毎度お馴染み、人の都合など知らない無慈悲な警報を聞き、急いでゆんゆんの家に戻る。
中では俺の指示など聞く前に、準備を終えて待っていた。
「魔王軍の現れた場所はめぐみんの自宅付近だと、さっき見回りの人が伝えに来てくれました」
「昼の所から侵入してきたのか。あれ、族長さんは?」
「お父さんは先に向かいました。荷物は用意したのは私たちも」
手渡された荷物を結界にしまい、家を出る。
周りをみれば、子供から大人まで全ての紅魔族の人達が侵入場所へ向かってた。
「ユウマさん、エリスさんとのお風呂はどうでした?」
「おっと、イリス。その話はあとでな。治癒させた場所が痛くなってくる」
まるで、結果をわかってたという顔で見てくるイリス。
最近、イリスの小悪魔っぽさ強くなってきたと思う。
そんなことを考えながら、めぐみん宅に着く。
だが、シルビアはおろか魔王軍の手下たちも見えない。
いったいどおしたのだろう。
「きたか、ユウマ」
「ダクネス。魔王軍はどうしたんだよ誰もいないし、争った跡もない」
「ああ、争ってはない。カズマを人質として連れていかれたからな」
「え、人質!?だったら速く、助けに行ったほうが」
「向かった方向から見て、地下格納庫のはずです!速く行きましょう!」
必死な顔で言うめぐみん。
地下格納庫。
魔王軍がそこに向かうということは、理由は一つだろう。
世界を滅ぼしかねない兵器。
いくら、封印が施されていても、紅魔の里クオリティだ、十中八九奪われる。
周りもそれを察したのか、急いで地下格納庫へ向かう。
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もうダッシュで地下格納庫へ着くと、そこには頭をかきながら立っているカズマの姿があった。
「大丈夫か、カズマ!」
「おう、この通りぴんぴんだぞ」
「そうか、よかった。あれ、魔王軍は?」
「ん?あー、シルビアか。あのオカマ野郎なら、この格納庫に閉じ込めておいたぞ。中は日本語のパスワードになってるし大丈夫だろ」
遅かった。
格納庫の外ならまだしも、中に閉じ込めたとなると手遅れだ。
「一回ここから退こう。こんな場所で戦ったら、爆裂魔法を撃てない。世界を滅ぼしかねない兵器をもってこられようと。距離を取って態勢を立て直せば対処できる」
「何言ってるんだよ。中の兵器にだって封印が施されてるんだし、日本語を知らないシルビアには解けない。あとのことは紅魔族に任せれば大丈夫だろ?」
「そうよ。見た感じここの扉も頑丈だし。そう簡単には出られないわよ。さぁ、帰って飲みまくりましょ!」
「だから、この里のセキュリティなんてすぎて役にたたないって」
その瞬間、アクアが頑丈だと言ってた鉄の扉が、盛大にぶち壊される。
その光景に、安心しきっていたアクアとカズマをはじめ、後ろにいた紅魔族達も開いた口を閉じられないでいる。
「あらあら、ずいぶんと強引にしてくれたじゃない。でも、お陰さまで目的は達成されたわ」
破壊された扉から出てきたシルビアは、昼間見せていた二本の脚はSF感を与えさせる機械の蛇の脚となっていた。
そんな中、一人の紅魔族が言う。
「その銀のやつって魔術師殺しじゃないか?」
「フフフフ。ご名答。これはどんな魔法も打ち消す兵器。あなた達の天敵、魔術師殺しよ」
魔術師殺し!?
どんな魔法も打ち消すとか、チートすぎる。
それじゃあ、俺の拘束魔法なんか通用しない。
……でも、紅魔族なら。
優秀と言われる彼らなら、対抗手段はあるはずだ。
まだ、逃げるにははやい。
「まずいぞ!魔術師殺しだ!」
「もう、ダメだ、おしまいだ!!」
「そうだ、里を捨てて逃げよう!もう無理だ!」
嘘だろ。
「おい、めぐみん、どういう事だ!魔術師殺しって何だ?あれが世界を滅ぼしかねない兵器なのか?」
カズマが必死に揺さぶりたずねるが、めぐみんは顔が真っ青で反応が無い。
「そんなに乱暴に揺らしちゃかわいそうよ?フフフ、これは世界を滅ぼしかねない兵器じゃないわ。あくまでも魔法を打ち消す兵器。私の目的はこれを手に入れることだったのよ」
「うわぁーー、逃げろ!」
「《テレポート》!うぐぅ……」
勝ち目がないと悟ったのか、逃げ始める紅魔族。
だが、それも叶わず、無慈悲な光線が背を向けた紅魔族を次々に撃ち抜いていく。
「どこへ行こうというの?」
「た、頼む。見逃してくれ!」
「あそこのボウヤ達ならまだしも、あなた達を見逃す訳がないじゃない。あんた達はいつもいつも、そうやって命乞いする仲間達を殺してきた。今度はあなた達のばんよ」
「止めろ、シルビア!」
カズマの叫びもむなしく、名も知らぬ紅魔族の額を光線が貫いた。
「フフフフ。案外呆気ないものね」
動かなくなったそれに、興味を無くすと、逃げなとう紅魔族の所へ向かい、次から次へと蹂躙していった。
