬四十八手』が、バッファローマンに襲い掛かる。
第三特異点を舞台に繰り広げられる二人の闘いの行方は───!?
次回『激突、二大超人!! バッファローマン、オケアノスの海に死す!?』
ご期待ください!!