この素晴らしい仲間達に救済を!   作:よっひ。〜

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第20話 この悪徳領主に天罰を!

 

 

 

 家と月の明かりが頼りな街の夜。

都会で見るよりも空の星は綺麗に見えた。

 

「これから戦いというのに、呑気に星を見る暇があるとは」

 

「ああ、ごめん。ついつい綺麗に見えてるから」

 

「まったく、お主をおぶってる我輩の身にもなってくれ」

 

 確かに少し緊張感が足りてなかったな。

顔を叩いて前を見据える。

アレクセイ・バーネス・アルダープ。

この地域の領主にして私利私欲で動いては人々を苦しめる悪の元凶。

誰に聞いても悪い噂ばかりで、あのエリスですら嫌な顔をするレベルだ。

そんな奴と今から戦うも思うと手加減などいならくて逆に気が楽になる。

 

「着いたぞ」

 

 バニルの背中から降りて周りを見回す。

話によるとここは王都の端にあるアルダープの別荘らしい。

デストロイヤーのコロナタイトによって屋敷を爆破されたアルダープは、屋敷の建て直しが終わるまでここに滞在するとのこと。

 

「さぁ、中に入るぞ」

 

「え、このまま入ったらさすがにバレるだろ?」

 

「お主は何を言っている。姿を隠す魔法くらい覚えていよう?」

 

「え?」

 

 

 嘘だろと言う顔で見てくる。

俺は結界魔術と爆裂魔法ぐらいしか覚えていないのだが。

 

「まったく、仕方ない奴だ。《ライト・オブ・リフレクション》」

 

「き、消えた!」

 

「何をしている。さっさと冒険者カードを取り出して取得しろ」

 

「おう。わかった」

 

 取得欄に追加されたライト・オブ・リフレクションを押し、詠唱を唱える。

だが、体が消えてる感じがしない。

 

「あくまでも、相手の視界を誤魔化す魔法だ。自分からは見える」

 

 ほうほう、なるほどね。

歩いてて分かるが、足音などは消えないらしい。

それにしても、目には見えないはずのバニルの場所をしっかりと把握できる。

感じからして契約によって魔力のパスが繋がったからだろうか?

 

「さて、作戦だが。坊主。お主は考えてあるのか?」

 

「そうだな。屋敷の前でお前が暴れるのはどうだ?その隙に俺は屋敷に入ってエリスを助ける」

 

「ほう、それは単純かつ、最適な作戦だな。だが、場所は把握しているのか?」

 

「一応。なんとなくはだけど」  

 

 そう、なんとなくだが分かる。

最近はそれなりの距離にいれば、魔力をたどって行くことができる。

この感覚はバニルの場所が分かるのと同じ原理だと思う。

ただ、一つ謎なのはエリスとはそういう契約的なことはしてないと言うことだ。

 

 

「そうか。……なら大丈夫であろう」

 

 木々をかけ分けて屋敷の近くまでつく。

さぁ、勝負の時だ。

俺に静止を呼び掛けて屋敷の前に出るバニル。

そして、魔法を解いて叫ぶ。

 

「我輩はアクセルの街で道具店を営むバニルである!」

 

 その名乗りに屋敷の中、後ろの道から警備兵が駆けつけ一斉にバニルを囲む。

 

「揃いも揃ってみっともない面をいておるな。そんなお主らにこの、バニルさん特製の化粧水を売ってやろう」

 

 胸ポケットから小瓶を取り出して高らかに上げて、おもっいっきり地面に落とす。

そして、落ちた小瓶から液体が漏れだし、空気に触れた瞬間、煙となって周りを包む。

今だ!

 

 草むらから飛び出して屋敷の中へ入る。

入り口で何人かの警備兵とすれ違ったが、外に集中してくれていたおかげで、こちらの魔法に気づかれずにすんだ。

あとは、魔力をたどってエリスのもとへ行くだけだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー

 

 

 

 重い鎖が腕を固定していて動けない。

あれからどれだけ経ったのだろうか。

領主の警備兵に連れていかれ、気づいたらここにいた。

辺りを見回せば、趣味の悪い拷問道具ばかりで、部屋の中は薄暗い。

きっと、地下にあるのだろうか。

空気は悪くじめじめする。

本当、連れて行かれたのが私でよかった。

こんな場所、普通の人では耐えれない。

奥の入り口から複数の足音が響いてくる。

その音はとても重々しく、不気味な音だった。

 

