「そういえば、紅魔の里にも学校あるんだっけ?」
森の中を歩きながら、ふとそんなことを言ってみる。
「ありますよ。ただ、紅魔の里の学校は普通の学校とは少し違って、魔法を覚えたら卒業なんです」
「へー。魔法を覚えたら卒業かー。じゃあ、ゆんゆんはすぐに卒業したのか?あんなに上級魔法をバンバン打てるんだし」
「えーと、それは……」
もじもじと指を合わせながら頬を赤めるゆんゆん。
そこへ乱暴に杖を振り回しながらめぐみんがやって来て言う。
「私の魔法取得を待ってたですよね」
「っ!!な、何言ってるのよ!そんな訳じゃ……」
「誤魔化しても無駄ですよ。そのためにわざとテストの結果を変動させてたのを私が気づかないとでも?」
「っ……」
顔を真っ赤にさせ押し黙るゆんゆん。
それにしても、友達にここまでするのは流石にやりすぎだと思うが。
「そこまでにしとけよ。流石にかわいそすぎる。そんなことばっかりしてると友達無くすぞ」
「別に結構。私には爆裂魔法だけで十分です」
「あーはいはい。そうだな。ほら、ゆんゆん、元気出せって」
めぐみんを適当にあしらい、恥ずかしさで戦闘不能なゆんゆんのフォローに回る。
そのとき、先頭を歩いていたカズマが動きをとめる。
「敵感知スキルにかかった。数は……20!?」
場が緊迫とした空気になる。
この数の多さ、多分魔王軍のしたっぱだろう。
紅魔の里から近いのだし、魔王軍がうろちょろしててもおかしくない。
身をかがめ気づかれないよう、敵のいう茂みへ近寄る。
その先には……。
「プークスクス!何よ。ただの悪魔モドキじゃない!あんなのに真剣になっちゃうなんて。ほら、とっとと行きましょ。あんなのに構ってたら時間の無駄よ」
「おい!こんなところに人がいるぞ!」
「おい馬鹿!お前って奴はなんでいつもめんどうなことをしないと気がすまないんだ!」
そんなカズマのツッコミもむなしく、気がつけば周りを囲まれていた。
「ん?紅魔族の子供がいるぞ!今かチャンスだ、大手柄だっ!」
一匹の鎧を着たモンスターが叫ぶ。
見た目は、耳の尖った、赤黒い肌のスリムな体で、額には一本の角を生やしている。
日本では餓鬼。一般的なRPGではゴブリンといわれるものだ。
「散々煮え湯を飲まされてる紅魔族の子供が二匹だ。日頃の恨みを晴らせてやる!おい、八つ裂きにしちまえ!」
その掛け声で後ろからさらに三十は越える同じ姿の援軍がやってくる。
さすがに、数が多すぎる!
「《エクスプロージョン》!」
突然放たれた爆裂魔法により、援軍として現れたモンスター達は塵一つ残すことなく吹き飛び、巨大なクレーターだけが、そこに残る。
「どうでしょうか、我が究極奥義爆裂魔法の威力は!どうですかカズマ、今の爆裂魔法は何点ですか!?」
「この馬鹿が!0点だ!0点!敵がまだいるのに、開幕そうそう魔力を切らす馬鹿がどこにいるんだ!」
「ああ、どうしようカズマ!今の音を聞いて新手がきたぞ!このまま数で押しきられ、捕らえられたらどうなるのだろうか!」
状況はまさにカオス!
四方八方から敵が現れ、逃げようにも逃げ道がない。
イリスやゆんゆん、エリスはそれぞれ、数を減らそうと必死に武器を振るうが、増えてく一方でまったく進まない。
ーーと、その時だった。
必死の血相でこちらに向かって来る新手の魔法軍の手先たち。
それらは武器をもっておらず、何かから逃げるように必死にこちらへ向かって駆けて来ていた。
どうしたのだろうか?
そんな疑問もすぐに解ける。
突如として、何もない空間から黒い格好をした四人組の集団が現れた。
その四人組は格好はばらばらで、持ってる武器も統一性はなかったが、一つだけ、共通しているところがあった。
それは、彼らがゆんゆんやめぐみんと同じ紅いの瞳を持っているということ。
そう、彼らは紅魔族だ。
ウィズさんとの修行により、魔力の気配を感じとることができるようになった俺にはわかる。
ウィズさんの魔力には届きそうではないが、それでも、俺やアクセル街で見てきた魔法使い達とでは比べ物にならないほどの魔力が溢れだしている。
思わぬ大物の登場に動揺し、逃げ始める魔王軍のしたっぱ達。
その瞬間。
「肉片も残らず消え去るがいい!我が心の深淵より生まれる、闇の炎によって!」
「この俺の破壊衝動を鎮めるための贄となれええー!」
「さぁ、永々に眠るがいい……。我が氷の腕に抱かれて!」
「お逝きなさい。あなた達のことは忘れないわ。そう、永遠に刻まれるの……。この私の魂の記憶に……」
それは、決め台詞だろうか?
