今回で第2章は折り返しです。
4月の頭には新章に入れるように頑張りたいです。
その日、自分が買い出しの当番だったことを忘れ、昼寝で寝過ごしてた俺のせいでギルドで晩飯を済ませることになっていた。
「今日のことは本当に悪かった。そうだ!好きな物を好きなだけ食べていいぞ!」
ご機嫌斜めなイリスに声をかけるが、ぷいっと背けられる。
「ユウマさんもわざとではないんです。許してあげてください」
エリスの言葉に今まで閉ざしてた口を開いて言う。
「ギルドのご飯は美味しくないんです。私はエリスさんのご飯が食べたいんです」
エリスの手にしがみつき俺のほうを見て言う。
うちのパーティーのシェフであるエリスの腕前はそれはなかなかのものであり、俺が作り方を教えて作ってもらっている。
本人いわく、料理はそんなに得意ではなかったらしいが、アクアやサツキさんに無理矢理教えられてできるようになったらしい。
おかげさまで、エリスの料理は三つ星シェフもびっくりのレベルに到達している。
これぞ、女神クオリティーだ。
「あ、そういえばいい忘れてた」
イリスのご機嫌を、直すことに気を取られていて完全に忘れていた。
目線をイリスからエリスに変える。エリスは頭に?を浮かべて見てくる。
「お酒、禁止ね」
その言葉にエリスは顔を下に向けて落ち込む。
そう、エリスが酒を飲むと本当にたちが悪い。いつものおしとやかさとかは何処かに消え、パーリィーピーポーになってしまう。そのため、家では酒を使う料理やアクアを呼んで酒を消費していた。
そんなこんなで、変な雰囲気な状態でギルドにつき、扉を開く。
ギルドの中は相変わらず、酒の匂いが充満しており、酔った冒険者達でお祭り騒ぎだ。
そんな冒険者達を横目に席につこうとすると、一人の少女がトランプで遊んでいるのに目が行く。
めぐみんの友達のゆんゆんだ。
食い意地の張った爆裂魔いわく、ゆんゆんは極度のコミュ障らしく、未だにパーティーを組めていない。ついこの前パーティー募集を読んだが、なかなか心にくるものだった。
「よ!ゆんゆん」
俺が後ろから声をかけると、うわっと驚きトランプのピラミッドが崩れる。
「ゆ、ユウマさん!?」
おもいっきり振り返ったことで胸が左右に揺れる。んーーいつ見てもいいものだ。
「いやーごち、……、今日はパーティーで飯を食いにきたんだけど、ゆんゆんもどう?」
危うく本心が出てきてしまうところだった。
ゆんゆんは顔を赤くしいる。ん?どうしたんだ?
ーと後ろからイリスがゆんゆんに飛びつく。
「ゆんゆんさん!!」
「い、イリスちゃん!?」
「あら、ゆんゆんさん、こんばんわ」
いきなり、飛び付いてきたイリスに動揺しながらも、エリスの挨拶に笑顔で返す。ゆんゆんはあの日、うちのメンバーと打ち解けあったようで、楽しそうにしている。
「ねぇ、ゆんゆんさんもご飯、一緒に食べよ!」
「それはいいですね。どうです?ご一緒しませんか?」
二人の、主にイリスのペースに乗せられているゆんゆんは満々の笑みで了承した。
嬉しさのあまり涙が流れていることに気づいた俺は、つられて涙をながした。幸せそうでなりよりです。
それから、それぞれ席についてオーダーを取ろうとしたときだった。受付のほうから大急ぎで職員の人が走ってくる。
「ご休憩の所申し訳ございません。ただいま、近隣のダンジョンで未確認のモンスターが現れたら情報が入ってまいりまして、ギルドからの派遣として出向いてもらえないでしょうか?」
これから夕食だから無理です。そう言いたいところだが、職員さんの必死の顔に断るにも断れない。
「行きましょう、ユウマさん!さっきから、怪しい感じがしていたんです。これは多分、悪魔だと思います」
なにやら、やる気十分なエリス。他の二人も行くしかないという感じだ。
「了解しました。その依頼受けます」
「ありがとうございます!場所はつい最近、隠し部屋が見つかったとされるキールのダンジョンです」
