今回選ばなかった分岐の話はまた後日投稿します。
「お前は誰のために戦う?」
結界魔術師と名乗った青年はどこか寂しそうな表情で言う。
誰のために戦う?
そんなことは決まってることじゃないか。
俺は……。
「誰かを守ると言うことは他を、あるいは自分を捨てると言うことだ。君にそんな事ができるか?今まで自分しか考えてこなかった君に」
「俺が自分の事しか考えてこなかったって……。そんなはずは……ない」
そんなはずはない……。
俺はあいつに認めてもらった時から、走るようになった時から、俺は誰かのためになるように生きてきた。
間違っても自分のためじゃない。
「なら。なぜシルビアが紅魔族を襲ったとき、助けようとしなかった?」
「え……」
「デュラハンの時は命すら捨てて戦ったじゃないか?ならなぜ、シルビアの時は戦わなかった?なぜゆんゆん達の時は体を動かさず、エリスの時は逆上した?」
言葉がでない。
いや、違う。
認めたくないんだ。
俺はそんな人間じゃないって。
「それは……」
やめてくれ。
その先を言わないでくれ。
俺はそんな人間じゃ……。
「自分のためだからだ。エリスは君を、クドウユウマという人間をたった一人尊重してくれる存在だからだ。祭 祥也も工藤悠真という人間を認めてくれたからだ。君は自分を認めてくれる存在を悲しませたくなかった。失いたくなかった。だから走った。だから戦った。彼の夢を叶えるために。彼女の大切な人を守るために」
「……」
「だから、君はシルビアに殺されていく紅魔族を救わなかった。だって、命を張るほど自分に大切な存在じゃなかったからだ。だから死ぬとわかっている戦いには参加しなかった。わかったかい?君は決して正義のヒーローでも味方でも、ましては偽善者ですらない。自分の事が大切でしょうがない自己中心的で意固地な人間なんだ」
青年は理不尽な現実を突きつける。
返す言葉などない。
苦しまぎれな怒りも悲しみも沸いてこない。
あるのはただ一つ、納得だけだった。
いや、最初からわかっていた。
わかっていながら否定し続けてきた。
こんな在り方は間違えなのだから。
「やっと受け入れる事ができたか。じゃあ、もう一度聞こう。君は、クドウユウマは誰のために戦う?」
すべてを受け入れた所で、もう一度問いかける。
俺は自分勝手だ。
自分さえよければ、周りなどどうでもいい。
そんなどうしようもないことを思っていたのに否定し、正義を訴えていたクズ人間だ。
それでも、俺は……
1.エリスのために戦う
2.仲間のために戦う
3.自分のために戦う
1.エリスのために戦う を選択
「エリスのために戦うって決めたんだ。そうだ、俺はどうしようもないクズ人間だ。それでも、そんな俺をエリスは認めてくれた。だから、俺は守ると決めたんだ。俺のことを認めてくれた人が悲しい思いをしないように。俺の在り方が間違っていても、この気持ちは間違ってないんだ!」
例えどんな事があったとしても、守りたいという気持ちに間違えはない。
俺は大衆の指示する正義を肯定する正義の味方ではない。
自分の信念を信じ抜く正義のヒーローにもなれないのだろう。
ましては、それらに憧れた偽善者にすらも。
でも、それでも、俺は大切な人を守る人間になる。
例え自分を捨てることになっても、俺はこの気持ちを信じ抜きたい。
「そうか。この選択はどれを選んでも君は辛い思いをすることになる。それでも、後悔することがないんなら。それが君の正しい道だ」
俺の答えに青年は安堵し笑う。
青年の立つ丘の向こうには綺麗なピンクのネリネの花が見えた。
崩れゆく結界の中。
青年は言った。
「何がなんでも守れよ。俺みたいにならずに」
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ーー
グシャ
燃えるほど熱い痛みが肩に走る。
目の前には魔物となったシルビアが獣のような腕で私の肩を貫いていた。
これはまずいですね。
女神である私に死の概念はない。
あるとしても消滅だけだ。
だから、人間にとってそれが致命傷でも、私達にとってはただのダメージでしかない。
ただ、今回は別だ。
今の攻撃は私を構成する霊基に直接届いた。
おそらく、あと二回受ければ霊基を壊されるだろう。
「うっ……」
耐えられなくなって口から血を吐き出す。
そうだ、イリスさんは大丈夫だろうか。
うん、返り血が少しかかっているが、傷はなさそうだ。
よかった。
「シルビアーーッ!!」
かすれていく意識の中でユウマさんの声が聞こえる。
駄目です、ユウマさん。
今のシルビアと戦っちゃ駄目です。
そして、私の意識が落ちた。