「これはこれは、よく眠れましたかね?」

 

 目の前の扉を開け入ってくる領主アルダープと謎のフードをきた者。

領主は相変わらずの卑猥な笑みを浮かべて話す。

気分は最悪だが、下手に動いてはいけない。

 

「まったくです。鎖にぶら下がっていたせいで腕は痛し、空気は悪いはで、気分が悪いです」

 

「フハハハハ。それは我慢してもらうしかありませんな。その鎖を解いてしまっては、我々の身が危なくなる」

 

 その言葉を聞いて力をいれるが音一つせず、しっかりと固定されている。

これは神器!?

 

「ご想像の通り。それは神器《天の鎖》。神性を持つものを強く捕縛することのできる鎖ですよエリス様」

 

「な!なんで私の正体を!」

 

「落ち着いてくだされ。私のしもべが見破ってくれたのです。なぁ、マクスウェル」

 

「ヒュー。なんだか眩しいよアルダープ」

 

 領主に話を振られた男はフードを取る。

瞬間、背筋が凍る。

フードの中から出てきた顔は感情の抜けた薄気味悪い表情であり、強力なオーラを感じる。

私はこの男を知っている。 

あの魔道具店の寄生虫ことバニルと同じ、地獄の公爵を冠する悪魔。真実をねじ曲げるもの、マクスウェル。

 

「さすがにエリス様も知っておられましたか。私も最初はただの下級悪魔だと思っていたのですがな。つい最近、侵入してきた盗賊達の撃退に使ったら、これが思いのほか使えまして、本人に聞いてみたら地獄の公爵だとかで」

 

「民を導く者が、悪魔など従えるとは言語道断!それでも人の前にたつ者ですか!」

 

「何を言っておられるのです?別に悪魔を従えてはならないという決まりなどありません。それに貴女方、神が悪魔を目の敵にしているだけでしょ?我々の人間には関係がない。」

 

「つ!」

 

「まぁ、貴方が何を言おうとそんなことはどうでもいい。そんなことより、私は貴方の連れに用があるんです」

 

 私の連れ?

それってユウマさんのこと!?

もしかして、裁判の時のことを、まだ根に持っているのだろうか?

 

「ご察しの通り。あの冒険者にはララティーナの前で散々な目にあわされましたからね。それ相応のお礼を与えようと」

 

「まさか、そのために私をここに!?」

 

「その通り。ここに来たあの冒険者をぼろ雑巾にしたあと、領主暗殺の罪をかけ死刑にして差し上げましょう。」

 

 後ろにひっくり返りそうになるくらい、盛大に笑う領主。

きっと、ユウマさんは私を助けにここへくるだろう。

状況は最悪。イリスさんもゆんゆんさんもいなければ、カズマさんや先輩達もいない。

対して相手は権力の横暴と地獄の公爵、警備兵達がいる。

ユウマさんに勝ち目は無い。

先が真っ暗などうすることもできない状況に絶望しているとき、上の階から声が聞こえた。

 

「侵入者!侵入者だ!」

 

 その言葉に大勢の足音が地響きを鳴らしながら屋敷の外へ出たのがわかる。

来てしまった。

 

「さっそく来たか。おい、マクスウェル!貴様も外へ行って侵入者を捕らえてこい!なに、貴様を見た兵士は殺してよい。そのほうが、奴の刑も重くなるし、いちいち兵達の記憶を消す手間も省ける」

 

「わかったよ、アルダープ」

 

「待ちなさい!そんな、罪の無い兵士達も殺すだなんて、貴方には人の心は無いのですか!」

 

「人の心?はて、そんなものが生きていくのに必要ですかね?」

 

 この領主には血も涙もない。

快楽、欲、プライド。

眼中には常に自分しか写っていない。

悪魔より悪魔のこの世に存在してはいけない生き物だ。

救いようがない。

 

 

「さて、貴方の処遇についてですが。当然こんな所を見られては返すわけにはいきませぬ。……そうだ、わしの妻にでもなってもらいましょう。これもわしの慈悲。あの冒険者を捕らえたら、警察に差し出す前に縛って、目の前で貴方を犯してあげましょう。死ぬ前に仲間の、女神様の淫らな姿を見られてさぞ喜ぶでしょうな。ガハハハハ」

 

