まばゆい光に包まれ目を覚ますと、アクセルの街とは少し違った造りの建物と奥にそびえる山が目に入った。
「ここが水の都アルカンレティアか。思ってたのとは違うけど、気候もちょうどよくていい場所だな」
「おい、ユウマ。気は抜かないほうがいいぞ。何をされるかわからないからな」
険しく、疲れた顔で言ってくるカズマ。
一体どんな目にあったんだ?
「ちょっとカズマさん!私の可愛い信者達を犯罪者みたいに言わないで!ほら、謝って!」
「犯罪者と大差ないだろ。聞けば最高司祭は警察の取り調べ中らしいし」
カズマの言葉にプンスカ怒っていたアクアの勢いが無くなっていく。
「カズマさん。先輩をそんなに責めないでください。別に先輩は」
「いや、言わせてもらうが、100%こいつが悪いぞ。なんだあの教義は!どれもダメ人間の思想じゃないか!あんな教義だからこんな犯罪者集団ができたんだ!」
ものすごい剣幕におされて、アクアは決壊直前のダムみたいな状況になっている。
「まぁまぁ、それくらいにしてやれよ。流石に言い過ぎだぞ」
「こいつには言い過ぎくらいがいいんだ。ここまでしても、すぐに厄介事ばかり押し付けてくるだからな」
「イッタ」
プルプルと震えながら声にならない声をアクアはもらす。
そして、ついに限界を迎えたのか鳴き始める。
「言った!カズマが言っちゃいけないこと言った!うわーーー!!」
「うわ!先輩止めてください!何も入ってませんから!胸の中には何も入ってませんから!引っ張らないで!」
「泣くな!お前、前に何をやったのか忘れたのか!騒いだらいろいろめんどくさくなるんだよ!」
今の状況を一言で現すならまさに地獄絵図と言うものだ。
真昼の街の道路の真ん中で、駄々をこねるように泣き騒ぐアクアと八つ当たりをくらうエリスに、怒鳴り散らすカズマ。
そして、騒動を止めようと遠くからかけてくるポリスメン。
このままじゃ紅魔の里に行くどころじゃなくなる。
とりあえず、何とかしないと。
「ダクネス、めぐみん!お前達はアクアを!イリス、ゆんゆんはカズマを連れてけ!集合場所は紅魔の里に通じる街道だ!」
メンバーに指示し、アクアからエリスを放しそのまま突っ走る。
今はバラバラに逃げるのが一番だろう。
それから、通り行く人達を交わしながら、無我夢中に走った。
「ここまで来たら大丈夫だろ」
後ろを見るが警察らしき人達はいない。
なんとか俺達は逃げ切ることができた。
それにしても、この世界の警察を甘くみすぎていた。
基本的な警察の仕事は騎士が受け持ってるイメージで、警察は一般人と大差ないと思っていたが、まさか俺に追い付こうとしてくるとは。
なかなか驚いた。
「それにしても、皆さん大丈夫でしょうか。大急ぎで逃げたんで迷子になってないといいのですが」
「それなら大丈夫だと思うぞ。カズマは紅魔の里までの地図を持ってるし、アクアはここの教団の女神なんだし場所ぐらいは把握してると思う……」
突然言葉が止まる。
いや、正確には出せなくなったというべきか。
それなりのペースで走って疲れたのか、汗をかいてるエリス。
その汗は引っ張られたせいで、みえみえとなった胸元の谷間を流れていく。
「どうかしましたか?」
「あ、ああ。なんでもない!なんでもない!」
エリスの言葉で我に帰る。
発達途上の小さな胸がとても魅力的で見入ってしまった。
んーエロい。
「とりあえず、はい。そのかっこはいろいろ危ないから」
「え、あ!」
俺に言われて、やっと気づいたのか赤面しながらローブを受けとる。
この表情といいさっきのといい、アクアありがとう。
「よ、よし。そろそろ合流しに行こうか。あいつらが向かった方向からすると、もうついてる頃合いだし」
「そうですね。待たせるのは悪いですもんね」
「……ごちです」
「え、今、何かいいました?」
「い、いや」
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アルカンレティアの街を出て森へつながる舗装された街道を歩く。
ここが集合場所なんだが、まだ誰も来ていない。
「いませんね」
「うん。いないね」
あれから何十分経ったのか。
ベンチで座りながら、水筒のお茶を飲み空を眺める。
空はそれはもう綺麗に晴れていて、風に吹かれた木々の音が耳に入ってくる。
ーーが、けして人の足音などは聞こえてない。
「おかしいな。確かに紅魔の里に通じる街道はここしかないはずなんだけどねー」
地図を見直すが確かに、里につながる道はここしかない。
なのに誰一人としてこない。
置いてかれたということは無いだろう。
もしかしたら、森の中へと逃げたのか?
