CARBONADOの行く先は   作:いしっころ
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HAPPYSTORE

 

 

「なぁなぁベルツ、何処行くんだ?」

「ボルツだ」

 

多分それ医師の名前。

 

「別に何処も」

 

何処に行くかなんて考えず、ぶらぶらと歩き出す。ちらちらとこちらを見るルーシーを無視しながら、歩く。ゆらゆらと得物が揺れた。

 

「お前のそれ、何でそんなところに付けてんだ?ゾロとか錦えもんは縦にしてるぞ?」

「ゾロ?ゾロというのは海賊狩りのか?」

「あ、やべ」

 

口を塞ぎそっぽを見やるルーシーは焦ったような顔をしていた。恐らく何かがバレると思ったのだろう。けれど僕もそこまで馬鹿ではない……十中八九このルーシーとやらは麦わらのルフィなんだろうな。

錦えもんというのは知らないけれど、ゾロは有名だ。そしてそのゾロが三刀流の使い手というのも、麦わらのルフィの仲間というのも。

この大会に出場したのは恐らく優勝商品のため。優勝商品のロギア系悪魔の実、メラメラの実は麦わらのルフィの兄、火拳のエースの能力だったものだ。そりゃ弟として誰にも渡したくないだろうね。

しかしルーシーが言いたいのはこの得物である剣……じゃなくて形状は刀か。それを何故後ろの腰に横向きにして付けているのかという事なのだろう。まぁ刀は普通すぐに抜けるように自分と並行して縦につけるものだ。それも身体の横に。決して後ろに付けるものではないけれど、僕にはこれが普通になってしまってるから理由と言われてもなぁ。

 

「特に理由はない。ただこれが身についているだけだ」

「ふーん」

 

疑問が解決したら特に興味はないのな、それだけ呟いて前を向いた。淡白だなぁとは思うけれど、さっぱりした性格なのは少し共感が持てる。僕もちょっとさっぱりしてるから。

当てもなく彷徨い歩いているとある銅像に出会った。一歩歩けば人が群がっているのに、この銅像の前だけは誰も寄り付かない。

“Kyros”と書かれたそれは、伝説とされる剣闘士の銅像。三千戦を無敗で貫いた猛者であり英雄。けれど誰も覚えていない、伝説上の人物。

 

「でも、私はいたと思ってる」

 

そう兜を被った女剣闘士が言った。

何故かこれ見てるとやってきて説明を始めたのだけど、女の人いたんだなぁ。まぁいない方がおかしい事もあるか。剣闘士の事情はよくは知らないけれど。

それよりも誰だろう。そう思っていると、その女剣闘士はレベッカと名乗った。

 

「貴方達は?」

「おれはルーシーだ」

「ボルツ」

 

そう、と嬉しそうに笑う。小さなその笑みは微笑ましさを含んでいた。

このレベッカという女剣闘士は僕達よりも背が高い。だからだろうか、ちょっと侮られてるような。でも、彼女の場合そこまで嫌な気はしなかった。

レベッカが出場するのはDブロック。丁度僕と同じブロックだが、ルーシーはCだったようで決勝で会えたら良いねと言う。という事は、僕を倒していくつもりなのかな。随分と威勢の良い女剣闘士さんだ。僕は嫌いではないね。

各ブロックから選ばれるのは一人だけだと聞いた。それも大雑把にブロック分けされている事から、多分バトルロイヤル制。そうでもしないと大量にいる選手を振るい落とせないだろうし。

ジッとレベッカを見つめていると彼女は苦笑して、振り返る。帰るのだろうか。

 

「じゃぁね、ルーシーにボルツ。闘える時を楽しみにしてる」

 