 錆び付いた臭いが響く、冷たい部屋の中に領主の声が響く。

上からは爆裂魔法には及ばないが大きな爆発音ともがき苦しく人々の声が僅かに聞こえてくる。

きっと今頃、上は生き地獄になったいるのだろう。

コツコツと足音を鳴らし私の服に手をかける領主。

ごめんなさい、ユウマさん。

私が自分勝手なあまりに……。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー

 

 

 

 中にいた兵は全員外に出たのだろう。

屋敷は不気味な静寂に包まれている。

バニルのおかげで楽に中に入れたが、問題はどう地下へいくのかだ。

あの、領主のことだ。速く助けないとエリスがどうなるかわからない。

その時、通路の角から何かが落ちた音が聞こえた。

まだ、中に兵が残っていたのか、結界から短剣を取り出して構えて覗く。

 

「うわーーー」

 

「え、え。う、うわ!」

 

 

 突然の叫び声に後ろへ腰を抜かす。

い、いてー。いきなり声を出されたら、さすがにびっくりする。寿命が縮まるわ。

 

「あ、あれ?何故、ユウマ君がここに?」

 

「え、バルター?」

 

 立ち上がり俺に手を差し伸ばすバルター。

そうか、バルターはアルダープの息子なんだっけ。

ここに居てもおかしくはないか。

さて、理由をバルターに説明するべきか?

さすがに、自分の父親をどういう人間かは知ってるだろうし、信じてくれそうだが……。

ここは仲間を増やす意味もこめて、理由を話してみるか。

 

 

 

「やっぱりそうでしたか。今日は、多くの兵士を引き連れていたので、どうしたのかと思ってましたが」

 

「多分地下にいると思うんだが、場所がわからなくて」

 

「でしたら、お連れします。これ以上、父の悪行は見逃せません。僕もユウマ君の手助けをします」

 

「ありがとな」

 

 バルターの後についていき、地下への階段へ行く。

それにしてもたくましくなったものだ。

孤児院であった時よりも胸をはって行動してるあたり、あれから彼の中でも何かが変わったのだろう。

 

「ここが地下に繋がる場所です。父には入るなと言われてましたが、状況が状況です。」

 

 本棚の置かれた部屋の真ん中にとってのついた床があった。

一人では重々しく、二人がかりで開けるのがやっとだ。

ギシギシと音を上げ開かれる扉。その先は薄暗くなっている。

 

「行こうか」

 

 カツンカツンと鉄でできた階段を下っていく。

そのなかは鉄の錆びた臭いとじめじめとした空気に包まれていて、気分が悪くなる。

こんな所にエリスは囚われていると思うと無性に殺気が沸いてくる。

周りを見渡すと錆び付いた檻と苔の生えた壁、趣味の悪い拷問道具があちらこちらに散らばっている。

 

「まさか、父にこんな趣味があったとは」

 

「分かるぞバルター。親の性癖を知ったときはなんか気分のが下がるよな」

 

 辺りを見ましてながら、前に進んでいくと一つの扉が目にはいる。

ここだ。

俺はバルターにアイコンタクトを取り短剣を構える。

そして、バルターがおもいっきり扉を開ける。

 

「動くな!」

 

 部屋に乗り込み静止を訴えかける。

そこで目にしたものは、鎖に吊るされたエリスと服に手をかけるアルダープだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー

 

 

 

 

 屋敷の中から出てきた警備兵の数はおおよそ20人近くというところか。

手にもった剣をこちらに向けてくる兵達の足はガタガタと震えている。

坊主ほどではないが、なかなかの悪感情。

次はポンコツ店主の仕入れてきた閃光玉なんかでいくか。

 

「さーさ。お次は使えば周囲の敵を10秒間行動不能にできる閃光玉である。ただし、中の仕組みのせいで強烈な電気を辺りに巻き散らかすらしい」

 

 強烈な光と共に辺りが真っ白になる。

とっさにつけたサングラスのおかげでこちらの視界は守られる。

光が晴れると周りの警備兵はそれぞれ痙攣を起こし倒れている。

これは、返品確定だな。

ふと、強い魔力を感じる。

 

「あれ、外れちゃったか」

 

 先程我輩のいた場所は綺麗なクレーターができていた。

前を見ると見覚えのある者が宙に浮いていた。

 

「ほう、マクスウェルではないか。いきなり、爆発魔法など撃ってきて危ないではないか」

 