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未確認モンスターの見つかったとされるキールのダンジョン。以前、カズマからその場所でアンデットを成仏させたと聞いたが何が起きているのだろうか。
俺たちがダンジョンにつく頃には、他のパーティーも準備をしており、その中にはカズマ達もいた。
「おう、カズマ!」
「お、ユウマも来てたのか」
相変わらずのお疲れ様モードでいるカズマさん。何があったのか、それは酒の席で聞くとして周りを観察する。
すると、小さい仮面を被った物が一列に行進をしていた。
「なんだ、これ?」
俺は規則正しく行進していた、一体を持ち上げる。女うけしそうにみえて、逆に不気味に見えるな。
手を離して列に戻そうとしたとき、頬をかするように何かが通過し、その人形を串刺した。
「ユウマさん。むやみに触らないでください。下手に触るとばい菌が移っちゃいます」
エリスは感情のこもってない、冷たい言葉を放つと共に、槍をおおきく振り回し、人形達の首を跳ねていく。
「な、何をやってるんですか!」
俺はエリスの威圧に押されて敬語になる。それにしても、無害な人形を襲うのはさすがにやりすぎだと思う。
「これが、無害に見えましたか?でしたら、あれを見てください」
槍の指す方向を見ると人形にくっつかれ、爆発にのまれて歓喜の声をあげているダクネスが目に写る。
お、おうふ。
「あれは生物にくっついて爆発する物なんです。ですから、ユウマさんも気をつけてください」
それだけ言い残すと、別の人形達のいる方へ行く。
なんであんなに怖い顔をしているのだろうか。
そんな、素朴な疑問を浮かべていると、遠くで人形達の乾いた爆発音が響く。
「ユウマー。こっち来てくれるか?」
ダンジョンのほうからカズマの声が聞こえる。
何があるのだろうか?
俺は小走りでカズマの方へ向かう。
すると、険しい顔をして俺の耳元で話す。
「実はな、この前ここのダンジョンにきたとき、アクアが結界を張ってな。今回の騒ぎ、それが関係あると思うんだ」
「ほうほう、安定のトラブルメーカーだな。それで?」
「それでさ、今からその結界を消しに行こうと思うんだが、めぐみんは爆裂魔法だけで使えないし、アクアはついてきても問題を起こしそうだから、ダクネスを連れていくことになったんだが、どうも不吉な予感がするんだ。一緒に来てくれないか?」
うーん。カズマの判断は正しい。俺もカズマの立場なら全く同じ選出するだろう。
それに、ギルドでエリスの言っていたことがある。二人だけじゃ危ないし、ついていったほうがいいな。
「いいぜ。イリスとゆんゆんはここでアクア達といてくれ。それと、エリスが暴走しないように見張ってくのもよろしく」
イリスは頷いて、めぐみんの方へ行く。
まぁ、イリスならいざというとき、一人でなんとかできそうだ。
俺は真っ黒焦げになりながら喜んでいる変態の鎧を引っ張るカズマとともにダンジョンの中へと入る。
ダンジョンの中はいたって静かで、人形以外のモンスターがいなかった。
そのため、あっけなく最下層についてしまった。
「それで、結界の話なんだけどさ」
「ちょっと待ってくれ。誰かいる」
俺の言葉をあわてて切るカズマ。その顔はいつになく真面目な顔で奥の壁をにらんでいた。
「ふむ、こんなところに客人か」
カズマのにらんでいた方から、男性の声が響く。
薄暗い視界の中、だんだん目が慣れてきたのか、目の前に黒いタキシードをきた仮面の男がいるのがわかる。
俺達はその姿をとらえ、戦闘体制に構える。
すると、仮面の男は口元と歪める。
「ようこそ!我がダンジョンへ冒険者達よ。我輩こそこのダンジョンのボスにして諸悪の元凶!魔法軍幹部にして、悪魔達を率いる地獄の公爵!この世全てを見通す大悪魔、バニルである!」
最悪だ、まさかこんなところでとんでもないのにでくあすとは!
