やっつけ小ネタ集   作:アキ山

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 久々に旧約女神転生のⅡをやったので、書いてみました。

 デジタル・デビル・ストーリー、読んでみると面白いですよ。

 

 


デジタル・デビル物語に転生とか、難易度マゾヒズムすぎる

 え~、気が付くと転生していた。

 

 頭の片隅にある物凄く朧げな記憶だと、妙に態度のデカい誰かに会ってルーレットを引いたような気がする。

 

 きっと気の所為だろうけどさ。

 

 常識的に考えて、そんな二次創作のテンプレみたいな事なんてある訳ない。

 

 転生して前世の意識持ってる時点でアウトとかは言わない約束だ。

 

 先ほど転生したと言ったものの、前世の事で覚えているのは漫画やゲームといったサブカル、あとは一般常識くらいしかない。

 

 以前のオレが何者でどんな人生を送ったか、なんて個人情報は真っ新である。

 

 こうなっては仕方がない。

 

 オギャーと生まれて数週間、白鷺丈(しらさぎじょう)という新たな名前ももらった事だし、心機一転頑張っていこうではないか。

 

 そうと決まればこれから世話になる家族の事を整理するとしよう。

 

 父親は白鷺実。

 

 三芝電気という前世の大型電機メーカーを合体させたような名前の企業に勤めている。

 

 三十を過ぎて大人の渋みが増してきた美形で、姉ちゃんと俺はこの人似だそうな。

 

 この三芝電気というのも名前通りの一流企業らしく、転勤してきた北海道支社から東京に戻ろうとリゲインのCMばりに張り切っている。

 

 家族を思っての事なのでありがたいが、身体を壊さないようにしてほしいと思う。

 

 次に母親の白鷺弓枝。

 

 恰幅のいい肝っ玉母ちゃんで、俺が泣いたら飯をくれる人。

 

 昔はモデルも裸足で逃げだすほどの美女だったそうなのだが、今は二重瞼などに辛うじてその面影を残すのみ。

 

 とはいえ、料理は美味いしオレ達が病気になると夜を徹して看病してくれたりする、とってもいい母ちゃんである。

 

 最後は姉の白鷺弓子。

 

 大和撫子然とした黒髪の美少女なんだけど、見た目に反して結構活発だ。

 

 性格も明るく割と友達も多い。

 

 物心が付いた頃から弟が欲しかったらしく、9歳離れたオレの事を物凄く可愛がってくれる。

 

 ただ、少々スキンシップが激しいのが玉に瑕だ。

 

 帰って来る度にオレに抱き着いてチューをしたり、必死に抱っこしようとしたり。

 

 あと、オレが風呂に入れられるタイミングに合わせて風呂に入ったり。

 

 将来、ブラコンにならなければいいけど……。

 

 

 

 

 さて、オレがこの世界にゲソを付けてから九年が経ちました。

 

 オレとユミ姉ちゃんが北海道の大地で健やかに育っていく中、父ちゃんが必死に積み重ねてきた努力がついに実を結んで本店へと栄転が決定。

 

 それに伴い、我等白鷺家はめでたく東京へ移住いたしました。

 

 流石は日本の首都というべきか、東京の社宅は北海道に比べれば少々手狭だったけど、その分最新設備が整っていてとっても過ごしやすい。

 

 まあ、最新と言ってもこっちの世界はただ今1980年代後半。

 

 2018年に暮らした記憶のあるオレにしてみれば、まだまだレトロ感が抜けないワケでして。

 

 おかげで玩具やゲームに心惹かれるものはなく、オレはもっぱら身体を動かす事を好むアウトドア小学生となってしまった。

 

 うん、前世のオタクっぷりからは想像もできない変化っぷりだ。

 

 さて、そんなオレにはドップリとハマっているものがある。

 

 それはズバリ『ムエタイ』である。

 

 北海道で暮らしていた際、社宅の近所にタイ料理と並列して経営するジムがあった

 

