カズマ達と合流してから数分。
生い茂る森の中を鼻歌混じりで歩く。
「それにしても、全くないモンスターが出ませんね」
「ここまで奥にくるとモンスター達が多くいるはずなんですけどね」
杖にくくりつけた荷物を左右に揺らしながらイリスに返答するめぐみん。
それを聞いてゆんゆんが大きな胸を揺らしながら、
めぐみんの方を向いて言う。
「めぐみん、里の手紙しっかり読んでないでしょ?最近、紅魔の里のニー……、働いてない人達を集めて、森の周りのモンスター達を退治してるのよ」
「それは丁寧に説明ありがとうございます。私は手紙しか話す相手のいないゆんゆんとは違って、ここ最近、忙しくて手紙を読んでなかったんです。」
何故、めぐみんはゆんゆんに当たりが強いのだろうか?
痛いところをつかれたゆんゆんは真っ暗な表情で落ち込む。
「くっ、せっかく危険なモンスターが多いと聞いて、防具の装甲を薄くしておいたのに。これでは楽しめないではないか!」
「おーい、メス豚。これから魔王軍の幹部と戦うかもしれないんだから、ちゃんと戻しとけよ」
「断る!」
そこまで自分の性癖を突き通すとは。
もう、呆れも通り越して尊敬ですよ、ダクネスさん。
こんな、変態は良いとして、ゆんゆんのフォローでもしておこう。
「そんなに落ち込むなって。話しなら俺が聞いてやるから」
「ユウマさん」
「ユウマは甘いですね。自分から話しができない子に合わせる必要などないですよ」
「いや、お前はもっと合わせてやれ」
「……本当、口説いてばかりいたら、その首が飛びますよ」
なんだよ、そのうんざりした顔は。
ーーって、こいつ、俺の後ろを見ている?
どうしたんだ?
その時、背中にものすごい寒気が通過する。
「ユウマさん」
「は、はい!!」
後ろを向くと、そこにはすごい笑顔なエリスがタッパーを持って立っていた。
「長く歩いてお疲れでしょうから、ハチミツレモン作ったんで食べますか?」
「へぇ?ハチミツレモン?」
「はい、前にアクア先輩に教えてもらったんです」
おっとこれは予想外だ。
すごーく嫌な感じがしたんだが、その逆、すごーくいい感じがするぞ。
「私も食べたいです!」
「お、なんだなんだ。ハチミツレモンじゃーねーか!」
「ちょっと、エリス。私にもよこしなさいよ」
「大丈夫です。皆さんの分もありますんで」
四方からハチミツの甘さにのせられて寄ってくる仲間達。
この分だと、俺の分は無さそうかな。
「安心してください。ユウマさんの分は個別で用意してあるので」
「え、マジ!」
「はい。是非食べてください」
と笑顔でタッパーを渡される。
「ん、あまーい!」
「なかなかね。このレベルなら、サツキを越えたんじゃないの?ま、私にはまだまだ及ばないけど」
「なんで、お前はそんなに上からなんだよ。……お、うまいな」
タッパーのレモンを突っつきながらがやがやと盛り上がるメンバー。
それじゃ、俺もいただきますか。
めっちゃハチミツがピカピカしてるな、まるで宝石みたいだ。
それではお味わ。
……。……………!
なんだ!?甘味のあとにくる、この鉄の味は。
「どうです?」
「あ、……ああ!めっちゃ美味しいよ!」
「そうですか!実はユウマさんのには少し隠し味をいれといたんです。気に入ってもらってよかったです」
ものすごく上機嫌でパーティーの前を歩いていくエリス。
隠し味ってまさか……。
いや、そんなわけないよな。
色だって普通のより少しキラキラしてるくらいだし。
うん、大丈夫だよな……。
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ーー
それから何時間経ったのだろうか。
鉄の苦味と戦いながらちょっとずつ食べ進めていたが、やっとの思いで食べ終わることができた。
「まさか食べ終わるとは……。」
「……当たり前だろ。せっかく作ってくるたんだ。無駄にはできない……」
俺の肩に荷物をぶつけながら歩いているめぐみんは、少しはやるなという顔で見てくる。
なんだろう、少し腹立たしい。
「お前、俺のこと見下してるだろ」
「いえ、まったく?ただライバルとして少し誇らしく思っただけです」
「そりゃ、どうも。本当、俺は年下によくライバル視されるな~」
このツンデレもうちの小悪魔にしてもそうだが、本当俺はよく競い相手として見られる傾向にある。
まぁ、考えてみれば、爆裂魔法というお株を奪った俺はめぐみんからしてみれば勝たなきゃいけない相手なのはわかる。
ただ、イリスにそういえ目で見られる理由はわからないままだ。
まぁ、別に悪いことではないのでいいのだが。
「そうだ。ユウマには一つ私の故郷の風習を教えてあげます。紅魔の里ではですね、夫の精気を上げるために妻が自分の血を料理にいれることがあるんですよ」
「ぶは!」
おい待て!
今こいつなんて言った?
妻が夫に自分の血の入った料理を食わせるって!?
