何かと対峙しているダクネスを援護しようと民家へ向かと、そこでは。
「私の目が黒い内はここを通さぬ!どうしてもここを通りたければ、私を倒して行くがいい!悪いが、私は魔王軍に屈服する気はないぞ」
「な、何を言っているんだこいつは!シルビア様、こんなやつは放っておいてとっとと目的を果たしにいきましょう!」
見れば、木柵が破られていた。
どうやら、ダクネスは木柵を破った魔王軍と戦っていたらしい。
そして、案の定ダクネスの瞳は喜びで輝いていた。
「ダクネス、よく持ち堪えた!助けに来たぞ!」
「あ、ああカズマか。そうか、もう来てしまったのか」
別方向から、他の紅魔族を連れたカズマがやってきたカズマに、がっかりするダクネス。
誰が相手だろうと、変わらないな。
「そういうことね。あなた、わざと攻撃を外して援軍が来るための時間を稼いでいたのね。まったく、してやられたわ。あなたの勝ちよ。ねぇ、そろそろ出てきてもいいんじゃない?」
シルビアと呼ばれた女は俺達のいる林の方を見ていう。
別に隠れていたわけではないのだが。
まぁ、でてくるには丁度いいか
「ユウマ、いたのか!そうだな。ならここは一つ……。確かシルビアとかいったな。あんたならもう気づいてると思うが、そこにいるクルセイダーの実力は本物だ。なんせ、魔王軍幹部、バニルとの決戦時に爆裂魔法を耐える鉄壁の防御力をみせたからな」
「バニルですって!?確か、アクセルの街に行ったっきり帰って来ないって聞いたけど。まさか、あなた達が?」
カズマの言葉を聞き、後ずさる魔王の手下たち。
「そう、俺の横にいるこのめぐみんがトドメを刺した」
それを聞いて、今度は紅魔族達もざわつき始める。
なるほど、脅しか。
「そして先週はデットリーポイズンスライムのハンスも倒した。それだけじゃない。あんたの後ろにいるユウマは単騎でデュラハンのベルディアをさらには、大物賞金首の機動要塞デストロイヤーにもトドメを刺している。……どういう意味かわかるか?」
「ベルディアがやられたのは聞いていたけど、まさかハンスが……。最近アルカンレティアから連絡がないと思えばそう言うことだったのね」
カズマの話に信憑性を得たのか、状況の悪さを理解したシルビア。
それにしても、カズマ達、湯治先でも魔王軍幹部を倒していたのか。
流石だ。
それにしても、俺のことは流石に盛りすぎだぞ。
俺がデュラハンを倒せたのは、あくまでもアクアの強化魔法があったからだしな。
「……分かったは、今日のところは一回引かせてもらうわね。その前にあなたの名前を教えてくれない?」
「……ミツルギキョウヤだ!」
土壇場でヘタレるのは無しだろ!
そこはちゃんと名乗ったほうがかっこよかったぞ!
「そう。それなら納得だわ。私の名はシルビア。魔法軍幹部、シルビアよ!それじゃね」
「逃がすな!《ライト・オブ・セイバー》!」
「《カースドライトニング》!」
引き返すシルビア達を追いかける紅魔族達。
それを見て、感慨深げに呟くカズマに近づく。
「魔法軍幹部、シルビア、か……」
「おーい、土壇場でへたれたのにしみじみするなー」
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ーー
その夜、俺達は前日から練っていた計画を実行しようと、例の大衆浴場に行った。
のだが、カズマはおろか他のパーティーメンバーも来なかった。
ということで、唯一何も知らないエリスを連れて大衆浴場に入った。
「すごい、大きな浴場じゃないですか!こんなに大きな浴場を一人で使わせてもらえるなんて。贅沢すぎて、なんだか、悪く思っちゃいます」
まぁ、混浴だから、俺もいるんですけどね。
ちなみに俺は、《ライト・オブ・リフレクション》で姿を隠している。
見つかったら、殺されるからね。
「綺麗な月。ユウマさんも見てるでしょうか……」
うん、見てますよ。
湯船に入ってないから、タオル一枚で寒いんだけどね。
「四ヶ月。下界に降りてから、もうそんなにたったんですよね。長いようで、短くて。毎日が忙しくて、でも楽しくて、天界にいたときとは大違い。……私はあとどれだけこの世界にユウマさん達と一緒にいられるのでしょうか」
水の音だけが浴場に響く。
風も吹かず、草木の音もしない。
「温かい。気温がない天界とは大違い。……わがままなのはわかってます。だけど、もし願いが叶うなら……」
もし願いが叶うなら……。
その続きを聞く前に俺は静かに立ち上がり、浴場から立ち去った。
ここから先は聞いちゃいけない。
そう思ったからだ。
「本当、俺、なにしてんだろ」
「ねぇ?なんであんたがここにいるよ」
まったく、予想もしてなかった声が目の前から聞こえた。
ふと、我に戻って前を見るとそこにはタオル一枚のアクアがいた。
「え?」
瞬間、思考が凍る。
なんでここにアクアが?
