はみ出し者が集まる鎮守府   作:フリーメア

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 すいません、続きました。
 こっちは息抜きで書いていきますので、気まぐれ更新です。

 ではどうぞ


※2/26、後半の会話を少し訂正しました。


招集

─あたしの槍が(へ級)の喉元を貫く。槍を引き抜くと、喉から青い血を噴き出して海面に倒れた。隙をつくように左からリ級が砲撃してきたから、姿勢を低くして接近、蹴りを胴体に当てて吹き飛ばす。その時、内蔵と骨が潰れて折れる音がした。…骨の方は村雨が興奮しそうだなぁ。

 吹き飛んでったリ級はル級にぶつかったようで、二体とも倒れてた。だから、跳び上がって二体の腹を貫く。一瞬痙攣したけど、すぐに動かなくなった。思ったより深く刺しちゃったみたいだから、足でリ級を抑えて両手で引き抜く。見渡すと周囲にはもう敵がいない。今ので最後だったみたい。

 

《敵艦隊ノ全滅ヲ確認。仮想戦闘ヲ終了シマス。オ疲レ様デシタ》

 

 体中の力を抜いたとき、機械で作られたような声が耳に入った。すると今度は周りの景色が歪んでいき、やがて青い空は天井に、四方八方は壁になって、さっきまで海の上にいたのに今はドッグのような建物の中にいる。 ついでに、深海棲艦の死体や手に持っていた槍も消えていた。

 

(やっぱり駄目だなぁ…)

 

 あたしは溜息をついてから、足の艤装を外して入口近くのスイッチを押す。すると、ガコンって音がして床が出てきた。それを確認してから、汗を流す為に更衣室に設置されてるシャワー室に向かう。

 

 あたしがいる場所は《仮想訓練室》。高さ十メートル、縦横四五メートルのコンテナ状の建物で、自分にあった訓練が出来る。あたしの場合は、さっきみたいに仮想の敵を出して戦ってる。他の子は射撃したり、組み手したり、結構バラバラ。怪我の心配はないから、組み手じゃなくてガチで()りあったりもするけど。主に江風と。

 怪我の心配がない理由?訓練終わったら怪我は消えるから。例え、バラバラになってもね。訓練が始まったら何時の間にか仮初めの体になってるかららしい。提督がイメージ的にはワー○リに近いって言ってた。原理は知らない。提督が機密事項って言って教えてくれなかったから。

 ここで訓練する時は何もいらない。何でかって言うと、必要な物は全部この部屋が出してくれるから。まぁ、入る前に自分で何が必要なのか設定しなきゃいけないんだけど。

 

 さっき溜息をついたのは、別に自分の動きが駄目だったからじゃない。単純にあたしが()()()()()()()ちゃ()()()()()。通常個体じゃ弱すぎて相手にならない。elite(エリート)flagship(フラグシップ)も設定出来れば良いんだけど、最近出現したばっかりだからデータが少なくて再現出来ないんだって。噂のレ級に関しては出会った数が少ないから。レ級とは会ったことないけど、相当強いらしいから是非戦ってみたい。何でも、そこそこ強い艦隊がレ級一体+いつもの敵艦隊にやられたとか。

 

「あ、白露さん。やっぱりここでしたか」

 

 シャワー室から出て水分補給をしてると更衣室に大淀さんが入って来た。大淀さんはあまり体を動かさない艦娘()だからここに来るのは珍しい。まぁ十中八九、あたしを探しに来たんだろうけど。一応、ここに来た理由を聞く。

 

「大淀さん、どうしたの?」

 

「貴女を探してたんですよ」

 

 ほらね、やっぱり。

 

「何であたしを探しに?」

 

「えぇ、提督がお呼びですよ。貴女だけではなく艦娘全員集合との事です」

 

「提督が?」

 

 一瞬、何かしでかしたっけ?と考えたけど、他の子達も呼んでるから違うか。にしても全員呼ぶなら放送で呼べば良いのに。

 

「流しましたが、貴女だけが来なかったから探しに来たんです。集中すると何も聞こえなくなるんですから」

 

 正論すぎて何も言えない。

 

 

ーーーー

 

 

「遅いぞ白露」

 

「ゴメンって。でも聞こえなかったんだから仕方ないでしょ?」

 

 執務室にて。そこには提督とここに所属している艦娘全員がいた。提督が遅れてきた白露に注意するが、反省の色はほぼ無い。期待はしてないのでそれ以上は何も言わず本題に入る。

 

「まぁいい。早速本題に入るが、先程大本営から連絡が入った。明日、一艦隊分の艦娘を連れて大本営に来るように、とのことだ」

 

 それは、ここの鎮守府の実力を認めてくれたという事。しかし、誰一人として喜び者はいなかった。何せここにいる者達は全員、大本営が問題があるとして集められた者達だからだ。故に、そんなことを伝えられても何を今更、という思いしか出てこない。後は、単純にどうでもいいから。

 

「それで?大本営は何の用があって僕達を呼んだんだい?」

 

「姫級の深海棲艦を確認、それについて作戦をたてるらしいぞ?」

 

「何故一艦隊分もの艦娘を連れて行くのですか?」

 

「万が一に備えてらしいが、俺達含めて十の鎮守府は呼ばれてるからな。大本営の艦娘も合わせると百はいることになる」

 