おい、それって……。
「まぁ、こんなことをするのは紅魔族くらいですよ。ただ、知識として頭の底にでも入れててください」
「だ、だよな。あくまでもお前の一族の風習だよな。ハハハハハ……」
と笑っては見たが本心は全く笑えてないのは言うまでもない。
ま、まぁ、エリスは紅魔族じゃないしな。
その時、前を歩いていたカズマが制止の合図を出してきた。
「モンスターがいるぞ」
「やっとおでましか。カズマ、私の後ろに下がれ。ここは私が先手をかけてくる」
「ちょっと待ってくれ。モンスターって何がいたんだ?」
カズマを後ろに無理矢理どけて、我先にと剣を構えるダクネス。
そのダクネスを止めて、カズマに聞く。
「オークだ」
オーク。
それはRPGゲームをやってた人なら誰でもわかるメジャー的な雑魚モンスターだ。
見た目は豚頭で二足歩行の人型モンスターで、繁殖能力が高くて年中発情している生物だ。
ちなみに薄いブックスでは定番の攻めキャラでもある。
「確かこの辺りて強敵しかいないはずだよな。なんで雑魚敵がいるんだ?」
「俺に聞かれてもわからないけど、殺るしかないだろ」
後ろを振り向きながら言うカズマ。
そう、三大欲求のうち性欲にしか目のないオークがうちのパーティーメンバーを見れば大変なことになる。
運がいいことに敵は一体だ。
見つかって仲間を呼ばれる前に俺達で倒しに行くのがいいだろう。
「ちょ、待て!」
「ダクネス、お前こそ待ってろよ。今はお前の性癖を優先している場合じゃないんだからな!」
ダクネスの後ろから飛び出してオークに向かって一直線に走る、俺とカズマ。
それを見て、後ろであたふたし始める女性陣。
「逃げてください!」
「そうですよ!速くその場から逃げてください!」
必死に呼び掛ける女性陣の血相を抱えた顔に少し疑問をいだく。
普通なら逃げるのはそっちのほうだろ。
とりあえず、この位置まできたら戦うしかないんだし、結界から短剣を取り出す。
すると、後ろの声に気づいたのか、振り返るオーク。
「「え?」」
俺とカズマの声が被る。
振り向いたオークはサンバラな髪をした、そこそこ立派な服とリボンをしていた。
「こんにちは!男前のお兄さん達。あたしといいことにしない?」
「「お断りします」」
その誘いを反射的に断った。
それにしても、なんてことだ。
オークにメスがいたのは予想外だった。
俺とカズマの返答を聞いたオークは、表情を変えることなく言う。
「あら、残念。本当は合意の上でやりたかったんだけど、仕方ないわね。まぁ、私達の縄張りに入った時点で拒否権は無いんだし、強引だけどやらせてもらうわ!」
ニタリと黄色い歯をむき出しにして襲ってくるオーク。
話しができるなら、見過ごそうと思ったが、どうやら無理そうだ。
「手筈通り行くぜカズマ!《三式結界》!」
魔力を込めた短剣を敵の左右の足と地面に刺し、捕縛する。
「《ドレインタッチ》!《ファイヤーボール》!」
行動不能になったオークを掴み、生命力をギリギリまで吸ったところで、とどめをさす。
「お疲れ。それにしても、カズマって本当タイミング掴むのうまいよな」
「これでもまとまりの無いあいつらを指揮してるから。それにしても、……お!見てみろよレベルが3つ上がってる」
「お、マジだ!スゲー!」
と、盛り上がっている俺達のところに女性陣が慌てて駆け寄ってくる。
「何やってるのよ!」
「何やってるって、モンスター退治だけど?なんだよ、その言い方は。今回はメスだったからよかったけどオスだったら、お前達が危なかったんだぞ?」
「あーそうだったわ。カズマもユウマもこの世界の知識がなかったのよね。いい?この世界のオスオークはとっくに全滅してるの。だから襲われるのは男だけ。それに縄張りに入ったならまだしも、倒したとなると、強い遺伝子を求めてるオーク達は血眼になってあんた達を探し回るのよ」
そのアクアの言葉と共に後ろからものすごい足音が聞こえてくる。
振り返ると、そこには文字通り血眼で俺達めがけて走ってくるオークの大軍がいた。
「嘘だろ、おい!」
「やべぇよ……、やべぇよ……」
「私達オークを倒すだなんて貴方達やるわね!気に入ったわ!」
それを言ったのはリーダー格のオークだろう。
そのオークを筆頭に二十匹近くのオーク達が間合いをつめてくる。
流石は優秀な遺伝子を集めてきたオーク達だ。
きっと本気で走っても、逃げ切れないだろう。
覚悟を決めたのか、カズマは涙を流しながら短剣を構える。
そして、見事に捕まった。
一瞬のことだった。
抵抗すらできないまま、持っていたダガーを捨てられ、上にまたがれる。
「カズマ!」
「貴方の相手は私よ!」
カズマのほうへ気を向けていたせいで、振り返った時には時すで遅し。
振るった短剣もむなしくはじかれ、そのまま押し倒される。
「よおーし!すぐ済むからじっとして、目を瞑りな……!」