ーー初心者向けのダンジョンとして有名なキールのダンジョン。その最下層にて、俺達はとてつもない緊張感につつまれていた。
魔王軍幹部と名乗った大悪魔、バニルに対し後ずさる俺とカズマに反してダクネスは真剣な顔で相手に剣を向け、出方を伺う。
それにしても、状況は最悪といってもいい。
相手の放つオーラだけでも、体が締め付けられていて、一瞬でも気を抜けばくるのは死だと本能が教えてくる。
それは、カズマも同じだったのだろう。大声でダクネスに撤退の指示をする。
「おい!ダクネス。俺達だけじゃ駄目だ!ここは一回逃げるぞ!」
「何を言うか!私は女神エリスに仕える身。魔王軍幹部、それも悪魔を目の前にして、背を向けることはできない!」
ダクネスはカズマの言葉に聞く耳を持たない。
駄目だ、完全にモードに入ってしまっている。このままでは戦闘も時間の問題。
そう、思っときだった。目の前のバニルは面白い物を見たように口元を歪めて言った。
「ほう。このぶっちゃけ、魔王より強いかもしれないと評判の我輩を前にしても逃げずに剣を向けるとは。なかなかの度胸だ。がしかし……。そこの平凡な小僧に風呂場で裸を見られた際、己の割れた腹筋を見られたかと心配する娘よ。何を怒っているのかは知らぬが、少しは落ちついた方がいいぞ。そのままでは人生、肝心な時に失敗してしまうと言うものだ」
「な、何を言うか!カズマ、こいつの言っていることは嘘っぱちだ!私は腹筋はそこまで割れてないし、そもそも心配などしていない!」
「わかった!わかったから、一回落ち着け」
バニルの盛大なカミングアウトによって、暴れだすダクネスを無理矢理おさえるカズマ。
その様子を歪んだ笑みを浮かべながら見守るバニル。
「まぁ落ち着くがいい。我輩は、別にお前達と戦うためにこの地に来たのではない。魔王の奴に頼まれた調査。そして、アクセルの街に住んでいる、働けば働くほど貧乏になるという、不思議な固有スキルを持つ、ポンコツ店主に用があってここにいるのだ」
その言葉に、一人の女性が頭に浮かぶ。なるほどね。
隣で、ダクネスが警戒しながら剣を向けるなか、俺とカズマは座ってバニルの話を聞いていた。
まぁ、聞いた感じバニルは人に危害どころか、魔王軍の結界を維持するために雇われているなんちゃって幹部だった。
「まぁ、なんだ。あんたはあんたで頑張ってくれ。俺達は結界を消しに来ただけだから。ほら、とっとと取りかかろうぜカズマ」
「ほう、それはありがたい。この何処の頭のイカれた輩が作ったかわからん結界のせいで我輩もとても迷惑していたのだ。どおだ、お礼として夜中に笑うバニル人形を進呈しよう。」
「いいよいいよ、この結界は俺達にとっても残ってたらめんどくさい物だし。」
カズマが言った、何気ない言葉に首を傾げるバニル。
「なにゆえ、この結界が汝達に不都合を?ちょっと汝の過去を拝見して……」
いきなり、黙りこむバニルに対し俺の直感が語りかける。これはとんでもないことになると。
「フ、フハハハハハハ!そうか、そういうことだったか。貴様らの仲間のプリーストが、大悪魔である我輩ですら入れぬ魔法陣を作ってくれたとは、そのプリーストはよもや……!」
その時、とてつもない寒気が体を通りすぎる。
ゆらりと立ち上がりこちらを見るバニルの目は魔族特有ともいえる赤い瞳になっていた。
「ほう、見える、見えるぞ、地上に二人も!」
間違いなく、その二人とはアクアとエリスをさしていた。
俺は怯える本能を無意識に払いのけ、バニルの前に立っていた。
「さぁ、最近知り合った娘の体に発情し、仲間の機嫌を損ねてしまった男よ。そこを開けてもらおうか!安心するがいい、人間には手は出さん、……『人間』にはな!」
