この素晴らしい仲間達に救済を!   作:よっひ。〜

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今回は少し長いです。
視点の移り変わりが多いですが、区切りをつけてあるのでそれを目印にしてください。
それでは本編をどうぞ!


第19話 覚悟

 

 

 

 

 カズマ達がアルカンレティアへ、出発してから四日がたった。

そろそろついて観光でもしている頃だろう。

そんなことを考えながら、昼過ぎの時間を主人のいない魔道具店で過ごす。

 

「なんでこんな所にライターが?」

 

 机のはしっこに置いてあったライターを拾い上げる。

この世界には無い物のはずだが?

 

「それは小僧が作った物だ。お主には話しておらんかったが、我輩は小僧とも商売の話をしてな。お主から譲り受けた特許だけではやっていけぬと思い、小僧の知識を買い取ったのだ」

 

「カズマの知識をか。それはいい判断だとは思うが……」

 

 ファンタジーな世界に現代技術が入るのは、なんかやだな。

片付けを一段落終えたバニルは机の上に用意しておいた紅茶をすする。

 

「それにしてもだ。まさか、発光シスターとこじらせ魔法使いを口説くとは、なかなかの命知らずであるな」

 

「ぶは!」

 

 突然の不意打ちに勢いよく紅茶を吐き出す。

その様を見て、バニルは口元を歪めながら言う。

 

「落ち着いて周りを見ろ。まさに自分を見ろと言ってる物ではないか。それに夕日の川沿いなんかで抱きついてたら、誰もが注目するに決まってるであろう。今頃街の恵まれぬ男達は血なまこになって貴様の暗殺計画を立てているだろうな」

 

「おい!また、勝手に覗きやがったな!」

 

「何を言う。たまたま、近場を歩いていたら、偶然見てしまっただけだ。そんなに、見られたくなければ、自室でやっていればいい。」

 

 にやにやと笑うバニル。

こいつ!俺の男心を遊びやがって!

 

「あのな。別に口説いてなんかいない。ゆんゆんに言ったことはな、身近に自分の事を思ってくれてる人がいるって伝えたかっただけだ。エリスの件は……」

 

 怯えてるエリスに寄り添いたかった。

ただそれだけなんだが……。どうして、抱きついたりしたんだろう?

 

「ハッハッハ。そんなに、必死に弁解しなくていい。我輩がわかっていないと思ったか?」

 

「なら、茶化すな!」

 

「こんなに面白いネタを使わぬ者が何処にいる?貴様の悪感情なかなかの味だったぞ。」

 

 満足そうに笑うバニルを見て、こいつはそういうやつだったと思い出す。

ちくせう!

 

「もう、帰る!」

 

「フハハハハ!またのご来店待っているぞ!」

 

 席を立ち、勢いよくドアを開けて店を出る。

外まで響くバニルの笑い声。

相当面白かったのだろう。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 街のメインストリートの外れにあるエリス教の教会。

その会議室の中は、じめじめとした熱気と緊張感に覆われていた。

 

「国からの援助金の打ち切りが、朝の通達により決定しました。」

 

 司祭の言葉に誰もが耳を疑い、不満の声を上げる。

 

「それは酷すぎませんか?こっちは国の問題を解決しようと動いているのに!」

 

「そうだ!ただですら、その援助金が足りないからなけなしの生活費をはたいてるんだ!」

 

「噂だと、王女が逃げたとか」

 

「それ聞いたことあるぞ。王女の捜索に多額の金を使ってるとか」

 

 会議室のすみから、隅までに響きわたる批判と陰口。

信者達がこんなにも苦労しているのに、私はいったい何をしているのだろう。

止まることのない国への不満。

それは、突然の扉の音で止む。

 

「大変です!施設の孤児達が盗みを働いたと、領主殿が訴えにきて」

 

 入ってきた信者の言葉にその場の誰もが立ち上がり外へ出る。

強い力を感じる。これは悪魔!?