「バニル!久しぶりだね。まさか、侵入者がバニルだったとはね。でも、ごめん。アルダープの頼みで僕を見た奴は殺さないといけないんだ」

 

「まさか、ついさっき話していたことをすぐ忘れるお主が、主人の命令を覚えているとは、成長したな」

 

 目の前に浮いていたのは、我輩と同じ公爵を冠する悪魔、真実を曲げるマクスウェル。

ぱっとみ好青年だが、魂の抜けた表情から気味が悪いと言われ人間からは不評な悪魔だが……。

まさか、契約者がいたとはな。

 

「しかたない、坊主との契約だ。マクスウェル、お主を地獄に戻してやる」

 

「ヒュー。その気にならないとね。《ファイヤーボール》!」

 

 マクスウェルから放たれた魔法は中級魔法のファイヤーボール。

燃費がよく、それなりに火力もでるので使用者が多い魔法だ。

だが。

近くに倒れている警備兵から剣を取り、跳ね返す。

所詮は中級魔法。避けるまでもない。

 

「ヒュー《カースド・ライトニング》!」

 

「《固有時間制御・三倍加速》。《七式結界》!」

 

「《マジックキャンセラー》」

 

 さすがは公爵を冠するだけはある。実力は本物か。

それにしても、我輩の固有時間制御についてくるとは面白いものだ。

さて、少し力を出してみるか。

 

「我輩も久々に使う魔法だ。失敗しても笑うなよ?《幻想監獄崩し》(ファンタズム・プリズンブルイク)」

 

 マクスウェルのいる空間をつかみ結界を貼る。

中で魔法を乱発しているが無駄だ。

この結界は使用者の魔力の質で強さが変わる。

そう簡単に割れるわけがない。

掴んだ結界を右手で下へ払う。

すると、結界は圧縮しはじめ、ある程度縮んだところで、爆発する。

結界魔術の中ではトップクラスに当たる高火力魔法。

中級悪魔なら即死レベルなのだが……、どうやらマクスウェルには致命傷にもならないらしい。

 

「驚いたよ、バニル!まさか君がその魔法を使うだなんてね。いや、その魔法を使う以上、虚無の道化師っていうのが正しいよね」

 

 虚無の道化師。

それは確か………、クッ。こんなときに頭痛か……。

脳内を埋め尽くす限りない憎悪の数々。

今まで食べてきた悪感情が一つの記憶を呼び覚ましてくる。

コロセ……、コロセ…。

コロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ………。

その名を呼ぶ者をコロセ。何も守れなかった自分をノロエ。全てを捨てた自分を。無慈悲なこの世界を……。

 

 

「それじゃ、さようならバニル。《爆発魔法》」

 

 月明かりの照らす屋敷の広場を静寂の夜を裂く、乾いた爆発音が響く。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー

 

 

 

 

 

 部屋へ乗り込むと、アルダープがエリスの服を脱がそうとしていた。

 

「く、あの悪魔はすぐに人の命令を忘れるようだな!」

 

「何をやっているのですか!父さん!今すぐエリスさんを解放してください!」

 

「なに、バルター。なぜ貴様がここにいるのだ!」

 

 俺がいることにだけではなくバルターが、いることにも驚くアルダープ。

それにしても、さっきの爆発音といい、外では何が起きているのか。

 

「クソ!バルター、そこにいる侵入者を捕らえろ!」

 

「何を言っているのですか、父さん!ユウマ君は侵入者などではありません。父さんこそエリスさんから鎖をとってください!」

 

「く、不出来な息子め。いいか、そいつは侵入者だ。侵入者は捕らえて牢にぶちこめ。」

 

 アルダープの言葉と共に寒気を感じる。

なんだ、この何かがネジ曲がった感覚は……。

その時だった。後ろから金属の音がする。

これは、剣の音!?

 

「うわ!」

 

 背中を襲う剣を短剣で流す。

何が起きたのか理解できず、前を見ると、その剣の持ち主はバルターだった。

 

「バルター、どうしたんだよ急に!」

 

「侵入者は捕らえる……。」

 

 バルターの様子がおかしい。

どうしたんだよ。

何が起きているのか俺には理解できない。

寒気とともにバルターがいきなり剣で振ってくるなんて、なんなんだよ。

 

「何を払われておる。それでも、わしの息子か!これ以上わしに泥を塗る出ない!」

 

 次から次へと速い剣撃がせまってくる。

デュラハンの攻撃と比べれば優しいものだが、強化を受けていない今の状況では払うのがいっぱいいっぱいだ。

どうすればいい。

バルターを傷つけることなく、この場を終わらすには。

休む暇もなく襲ってくる剣撃。

その一つ一つが規則正しく、型にはまった動きだ。

……型にはまった動き。

そうか!型にはまってるなら、その動きを崩せばいいのか!

