今回は四千五百字しかない短い小説です。和葉は出て来ません。
※クロスオーバーについて
一応、世界観的にはクロスしてますが、タグにある通り設定は全体の1%あるかどうかでしかないです。それでも読んでくれる方はどうぞ。
ぶっちゃけ、クロス先は分かる人には分かるのではないかと思います。
『深海棲艦』
それは五年前突如として世界中に現れた人類の敵。その正体も目的も不明。解っている事は、人間を狙って殺す事、死ねばその場で消える事、『艦』の能力を保持してる事、それ故に対人兵器では決定打が取れない事程度。
奴らの正体については、突然変異で生まれた生物、生物兵器、沈んだ艦の無念の思いが具現化した存在、など諸説がある─
「─今更だが、五年間戦ってきて解ってる事が少なすぎじゃねぇか?」
あまたある内のとある鎮守府。そこの執務室で一人の男が深海棲艦の資料を覧て独りごちる。すると、ノックの音が響き一人の少女が湯呑みを乗せたおぼんを持って入ってきた。
「提督、入るよ」
「ん?時雨か。茶を持ってきてくれたのか」
少女の名は、白露型駆逐艦二番艦『時雨』。黒髪の三つ編みと耳のような癖っ毛が特徴的な、ここの鎮守府に所属している『艦娘』の一人だ。
「それと大淀から伝言。そろそろ白露達が帰還するようだから、呼びに来たついでに持ってきたのさ」
時雨は男の問いに答えながら、机に湯呑みを置く。
この男の名は
「もうそんな時間か。分かった、行こう」
提督はデスクワークで固まった体を伸ばし、時雨の淹れてくれた茶を飲む。そして立ち上がったその時─
「涼風ーー!!」
─外から誰かの怒号が聞こえた。
「…またか?」
「どうやらそのようだね」
呆れたようにそう言う二人は視線を外に向けた。執務室は二階にあり、そこから港が一望出来るようになっている。その海の上に二つの影が走っていた。より正確に言えば、片方が片方を追いかけているのだが。
「夕立のプリン返すっぽーーーい!!」
「へへーんだ!返せと言われて返す奴はいないってんだ!!」
追いかけている方は、白露型駆逐艦四番艦『夕立』。亜麻色の長髪で毛先が桜色、時雨同様耳のような癖っ毛が特徴の艦娘。
追いかけられている方は、白露型駆逐艦十番艦『涼風』。濃い青色の長髪で毛先が鮮やかな青になってるのが特徴の艦娘。
涼風の右手にはプリンが握られている。つまりはまぁ、そういうことだろう。
「いい加減に─」
夕立が足に力を込め空高く跳躍、思い切り右腕を引き絞った。
「げっ!?」
「─返せーーー!!!!!」
「どわーーーー!!!??」
夕立の拳が水面に叩き込まれると、まるで
「あっぶねぇな!?