 

「貴様が司祭か」

 

「その通りでごさまいます」

 

 騎士の問いかけに司祭が応じる。

周りを見渡せば、10人近くの騎士と数週間前に裁判で打ち負かした領主、アルダープがいた。

 

「貴様らエリス教団の管理する施設の孤児達が、先程、領主様への恐喝、窃盗を働いた」

 

「いえ、それは何かの間違えでございます。この時間子供達は施設で学問をさせておりまして」

 

「間違いのはずがなかろう!」

 

「おい、待て」

 

 声をあらげる騎士を下がらせ、前に出るアルダープ。

その背後から禍々しい物を感じる。

 

「領主様」

 

「確かにわしを襲ったのは貴様らの所の孤児達だった」

 

「ですから、そんなはずないと……」

 

「だった。わしを襲ったのは貴様らの孤児達なのだよ。」

 

 アルダープは物凄い圧力をかける。

その時だった。背中に寒さが走る。

何かがネジ曲がった感触。

 

「大変、ご無礼なことを。申し訳ございません」

 

 頭を下げる司祭。

え?子供達はこの時間には外には出ていない。そうだった、はずでは?

なんで、頭を下げてるのです?

 

「分かればいい。……ただ、簡単には終らす事はできぬ。わしの顔に泥を塗った始末。どう責任を取るか?」

 

 辺りを見回すアルダープ。

すると、最近入ったばかりの女の子を指差す。

 

「お主。ついてこい。」

 

「え」

 

 おどおどとする信者を囲む騎士達。

噂を聞く限り、一度連れてかれると、もう帰ることはできないらしい。

アルダープの顔をみると、その顔は、己の欲望をにじませ、女を道具にしか見てない卑猥な目でいた。

ただでさえ、私は信者達の手助けができていないのだ。

こんなときにどうにかしないでどうする。

 

「お待ちください!」

 

 私の声に顔を向けるアルダープ。

その顔はさっきより酷く歪んでいる。

 

「連れていくなら、私を連れて行ってください」

 

「エリスさん……」

 

「エリスさん、何を言ってるのですか!あなたが連れていかれては……」

 

「よかろう。おい、連れていけ」

 

 私の身を案じる信者達を押し退けて、連れていくアルダープの騎士達。

これしかないんだ。私にできることは……。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 魔道具店を飛び出して、街をほっつき歩いていた俺は、自分が夕飯の当番だったことを思いだし、買い物をしてから家に帰った。

誰もいない家の中は静かな物で、初めて一人で留守番したときの寂しさを思い出させた。

それからしばらくして、夕飯の仕度を終え、エリスが帰って来るのを待っていた時だった。

強く扉を叩く音が響く。

鍵なんか閉めた覚えはないが、まぁ、出迎えるのが筋だろう。

玄関まで小走りで行き、扉を開ける。

 

「おかえり。それにしても遅かった……!?」

 

 扉を開けて前に立っていたのは、息を荒くした若いエリス教徒だった。

 

「どうしたんです?エリスはまだ帰ってきてないけど」

 

「大変なんです!エリスさんが領主殿に連れていかれて!」

 

 エリス教徒の言葉に、俺はいつしか我を忘れて走り出していた。

エリスが連れて行かれた!?

なんで?

この前の裁判の仕返し?