 妙に惹かれるモノがあって3歳の時に入門したんだが、コーチを兼任していたオーナーが俺の蹴りに才能を見出したらしく、メインのエクササイズそっちのけでミッチリ扱いてくれた。

 

 日本のキックボクシングの大会だけでなく、本場タイへの遠征まで組んでくれたお陰で腕の方は鰻登り。

 

 日本に帰る頃には地元のジムから本気でスカウトを貰うほどに上達する事が出来た。

 

 そういう風に情熱的な指導をしてくれた事もあり、引っ越しが決まった時はコーチは物凄く残念がってくれた。

 

 別れの時に東京へ行ってもムエタイを続けることを伝えると、オーナーは東京にある現役時代のライバルが経営するジムを紹介してくれた。

 

 ムエタイを続けられることは嬉しいし、指導も本格的でやり甲斐があるのだが、北海道のオーナーもこっちのコーチも物凄く見た顔なのが引っ掛かる。

 

 具体的に言うと、北海道のオーナーが『デビルサマナー・ソウルハッカーズ』のサワムラさん、こっちのコーチが『デビルサマナー』の三葉さんなんですよっと。

 

 しかも名前も一緒だし。

 

 まさかとは思うが、ここってメガテンの世界じゃないだろうな?

 

 万が一そうだとしたら、東京とかモロに鬼門なんですが……。

 

 ともかく、そういったワケで不安はあれど平穏な日々を送っていたのだが、最近はどうも周りがキナ臭い。

 

 ここ一か月ほど、ユミ姉ちゃんが家に帰ってきていないのだ。

 

 切っ掛けは数週間前に遡るのだが、姉ちゃんが転校した学校で生徒の大量失踪事件があったらしい。

 

 その事件が起きた日の夜、事件の事もあって家族で安否を心配していると、姉ちゃんから電話があった。

 

 受けた母ちゃんの話では『いま奈良にいて、しばらく帰ってこれない』と言うと一方的に切れてしまったそうだ。

 

 当然、そんな説明では父ちゃんと母ちゃんが納得する訳がなく、二人はその日の内に警察に駆け込んで姉ちゃんの捜索願を出した。

 

 前世だったら携帯で連絡を取ったりGPSを調べればいいのだが、生憎と1980年代後半にはそんな便利なモノはない。

 

 携帯電話はあるにはあるそうなのだが、軍用トランシーバーみたいなゴツい代物だし、電波もほとんど届かない。

 

 なにより馬鹿みたいに高額な為に、女子高生に持たせられるものじゃないそうだ。

 

 それからはヤキモキしながら警察からの連絡を待つ日々が続いている。

 

 オレだって姉ちゃんが心配で、学校にもジムにも全く身が入らないのが現状だ。

 

 そんなこんなでイライラしながら過ごしていると、姉ちゃんの学校から来客があった。

 

 インターホン越しに話を聞いたところ、例の失踪事件の学校側のこれからの対応について説明したいとか。

 

 ユミ姉ちゃんの失踪についても関係があるのか問いただそうとドアを開けた俺は、次の瞬間に胸を貫いた灼熱感に言葉も出せなかった。

 

 喉から熱いものがせり上がってくるのを感じながら、目を向けると青い鱗がびっしりと生えた腕が胸から生えている。

 

『ふふふ、まずは一人』

 

 急速に遠のく意識の中、腕と同じく青い鱗に覆われた顔を心底嬉しそうに歪める化け物女の声が、二度目の生で最後に聞いた音になった。

 

 

 

 

 えー、死んだと思ったら東京に越してきた日の朝になっていた。

 

 ぶっちゃけ、意味が分からない。

 

 リアルでポルナレフ体験するハメになるとは思わなかった。

 

 まあ、胸には貫かれた傷が残ってたから夢じゃないみたいだけど。

 

 そう言えば、傷が蛍光緑の痣みたいになってたのはどういう訳なんだろう?

 

 難しい事はあとで考えるとして、死に際のショックで思い出した事が一つある。

 

 ユミ姉ちゃんって、メガテンシリーズの第一作『デジタル・デビル・ストーリー』のヒロインじゃないですか、ド畜生が!!