それぞれ、格好いい言葉を言ったあと、身体強化によって強化したであろう足で、あっという間に魔法の手先に追い付く。
そして、全員まったく同じ魔法の詠唱を始め。
「《ライト・オブ・セイバー》!」
光輝く手刀で、魔王軍のしたっぱ達を一掃していく。
「す、すごい……!」
二十以上はいたであろうしたっぱ達は、無惨な残骸として、辺りに散らばっている。
……と、俺が感心していると、一人の紅魔族がこちらに視線、近づいてくる。
「お、久しぶりじゃないか!めぐみんにゆんゆん。こんなところで何をしてるんだい?」
さっきまでの厨二くさい口調はどこかえ消え、普通の口調で気さくに話かけてきた。
「これはこれは、靴屋のせがれのぶっころりーじゃないですか。お久しぶりです。里のピンチと聞いて、駆けつけたのですよ」
めぐみんの言葉に首をかしげるぶっころりーは、何やら俺達の方を見て
「ところで、めぐみんにゆんゆん。こちらの人達は君達の冒険仲間かい?」
と尋ねてくる。
それにたいし、めぐみんは少しはにかみながらコクリと頷き、ゆんゆんはそれはもう嬉しそうに頷いた。
それを見て、ぶっころりーは真剣な表情で、ローブをバサッと翻し。
「我が名はぶっころりー。紅魔族随一の靴屋のせがれ。アークウィザードにして、上級魔法を操る者……!」
と、紅魔族の伝統?的な挨拶を始める。
ここは俺も載ってみようかな。
「我が名はユウマ。最近アークウィザードになったもので、結界魔法を操る者……!」
と、左手を握りしめ、右手を左上に上げてヒーローポーズで挨拶をしてみる。
「我が名はカズマと申します。数多のスキルを駆使し魔王の幹部と渡りあった者です。どうぞよろしく」
俺に続いて軽く挨拶をするカズマ。
その様子を見て紅魔族の人達は、
「「「「おおおおー!」」」」
と驚きの声を上げた。
「素晴らしい!まさか、俺達の名乗りを見て、微妙な反応をすることなく、返してくれるなんて!二人ともいい仲間をもったね!そうだ、ここからだと里まではまだ距離がある。テレポートで送ってあげよう!」
ぶっころりーはそう言うと、テレポートを唱える。
光につつまれ気がつくと、ほのぼのとした小さな集落が視界に映った。
呆然と里を眺める俺達の前に、ぶっころりーは笑顔を見せる。
「外の人達。ようこそ、紅魔の里へ!」
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ーー
紅魔の里。
人工はおよそ三百ほどの小さな集落。
住む人々すべてが、上級職のアークウィザードという、まさに才能の暴力という言葉が合う。
近くには魔王の城があり、人類の最前線だ。
とまぁ、里の入り口で配っていた「紅魔の里不滅目録」を読みながらゆんゆんのお父さん、族長の住む家に向かっている。
「おい、ユウマ!これ」
「ん?お!これは!」
カズマの指差すマップの場所には、大衆浴場「混浴温泉とかかれていた。
「どうする?」
「どうするも何も。行くしかねーだろ!」
「だな!」
「なーにを喜んでるのですか。ゆんゆんの家に着きましたよ」
ガイドブックから目を離し、前を見る。
そこにはカズマの屋敷ほどではないが、とても大きく立派な家があった。
「すげー。周りの家とは一線を越えてるというか、さすが族長の家って感じだな」
「里の集会所としても扱ってるんです。それでは、私は先にお父さんの所へ行ってきますね」
しばらくして、なかなか豪華な応接間に通された。
テーブルを挟んでソファーに座る中年の男性。
この人が、紅魔族の族長、ゆんゆんのお父さんだ。
「いやー、俺はただの、娘に充てた近況報告の手紙だよ。手紙を書いてる間に乗ってきてしまってな。紅魔族長の血が、どうしても普通の手紙を書かせてくれなくて……」
「あの、すいません。何を言ってるのか少し理解が追い付かなくて」
俺の隣で唖然としているゆんゆん。
「……えっ?お父さん?お父さんが無事だったのは嬉しいんだけど……。もう一度説明してくれない?まず、手紙の最初に書いてあった、『この手紙が届く頃には、きっと私はこの世にいないだろ』っていうのは」
「あれか?あれは紅魔族の時候の挨拶じゃないか。あ、そうか。お前とめぐみんは優秀だったから先に卒業して習わなかったか」