今の俺の状況はアルダープに背を向けている状態だ。

なら。

 

「全剣連続射出!」

 

 無防備なアルダープを狙えばバルターは助けに行くはずだ。

そして狙い通り、バルターはアルダープに放った短剣を全て払う。

 

「うおーーーー!!《固有時間制御・三倍加速》!」

 

 バルターが最後の一本を払った瞬間。

その瞬間に背後を取り、手元の短剣の柄頭で脊髄に軽い打撃をくわえる。

そして、その勢いで回転し、結界から短剣をもう一つ取りだす。

 

「アルダープ!!」

 

 怒りの一撃。

民を苦しめ、バルターを操り、そしてエリスに手を出したアルダープへの全ての感情をこの一撃に。

アルダープがとっさに取り出した石のような物をもった右手を短剣二本で砕く。

 

「や、止めてくれ。金ならいくらでもだそう。そうだ、なんならわしの持っている神器を全てやろう。だから命だけは…。うぐッ」

 

 尻餅をついたアルダープの右足のふくらはぎに短剣を打ち込む。

勢いよく、噴水のように飛び散る血液。

こんな、外道でも血は赤いのか。

 

「何が命だけはだ。てめーは何をしたのか理解できてないようだな。……いや、理解なんかしなくていい。とにかく死ね。苦しめてきた民に、バルターにエリスに悔いながら死ね!」

 

 左手に残った短剣を向ける。

エリスが時間をかけて術をかけてくれた短剣を、こんな奴の池で汚すのはしゃくに触るが。

今はこれしか残ってない。

消えろクズ野郎。

 

「人殺しは駄目です!」

 

 短剣を投げようとした瞬間、エリスの言葉に動きを止める。

アルダープは死ぬと思ったのか失神して気を失っている。

 

「駄目です。こんなクズの為に、ユウマさんが手を汚す必要はないんです。」

 

 アルダープが気を失ったことにより鎖はほどけ、エリスは両手を地面につけて泣いていた。 

正直、俺はこいつを殺したくてたまらない。

だが、俺がここでこいつを殺せば、汚れた手でエリスを守っていくことになる。

俺はそれでも構わないが、エリスは悲しむだろう。

 

「え、何を……」

 

 俺は力いっぱい、自分の頬を殴る。

 

「ごめん。エリスを泣かせちゃって」

 

 エリスの手を引っ張り、立ち上がらせる。

そうだ、俺のことを大切に思ってくれてる人がいるんだ。

日本では気づくことができなかったけど、今は気づくことができた。

もう、この人達を悲しませないために……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー

 

 

 

 砂ぼこりが晴れ、前を見るとそのには仮面の悪魔の姿はない。

消滅したのかと悪魔は安堵する。

ーーが。

 

「解除……」

 

 悪魔の背後で、消滅したはずの男の声が聞こえた。

 

「な、バニル!?どうして……」

 

 消滅したはずじゃ。

そうこの悪魔はほざこうとしたのだろう。

ふざけるな。我輩は500年生きた悪魔だ。

爆裂魔法ならおろか、その劣化版ごときで消滅するわけがなかろう。

 

「《爆発魔法》!《爆発魔法》!」

 

 何を血迷ったのか、この悪魔は爆発魔法を乱発してくる。

まったく。それが仮にも公爵を冠する者のとる行動か。

 

「《時止め》」

 

 我輩を中心に時が止まっていく。

この魔法を使うと地獄からの魔力供給が止まるだけではなく、現実世界に干渉することができなくなるため、ただの回避用にしかならぬのだが……。

仕方がない。

これも、こやつが望んだことなのだから。

 

「解除」

 

 時は動き始め我輩のいた所にクレーターができる。

そうだ、その表情。絶望に震えたその感情は、実に美味である。

 

「私が殺す。私が生かす。私が傷つけ私が癒す。我が手を逃れうる者は一人もいない」

 

「ヒュー。バニル、何をしようしてるのさ」

 