混乱する頭の中。

領主の屋敷の場所すら分からないのに、無我夢中走り回る。

それからしばらくして、目の前に魔道具店の看板が写る。

バニルだ。

こういうときはバニルに頼るしかない。

テンパっているため荒く店の扉を開いてしまう。

 

「らっしゃい。お、これはこれは、我輩のからかいから逃げ出した坊主ではないか。そんなに息を荒げてどうしたのだ?」

 

 昼間の続きをしようとからかうバニル。

そんなことに付き合っている場合ではない。

俺は真剣な顔でバニルに言う。

 

「エリスが領主に連れて行かれたんだ!頼む。力を貸してくれ!」

 

 俺の必死さにまともな表現になるバニル。

 

「ほう。それは大変なことだ。あの発光ゴリラが何をしたかは分からんが、何故我輩を頼る?」

 

 その問いかけに、答えを浮かべる。

領主の場所がわからない。

たどり着いても、警備の騎士を相手できない。

考えれば考えるほど答えは浮かんでくる。

 

「場所がわからない。騎士を相手できない。だいたいの理由はそんなところか。だが、解決手段はあるはずだ。場所が分からないのになら聞けばいい。騎士の相手ができないなら、魔法で躱していけばいい。なあに、単純な答えだ。それなのに何故我輩に頼る?」

 

 俺の思ってたことを全て見抜かれる。

そうだ。確かに答えは簡単だ。

でも、何故バニルを頼ったか。

その答えの解決策は出てこない。

ただ分かることは、俺が無力だからだ。

情報が無い無知。手段を作れない無能。力が無い無力。

結局の所、俺は無力でしかなかった。

それなのに、俺はエリスになんて言っただろう。

 

「『守る』お主はそう言ったな。自分の無力さをよく知ってるお主が、何故言った?……理由はなんであれ守るという言葉は重い。全てを担うということだ。お主にはその覚悟があるのか?」

 

 その言葉に圧倒される。

言葉の重さ。それはきっとバニルも体験したことがあるのだろう。

だが、俺は……。俺はそんなことを気にせず、言ったのだ。

『守る』と。

彼女に救われたから。何も果たせなかった俺を。無意味な努力しか積むことのできなかった俺を。

それでも救ってくれたのだ。

だからあの時俺は。

 

「無力だろうと、覚悟はある。だから、俺に力を貸してくれ!」

 

 それが俺の決めた道。

その言葉に表情を緩めるバニル。

!今笑った?

 

「そうか。なら、我輩と契約しろ。そうすれば、雑魚処理くらいは受け持ってやる。ただし、これは商売の契約とは違う。悪魔の契約だ。当然、破れば死より重いものが貴様には、かせられるだろう。それでも、お主が道を踏み間違えないというのなら、契約しろ」

 

 差し出された手を握る。

すると、魂を縛る感覚が体を襲う。

 

「契約は完了だ。先に街の正門に向かっていろ。後から追いつく。」

 

「わかった!ありがとう」

 

  勢いよく、扉を開けて店を出る。

後戻りはできない。ただ、後悔は無い。

これは俺の決めた道だから。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 開けっ放しの扉を閉める。

本当、若い人間は何故、あんなにも活発的なのだろう?

来ていたエプロンをたたみ、カウンターに置く。

そして店をでようとしたとき、一つの鏡が写る。

 

「何年ぶりだろうな。自分の姿を見るのは」

 

 相変わらずのやつれた姿の自分にやれやれとする。

その時だった。

『バニルさん!私に仲間を救う力をください!』

それは呪いをかけられた仲間を救おうとした魔法使いの姿。

『どうしても助けたいんだ!頼む。悪魔にでも何にでもなる。たがら、俺に力をくれ!』

それは不死の病に侵された幼なじみを救おうと、悪魔にすがった男の姿。

それが、言葉と共に脳裏に流れる。

 

「呆れた物だ。いつの時代も、人間の愚かさは変わらぬようだ」

 

 ついつい嗤ってしまう。

酷い鏡を見せられたものだ。

500年生きた我輩が、10年ぽっちしか生きてない若僧に動かされたのだ。

こんな笑い話が他にあるだろうか。

だが、せっかくその気になったのだ。

ここは一つ大暴れをしてやろう。

 

 




第2章も次回が最後です。
今月は年度の初めということで、投稿ペースが安定しなそう。
とりあえず、毎週投稿できるよう頑張ります。
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