結界が崩れてから、一瞬間を空けて現実世界に意識が戻る。
身体中を灼熱の炎が襲っている。
そういえば、シルビアが現れた時手元には紅魔族の服があった。
シルビアはキメラだったか。
この強い魔力は紅魔族の魔力も混じっているのか。
だが。
魔術回路に電撃が走る。
<魔術回路起動。データ更新。外部データをインストール。データ更新完了>
頭の中に次から次へと見知らぬ武器が風景が流れてくる。
<座への接続を完了。武器データを読み込み>
ある男は女を蝕む病を治すため悪魔に命を売った。
ある男は見殺しにした仲間を悔いて、自分以外のすべてを捨てて戦い続けた。
<読み込み完了。妖刀村雨。名刀村正を召還>
きっとこの記憶は先代の結界魔術師と別の世界の未来を生きた■■□□の物だろう。
俺はこんなヒーロー達見たいにはなれないだろう。
でも、俺は俺の正義のために。
「<モード鬼神>!」
「■■■■□□!?」
詠唱を唱えた瞬間、召喚された二本の刀は俺を蝕んだ炎をかきけした。
その時、本能が悟ったのかシルビアの怯えた顔をする。
次の瞬間、俺めがけて飛び出す。
「■■□□□□ッ!!!」
<インストール完了。コルト・パイソン357>
「なぁ、もう疲れたよな。安らかに寝てくれ」
シルビアめがけて引き金を引く。
思ったより引き金は軽かった。
いや、軽かったというよりは、銃が引かせてくれたのだ。
引き金に指をそえたとき、俺の頭にある記憶が流れた。
誰もいない戦場。
大切な人より自分を選び、歩きつづけた男の姿を。
ありがとう。
自分の選べなかった選択を選んでくれて。
この銃はそう俺に言った気がした。
意思を持たない無慈悲の弾丸は一つの獲物に向かって放たれる。
だが、圧倒的スピードと動物の勘を持つシルビアは当然かわす
ーーが。
「<時止め>」
時は止まる。
宙で初弾を交わした態勢のシルビアに二発目の引き金引く。
それと同時に時を動かす。
「<ビヨンドザタイム>」
「!?!?」
一体化し感覚を持つようになった魔術師殺しに二発目の玉がはいる。
だが、痛みは感じないだろう。
しかし、この二発目こそ本命。
二発目が相手の魔術回路に当たった時、因果によってかわされた初弾と次に撃った三発目が対象者の体を射貫く。
「■■□□ーー!!」
「痛くて結構。そいつにはエリスの聖気が入ってる。化け物のお前には効果抜群だ。ぐっ……」
考えることはなかった。
ただ、頭の中を流れる記憶が体を動かす。
<再インストール。プログラム名 最強の幻想>
致命傷を受けてもなお、俺を絡み付けるその目には強い憎しみがあった。
「あぁ、今ならお前の気持ちがよくわかるよ。大切な人たちを失う気持ちが。だから、次の一撃が最後だ」
夜空を包んでいた雲が渦を巻き始める。
草木はその生命力を大きく揺らす。
きっと、この剣の希望は全ての光を越えるだろう、
「なんだ、あの剣は……」
ユウマの前に現れた剣に目を疑うカズマ。
「あれは全ての正義の象徴」
「え?」
「カズマ。あんたの世界ならみんなが知ってる聖剣があるわよね。それは人々のこうであって欲しいという願いを星が集め造った神造兵器。でもあの剣は、うんうん。あれは違うの」
「違う?」
「うん。あれは人々が心の中に持っている正義が無意識のうちに合わさってできた物。神は星は作ってない。正真正銘人が作りあげた兵器。聖剣とは違う最強の幻想<ラストファンタズム>。」
「最強の幻想……」
「かの英雄王出すら持ってない正義の原点<オリジナル>。あいつ、ズルをしたわね」
この世の全ての正義を集めた光は今、頂点に達した。
まだ、終わらない。
最後に残った意志を奮わせ俺に突っ込んでくるシルビア。
「光は満ちた!我正義に誓い、今このとき悪を滅ぼそう。これが俺の全力全霊<因果を絶ち悪を切り裂く正義の剣>!!」
剣から放たれた色を持たない光は、シルビアを包み込み、天地を切り裂きながら彼方へ消えていく。
意識が歪む。
一度に多くの情報を読み込んだせいで脳が悲鳴をあげている。
手に握っていた剣は、空を包んでいた雲を消し、明朝の太陽が砕けた大地を照らしていた。
お待たせしました。
今回はエリス√をやります。
そしてお気づきの方もいるでしょう、お馴染みの機神咆吼デモンベインの「因果を越えて魔を絶つ剣」のパロです笑。
また、今回は型月要素を強く含みました。
今後もちょくちょく型月要素を入れていきますが、この作品はfate版なのでご了承ください。
次週キャラエピソードと分岐のbatendを投稿します。どの分岐がbatendだったかお楽しみに(分かりやすい気もしますが)
感想、アドバイスよろしくお願いします!