 

 ヤッベーよ、マジでヤッベーよ。

 

 あの話って、オレの記憶が正しかったら欝まっしぐらなバッドエンドだぞ。

 

 つーか、ユミ姉ちゃんがあんな結末迎えるとか、シャレになんねーって。

 

 頭ン中の情報を整理して、何とか手を打たねーと。

 

 ……よーし、落ち着け。

 

 まだタイムリミットまで一か月以上はある。

 

 まずは原作知識を引っ張り出して、これから起こる事を纏めるんだ。

 

 前世はディープなメガテニストだったとはいえ、ゲームじゃない『デジタル・デビル・ストーリー』を読んだのは前世にして数年前だ。

 

 転生した時間を加味したら余裕で十年は経ってる。

 

 だから、細かいところまで拾い上げるのは実質不可能と言っていい。

 

 大まかな流れをピックアップして、なんとか帳尻を合わせるしかない。

 

 さて、オレの記憶が正しければ、前の死因だった化け物女が襲ってくるのは小説第二巻『魔都の戦士』のイベントのはずだ。

 

 今後の事を追う前にまずは前提情報を上げていこう。

 

 最初にユミ姉ちゃんは日本の国生みの女神である伊邪那美大神(いざなみおおかみ)の転生、または同位体である。

 

 そして姉ちゃんが通う十聖学園にはその対である伊邪那岐大神(いざなぎおおかみ)の転生がいる。

 

 伊邪那岐の転生である天災プログラマー中島朱実は、イジメの復讐として『悪魔召喚プログラム』を作成する。

 

 報復のために召喚されたのは北欧の魔神であるロキ。

 

 だがプログラムには欠陥があり、悪魔召喚に関する契約の項目が抜けていた為にロキは中島の手を離れて暴走。

 

 クラスメイト全員が犠牲になる等の悲劇があったものの、紆余曲折を得てロキは中島に倒される。

 

 しかし、学校のコンピュータ室に仕掛けられていた悪魔召喚プログラムはそのままであり、さらには生贄として本格召喚の前からロキの(なぐさ)みモノになっていた担任教師の小原はロキの子を身籠っていた。

 

 で、前回に襲撃してきた鱗女はその小原であり、奴の目的はロキを倒した中島とユミ姉ちゃんへの復讐。

 

 小説通りなら、あのあと小原は父ちゃんと母ちゃんを殺し、中島の母親に悪魔を取り付かせることで自身の操り人形とする。

 

 そうして母親の手で中島を殺そうと画策していたはずだ。

 

 だがしかし、ギリギリのところで間に合った姉ちゃんによって中島は九死に一生得るわけだが、その代償に姉ちゃんは中島の母親を焼き殺してしまう。

 

 結果、中島から心ない言葉をぶつけられた姉ちゃんはオレ達の死のショックもあって、その場を逃走。

 

 奈良の蘇我の森で小原への復讐を果たすものの、奴の腹の中にいたロキの子を依り代にして現世に現れたエジプトの悪神セトによって捕らえられてしまう。

 

 捻り出せたのがだいたいこの位なんだけど、これを見る限りだと事件が起こる前に中島を殺すのが一番確実だよなぁ。

 

 ぶっちゃけ、あいつが悪魔召喚プログラムを作りさえしなければ平和なままなんだし。

 

 とはいえ、原作だと姉ちゃんが転入から事件まで間が無かったはず。

 

 その辺の事を思えば、今の時点で悪魔召喚プログラムは完成していると見るべきか。

 

 中島とロキに関する惨劇が回避できないとなると、オレにできることは……強くなることくらいだ。

 

 小原の襲撃から逃げるのはまず不可能。

 

 詳細な時期は分からないし、なにより父ちゃんたちを説得する方法が見えない。

 

 正直に事情を説明しても、悪魔がどうこうなんて理由では悪戯と思われるのがオチだ。

 

 だからと言って、オレだけが生き残っても意味が無い。

 