いや、そもそもここは混浴なんだし、いたっておかしくはない。
いや、前言撤回、今俺がいるのは男の脱衣場だ。
いるのはおかしい。
その時、一つの服が目に映る。
それは、青色の修道服?だ。
つまり、俺の今いるところは……。
「ちょっと、エリ、むぐぅ……」
慌てて、アクアの口を押さえる。
俺がここにいるのがエリスにバレたら、即刻死刑だ。
その時だった。
背中に重々しい重圧がかかる。
「ユウマさん。何してるんですか?」
………………………オワタ。
今、エリスのには、俺が無防備なタオル一枚のアクアを倒し、裸で上からまたがってる様子が映っているのだろう。
詰みだ。言い逃れなんて不可能。
さらばだ。
次の瞬間、俺の横っ腹に重い一撃が入る。
痛みなんか感じない。
感じる余裕なんてない。
くらえば次、くらえば次と無慈悲の鉄槌が俺の体に入っていくのであった。
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「もう、今後は気をつけてくださいよ」
「はい。気をつけます」
あれから数十分。
これはヤバイと思ったアクアの言葉で、何とかエリスの誤解を解くことができた。
その後の治療によって、痛みと怪我はとることができたのだが、その副作用で体がだるい。
「それにしても、あそこの大衆浴場、混浴だったんですね。私、わかってなくて一方的にやってしまってすいません」
「いやいや、元はと言うと、混浴だってエリスが知らないのを知ってて誘った俺が悪いし。本当ごめん」
「知ってたって。……ユウマさん、そんなに一緒に入りたかったんですか?」
「え、あ、え、……。うん」
「別に言ってくだされば、私だって拒否はしません」
「え!?」
「え、いや、その、私お風呂好きなんで、誘われたら、別に拒否なんてしないってことで、その」
顔を真っ赤にしながら、付け加えるエリス。
ああ、風呂好きってことか。
そうか、そうだよな。
エリスは好んで一緒に入ろうとする痴女じゃないもんな。
「そういえば、なんですけど。カズマさん達、明日には里を出るらしいですよ」
「え!?あんだけ、また戦う的なノリ出してて帰るの?」
よく考えてみれば、カズマ達がシルビアと戦う意味はない。
街に帰れば大金をバニルから支払われるらしいし、命を張って戦って賞金をもらう必要もない。
それに、魔王軍と紅魔族の実力の差は歴然だ。
ほって置いたって紅魔族に倒されるのも時間の問題だろう。
そう考えると、確かにここに残る意味はないか。
「私たちはどうしますか?」
「俺達か。そうだな、俺達も帰るか。この里なら時がくれば、シルビアを倒すだろうしな、長くいても意味がない。帰って残りの幹部探しでもしようか」
風呂で温かくなった体を覚まさないように、少しはや歩きで族長の家に向かう。
帰ったら、イリスとゆんゆんに早速伝えて、荷造りさせよう。
族長さんにはお世話になったお礼を用意しておかなきゃな。
ーーと、買える気満々で道を歩いていると、どっかの誰かがフラグを回収したのか、理不尽な警報がなる。
『魔王軍襲来!魔王軍襲来!既に魔王軍の一部が里に侵入した模様!』
里の内部に侵入!?
この里のセキュリティはやっぱりガタガタすぎるだろ。
Fgoはアポコラボが終わり、休みもなる新しいイベントがきましたね。
忙しすぎて、今回は中途半端なところで切らせてもらいます。本当にすいません。
次回はついにシルビア戦に突入です。
戦闘シーンがメインになりますので、どうかよろしくお願いします