「うぇ……気持ち悪っ」
昨日は散々だった。デュラハンの呪い解除で気が緩んだのか、皆で飲み会を開いたんだが――。
濃い酒を二回も一気飲みさせられたうえに、アクアには頭から酒をぶっかけられた。そのあとイリスと大富豪をやったものの、大人気なく十連コンボで圧勝したら、途中で乱入してきたカズマに見事返り討ち。結果、イリスはカズマになついてしまった。
冷静に振り返ると、ただの弱いものいじめを成敗した正義の人に見えたんだろう。……まぁ、さっき和解してご機嫌も直してくれたし、よしとするか。
それにしても、あのデュラハンは一週間後にまた来るだろうに、この街の連中は昨日の騒動が嘘だったかのように普段通り。たぶん、カズマたちももう忘れてる。
とりあえず、今朝エリスに頼んで、手持ちの短剣十本にアンデッド特効を付与してもらったが……正直、まだ物足りない。さーて、次はどう動くか――
「ねぇ、そこのお兄さん。いい話があるんだけど?」
背後から袖を引かれる。聞き覚えのある声。
「……お、アクアか。悪いけど、今はあんまり暇じゃないぞ?」
「だーいじょうぶ! 絶対ユウマも気に入るって! さ、こっち来なさい!」
強引に腕を引っ張られ、俺はそのまま路地裏へ連行されてしまった。くっ……筋力値の暴力……。
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辿り着いた路地裏。アクアはどこから取り出したのか、縦長の箱を抱えてニヤリと笑う。その姿は、まるで闇取引の売人。
「ふふ……ユウマ。覚悟はできてるかしら?」
「ん、なんだよ……その真剣な顔」
そして、アクアが後ろから差し出した物――それは……
「こ、これは!!」
「1/7スケール! 幸運の女神エリス・私服verの……石鹸よ!!」
「な、なんだと!? これが……石鹸だと!?」
髪の毛の一本一本、指の関節までリアルに再現されているその造形美。現代の精密フィギュアすら超えてる。そして、それがまさかの……石鹸。
「この石鹸は天然素材でできてるから、食べることもできるの。しかも――服の部分は、お風呂で使っていくとだんだんと……ね? まぁ、石鹸だし仕方ないわよね?」
……いや、やましい気持ちはない。これは石鹸。ただの石鹸だ。俺は真面目に、石鹸を評価している。
「アクア……十万エリスでどうだ?」
「さすがユウマさん、話が早いわね! 特別に、この私が祝福したありがた~い“聖水”も付けてあげるわ!」
取引成立。俺は十万エリスと引き換えに、石鹸と聖水をゲットした。石鹸は風呂でじっくり観賞するとして、《ポケット》にしまい、問題はこの“聖水”。
「なあ、この聖水……どんな効果があるんだ?」
「そうね。上級アンデッドにも致命傷になるレベルかしら。人間には、呪いや状態異常解除の効果もあるわよ」
「ふーん……ちょっと味見」
……この味……どこかで……昨日の酒……
「なあ、ひとつ聞いてもいいか? 水に触れたら、聖水に変えられたりする?」
「私を誰だと思ってるの? 水の女神アクアよ? ジュースだろうが泥水だろうが、私が触れたら全部、清らかな聖水に変わるのよ!」
……ビンゴ。
昨日、頭から浴びた酒。変な味がしたと思ったら、あれ、全部アクアが変えた“聖水”だったのか。
ってことは、泥水でもアンデッドに致命傷を与えられる“最強の聖水”を無限生成できるってことか……これ、稼げるぞ。
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「ねぇアクアさん? 簡単に稼げる方法があるんだけど……どう?」
「えっ!? ほんと!? 早く教えてよ!」
掛かったな。ここからは俺のターン!
「500mlの聖水を大量生産してくれ。俺は魔道具屋の店主ウィズと知り合いだから、彼女に商人を紹介してもらって、販路を開く」
「で、値段は?」
「一本1000エリスで売る」
「は? 安っ! 私が頑張って作ってるんだから、せめて1万エリスにしなさいよ!」
……水に指突っ込んでるだけだろ。
「アクア。こういうのは“量”で勝負なんだ。質が良くて、安価。だから売れる。高すぎると手が出せないけど、1000エリスなら皆が買える」
「う、うん……なるほど?」
「“塵も積もれば山となる”ってな。たくさん売れりゃ、1000エリスでも億になるかもしれない。だから、この値段がちょうどいいんだ」
「じゃあ、たくさん買ってもらえればいいのね!」
「その通り! 難しいことは任せて。アクアは聖水作りに集中してくれ。あと、あの石鹸も。別バージョンも作れそうか?」
「任せて!」
「よし、それじゃ準備に取り掛かる! あとは頼んだぞ!」
俺はアクアと別れ、一路ウィズの店へ急いだ。これで、なんとかデュラハン戦の軍資金は集まりそうだ。
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「ふぅ……これでなんとか完了。ユウマさんに頼まれていた短剣へのアンデッド特攻付与、意外と時間かかったな……」
もう夕方。イリスさんはまだカズマさんの所だろうか。昨日の一件、さすがに反省しているだろうけど、仲直りできていればいいのだけれど。
よし、とりあえず晩ご飯の準備を――と思って外に出たら、ちょうどユウマさんが帰ってきた。
「エリス、ただいま」
「おかえりなさい。……って、両手に抱えてるそれ、もしかして……」
「ふふっ、じゃーん!」
ユウマさんが袋から取り出したのは――この世界でも超高級品とされる、霜降り牛肉。
「な、なぜこんな高級品を……!?」
「実はちょっとした商売を始めたら、予想以上に売れちゃってさ。今日はちょっと奮発しようかと」
「ただいま帰りました!」
ちょうどイリスさんも帰宅。
「お、ナイスタイミング! 今夜はしゃぶしゃぶだ!」
「しゃぶしゃぶ……? それはなんですか?」
「イリスは知らないか。エリスは?」
「聞いたことはありますけど、実際にやったことはないですね」
「じゃあ、俺が教えるから。一緒にやろうぜ!」
楽しそうに準備をするユウマさん。その笑顔を見て、胸がちくりと痛む。
――こんなに笑っていても、私は本当はここにいてはいけない存在だ。天界に戻る日が来れば、この楽しい時間とも、お別れをしなければならない。
……でも、それが、どうしてこんなにも寂しく感じるんだろう。
赤い夕陽が、静かに月へバトンを渡していく。
「おーい、エリス。準備できたぞー、早く来い!」
「そうですよ、エリスさん。遅いと全部食べちゃいますよ!」
「こら、イリス。お行儀が悪いぞ」
「はーい、今行きます!」
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――夜。寝床にて。
「……どうかしましたか?」
「んぐっ!? ど、どうもしてないですよ!? ははは!」
目を通していただき感謝です。誤字が多い作品ですいません。なるべく気をつけているのですが、見落としがあるので、報告お願いします。今回は前編後編で分けさせていただきました。後編は多分一週間後の投稿を予定しています。感想、アドバイスお願いします。