 姉ちゃん的には全滅よりも希望があるんだろうけど、家族を見捨てるなんて俺自身が許せない。

 

 こんなことで生き残ったとしても、罪悪感から遠からず自殺するのが関の山だろう。

 

 ならば残された手は一つ、強くなって小原を撃退することだ。

 

 なあに、心配はご無用。

 

 ここがメガテン世界だとすれば、訓練次第で悪魔を倒せる逸般人だってなれるはずだ。

 

 オレにはムエタイがあるのだから、努力に努力を重ねてそこまで駆け上がればいいだけの話である。

 

 そうしてオレは三葉コーチの指導の下、更なるトレーニングに励んだ。

 

 そうして運命のリベンジマッチ!

 

 一撃目をブロックと足捌きで受け流し、膝横に向けてムエタイ式ローキック、テツ・ラーンを叩き込む!!

 

 足に古いドテラを巻いて、タプタプになるまで水を入れるという重石を付けてでサンドバッグを蹴りまくっていたお陰で、倒れないまではいかないものの小原の身体がグラリと揺らぐ。

 

 効いてる、効いてる!

 

 このまま攻め続ければ、勝機は────

 

『アギ』

 

 あっづぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? 

 

 

 

 

 まさかの魔法である。

 

 火炙りに遭うのは初めてだったが、思った以上に早く死ねたのが救いか。

 

 しかし、再び東京移住初日に戻っているところを見ると、本格的にループにハマってしまったらしい。

 

 クリア条件は小原を倒す事なのか?

 

 前回はこちらの蹴りが通用していたのだから、努力を重ねればそれも可能かもしれない。

 

 ユミ姉ちゃんの為にも、もう一度鍛え直さねば。

 

 というワケで、前回の教訓を生かして両足ドテラ+手首にはパワーリストという負荷をかけてのトレーニングを実施。

 

 小学生には負荷トレーニングは厳しいものがあったらしく、マジで手足がモゲるかと思った。

 

 そんな苦労の甲斐あって、身体能力は目に見えて上昇した。

 

 なかでもムエタイ式ハイキックであるテツ・カン・コーは、サンドバックを吊るす鎖が一本切れるほどである。

 

 そんなこんなであっという間に一月が過ぎ、再び決戦の時が訪れる。

 

 前回の教訓からフットワークを使って相手を翻弄しつつ、まずはテツ・ラーンで相手の足を殺す。

 

 たとえ魔人と化していても、小原はただの高校教師である。

 

 実戦の舞台に立った経験など無い筈だ。

 

 対するこちらはクローバージムでの厳しい訓練に加えて、経験を積むための不良狩りまで始めたのだ。

 

 ちょっとやそっとの身体能力差で覆されては堪らない。

 

 鉤爪やソフトボールほどの火球を躱しながら丁寧にテツ・ラーンを積み重ねていると、小原の動きが目に見えて鈍ってくる。

 

 このチャンスを逃さずに前蹴りで距離を測ったオレは、必殺のテツ・カン・コーを放とうとする。

 

 しかし、そんなオレを迎え撃ったのは奴の下腹部からは飛び出してきた謎のスライム。

 

 全身を絡め捕られながら吸われてはいけないモノをチューチューされ、最後にはポキュポキュッと圧縮処理されてしまいました。

 

 

 

 

 魔法の次はスライムときたか。

 

 さすがは化け物、芸達者である。

 

 というか、あのスライムって化け物女とロキの子じゃねーの?

 

 胎の中に収めているのなら、しっかり栄養送ったらんかい。

 

 死に戻りもそろそろ慣れてきたワケだが、今回になって気づいたことがある。

 

 なんとオレはロールプレイングゲームのように、脳内で自分のステータス画面が開けるのだ。

 

 でもって見てみた結果だが、レベルは6でスキルはムエタイのみ。

 

 ステータスで優れているのは力・体力・敏捷と典型的な脳筋キャラになっていた。

 

 所持しているスキルを思えば、こうなるのは当たり前なのだが問題は別にある。

 

 オレはムエタイのスキルを全く上げていなかったのだ。

 

