翌日、提督達は鎮守府を大型クルーザーで出発し、およそ一時間で大本営に到着。提督達は中を歩いていた。因みに他の提督や艦娘、憲兵の視線を集めており、ぶっちゃけかなり目立っていた。
「あたし達超見られてんじゃん」
「
七人中二人が両手武器を持ってる事を忘れてはいけない。
「いや、お前らの服装も原因の一つだろ」
「それを言ったら、一番目立ってるのは鳳翔さんっぽい?」
そう言って夕立は鳳翔を見る。鳳翔だけはいつもの和服ではなく迷彩柄の軍服を着ており、腰に
「提督がなめられないように、とおっしゃりましたので久方ぶりに着てみました」
「あぁ、鳳翔さんは元々軍人だっけ」
時雨はそう言いながら、藤原と鳳翔が自分達の鎮守府に着任した時を思い出す。あの時の鳳翔も軍服を着ていた。
元が一般人だった時雨達ですら、あの時は一瞬硬直した。艦娘学校にいた鳳翔と違ったからだ。しかもリボルバーを片手に持っていた。
「この中で一番目立っていないのは私ですよね?ズボン履いてるだけですし」
「何をやらかすか分からないって言う意味なら、お前が一番危険だがな」
「何でですかー!」と抗議する明石は七人の中で唯一、
そこに男の声が割り込んできた。
「おーおー、騒がしいと思って来てみたら懐かしい顔が見えるじゃねぇの」
七人は一斉に声の方を向く。そこには提督と思わしき男が二人と艦娘が二人いた。白露達が疑問符を浮かべる中、提督が言葉を返す。
「
「久しぶりだね。藤原」
「久しぶりね。二人とも」
提督同士で挨拶を交わし、そこに鳳翔も加わった。一瞬、二人は誰だか判らなかったようだが、すぐに九十九と呼ばれた男が指を指し叫ぶ。
「あっ!テメェもしかして
「人に指を向けないの」
「いででで!?ギブギブ!!」
「あ、間違いなく鳳山だね」
九十九に指を指された瞬間、鳳翔は指を掴み腕ごと捻った。溜息をついた藤原に時雨が声をかける。
「提督」
「ん?」
「あの人達は誰だい?」
時雨の問に藤原は、そういえば会った事もなく教えた事もないなと思い、鳳翔に捻ることを止めさせ二人を紹介する。
「こっちの男は中野
「ひっどい紹介をありがとう。
初めまして、中野です。この子は
「よろしくなのです」と電は頭を下げた。具現化艦娘は自身を顕現した者に似るらしいので、この電も顔に似合わず毒舌家なのだろうかと思いながらもう一人も紹介する。
「こっちは九十九
「ハッ、欲しいモノを欲しいっつって何が悪い。
九十九だ。こいつは俺の初期艦の叢雲。見りゃあ分かるが『適性艦娘』だ」
叢雲は「よろしく」と言って軽く頭を下げた。この叢雲は通常と違い、背が170程ある。駆逐艦娘としては勿論、女性の平均身長より高い。
厳密に言えば"人間"ではない具現化艦娘は『改二』になる場合を除き
「一応こいつらは同期だ。ムカつく事に二人とも階級は俺より上だがな」
「藤原が上官をぶん殴ったりするからだよ」
「ホントだよなぁ。ま、おかげで俺は助かったけどな。お前が殴らなきゃ俺がやってた」
「チッ、それならやんなきゃよかった」
軽口を叩き合う彼らを見て、時雨は仲が良いんだなと思う。因みに藤原の階級は大尉だ。
「で、こいつらが俺の指揮する艦娘達だ。白露、時雨、夕立、春雨、明石、それに鳳翔。全員適性艦娘だ」
それぞれが挨拶をした後、藤原は二人に問いかけた。
「ところで、お前らは何でここにいるんだ?」
「君と一緒。僕達も姫級の作戦会議に呼ばれたんだ」
「まさかお前が呼ばれてるとは思わなかったがな。さっき聞いたぜ?お前のとこ、
「…まぁそんなとこだろうな」
実際は倒したのではなく
「じゃあこのまま会議室行こうか。あ、会議室に艦娘は一人しか連れて行かれないって」
「なら鳳翔、いいか?」
「分かりました」
「叢雲、そいつらを待機室まで案内してやれ。終わったら会議室まで来い」
「分かったわ。貴方達、ついてきて」
時雨達は叢雲に案内された一室で自由に過ごしていると、夕立との軽い組手を終わらせた白露が突然口を開いた。
「ねぇ時雨、本当に
「・・・さぁ、彼女達からの情報だから個人的には半信半疑って所だね。それと白露、その話をするなら近くに誰もいない事を確認してからにしてくれないかい?」
時雨は本を読みながら返事を返す。小さく溜息をつきながら「部外者に聞かれるのはマズいよ」と付け加えた。そう言った時雨に、夕立が春雨の入れてくれた茶を飲みながら聞き返す。
「時雨はまだ嫌ってるっぽい?」
「・・・当たり前だろう?僕が彼女達に好意を抱くと思うかい?」
そこに春雨と明石が話に入り込む。
「ですが、もう彼女達とは二ヶ月の関係を持っています」
「そうそう。時雨ちゃんの気持ちは分かりますが、せめてもう少し敵意をですね─」
「─何が、分かるって?」
時雨は読んでいた本を閉じて殺気を放ち、明石を睨みつけた。そしてゆっくりと立ち上がる。
「もう一度言ってみなよ。機械を弄るためだけに艦娘になった貴女が本当にっ・・・、
いつもの時雨からは想像つかないような怒声をあげる。それだけ時雨にとって深海棲艦は憎悪の対象であり、明石の何気なく言った言葉が許せなかった。
部屋に沈黙が降りると、白露が口を開く。
「明石さん、流石に今のはダメだよ。時雨が何で艦娘になったのか、知らないわけじゃないでしょ?
時雨も落ち着いて。明石さんだって悪気があって言ったわけじゃないんだから」
白露の言葉に明石は「・・・確かに軽率でした」と頭を下げ、時雨は舌打ちをし部屋を出ようとした。頭を冷やすためだ。
時雨が部屋を出ようとドアノブに手をかけたその時─サイレンが鳴り響いた。
「「「「「っ!!」」」」」
五人全員がバッと窓に振り向き、水平線の彼方に視線を送る。このサイレンは、敵が来たことを知らせるものだ。つまり、この大本営に深海棲艦が接近してきているということだ。
このサイレンが大本営全体に鳴り響いた時の反応は様々だった。ある者は敵が来る事に怯え、ある者は敵が来たことに疑問を持ち、またある者は獲物が来る事に笑みを浮かべた。
会議室にて、元帥と大本営の大将含め十三人の提督と護衛艦娘がサイレンを聞いていた。半分以上の提督が狼狽えている中、藤原だけはこの事を予想していたように小さく呟く。
「─来たか」
同時刻、大本営から数十キロ離れた場所に多数の深海棲艦がいた。その数、四十八。先頭にて艦隊を指揮するのはフード付きコートのようなものを羽織り、蛇のような尻尾を生やした深海棲艦。
それはこちらの艦隊を壊滅に導く、小さくも強大な力を持つモノ。熟練の艦娘ですら苦戦する悪魔─
「サァ、艦娘共ノ本拠地ヲ落トス。行ケ」
─戦艦『レ級』。ソイツの号令で深海棲艦は進撃を開始する。先には、連合艦隊を組んだ艦娘。
「─マズハ アノ艦娘共カラダ」