─涼風だ。水面から勢いよく飛び出しながら叫ぶ。因みに、プリンはプラスチックの箱に入っているので無事だ。
「大丈夫っぽい。直撃したところで《障壁》があるから」
涼風の叫びに、夕立はニコッと笑いながらそう言う。が、涼風は納得がいかないようで
「だとしてもおめぇの拳は駆逐艦レベルの障壁なんて軽くぶち破るじゃねぇか!!」
「そもそも涼風が夕立のプリンを盗ったのが悪いっぽい」
「バッキャロー!間宮が作ったプリンだぞ!?これが盗らずにいられるかってんだ!」
「それには同意するっぽい」
「だろ!?」
「すきあり!!」
「危な!?」
いつの間に近付いたのか夕立が拳を振るい、間一髪、涼風は頭を下げて回避する。本気で振るったのか、風圧で小さな波が出来た。
「あいつら、まだやってんのか…」
自分達が港に降りてきても追いかけっこを続けている二人に、提督が呆れたように呟いた。そこへ新しい艦娘が声をかける。
「あら?提督と時雨じゃない。どうしたの?」
声をかけてきたのは、白露型駆逐艦三番艦『村雨』。薄茶色の長いツインテールが特徴の艦娘。
「もうすぐ白露達が帰還するそうだから迎えだよ」
「そういうお前は…見ての通りか」
村雨は両手に二つの鎖鎌を持っており、これから捕まえてくるのだろうと二人は考えた。
「あの二人を捕まえてくるわ。食べ物粗末にしたら二人共死んじゃうから」
「僕も行こうか?」
「大丈夫よ。じゃあ行ってくるわ」
そう言って村雨は海へと飛び出し走って行く。ある程度まで近づくと、村雨は両手に持った鎖鎌を夕立と涼風に向かって思い切り投げた。
「「っ!!」」
二人は直撃する直前で接近する鎖鎌に気付き、夕立は裏拳で、涼風はいつの間に出したのか釵でそれぞれ弾いた。
「はいはーい。喧嘩はそこまでよ、二人共」
「いきなり何しやがんでぃ!」
「邪魔しないでほしいっぽい~」
横やりを入れてきた村雨に、二人は抗議の声を上げた。
「あら~?ホントに止めなくていいのかしら?プリンを粗末にしちゃったら、間宮さんどうなるかしらね?」
しかし村雨が頬に指を当て、こてりと首を傾げて笑顔で言うと、夕立と涼風の顔が面白いくらいに青ざめた。ここの間宮は普段は優しいのだが、食べ物のことになると雰囲気が一変する。それを知っているが故に夕立と涼風は大人しくなり、涼風は夕立にプリンを返した。
村雨達が戻ってくると、提督と時雨にもう二人増えていた。
「明石さん、大淀さん。いつからいたの?」
「村雨さんが鎖鎌を投げつけた時ですよー」
「私も同様ですね」
工作艦『明石』。ピンクの短髪で横髪がおさげ風になってるのが特徴の艦娘。
軽巡艦『大淀』。黒の長髪に青いヘアバンドと、アンダーリムの眼鏡が特徴の艦娘。
明石がここにいるのは、もうすぐ艦隊が帰還してくるので《艤装》を回収するため、大淀は丁度昼時になるので皆と一緒に行くつもりで来たらしい。
その後ろで涼風は提督から軽く説教されていた。
「お前が刺激を求めてるのは分かっているが、毎度付き合わされる奴らの実にもなれ」
「前も聞いたぜそれ「お前がこの半年間全く直さないから何度も言ってんだろうが」しょうがないだろう?あたいは刺激がない事に堪えられないんだからさ」
が、涼風は両手を頭の後ろで組み、直す気がないことを伝える。提督は頭痛を抑える仕草をするも、それ以上は何も言わない。無駄なのが分かっているからだ。時雨は何も言わず提督に頭痛薬を用意した。
「あ、帰ってきたみたいですよ」
明石がそう言い水平線を見ると六つの影が海面を滑っており、六人全員が艤装の他に
「白露隊只今帰還しました~。およ?今日も皆待っててくれた感じ?」
「そんなことは見れば分かることでしょう」
白露型駆逐艦一番艦『白露』。明るい茶色のボブヘアーと黄色いカチューシャが特徴の艦娘。
白露型駆逐艦五番艦『春雨』。ピンクのサイドテールで毛先は水色、白いベレー帽をかぶっているのが特徴の艦娘。
槍を担ぎ深海棲艦の返り血で真っ青になった白露を、斧を背負った春雨が溜息をつきながら横目で見た。
「提督、私今回も役に立てましたか…?」