 脳内に広がるステータス画面を進めていくと、レベルを上げる事で得られるスキルは有用なモノばかり。

 

 受けるダメージを10分の1にする防御やパンチやキックの攻撃力の増強、さらには問答無用で攻撃をよけることが出来る緊急回避など。

 

 『何故、もっと早くこれに気づかなかったのか』と後悔しながらレベルを上げていくと、レベル6から系統が三つに枝分かれしているではないか。

 

 各枝の名称は『嵐を呼ぶ男』『帝王』そして『地上最強のお兄ちゃん』

 

 どう考えても格ゲーです、本当にありがとうございます。

 

 このスキルの所為で朧気だった転生ルーレットが現実味を帯びてきたワケだが、こんな事は考えたところで今更である。

 

 相手はガチの悪魔なのだ、こっちも格ゲーキャラにでもならんとやってられんだろ。

 

 というワケで今後を大きく左右する枝の選択である。

 

 個人的には『地上最強のお兄ちゃん』を選びたいところだが、こいつには致命的な欠点がある。

 

 それは超必殺技が無いのである。

 

 悪魔が蔓延る社会となってしまった以上、危難は小原だけに留まらないのは明白。

 

 ユミ姉ちゃんの素性を考えれば、日本国内にいても危険性はダントツトップと見るべきだ。

 

 最悪の場合はルイ・サイファー氏が降臨する可能性もあるのだ、キャラ愛だけでそっちに突っ走るのは無謀と言う他ない。

 

 では、『帝王』はどうか?

 

 こちらは技的には申し分ないが即効性が足りない。

 

 オリジナルのハゲ眼帯みたいにタッパが190㎝くらいあればこれ一択なのだが、小学3年の身体では少々身に余るだろう。

 

 これから真っ当に成長できる保証があるならワンチャンあるが、生憎と世の中は明日をも知れない世界へと足を踏み入れるのは明白だ。

 

 大器晩成を悠長に待つ余裕などある訳がない。

 

 結果、オレが選んだのは『嵐を呼ぶ男』だった。

 

 原作では挑発やキャラからイロモノ扱いされているが、これでも主人公の一角。

 

 性能が悪いわけがない。

 

 オリジナルが日本人である事から、彼の技の殆どが中肉中背だろうと十分実用に堪える。

 

 なによりこちらも『丈』という名前なのだから、こちらを選ぶのは筋というものだろう。

 

 レベル6で手に入れることが出来たのは『ハリケーン・アッパー』

 

 奴の代名詞であると同時に待望の飛び道具である。

 

 試しに撃ってみると本当に竜巻が出たうえに、ブロック塀を一画を綺麗さっぱり吹き飛ばしてしまった。

 

 これは凄いと小躍りしたものの、飛び道具が手に入れば他の三種の神器『突進技』と『対空技』が欲しくなるのが人情というもの。

 

 両手両足にプラスして腰にウエイトを付けての強化トレーニングによって、ムエタイレベルをさらに2引き上げた俺は『スラッシュキック』と『タイガーキック』も手に入れることができた。

 

 欲を言えば超必殺技の『スクリューアッパー』も欲しかったのだが、生憎とここで時間切れである。

 

 はてさて、三度目ならぬ四度目の正直だ。

 

 ガキだと思って油断していたのだろう、何とも気の抜けた鉤爪の刺突をタイガーキックで迎撃。

 

 廊下の端まで吹っ飛び、壁に背中を打ち付けたところでハリケーン・アッパーを連打! 連打!! 連打!!!

