CARBONADOの行く先は 作:いしっころ
「あ!おれ次だ!じゃぁな、キャベツ!」
「キャベンディッシュだ!!」
Bブロック観戦後そんな声が聞こえてきた。振り向かなくてもわかる。何メートルか左横にAブロックが終わった後から観戦していた、キャベンディッシュとルーシーだろう。相変わらず騒がしい二人だ。キャベンディッシュが振り回されてるという感じもするけど。
Aブロックの優勝が黒ひげ海賊団のバージェスに決まった後のBブロック。強者が入り混じる中で優勝したのは、海賊になって一年のルーキー、人喰いのバルトロメオだった。僕は全く知らなかったけど、一年で新世界に入ってきたのは凄いと思う。その強さはあの能力の強さにもあるが、彼自身の精神の強さだと思う。
人を馬鹿にしたような態度は僕は別に嫌いではない。そうやって煽り、攻撃を一直線にさせ、不明の能力で返り討ちにする。作戦だったら凄いな……僕にはできないし、したくない。
戦う王や、この国の王ドフラミンゴの傘下であるベラミーという強者の中勝った彼は、観客席からブーイングを受けていた。
まぁ彼以外を倒したのは戦う王だが。キングパンチという安直なネーミングの技は凄い技だったなぁ……文字通り一撃必殺の技だから、防がれた後はあっさり倒れたんだけども。
ただ、Bブロックは良い試合だった。うずうずしてくる。さっきから自身の得物を抜いては戻し、抜いては戻しを繰り返していた。カチャカチャとうるさいが、他の通行人が此方を向いたりしていたので、心の中ではごめんと謝っておいた。
すみません……戦闘狂なもんで。
「ひやっホッホッホ。何じゃ、ガープの孫は行ってしまったか……」
ドシンドシンと巨大生物が通るように地面が揺れる。このぐらいの振動なら僕は何ともないが、フォスフォフィライトの様に靭性も硬度も低ければ割れていたんじゃないかな。
そんな振動を発生させているのは隣を通り過ぎるデカイ老人。周りの声を拾うに彼はチンジャオという引退前は五億の賞金首だったそうだ。
一目見ただけでわかる、強者だ。さっきっから笑顔なのに怒気を散りばめているし。
その彼の周りには二人の男性がいて、チンジャオを爺さん、爺ちゃんと呼んでいる。どうやら孫の様だ。家族揃って出場とは、余程腕に自信があるのだろう。
それよりルーシー、やっぱり麦わらのルフィか。
まぁ別に良いけど。
「爺さん、追いかけるなよ。試合は次なんだ、もう少しの辛抱なんだからよ」
「そうだよ爺ちゃん!堪えてくれ!」
孫達の懸命な叫びにチンジャオは少し凸凹した頭をさすりながら、頷いた。終始笑顔のように見えるのが怖い。
「ひやホホ。ならば耐えるとしよう。何、試合が始まれば一瞬じゃ。積年の恨み、孫子の代で晴らしてみせようぞ!ガープ!」
ルーシーってば色んなところから恨み買ってるなぁと思いきや、何かをしたのはルーシーの祖父ガープな様で。先程から本人の知らぬところから恨みが発生し、またルーシーは直接何もしてないという理不尽。
まぁ四億の賞金首はそれだけ敵を引きつけるという事だろう。僕の手配書が似顔絵で良かった。要らぬ恨みは買いたくない……戦っては見たいけど。
去って行ったチンジャオ達を見送ると、今度はその彼らが行った方向から怒気と殺気を感じた。怒気の方が八割ぐらい占めているけど。
「八宝水軍の頭領チンジャオか?出場していたのか……いやそれより、ガープの孫だと……麦わらのルフィがいるのか!?」
キャベンディッシュだった。
彼はふるふると震えた後、徐ろに剣を抜き始め叫んだ。
「何処だ!麦わらのルフィ!!この白馬のキャベンディッシュがお前を斬り裂いてやるっ!!」
残念ながら麦わらのルフィことルーシーは会場に向かいました。
なんて事言えず、阿保くさいとスルーしようとしたが、僕の頭に一つの案が浮き上がってきた。
ニィッと口角を上げるのを隠さず、僕は見聞色の覇気を発動させ、係の者が近くにいないかを確認する。
……うん、いないな。
めいいっぱい広げたそれは、このコロシアムを包むほどある。これ以上は広がらないが十分だ。見聞色に適していればもっと伸ばせたのかもしれないけど、僕の得意分野は武装色である。
ともかく、いない事を確認した僕はコツコツと歩き出しキャベンディッシュに近寄る。
「キャベンディッシュ」
決して大きくない声は、興奮してたとはいえ近くに近寄ってきた僕を横目で確認していたキャベンディッシュを振り向かせるのには十分であった。
彼は振り向き、何だ?と問うてくる。
「僕がもし、その麦わらのルフィの居場所を知っている……と言ったら?」
「何!?」
邪魔をするなという表情から、驚愕へと変わる。そして彼は剣を構え、目を細めた。
「話したからわかるだろう?僕は麦わらに用があるんだ……場所はどこだ!」
攻撃はしてこない。だが有無を言わせない剣幕に僕は笑う。ふふっ、合法的に戦える。係に見つからなければ試合前だって戦って良いはずだ。
何を律儀に守っていたのだろう。僕は犯罪者だと言うのに。
キャベンディッシュの問いに僕は答えず、代わりに腰にある剣を取り、鞘を抜いて投げた。型はないので僕のやりやすい様に構える。
彼は察したようだ。フッと笑うと、剣を構え直す。
「良いだろう。吐くまで斬り刻んでやるだけだ!行くぞ!デュランダル!!」
デュランダルってそんな細い剣だったかなんてそんな疑問はどうでも良い。戦闘が始まったのだ。待ち望んだ戦闘が!