剣闘士らしい言葉を送りながら去る彼女の横顔から見えたのは、苦虫を噛み潰したように唇をギュッと結んでいる悔しそうな表情。

理由は何となく察した。彼女が歩く側から、周りの男達がニヤニヤとしながら、死ねと言っているからだ。汚れた血やら、嫌われ者やら。

彼女の性格からしてそんな嫌われるような事をする性質ではないのは明らか。ならどうしてこうも嫌われているのだろうか。少し疑問に思いながらも、僕もここから去る為に踵を翻す。

僕的に共感の持てる良い人だった。ルーシー程ではないが、強者の予感だ。少なくとも雑魚ではないな。

戦える時を楽しみに、か。ふふっ、僕もだよ。

 

予選で会おう、レベッカ。

 

 

 

 

 

……予選って何か締まらないなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そっとルーシーから離れた後、僕はまたぶらぶらと歩き出したけれど。

 

「〇〇選手ー?〇〇選手はいませんか?もうすぐ予選Aブロックが始まります」

 

そんな声が周りから聞こえた。係の人が選手リストであろう紙を見ながら、歩き回っているが見える。

先程聞こえてきた歓声はあまり聞こえず、係は歩き回っている事から、いよいよ大会が始まるのだろう。

強豪揃いが期待できる今日の大会がバトルロイヤルで本当に良かったと思う。一対一の方が一人相手に集中できるから戦いやすいが、沢山は無理だ。しかしバトルロイヤルなら別。強者も弱者も入り乱れるこれは誰を倒しても良い。誰と戦っても良い。戦闘好きにはもってこいだ。

心臓はないが、胸が高鳴る。心が躍る。自然と笑みが零れる。

そんな事を思いながら、大会前なのか興奮しながら斬りかかってきた雑魚を斬り捨てる。

 

「こいつ!」

 

周りの知り合いらしき人物達が一斉に武器を取る。良いのかな?そんな事して?君らでは死んでしまう。

因みにさっきの斬りかかってきた雑魚だが、今までの僕の態度を見ていたのか、いきりやがってとか何とか言っていたのを無視したので、多分怒ったのだろう。随分と血が上りやすいなと思う。

いきっていた訳でもない、ただ普通に歩いていただけだ。その歩いていた先にこの出場者たちがいて、ぶつかってしまっただけ。一応すまないと謝って通り過ぎようとしたのを呼び掛けられたんだ。

典型的なチンピラ共で、もう少し誠意を持って謝れとか言ってきたので無視し、さっきの言葉も無視して先程の状況に戻る。

仕掛けてきたのは彼方だ。彼我の戦力差も見極められずに斬りかかってくるのが悪い。剣を向けたのだから、死んでも文句はないだろう。

 

……殺してないけどね。

 

勿論殺生なんかしたら、即刻失格かもしれない。リングの上ならまだしも、外なのだから生死の賭けは無しだ。なので、刀を裏返して峰打ちにした。

ただ、後の奴らがよくもあいつを!とか言ってる時点で殺したと勘違いされてるんだが……なんでだよ、よく見ろよ、息してるよ?

上段からの剣を余裕で避け、隙だらけの腹に峰打ちを決める。ホームランさながらのスウィングをお見せしたら、その巨体は飛んでいき突き当たりの壁にぶつかった。

 

「なっ!?」

「何!?」

 

驚いている二人のうちの一人が振り返ってる間に接近し、又もや峰打ちで首を狙いクリーンヒット。さっきよりは手加減したつもりだが、頭が地面に打ち付けられた。折れた音はしてないので生きてるはずだ……よね?

そっと倒れたそいつを見て息をしているのを確認してから立ち上がる。最後の一人が呆然とこちらを見ていた。

ゆるりと目を合わし、僕は口を開く。

 

「やるか?」

「すみませんでした!!!!!」

 

早っ!?