「うわー、許して!あんたらの仲間を殺したのは謝るから!」
「そんなのどうでもいいわよ!そうだ、せっかくならエロトークしない?ふーっ!ふーっ!」
ものすごい鼻息をあらげるオークの目はまさに野獣の眼光だった。
俺はそんな目から助けを求めるように辺りを見回すが、最悪なことに、ゆんゆんとイリスはオークの大軍と戦っていた。
「ちょ、ちょいまち!そうだ!俺はまだあんたの名前聞いてなかったわ!まずは、自己紹介からで!お、俺は工藤悠真、17歳です!」
「あら、私も17歳なの!名前はエレクトロニックと申します!さぁ、あんたの下半身にも自己紹介してもらおうか!」
「うわああああー!止めて!俺の息子は恥ずかしがりやなんです!助けて!助けてエリス!エリス!」
それはまさに九死に一生という状況だった。
俺の叫びは神様に届いた。
突然軽くなった体を起こして目を開けると、そこには聖槍を持ったエリスが立っていた。
「ユウマさん、大丈夫ですか?」
「え、エリス!うわああああああっ!」
俺は安堵のあまり、エリスの腰に抱きついて泣き叫んだ。
「もう、大丈夫ですから。ユウマさんを救出しました!めぐみんさん!お願いします!」
「ええ、任せてください《エクスプロージョン》!」
ダッシュで戦線を離脱し、俺達のいたところへは破滅の光が落ちる。
「もう、怖くないですよ。」
オーガの縄張りを越えたところで、エリスは俺を優しく頭を撫でてくれる。
こんなに泣いたのはいつぶりだろう、今まで、九死に一生を得る場面はいくつもあったが、こんな怖い思いをしたのは生まれて初めてだ。
本当に怖かった。
「よしよし、怖かったのねカズマ。もう、大丈夫よ。みんなで守ってあげるからね」
俺の隣でアクアに慰めてもらっているカズマ。
きっとカズマもあともう少しの所までやられたのだろう。
わかる、わかるぞ、その気持ち。
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ーー
それからしばらくして、日も暮れて進むことをやめた俺達は街道沿いの地面に、人が六人は川の字で眠れるくらいの大きさの布をひいて寝ることにした。
空に雲がないおかげで、星が綺麗に輝き、それなりに視界は確保できたので火は焚かず、アンデット除けの魔道具の蓋を開け、中央に置いておいた。
「本当に寝ないんですか?明日も少し歩きますし、休んで置かないと辛いですよ」
「ゆんゆんの言う通りだ。流石に一睡もしないのはきついだろ」
「大丈夫だよ。こう見えても俺達の国だと徹夜は当たり前だったからな。なぁ、ユウマ?」
「ああ。まぁ、そのせいでメディアは結構騒いでたけどな」
本当、あの国では徹夜は当たり前で働かされてる人達がたくさんいたからな。
そのせいで、いろいろと大変な問題になったのだが。
「そういえば、カズマ達の住んでいた国はどんなところだったんですか?ユウマならともなく、カズマが徹夜に強いのは少し心外です」
「ユウマさん!お兄さま!是非教えてください!」
めぐみんの言葉で寝ようとしていたイリスは寝場所から飛び出して俺達のところへよってくる。
イリスはこういう話が好きだからなー。
でも流石に、子供を夜遅くまで起きさせるのも駄目だし。
「この話はまた今度な。早く寝ないと成長しないぞ。」
「そうだな、特にめぐみん。お前、ゆんゆん勝ちたいなら早く寝ろよ」
「むむ、私の体に文句があるなら言ってもらおうか!」
「あー、はいはい。いいからそういうの」
早く寝ろと手ではらってイリスとめぐみんを寝床へつかせるカズマ。
まぁ、確かにカズマの言うことはもっともだ。
それから女性陣を寝かせて、非常時に備え短剣を研きながら近くの気に背中を預ける。
「なぁ、ユウマ。」
「ん?」
「魔王を倒したらどうするんだ?」
「え?」
突然のカズマの質問に、頭を悩ます。
そういえば、考えてなかった。
魔王を倒して、エリスを天界に帰す。
それが、俺が魔王を倒す理由だ。
ただ、よく考えてみれば、その後はどうなるんだろう?
エリスを守るとは言ったものの、魔王を倒して天界へ送れば、そのあとは会えるかすら怪しい。
さて、どうなるんだろう。
「んーと。今はなんも考えてないかな。カズマはどうするんだ?」
「俺か?俺もよく考えてない」
「マジか」
「マジだ」
お互い行き当たりばったりな生き方してるなと笑いあう。
多分今はそれでいいのだろう。
魔王を倒してみれば、その答えはいやでもでてくるんだから。
投稿が遅くなったのと、中途半端なところで区切って、すいません。
昨日、突然のfgoのイベントが始まり、そして、いきなりレイドイベと言われて忙しくて、書けませんでした。
そのため、せっかくのゴールデンウィークですが、投稿ペースは上げず平常運行に、なりますので、よろしくお願いします。