「大丈夫です。お嬢様は提督の役に立てられております。ですよね?提督」
白露型駆逐艦六番艦『五月雨』。足まで届くほどの透明感のある青い長髪で毛先が銀色なのが特徴の艦娘。
白露型駆逐艦七番艦『海風』。足首まで届きそうな程の銀髪を三つ編みにしているのが特徴の艦娘。
二本の
「かー、相変わらず五月雨はあざといなぁ。なぁ姉貴っ」
「そんなことよりお腹すいた…」
白露型八番艦『山風』。癖のある緑の長髪を高い位置でハーフアップにしており、動物耳のような黒いリボンを付けてるのが特徴の艦娘。
白露型九番艦『江風』。紅い長髪でカチューシャから耳のような癖っ毛が飛び出て毛先が青白く、後ろ髪が三つ編みになってるのが特徴の艦娘。
二本の短剣を腰に差した江風が抱き付きながら話を振ると、クナイを持った山風は眠そうな表情で空腹を訴える。
「おう、お帰り。取りあえず全員風呂で汚れ落としてこい。五月雨は役に立ってっから安心しろ。
腹減ってんだったらさっさと入ってこい。飯はその後だ」
「あれ?報告はどうすんの?」
「飯ん時で良い」
「あ、皆さん。艤装はこの箱の中に入れてってください」
白露達は艤装を外し、明石の用意した二つの箱へ入れ風呂場へ歩いていく。
「明石さん、工廠に運ぶの手伝います」
「ぽい」
「毎度助かります」
春雨は艤装を運んでから行くようで、夕立は春雨を手伝う模様。明石が礼を言い、二人は箱を
「先に食堂で待ってるぞ」
「「「(分かりましたー/ぽーい)」」」
それ以外の面々は食堂に向かう。
ここの食堂の雰囲気は居酒屋に近く、五十人程度なら入れる広さがある。普通の鎮守府だと足りないかもしれないが、ここは普通よりも人数が少ないので問題ない。
食堂には常に、二人の艦娘と三人のコックがいる。その艦娘の一人が提督達に気付いた。
「あ、鳳翔さーん。皆さん来ましたよ~」
「分かりました。もうすぐ出来るので座って待っててください、とお伝えください」
「だそうで~す」
軽空母『鳳翔』。 ポニーテールにしたダルグレーの長髪と、若干癖のついた前髪が七三分けになってるのが特徴の艦娘。
給糧艦『間宮』。茶髪のロングに、赤いリボンと同色のヘアピンが特徴の艦娘。
「帰還した奴らがまだ入浴中だから急がなくてもいいぞ」
提督がそう言った直後、鎮守府全体に信号ラッパが鳴り響いた。時間はヒトニーマルマル、つまり今のは昼食の合図だ。しばらくすると人がどんどん集まってきた。白露達も合流し、食事を全員に配る。ここでは例外を除き、全員で食事をすることがルールだ。提督の合掌で全員が食べ始める。
「いただきます」
『『『いただきます』』』
さてここで、この鎮守府に所属している者達を紹介しよう。
白露、時雨、村雨、夕立、春雨、五月雨、海風、山風、江風、涼風、明石、鳳翔の元人間である『適性艦娘』が十二名。大淀、間宮の艦の思いが人となった『具現化艦娘』が二名。提督含め、料理人、整備士、開発者の人間が十六名。合計三十名+数十体の『妖精』で構成される小さな鎮守府だ。そして─軍のはみ出し者達が集められている鎮守府でもある。
「さて、報告を聞こう」
「僕としては、何で北方海域に戦闘に行った訳でもないのに白露が血塗れになったのか聞きたいな。予想はついてるけど」
「いやぁ、行き帰りの最中で深海棲艦を倒してたらこうなった」
「いくつかの敵艦隊と遭遇したのですが、ほとんどを白露さんが倒してしまって…」
「それで彼女だけが返り血塗れになった、と言うわけです」
「いつも通り深海棲艦を見つけた瞬間に突撃してくもンだからさぁ、江風達が先に見つけても先取りされンだよな」
「因みに北方海域ポイント3-5ですが、敵意のある深海棲艦とは遭遇しませんでした」
「
上司への暴言暴力、命令違反、精神異常者、元死刑囚、周囲から恐れられた者など、優秀ではあるが問題のある者達のみ集められたのが、この横須賀にある鎮守府─『特務隊』である。
最後まで覧てくれてありがとうございました。
短編として投稿しておりますが、もしかしたら続きを書くかもしれません。その時はどうぞ、よろしくお願いします。