凄い勢いで二人を抱え走り去っていく。残ったのは呆然と見送ってしまった僕と、ちょっと窪んだ壁と床。何か少し虚しくなった僕だった。

わぁああ!と歓声が上がる。声がした方を向くと、観客席と選手たちが戦っている所がよく見える場所があった。何人かもそこで観戦しているらしい。確かに他のブロックだとしても決勝に進んだのなら戦うかもしれない相手が一人決まる。ならばその時の為に情報収集するのもありだろう。僕はその行動を卑怯とは言わない。

コツコツとその場所に歩み寄り、目下で繰り広げられる男達の戦いを見る。ほとんどが剣闘士のような格好をした男達で、一部は自身の拳で戦っている者もいる。

まだ始まったばかりか、戦っている人が多い。中央の足場から外に落ちたり、気絶したり、血が舞ったり。どうにも汗臭い戦いだ。皆が皆必死に、そして笑いながら汗を血を流している。みんな僕と同じく戦闘狂なのだろうか?この感性が可笑しい事ぐらい自分では自覚しているのだけど、この世界の住民は結構血生臭い。普通の市民は別として。

まぁ、普通に暮らす分には良いのだけど、スリルを求めるのは何処も同じなようで。観客席の女の人は血が舞う度に悲鳴をあげて目を塞いでいるが、その隙間から覗いているし、隣の男性は面白がっているし、その隣のおもちゃは……何考えてるかわからないな。

 

でも、これもう決着つくな。

 

とある一人の男を中心に捲き上る人、ひとヒト。まるで風に煽られた木の葉のように、人が舞っていく。

司会が言うにはMr.Store。逆さまに被った紙袋には“HAPPY STORE”と書かれているのでそれが由来かと思われる。

どう見ても覆面が無かったからこれで良いやって決めてそうな直ぐ外れそうな代物だが、何故かその紙袋はその男が激しい動きをしても外れず、カサカサと音を立てるだけ。

ただ、あの見辛そうな覆面であれだけ戦えるのは強者の証。強いんだろうなぁとは思いつつも、ああいうパワータイプは僕の苦手とするタイプだ。まぁ的はデカイのだが、ふううに押し切られる事がある。

力では叶わない……けどスピードと技では勝てなきゃ優勝はないか。

戦う楽しみと勝てない不安は別な僕である。

数分も経たずに、Mr.Storeが勝ち、人がバタバタと降ってくる。文字通りに人を巻き上げるなんてなんな技を使ったのやら。面白いなと思っていると、彼は覆面を破って捨てた。

 

……覆面の下に覆面……。

 

顔の上半分、目以外を隠した覆面を被った紫色の髪の男。あの顔は見たことある……新聞でだが。確か黒ひげ海賊団の一員だ。

名前はなんだったかな。

 

「 Aブロック優勝は、黒ひげ海賊団一番船船長ジーザス・バージェス!!!」

 

そう、バージェス。

彼は特徴的な笑い声をしながら、周りを見渡していた。観客席の人達や、ここで観戦してたコロシアム出場者達はバージェスに驚き慄いていたが、やがて観客達は盛り上がり彼の名前を連呼する。

戦わないから、他人事だからそうして応援できるのだろうなぁ。ある意味精神が強い観客達を見ながら、彼と戦う時はどうしようかと考える。

生粋のパワータイプ……折角の覆面での出場なのにわざわざ取ったということは馬鹿そうだ。それに攻撃の隙が大きい。彼の強さと反射神経がそれをカバーしているが、仕切れていない場面も多々あった。雑魚相手の集団戦ならば強いんだろうが、強者相手だと付け込まれるタイプかな。

生粋のパワータイプで良かった。それならまだ、付け入る隙はある。通じるかは別だけど。

 

でもま、まずは決勝よりも目先の一回戦であるCブロックを勝ち残らなきゃな。

 

僕の番まだかなぁー。

 

 




彼女の闘うと、彼の戦うは別。レベッカ逃げて、超逃げて。
ん?これちょっと時系列おかしくね?と思った方は正解なので胸張ってワンピファンを名乗ってください。同じじゃつまらんもんね、あまり変わらないけど。

ハッピーニューイヤー(二回目)







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