 提督が時雨と海風の質問に答えると、村雨は怪訝な顔をし江風は舌打ちをする。

 

「…そんなに必要かしら?」

 

「チッ、これだから命令するだけの奴は嫌いなンだよ。自分の身だけは守ろうとしやがる」

 

「…提督…そいつら殺しちゃ駄目…?」

 

「駄目に決まってんだろうが。そこの元殺し屋姉妹は連れてかねぇから安心しろ」

 

 良かったような、残念なような複雑な表情を元殺し屋姉妹(山風と江風)は浮かべるが、反論はしない。大本営に行ったら、本当に殺りそうな自分達を理解しているからだ。

 

「誰を連れて行くおつもりですか?」

 

「鳳翔、白露、時雨の三名は決まっている。他は決めてない」

 

「あ、なら私行っても良いですか?」

 

 明石が挙手しながらそう言ったので、理由を尋ねる。

 

「ちょっと新開発した装備をいくつか試したいんですよ。まだ試運転すらしてないので丁度良いかと思いまして」

 

「…程々にしろよ」

 

 一応許可は出したが、大本営に迷惑がかからない程度にしろと釘をさしておく。

 他は夕立と春雨となった。夕立は他にいないなら、春雨は夕立(姉さん)が行くならと。五月雨も役に立ちたそう(メンバーに入ろう)としたが、海風が本気で止めていた。曰く

 

「お嬢様をあんな薄汚い者達の所へ行かせる訳にはいきません」

 

 とのこと。本当に五月雨(お嬢様)第一主義だな、とこの場の全員が思った。

 

「各自、自分の得物は持っていけ。恐らく、というか確実に俺達の陰口を言う奴はいるが、武器をちらつかせておけば多少は治まるだろ。

 ここまでで質問のある奴はいるか」

 

「提督、一つ良い?」

 

 白露が挙手したので、何だと聞く。白露はもし、と続けた。

 

「もしだよ?敵艦隊が攻めてきたらさ─

 

 

 

 

─やっちゃって良いんだよね?」

 

 ニィっと獰猛な笑みを浮かべそう言い、他の者は溜息をついた(鳳翔と間宮は微笑んでいるが)。

 白露は生粋の戦闘症だ。純粋な戦闘力はこの艦隊で一、二を争う。勝てるのは時雨と鳳翔くらいだ。

 頭を抱えたまま、時雨が口を開く。

 

「…何で僕と鳳翔さんが白露と一緒に選ばれたのか分かったよ。彼女のストッパーだね?」

 

「その通りだ。後は、単純に舐められないようにするためだ」

 

「いやぁ…流石にそれはやりすぎじゃないか?」

 

「俺のいない間は大淀に任せる「アタイの話を聞け!」うるせぇぞ涼風。いいな、大淀」

 

「お任せ下さい」

 

「ここに残る者は大淀の指示に従うように。

 連絡は以上だ。他に質問のある奴は?いないなら解散。明日の準備を整えておけ」

 

『『『了解』』』

 

 鳳翔と間宮は食事の準備、他の者も明日の準備を整えに行き、この場には提督と時雨だけが残った。動く気の無い時雨に、提督は声をかける。

 

「時雨、お前も戻れ」

 

「僕は問題ないさ。用意するのは武器だけだからね」

 

 それよりも、と時雨は続けた。

 

「皆に伝えてないこと、まだあるでしょ?」

 

「…鋭い奴だ」

 

 「鳳翔にはもう言ってあるんだが」と言いながら、提督は机の引き出しから一枚の手紙を取り出した。それには、子供が描いたような絵が描かれている。それを見た時雨は誰からの手紙か察した。

 

()()()からのかい」

 

「ああ。不確定の情報らしいが、これに書かれてる情報が本当ならマズいぞ」

 

 時雨は何故、と内容を聞く。そして、提督から返ってきた答えに目を見開いた。

 

「それは…確かにマズいね。それがホントなら、彼女達には感謝しないと」

 

「まったくだ。まぁ五年も戦ってればこういうこともある。上層部はあいつらに感謝すべきだ」

 

「でも、彼女達の事を知らないだろう?言うのかい?」

 

「それはない、と言いたいが、必要を迫られれば言うべきだろうな」

 

 そうだね、と時雨は同意し提督に背を向ける。

 

「どこ行く気だ?」

 

「訓練室だよ。たまには体を動かさないと」

 

「なら俺も行こう」

 

 提督は立ち上がりながらそう言う。口には、笑みが浮かんでいた。時雨も口に笑みを浮かべる。

 

「良いね。仮想の敵は弱すぎるからね。

 武器無しでやるかい?それとも、ありで?」

 

「ハッ、面白い冗談だ。お前が俺に勝てたことがあったか?

 お前は武器ありで良いぞ?俺は素手だがな」

 

 時雨の笑みが更に深まった。代わりに、目からハイライトが消えたが。

 

「へぇ…言ってくれるじゃないか。その言葉、絶対後悔させてやる…」

 

「俺に一度でも勝ってから言え」

 

 二人は言い合いながら仮想訓練室へ向かっていった。

 

 

 因みに、二人の死合(組み手)中に白露が乱入してきたが、これは余談だろう。

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