「うるせぇ!結果的に機嫌は直せたんだ!それに、あんな体を見て、欲情しねぇー男なんて男じゃねえ!」
結界から、短剣取りだそうとする。
ーーが、短剣が手元に握られた時には、視界からバニルの姿は消えていた。
後ろで風を切る音がする。
振り向けば、ダクネスがバニルに斬りかかっていた。が、軽々と交わしていくバニル。
ただ、そこには俺を追い越した時のスピードは無く。まるで遊んでいるようだ。
「フハハハハ!腹筋ににて頭も固いようだ!そんな剣技では長い夜もあっというまに過ぎてしまうぞ!」
そんな挑発に構う暇も無く、顔をしかめるダクネス。
実力の差は歴然、このままやっても一生当たることはないだろう。
「ふ、ふざけるのも大概にしろ!」
「グハ!」
そう誰もが思ったときだった。ダクネスの剣がバニル胴体を切り裂く。
「フ、見事なり……」
体を砂に変え、朽ち果てていくバニル。
最後に彼のトレードマークだったであろう仮面がダンジョンの床に落ちる。
「え、倒した!?」
「な、なんだ思ってたより速く終ったな。それにしても、ダクネスの剣が当たるなんてな。それじゃあ、とっとと結界を消して帰ろうぜ。」
緊張感が一気にとけ、笑いあう一行。
さっそく、当初の目的を果たそうとカズマが背を向けて奥の部屋へと向かおうとしたときだった。
ダクネスがいきなり、血相を抱えてカズマを弾き飛ばす。
「おい、何をすんだよダクネス!」
ダクネスは倒れたまま、起き上がろうしない。
心配して近寄った、その時だった。
「フフフフフ、フハハハハハハ!」
奇妙な笑い声とともに突然、仮面を押さえて立ち上がる。
「今我輩を倒したと安堵したな?フハハハハ。……そなた達のその絶望。とても美味である」
この手の相手がそう簡単にやられる訳がない。俺とカズマが固まる中、ダンジョンにはバニルの笑い声が響く。
「一つ言っておくが、今この娘の体には激痛が走っている。今すぐそこを開け、我輩の目的が達成されればこの娘を開放しよう。さぁ、そこを「どかなくていいぞ!私のことは心配するな。この少しでも気を抜けば全てを持っていかれるほどの激痛。こんな痛み、生まれて始めてだ!」話している時に割り込むではない!」
さっきの騎士としての誇りは遥彼方へ。こんな状況でも自分の性癖に正直なダクネスさん。ある意味尊敬しますよ。
「このままではこの娘の命はない!さぁ、開放したくば「お構い無く」……」
「「……」」
一同沈黙。もう駄目だな。なるようになってくれ。
俺とカズマがそう思ったとき、バニルは勢いよく飛び出し地上への階段をかけ上がる。
「行くか」
「おう」
バニルの後を追って、階段をかけ上がる俺達。
だが、流石は鍛えているダクネスの体。俺達に差を詰めることを許さず、地上に飛び出る。
その時だった。
「《セイクリッド エクソシズム》!」
「「ああああああ」」
アクアのウル○ラマン光線をくらい、勢いよくその場に倒れるバニル。
そして、その顔の横に聖槍を向けるエリス。
「おい、アクア!何やってんだ。その体はダクネスのだぞ!」
「そうだ、エリス!いいから槍をどけろ!」
「だって悪魔の気配がしたんですもの」
「いえいえ、アクア先輩。これは本物の悪魔ですよ」
女神の漫才コントを始める二人。その二人を見ながら呆れて仮面に表情を表すバニル。
「会ってそうそう、浄化魔法を打つとは、礼儀を知らないようだな発光生物達よ」
「人の悪感情を吸うことでしか生きることのできない下等生物に尽くす礼儀などありません。大女神様から授かったこの槍で成仏させてあげましょう」
「ほう、やれるものならやって見るがいい。頭のおかしい発光生命体よ」