「許しには報復を、信頼には裏切りを、希望には絶望を、光あるものには闇を、生あるものには暗い死を、休息は私の手に」

 

「ごめん!謝るから、あの言葉は取り消すだからさバニル!」

 

「永遠の命は、死の中でこそ与えられる。許しはここに。受肉した私が誓う。……マクスウェルよ。この詠唱を知っているか?これはとある世界の組織が使う洗礼詠唱だ。本来はその組織しか使えない奇跡なのだが、ちょっとしたずるをして所得したのだ。」

 

「え?」

 

「我輩は基本、怒りに身を任せることはしないようにしている。……が。一つだけ例外があってな。俺を虚無の道化師と呼んだ奴は例外なくこの世から消し去ることにしてい!《この魂に憐れみを》!」

 

「うわーーー!熱いよ!熱いよバニル!ねぇ、お願いだよ助けてよ……」

 

 悪魔の言葉は虚しくも灰となった体と共に空へ消えていく。

まったく、学習能力のないやつだ。

いや、そもそも頭がかけているのだから、ないにきまってるか。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー

 

   

 

 それからしばらくして、エリスを落ち着かせた俺は、バルターをおぶり屋敷の外へ出た。

 

「ほう、そちらの仕事は終わったか」

 

「ああ、なんとかな。それにしてもスーツがボロボロだな。」

 

「なあに、契約通り雑魚を片付けたまでだ。とくに問題はない。」

 

「ちょっと待ってください!ユウマさん、こんな虫けらと契約したんですか!?」

 

「これには事情があってな……」

 

「そう嫌悪するな、間抜けな女神よ。坊主は貴様を助けようと手を打ったのだ。責めるでない。……それにしても、無様に縛られている姿、大変お似合いであったぞ。それに、眠り粉ごときで眠らされるとは、間抜けにもほどがあろう。フハハハハ!」

 

 こうして、いつも通りの喧嘩が始まる。

夜なのに賑やかなことですね、まったく。

 

「ええい、静まれ!ここは王都であるぞ!魔法の使用は禁じられている!」

 

 気がつくと、門のほうから重装備の騎士達が整列してこちらの前に立っていた。

多分王都の騎士だろうか。

 

「まぁまぁ、彼らはアルダープの悪事を暴いた者たちだ。そう怒鳴り散らすのは止めないか。」

 

 騎士たちの間を割って金髪で髭を生やしたおじさんが現れる。

アルダープと比べて、痩せており、優しそうな顔立ちだ。

 

「あの、すいません。どちら様でしょうか?」

 

「無礼者!このお方はこの王都を納める王家の懐刀。ダスティネス・フォード・イグニス様であるぞ!」

 

 ダクティネスどこかで聞いた名前だ。

確か……。

あ、確かあのドMの名前だった気が!

 

「ダクネスのお父さん!?」

 

「ホッホッホ。娘を知っているのか。確か今娘は仲間と湯治に行っていると聞く。もしかして君はクドウユウマ君かね?」

 

「あ、はい。アクセルの街で冒険者をやっているクドウユウマというものです。」

 

「そう、固くならなくていいのだよ。そうか、娘はいい友達を持ったものだ。安心してくれたまえ、アルダープは私がしっかりと法で裁く。」

 

「はい。お願いします。」

 

 ダクティネスさんの笑顔で差し出してきた手を握る。

この人になら任せられる。

しばらくして、屋敷から縛られて騎士たちに連行されるアルダープが出てくる。

因果応報だ。せめて、冷たい牢屋の中で、苦しんでいればいい。

 

「それにしても、もう今日は遅い。どうかね、私の屋敷に止まってはいかないかな?そちらのお嬢さんも大変疲れている様子だ」

 

「紳士的対応、感謝します。お言葉に甘えさせていただきます。」

 

 

 

 その晩はダクティネスさんの屋敷で休ませてもらうことになった。

ーーのだが、バニルと同じ部屋になったため、その晩は散々とエリスのことでからかわれて眠ることができなかった。

なにやら、悪魔は眠る必要がないようだとかで、本当迷惑なことだ。

 

 

 

 

 




これにて、第2章は終わりです。
今回も、視点変更が多くて正直読みにくかったと思います。すいません。
次回からは第3章ですが、一回キャラ紹介を挟むので、投稿は4月の最後になるかなと思います。
それではまた次回もよろしくお願いします。
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