人が死んでいく。
昼間、道端で挨拶した人が、道を案内してくれた人が次から次へと襲われていく。
止めないと。
そう、頭で思っていても、体が反応しない。
恐怖。
今まで、自分とは無縁だと思っていた死への恐怖が体を縛る。
恐い。死にたくない。
意味のない、救いを求めるの感情が溢れだし飲み込まれる。
その時だった。
「止めて!」
悲痛な叫びが響く。
気がつけば、ゆんゆんはシルビアの前に立っていた。
「ゆんゆん……」
「もう、止めて。これ以上、私の大切な人達を傷つけないで!」
目頭から溢れでる涙を振り払い、精一杯に訴えるゆんゆん。
「大切な人達ね……。でもね、お嬢ちゃん。私の大切な仲間達はこの何十倍もあんたたち紅魔族に虐殺されたの。それって、おかしくわないかしら?同じ命を持っていて、私達だけが無惨に殺される。理不尽だとは思わない?」
「……」
何よりも重たいシルビアの言葉に、ゆんゆんはおろか、俺達も何も返せない。
「こんなこと言ったって理解できないでしょうね。所詮、私達は私達の、あなた達はあなた達の都合でしか考えられないのだから。さぁ、そこをどいてくれるかしら?」
逃げ惑う紅魔族を殲滅するべく、歩き出すシルビア。
止めないといけない。
恐怖で固まっていた脳が動きだし、身体中に信号を送る。
だが、その信号よりも先に。
「……ここから、ここから先は行かせません」
何かを決めたのか、下げていた顔を上げ、シルビアをにらみつけるゆんゆん。
その紅の瞳は紅魔族が興奮したときに見せる、輝きとはまったく違う、透き通った決意の紅だった。
「大切な仲間の仇なのはわかります。でも、それでも、私の大切な人達殺させる訳にはいけません!あなたが思う仲間を思うように私にも里の人達を思う気持ちがあります!ここから先を行くのなら、私を倒してから行ってください!」
「そう。何を言っても諦めるつもりはないのね。いいわ、お望み通り、あなたを殺してから先に進むわ!」
その勢いは獲物を食らう獣の様。
ヘビとなった下半身で地面を砕き、その勢いでゆんゆんに襲いかかる。
「ゆんゆん!」
「ゆんゆんさん!」
やっとの思いで動くようになった体を動かせ、走る。
……間に合わない。
固有時間制御でも僅かに届かない。
後ろのエリス、イリスは詠唱に時間をとられ援護が間に合わない。
だが、最悪な状況の中で、決意の瞳でシルビアを睨むゆんゆんの手には魔法の効かないシルビアの
に唯一対抗できる手段が握られていた。
一瞬で詰められた間合い。
残り10mの距離。
その一瞬を使い、握っていた冒険者カードの欄を強く押す。
「《固有時間制御 三倍速》。shiftchange、《固有時間制御 四倍速》!!」
その姿を表すなら、まさに紅の閃光。
三倍速状態である俺を越え、その先に速度で襲ってくるシルビアを交わし、腰のナイフを刺す。
「lost!」
ゆんゆんの詠唱で短剣が爆発し、止まっていた時間が動き出すように、異なる点が交じりあう。
「《全剣連続投射》!!」
「《スターバースト》!」
「《エクステリオン》!」
魔法が効かないなら、物理で殴る。
考えることは皆同じで、それぞれの最高火力を魔術師殺しにぶつける。
火力が火力のため、シルビアのいた地点は砂ぼこりが舞い、視界が悪くなる。
「すごい、火力だ。単純な力比べなら爆裂魔法にも勝るんじゃないか?」
「ええ、詠唱をしっかり唱えていれば爆裂魔法とならびますね。それにしても、とんでもないのが目覚めましたね」
「とんでもないの?」
「はい。とんでもないですよ、今のゆんゆんは。里の中では私の次に位置しますが、それはあくまでも魔力の素質。才能で比べるなら、ゆんゆんは私以上でしょう」
「才能って、何か特別な力でも持ってるのか?」
「ゆんゆんは一瞬でその系統の魔法を極めることができるんです。その証拠が今の固有時間制御。ユウマは三倍速しか取得できてません。そのため、ゆんゆんも三倍速までしかスキル欄にはのってなかったはずです」
「でも、三倍速の取得と同時に四倍速まで極めた」
「ええ、見ての通り一瞬で。本当どこまでも、めんどくさい子です。ゆんゆんだけにかっこいい所は持っていかせられません。格納庫の中には魔術師殺しに対抗する兵器があると聞きます。あれではまだ、トドメになってないでしょう。行きましょう!」
「しょーがねぇーな!お前はどこまでも負けず嫌いだな!アクア!ダクネス!お前らも見てないでついてこい!」
「え、あれなら、ユウマ達で大丈夫よ!ほら、私はここでいざというときの援護のために待機してるから」
「いいから、いくぞ!」
本当は一話でまとめたかったのですが、後半部分に手間取って、前編後編で分けることにしました。
三章は残り三つの話とキャラストーリーを入れる予定です。
また次回もよろしくお願いします!