お互いにらみあう、エリスとバニル。
エリスの方は完全に入ってしまってる。こうなったら誰にも止められない。
周りもそれを承知しているのか、見守ることに徹してる
「《ニケの聖歌》!」
スキル使用を唱えると槍から光が溢れだし、槍全体を包み込む。
すごい。言葉では説明することのできない魔力の量。静かだった森の木々達はざわめき始め、一つの聖槍に風たちが集まる。
その圧倒的な光景に、その場の誰もが言葉を失いただ突っ立っているだけだ。
ーーだが、ただ一人。ただ一人の悪魔は口元を歪めたままエリスを見据える。
「悪しき力を絶て!《シャイニングスピア》!」
「……。」
聖槍から放たれる神気の光帯は、バニルに乗っ取られたダクネスの体を貫く。そう誰もの目に写った。
瞬間、バニルはエリスの後ろに移動していた。
「なっ!」
エリスはすぐさま振り返り槍を振るい、剣撃を払う。
さすがはダクネスというのか、その一撃一撃は当てれば致命傷を与えられる重い一撃だった。
「フハハハハ!どうした!目がチカチカするほど輝くシスターよ。さっきまでの威勢は風に流されていてしまったのか?」
「クッ!口を開けばくだらないことばかり」
苦い顔で槍を振るうエリスとそれを嗤うバニル。
だが、力の差は五分五分。どちらかが引けば負ける戦い。そう、俺の目には写っていた。
ーが、それは大きな間違いだと次の瞬間気づかされる。
今まで、引くことなく小バカにする笑い声をあげながら剣をふるっていたバニルは一歩後退する。
そして、エリスはその瞬間を見逃すまいと前に一歩振り込む。
その時、確かにバニルの口元が歪んだのがわかった。
「引け!エリス!」
俺の言葉に困惑するエリスだったが、バニルを見たとき、自分の置かれていた状況を理解した。
「《六式結界》」
突如として現れた結界が、エリスの間接を固定する。
そう、始めからこの戦いは五分五分なんなではなかった。すべてはバニルの演出。
わざと、引けない状況かを作り出して打ち合っていただけだった。
「どうだ?我輩に勝てたと思ったかシスターよ。残念ながらそれは貴様の幻想だったようだ」
「ッ!」
身動きを取れない無防備なエリスの姿を見て笑うバニル。
勝負ありだ。完全にバニルの圧勝だった。
それにしてもだ。何故、バニルはわざわざこんな自作自演を始めたのだ?
そもそも、バニルの狙いはエリスではなくアクアだったはずだ。
なら、わざわざこんなめんどくさいことをせずにエリスを払って、アクアに照準を合わせればよかったはずだ。
すると、バニルはエリスから俺に顔の向きを変えてくる。
「さて、ここで一つ。悩める時期にある坊主よ。このシスターは今無防備にあるが、我輩が場所を整えてやると言ったらどうする?」
「!?」
それってつまり、好きにしてもよいと?
そんなことを考えて動きを止めていると。周りの視線、おもに女性陣の視線が背中を貫くのがわかる。
「お、お前は何を考えさせるんだよ!」
「おお、これはこれはなかなか美味な悪感情」
そんな会話をしていたとき、何かが割れる音がする。
俺一点に集中していた視線はその音のするほうへ、向けられる。
一同、無言の驚きでエリスを見ている。つられて見てみると、エリスの動きを止めていた結界は粉々に消えており、聖槍からは水蒸気が出ていた。
「ほう、我輩の結界から抜けるとは、まだ青いひよこだと思っていたが、ただの力任せのゴリラであったか」
これは誤算だったと、愉快に笑うバニル。
こいつは本当、楽しそうだな。
飽きてれ、俺はバニルに視線を戻した、その時だった。
(我輩は女神なんかに成仏させられるのは真っ平だ。貴様ら人間の力で我輩の破滅の願望を叶えてはくれぬか?)