先に仕掛けたのはキャベンディッシュ。剣を持つ腕を引き、突きの構えをしながら突進してくる。そのスピードは億越えの彼にしては緩やかで、様子見という事なのだろう。
なるほど……様子見かぁ。答える義理はないな!
受けるのはまずい。同じスピードタイプだと思うが相手も億越えの賞金首だ。なので、真正面から馬鹿正直に答える必要性はない。
斜め下に屈むことでその剣を避け、右下方から得物を振り抜く。最初から本気のつもりなので、峰打ち用に刀を裏返してはいない。
だが僕の太刀筋を予想していたのか、素早く腕を引いたキャベンディッシュは剣を這わせて受ける。キィンと金属音がなり火花が散った。
「ふっ!」
そして僕の刀を上に弾き返したキャベンディッシュは横薙ぎに斬ってくるが、弾かれた時点でわかっていた僕は地面を蹴り後退する。飛ぶ斬撃でも無ければ届く事のない距離だ。万が一に備えるが、一向に衝撃が来る事のなかった。
体勢を立て直し、剣を振るう。シュッと空気を斬るような音がした。
「中々やるね。君のような強さなら、僕より目立ちそうだ…………許せないな、僕が倒してあげよう」
「目的がすり替わっている気がするが……」
「違う、目的が増えただけさ。麦わらの居場所を吐いてもらう事には違いはない!」
そうか。とだけ呟き、走り出す。待ち構えるキャベンディッシュに刀を振るう事はなく、僕は右上方向に跳ねて柱を地面に見立てて立ち、脚力を利用して突進する。
刀の形をしたこれは斬る事に特化しているため、西洋で使うような剣とは違い叩く事に主旨を置いていない。なので突きでも十分にスッと胴体を貫くことができる。
だけどこれが通るとは思っていない僕は次の行動を頭で考えながら、防ごうとして剣の腹を目の前に持ち込んでくるキャベンディッシュを見やる。
カキィンと音がなり防がれたのがわかると僕は刀を引き、くるりと一回転をしてもう一度斬りかかる。予想だにしてなかったのか、僕の斬撃を受けたキャベンディッシュは少し後退した。
そこを見逃さず、地面に降り立った僕は攻撃を仕掛ける。右、左、上、下、突き、薙ぎ払い。ランダムに繰り出し、本能的にそれでいて冷静に場を見極める。
僕の強みは疲れを感じない事だ。宝石故に体力が無限であり、汗も出ず、剣先が衰える事はない。まぁ光がある環境という場合のみなんだけど……夜は普段より力が出なくて眠くなるからね。
そんな僕が互角、それよりか少し上か下と戦えば長期戦を得意とする僕に分がある。あとはまぁ集中力次第だが、戦闘狂だと自覚している僕は他の人より集中力があると自負している。疲れで集中力を欠くことも無いしね。
「はっ、ふっ……っ!」
「隙ありだ」
「しまっ---!?」
なのでこうして相手に休む隙を与えず攻撃していると必ずボロが出る。例え強敵であっても、億越え賞金首であっても、一回はね。
まぁ四皇クラスは化け物なのでそんな隙は滅多に無いと思うが。
逃さないと素早くその隙に付け入るが、流石というべきか。海賊としてやってきたのは伊達ではなく、あと一歩のところで防がれてしまった。
ちっ!と舌打ちをして、引き下がる。
これ以上の追い討ちは無しだ。逆に此方が焦ってボロを出す可能性がある。それに、もうこの戦いをする必要もなくなった。
---わぁあああアアア!!!