「……じゃあ、魔王軍の軍事基地を破壊することができないていうのは」
「ああ、連中がなかなか立派な基地をつくってな。破壊するか、観光名所にするか意見が割れてるんだよ」
「……」
「お父さん。ちょっと今から時間つくってもらえる?」
「ゆんゆん!?」
短剣をちらつかせるゆんゆんに愕然とする族長。
そこに、さっきから首を傾げているダクネスが言う。
「ちょっと待ってくれ。魔王軍の幹部が来ているというのはどうなんだ?」
「ええ、手紙の通り、魔法に強いのが来てますよ。あ、もう少し速く来ていらしたら、見せてあげられたんですが」
とまるで、見せ物のように言う族長。
まぁ、結果は目に見えている。
あんだけ強い紅魔族のことだ、魔王軍の幹部だって束になれば楽勝だろう。
考えてみれば、魔王の城の近くにあるのにこんなに平和なのはそうでないと、説明がつかない。
それからしばらくして、ゆんゆん、エリス、イリスは夕飯の買い出しへと行った。
ちなみに、カズマ達はめぐみんの実家に止まるらしく、明日観光することを時間を決めて別れた。
ということで、俺は今、族長さんと二人きりという状況だ。
「ユウマ君と言ったね」
「あ、はい。いつも、娘さんにはお世話になっています」
「そんなにかしこまらないでくれ。娘からは手紙でよく聞いてるよ。こちらこそ、本当に娘が世話になっている」
さっきの会話は冗談かのように、真剣な表情で話してくる族長さん。
その姿は一人の娘の父親としての姿だった。
「あの子は人と話すことがあまり得意でなくてね。結構大変だろう?」
「いえいえ、そんなことはないですよ。ゆんゆんは本当面倒見のいい子で、イリスの面倒もいつも見てくれてて、戦闘面だって、うちのパーティーの主力としていつも活躍してくれてます」
「そうか。それならよかった。実は、あの子は幼い頃に母親を亡くしていてね。そんでもって、他の子とは少し感性が違ってあまり周りと馴染めてなくて、肝心私は族長として仕事が忙しくて、あまり、相手をすることができず、辛い思いをさせてしまった。だから、私は心配だったんだ。本当に馴染めているのかと」
胸の中にあった違和感がとれた。
そうか、そういうことだったのか。
初めて会ったときから、ゆんゆんの人見知りの強さに少し違和感を持っていた。
幼い時の母親との別れ。周りとの距離。父親との関係。
こんなにあったら、そりゃ人見知りだって強くなる。
その時、ゆんゆんの笑顔が頭に浮かんだ。
エリスやイリス、カズマ達に囲まれて、笑っているゆんゆん。
その笑顔は心から幸せそうな笑顔だった。
「大丈夫ですよ。ゆんゆんはみんなにしっかり馴染めてます。俺が保証します。だから安心して、任せてください」
少しでも、ゆんゆんが幸せそうにしていることが伝わるように。
俺は族長さんに言う。
その時玄関のほうから扉の開く音がした。
「ただいま」
それは買いものから帰ってきたゆんゆん達の音だった。
「お父さん。今日は私がお夕飯を作るからね」
「いや、アクセルから結構な距離だったろ。今日は私が作るから、皆さんと一緒に休んでなさい」
「いいよ、大丈夫だから。お父さんこそ座って待ってて」
と、族長さんを座らせ、厨房へ入っていくゆんゆん。
「ゆんゆんさん、お鍋はどこにありますか?」
「お鍋は右の上の戸棚です」
「私もお手伝いします!」
「じゃあ、イリスちゃんはお芋洗ってもらおうかな」
女性陣による、料理の時間が始まる。
その賑やかな様子を見て、族長さんはぽつりと言う。
「ゆんゆん、本当にいい仲間に出会えたんだな」
ああ、本当、ゆんゆんはいいお父さんを持ったものだ。
香ばしいスパイスの匂いが鼻孔をくすぐる。
今日の夕飯はカレーだろうか?
GW最終日に投稿することになってすいません。
英雄達と、14騎の英雄と戦ったり、モンスターを引っ張って騎兵隊と戦ったり、パズルをして無駄に二つに別れた5月のクエストをやっていたら、投稿が遅れました。
さて、今回はゆんゆんの過去について少し触れたんですが、書籍、Webともにゆんゆんの母親について書かれてなくて、やむ終えず自己解釈という形で書きました。
こういう解釈が嫌いな方がいましたら、申し訳ございません。
それでは、また次回もよろしくお願いします!