 

『ハリケーン・ナッパー! ハリケーン・ナッパー!! ハリケーン・ナッパー!!! ハリケーン・ナッパー!!!!』

 

 ノリノリで相手の動きを固めたところで、疾る竜巻を追いかけるようにスラッシュキックを放つ。

 

 目標はもちろん奴の下腹部、前回『しまっちゃうおじさん』カマしてくれたスライムである。

 

 流れていく視界に映るのはダメージの為か、へたり込んで動けない小原の姿。

 

 『勝った! 第三部・完!!』と内心で喝采を上げていたところ、突然俺の身体が火達磨となった。

 

 防御貫通なのか、前回の魔法以上に身体が燃えていく中、向けた視線の先には般若の形相で涙を流しながらこちらを睨むユミ姉ちゃんがいた。

 

『悪魔め! よくもジョー君に、私の弟に乗り移ったわね!!』

 

 OK、理解した。

 

 そりゃあ小学生が手から竜巻出して大人の女を一方的に嬲ってるの見たら、そう思ってもしゃあないわ。

 

 スキルを取った所為で浮かれすぎてたか、我ながら迂闊───

 

 

 

 

 なぞはすべてとけた。

 

 前回からのやり直しの際、ループの元凶と顔を合わせることが出来ました。

 

 その黒幕とは、赤い彗星……じゃない。

 

 ダーナ神族の長老ダグザ様でした。

 

 今生で生を受けた際、頭の隅にあったルーレットも現実で、オレがムエタイに惹かれたのはルーレットでムエタイのスキルを引いたかららしい。

 

 当時のオレに言いたい。

 

 何故、武器格闘を引かなかった(涙)

 

 素手格闘とか、シンメガTRPGだと敵が強くなったら泣きを見る技能じゃないですか、ヤダー!!

 

 前衛で行くなら、せめて剛剣かウエポンマスタリーがよかった……。

 

 無様に崩れ落ちるオレを前に、ダグザ様は丸太のようなゴツイ腕を組みながら、無駄に渋い声でこちらに語り掛けます。

 

 『お前は俺の神殺しだ。俺の目的を果たすまで、何度でも蘇らせてやるぞ』

 

 無限ループ確定のお知らせです。

 

 つーか、むこうの目的教えてもらってないんすが。

 

 この神様はいったい何処を目指してるのでしょう? 

 

 『今は考える時ではない。お前は力を蓄え、俺の言うがままに動けばよいのだ』 

 

 デフォルトで心を読んでくる神様、怖いっす。

 

 ともあれ、ナナシよろしく神殺しになってしまったからには仕方が無い。

 

 鏖ルートが来ない事を祈りつつ、悪魔が蔓延るマッポーの世を生きるとしましょう。

 

 取りあえずはスクリューアッパーを習得して、小原を潰すところから始めようか。

 

 オレの捨て身の献身と努力が、姉ちゃんの輝く未来を創ると信じて………ッ!!

 




 簡易解説

 白鷺丈

 デジタル・デビル・ストーリー世界のダグザによって、現世介入の駒として送り込まれた転生者。

 伊邪那美の転生たる弓子の弟に生まれたのは、もちろんワザと。

 転生特典でまさかのムエタイ引きをブチかましたために、ダグザ様はわざわざ格ゲー技能まで作るハメになった。

 デジタル・デビル・ストーリー世界では四文字様が天之御中主神と=だったり、他の神様を作ってる設定だったりする。

 よって、ダグザに命を握られて神殺しになった時点で悪魔・天使・日本神話を敵に回して鏖ルートが確定している。

 難易度はハードを超えたマゾヒスト。

 奴は生き残る事が出来るか? 

 白鷺弓子

 デジタル・デビル・ストーリー本編のヒロイン。

 伊邪那美大神の転生で、高濃度の生体マグネタイトを保有している為に悪魔に狙われやすい。

 弟という強力な助っ人がいるので、上手く立ち回れば原作のような悲劇は起こらない。

 しかし、結局はダグザの神殺しである弟との殺し合いが待っているので、やっぱり人生ハードルート。

 中島朱実

 デジタル・デビル・ストーリー本編の主人公にて、ある意味全ての元凶。

 今作では影が薄い。

 伊邪那岐の転生あるものの、弓子ほど前世との繋がりは強固ではない。

 秘剣ヒノカグツチの最初の保有者だが、個としての戦闘力はそこまで高くはない。

 弓子以外何もいらないと素で言える人間なので、鏖ルートだと本気で殺しに掛かって来る。
 
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