里までの道を知ってるめぐみんとゆんゆんをそれぞれ分けたから森の中へ入っても迷子になるわけがないだろう。
だが、冷静な判断ができるダクネスとイリスがいるため、何がなんでも集合場所には来てくれるはずだ。
そうなると、
「もしかしたら、まだ街の中にいるかもしれませんね」
そうだ。
泣いてるアクアと爆発しているカズマを落ち着かせることはあのメンバーじゃ無理だ。
俺が思うにアクアを泣き止ませられるのは長い付き合いのエリスくらいだろうし、ゆんゆんとイリスは人を落ち着かせることは向いてない。
とっさの判断にしては完璧だったと思ったが、思わぬ落とし穴があったとは。
「でも、ここから離れるのは行き違いになったりすると、怖いんだよなー!こういう時に携帯があれば!」
こういうときに文明のすごさには気づかされる。
あーどうする。どうすればいい?
ーーと、そのときだった。
街の方から一つ足音が聞こえてくる。
街道なんだから別に人がきてもおかしくないが、ついつい見てしまう。
かっこは典型的なシスター服で、綺麗な金髪の女性だ。
そして巨乳!
「何を、鼻を伸ばしてるんですか」
「え!?いや伸ばしてないから!」
「ふーん。そうですか」
ジーと見てくるエリス。
やばい、またご機嫌を損ねてしまった。
何とかしないと俺の立場が。
ーーと、そのとき。
いきなり大きな音をたてて巨乳シスターさんがぶっ倒れる。
「あ!大丈夫っすか?」
ベンチから立ち上がり、シスターさんの所へ駆けつける。
「大丈夫ですか?」
「お腹が……減って……」
なんとか上げた顔も言葉にするので力尽きたのか倒れる。
よくみると痩せ細っていて精気がない。
何故、聖職者が餓死寸前になるまで何も食べてなかったのだろうか。
とりあえず結界から非常食の入ったリュックを取り出す。
「とりあえず、これをどうぞ」
エリスがリュックの中から、手作りの干し肉とところてんスライムを取りだし、シスターさんに渡す。
すると、何日ぶりかの食料に野獣の眼光を光らせ頬張り始める。
それにしても、この世界のスライムは食用にもなるらしいが、基本的にかなり危ない強キャラらしい。
俺の知っている青くてぷにぷにした下級モンスターとは別物だ。
そんなことを考えているうちに、あっという間に食べ終わるシスターさん。
その表情はとても幸せな顔だ。
「ふぅ。ごちそうさま。本当にありがとうございます」
「いえいえ、それほどでも」
「そうですよ。頭をおあげになってください」
「なんて優しい方々で。ああ、アクア様。美男美女に食べ物を食べさせていただき、セシリー感激です」
あれ、今なんて?