一瞬、こちらを向いたと思うと、突然心に問いかけてきた。
そして、エリスが動き出す前に俺はカズマのもとへ走る。
「なぁ、カズマ。エリスが仕留め損なったときのために、めぐみんの爆裂魔法を準備できないか?」
「なに言ってんだよ。いくらダクネスでも、爆裂魔法は……」
一応用意させとくと、めぐみんに指示をするカズマ。
別に俺が撃ってもいいのだが、その場合周りへの被害が尋常じゃない。
「この世、全ての我が眷属達に幸運の女神エリスが命じます。人々の生活を脅かす、悪しき力を討つために。祈りを力に変え、我にその力を与えよ!」
聖槍に再び光が満ち溢れる。
それはこの世のエリスを慕う人達の祈り。
全ての生命を平等に愛す慈愛の光。
周りの木々達はみなぎるようにその葉っぱを生い茂らせる。
きっと下級の悪魔やアンデットならこの光を見ただけで成仏するだろう。知識の無い俺でも、それを理解できる。
「闇を飲め!《スターバースト》!」
勢いよく、聖槍を投射するエリス。
慈愛の光纏った槍はバニルの仮面目掛け、風を切って突き穿つ。
ーーが、それを目にも止まらぬ速さで交わして、聖槍の攻撃範囲外へ抜けるバニル。
そこへ、今度は人類最大の攻撃魔法の破滅の光が落ちる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なんちゃって幹部バニルとの戦いから数日後。
俺とエリスはダクネスのお見舞いを終らせてウィズさんの店へと続く道を歩いていた。
「それにしても、ダクネスさん。元気そうでなりよりでしたね」
「人類最大の攻撃魔法すら、ご褒美として受け取ってしまうあの変態には驚かされたよ。この世界であいつを屈服させることができる攻撃はないんじゃないか」
さすがにこれにはエリスも苦笑い。
めぐみんの爆裂魔法を受けて、数ヶ所の骨折だけで済ませてしまうことになんて、普通では考えられない。
まぁ、その変わりに防具はガラクタになったのだが、後に国から一級の防具を贈呈されたらしい。
とりあえず、大事にならなかっただけましかな。
「そういえば、ゆんゆんさんのことなんですけど」
「ああ、ゆんゆんが俺達のパーティーに入りたいて言ってたことだろ?もちろん俺は賛成だよ。イリスも遊び相手が増えて喜ぶだろうし、魔法使いとしての実力もトップレベル。なんなら、こっちから頭を下げてお願いするよ」
後から聞いた話だが、俺達がダンジョンに入っているとき、バニル人形の大軍がアクア目掛けて攻撃を開始したらしい。
そのとき、誰よりも速くそのことに気づいて戦いを終らせてくれたのがゆんゆんだったらしい。
あのアクアが人に頭を下げて感謝を伝えているのを見たときはさすがに俺も自分の目がおかしいんじゃないかと疑ってしまった。
「また、賑やかになりますね」
「そうだな」
春の暖かさを運ぶ風が、冷えた手を撫でるように通り抜ける。
もうすぐ、この世界で始めての春か。
そんなことを頭の片隅で考えていると、ウィズさんの店の扉の前までついていた。
俺は今月分の聖水が入った箱を取りだし扉を開ける。
「いらっしゃいませ!」
いつも通りの、のんびりとした声で迎えてくれるウィズさんを見て、あることを思い出す。
「働けば働くほど貧乏になるという、不思議な固有スキルを持つ、ポンコツ店主に用があってここにいるのだ」
そういえば、バニルはウィズさんに用があるって言ってたよな。
持ってきた箱の中身を確認するウィズさんを見る。
「私の顔に何かついていたりしますか?」
不思議そうな顔で俺を見るので、何となくと話を反らしてカウンターを見る。。
すると、カウンターには高身長で、タキシードにエプロンを身に付けた男性が立っていた。
「へい、らっしゃい!自ら修羅場を作っていく坊主よ。親切な我輩から一つの忠告をしよう。汝、軽はずみな行動は控えよ」
なんとそこには爆裂魔法で己の願望を叶え消えてった大悪魔が口元を歪めていた。
「なんで!お前生きてるんだよ!」
バニルの台詞て難しいですよね。(汗
バニルの詳しい破滅願望とかは文章を減らすために省いたんですけど、この有り様です。
それと、ゆんゆんが仲間になった話をいれたかったんですけど、気づいたら入れるスペースがなくなってたんで、最後に軽くいれかせてもらいました。
今回のエリスの使用スキルですが、お気づきの方も多いと思いますが、パズドラのアテナのスキルです。(自分はパズドラだとアテナがめっちゃ好きです)
詳しい解説は2章が終わった後のキャラクター説明で書きたいと思います。
感想、アドバイス、よろしくお願いします。