隣から聞こえる歓声と感じる熱気。どうやら、Cブロックの選手が全員揃ったようだ。
刀を下ろして戦闘体勢を崩す。放り投げた鞘を取りに行こうとくるりと振り返れば、それを好機だと思ったのかキャベンディッシュが攻めてきた。しかし、戦闘体勢を解いた時点で来ると予想していた僕は慌てる事もなく、その剣を自身の得物で逸らす。
「なっ……」
驚いているキャベンディッシュを尻目に、鞘を拾いカチリと刀を戻した。
「名残惜しいが、戦闘はもう終わりだ。時間が来た」
「どういうことだ?」
腰に回しパチリと得物を固定すると僕は歩き出し、コロシアムの中央が見える場所へちょいちょいと指を指した。
キャベンディッシュも気になるようだ。同じく剣を収め、覗くようにして会場を見る。だが、直ぐに眉間に皺を寄せた。
「Cブロックの試合じゃないか。あの中に麦わらはいないと記憶しているが」
まぁ名簿にはルフィなんて書いてないもんね。出てないと認識するのが普通だ。僕もそう思ってたし。
けれど彼を疑って見ていれば直ぐにわかる。どうやら嘘が得意ではないようだし……これでは騙される方が可愛そうに見える。そんな事は口に出さないけどね。
乱戦の中、黒い牛に乗って走り回るルーシーを見つけた。それを素早く指差すと、僕の指の先を見つめるようにキャベンディッシュは目を細めた。
「あれは、ルーシーじゃないか。確かに紛らわしく発音が似た名前だが、麦わらでは---」
「あれが麦わらのルフィだ」
「は……?」
ではないと言いかけたキャベンディッシュの言葉に上乗せするように簡潔に言う。
そう、あれが麦わらのルフィ。あの強いお爺さん、チンジャオがガープの孫だと言った男だ。まぁ僕の場合麦わらには会ったことなかったので、一目ではわからなかったけど。
そもそも顔を隠している彼を麦わらのルフィだと決めつけるのは難しい。何かと純粋に受け止めてしまうここの住民なら尚更。
キャベンディッシュの顔を見ると、驚いたように目を丸くしていた。少し面白い。
しかしやがて納得したように頷き、何処からか薔薇を取り出していた。落ち着いたのだろう。
「ふ、ふふふふっ。それならあの強さも納得できる……できる、できるが……リング状に上がって試合が始まったなら邪魔はできない!あぁ!もどかしい!!君はこれを見越していたのか!?」
器用に帽子を避けて頭を掻くキャベンディッシュは、此方に向いてそう問うてきた。何のことだろう?
「僕が麦わらを探そうと走り回る前にここに足止めし、更に!試合が始まるまで、注意が向くように戦いを仕掛けた!!麦わらの事と君の容姿じゃ僕が断るわけにはいかないからね!」
成る程、キャベンディッシュの言いたい事は何となくわかった。
つまり、麦わらのルフィを守る為にここにキャベンディッシュを縫い付けたという事なんだろう。それを責められてる?というより、してやられたと悔しがられてるのか。
まぁうん、大体言ってる事はあってるけど、一つ訂正させてほしい。別に麦わらの味方ではない。好ましい性格だとは思うけど。
「逆だ」
「は?逆……?」
こくりと頷く。
「僕は麦わらのルフィの為にしたわけじゃない。僕の為に麦わらを利用させてもらった」
「利用だと」
「体が疼いて試合が始まるまで我慢できないと思ったからな……少し発散させてもらった」
「いや、君……え?」
あ、なんか引かれてる気がする。
だって仕方ないじゃないか。うずうずしてどうにもならなさそうなんだもの。ずっと我慢する為に得物を抜き差ししていたのだから。寧ろここまで我慢できたの褒めてほしい。
戦闘狂だと自覚はあるが、我慢できると思っていたからちょっとショックを受けているんだからな。そこに引いた目はやめてほしいです。
「実に良い戦いだった。その首、取れないのが残念だよ」
賞金稼ぎ時代なら問答無用で狙ってたのにね。
「あと、復讐に走るのは良いが焦りすぎだ。だから隙が生まれる。注意するんだな」
僕の忠告にキャベンディッシュはポカンと呆けた後、恐る恐ると言ったように口を動かした。
「君……もしかして戦闘狂かい……?それも冷静なタイプの」
うるせぇやい。
何だか気まずくなった僕は上げていた口角を下げて、顔をぷいっと横に逸らした。
この世界の人たちみんな戦闘狂な気がするからボルツはまだマシな気がしなくもない……事もないな!!君は戦闘狂です。
戦闘シーンって難しいね。剣術なんて全く知らないし、語彙力がないから難しい。でも好き。