「これも、毎日暗黒神エリスの教会に嫌がらせをしている行いのおかげなのね!」
いや、聞き間違えではなかった。
今この人完全に暗黒神て言ったよ。
「あの、暗黒神というのはウグ……」
「え、今何かいいましたか?」
「特に!おきになさらず。そうだ、このパンもどおぞ」
「え、本当に! やっぱり私の目に狂いはなかったわ!ちょっと渋いけど、全然許容内だし。ねぇねぇ、名前はなんて言うの?」
エリスの口元をおさえながらシスターさんにパンを渡すと、なかなかの暴走状態で名前を聞いてくる。
とりあえず、エリスの名前は伏せといた方がいいな。
「俺はユウマっていいます。こっちは相方プリーストのクリスです」
「ユウマ君にクリスちゃんね。私はアクシズ教ナンバー2のセシリー。見た感じ二人とも十代よね。気軽にお姉ちゃんて呼んでね」
「は、はぁ……。」
アクシズ教ナンバー2と名乗ったセシリーさんは、流石はアクアの信者という感じの人だった。
目をハートにしながらハァハァいってるのだが、自分と似た雰囲気を持ってて、辛い。
「それにしても、クリスちゃん、プリーストてことはどこか宗教に入ってるてことよね。」
「一応、エリ、ウグ……」
「実は入ってないんですよ。先輩が、熱心なアクシズ教なため、一緒に修行してたらいつの間にかアクア様の加護がもらえてたらしく。なぁ、クリス?」
「え、あ、はい。そうなんです!」
「そうなんだー。いい先輩を持ったのね。私、多分その先輩と気が合いそうだわ!今度紹介してね」
「ええ、絶対合うと思いますよ!」
だって、あなたの崇拝する女神様だからね。
「それにしても、なんでセシリーさんは餓死寸前だったんすか?」
「え、私?実は最近、エリス教の炊き出しが無くてね。大好きなところてんスライムも没収されてて、食べるものがなかったの。エリス教たら、無い胸を、勝手に捏造する変態集団のくせにケチ臭くて、本当ひどい教団なのよ!本当、崇拝する女神様は偽乳なのに、自分達は巨乳なんて恥ずかしくないのかしら?」
と愚痴をもらすセシリーさん。
それを聞いて俺の後ろで、ぷるぷる震えているエリス。
こりゃ、やばいな。
「それにしても、貴方達ここの街の住人じゃないでしょ?それなのにどうして、こんな危険な場所にいるの?」
おっとナイス質問。
「実は紅魔の里に用があってきたんです。それで今は一緒に行く約束をした仲間を待ってるんです」
「紅魔の里ね。懐かしい子を思い出すわ。今はどうしてるのかしら」
「セシリーさん、紅魔族に知り合いがいるんですか?」
「うん、いるわよ。小さくてツンツンしてるんたけど、すごく愛らしいのよ」
小さくてツンツンとした紅魔族。
あれ、知ってるような、そうでもない気が。
「そうか、紅魔の里に行くのね。できたらお返しがしたかったけど、仲間を待ってるなら仕方ないわね」
俺達二人を見て微笑むセシリーさん。
その姿はとてもシスターらしくて。
「貴方達の旅が良いものになりますように。《プレシング》!」
キラキラとした光が俺達の体をつつむ。
何だろう、特に変わったことはないが、なんだか特別な気分がする。
「それじゃあね!また会いましょうね!」
手を振って街へ帰っていくセシリーさん。
いろいろと大変な人だが、根はいい人だった。
「なんだか、賑やかな人でしたね」
「だな。いい人に会えてよかったよ」
お互い顔を見合わせて笑いあう。
その時、街の方から大勢足音が聞こえてきた。
「ユウマさーん!」
そこには両手を振るイリスとなんだか疲れ気味なゆんゆん、カズマパーティーの姿があった。
見た感じカズマとアクアは仲直りできたようだ。
さーて、やっと紅魔の里へ出発だ。
ギリギリセーフですかね?笑
今回の話、本当はオークやらのモンスターがらみをやるはずだったんですが、突然頭にセシリーがよぎって路線変更しました。
ゼスタさんも出したかったですが、それは次の機会で!