アヒルの子供は大きな湖に住んでいました。
そこは何不自由ない場所でしたが、アヒルの子には小さく思えました。
だからアヒルの子は羽ばたいたのです。
たとえ、外の世界が厳しくてもでも、そこに自由があると思ったから
第31話 私の日常
よく昔のことを夢に見る。
目を覚ますと使いの者がいて、会釈をして着替えさせくる。
着替えを終えると次は朝食。
朝食へ向かう最中、使いの者たちはただ黙って私に並んで会釈をしてくる。
誰一人として私語を口にしない。
本当にただ黙ってだ。
朝食をとるときはいつも一人。
正確には後ろに使いの人がいるのだが、食べているのは私一人。
食事が終わるとしばらくして、二人の貴族が私のもとへ来て、勉強を始める。
そして、午後には、他国のお偉いさんや王都で活躍した冒険者たちと食事をするのだ。
私はいろんな人たちと会って話してきた。
だが、みんな同じだった。
結局は自分の事ばかり。
貴族にしても冒険者にしても、さらには家臣達も、私の顔色ばかり伺っては自分の事ばかり考え話してくる。
そこに私はいない。
彼らは自分の利益と話しているのだ。
私は家族とすごした日々が少ない。
私が生まれて、すぐに母は死んだ。
父である国王やお兄様は魔王軍と戦うため、最前線に立っていて、城には戻ってこない。
私の相手をしてくれるのは教育係の貴族たちとまれに会いにくる懐刀の貴族、ララティーナだけ。
だが、みんなどこか引け目な感じで話してくるのでつまらない。
ゲームをしようと言っても、見え透いた手加減をされ私の勝ちになる。
彼女たちにとってはただの接待なのかもしれない。
こんなことを言うのは自分勝手だと言われるかも知れないが、私を囲っている世界は鳥籠だ。
自由に外に出ることはできないし、誰も心から話してはくれない。
心も体も城という檻に閉じ込められている。
だから、私は、私は外に出たのだ。
あの方の誘いにのって自由を掴んだ。
しかし、こうして夢を見ていると、私の後ろを黒いものが付きまとってくる。
それでいいのか、それでいいのかと罪悪感がひたりひたりとついてくる。
そして、いつも、その黒いものに飲み込まれるとともに私は目を覚ます。
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ふと、目を覚ますと小鳥のさえずりが聞こえる。
下の方からは朝食の音と匂いが届いてくる。
「イリスちゃん起きてる?」
ぼーとしてると、ゆんゆんさんの声が聞こえる。
そして、やっと脳が起きたのか、周りの事がしっかりと判断できるようになっていく。
「はい!起きてます」
「よかった。もう少しで朝ごはんができるから、そろそろ下に来てね」
階段を下りていくゆんゆんさんの足音。
朝のランニングから帰ってきて、汗を流しているユウマさんの水の音。
そして、みんなの朝食を用意しているエリスさんの料理の音。
この音たちが、いつもの朝を告げてくれる。
ここは、無音だった城とは違う。
自然の静かさと人の営みが確かにあるのだ。
私はベットから出ると、小さなクローゼットから服を取り出し着替える。
当然、手伝いの者はいない。
部屋を出て、階段を下りリビングに行き座る。
テーブルにすでに用意されている食事たちは、到底朝の時間に用意できるレベルでないほどの芸術ともいえる盛り付けがされている。
「おう、おはよ」
「おはようございます」
料理に見惚れているとお風呂から上がってきたユウマさんが、頭を乾かしながら私の隣の席に座る。
そして、みんなが座って食事がはじまる。
ユウマさんの前にはエリスさんが、私の前にはゆんゆんさんが座っている。
食事中は他愛のない会話でもりあがる。
今日の天気は良さそうとか、昨日の宴会は酷かったなど、まれに、ユウマさんのセクハラ発言が聞こえてくるが、にこにことしたエリスさんの笑顔に怯え、食事後にお説教が待っているのは日常茶飯事だ。
食事が終わると食器の片付けを手伝い、教会を手伝いに行くエリスさんを見送る。
そうして、残った人たちでゲームを始める。
「はい、五光」
「えっと今ので菊もとってるからのみで」
「ユウマさん。もちろん……」
「こいこいはしない」
「大人げないです!男は黙ってこいこい。お兄様が言ってました!」
「悪いがイリス。役をつくったのは俺だから、俺が決める。こいこいはしない。男じゃないって言われようと、俺は意見を変えない。だってあと少しで猪鹿蝶決まるんでしょ?」
「むぅー。ゆんゆんさんもなんとか言ってください!」
「……え!あっ、そうだね。でも、上がったのはユウマさんだし、決めるのは……」
ゆんゆんさんの持ち札に視線があつまる。
そのカードたちに少し引き気味になる。
「すげー、カスの枚数……」
「かわいそうな目で見ないでよ!!」
とこんな感じで午前を楽しむ。
ユウマさんは相変わらずの大人げなさで、ゆんゆんさんは、みんなでやれればいと感じだ。
午後はお兄様、改めカズマさんと釣りをしに行く。
釣りをしながら、日本の話を教えてくれるが、何やら事情があって、ユウマさんほど熱いようなお話はしてくれない。
それでも私の見てきた物、考えていることをはるかに越える事ばかりでとても面白い。
「気をつけて帰るんだぞ」
「はーい」
夕日に照らされながらサヨリとバナナの入ったバケツを抱えて家に帰る。
基本的にお兄様のパーティーは外食をメインに置いているが私のパーティーは自宅で夕食をとる。
6時間かけた釣りたが、釣れた数は10匹にも満たない。
だが、のんびりと空を見ながらかかるのを待つのも釣りの醍醐味だと言うお兄様にならい私もゆっくりと空を楽しんでいる。
それでいてふと、時に思うことがある。
なぜ同じ空の下にいるのに、こんなにも気持ちが軽いのかと。
王城で見ていた空も釣りをしながら見ている空も特に変わったことはない。
だが、もし変わった思いを抱くとしたら、それは私の心になにかあるのだろうか。
家に帰ると、すでに夕食の準備に取りかかっているのか、おいしい匂いが私の鼻をくすぐる。
それは城ではけして感じることのないものだ。
家の扉にかけた手が止まる。
私はいったいいつまでこうしていられるのか?
いったいいつまで、みんなと笑っていられるのか?
後ろをついてくる黒い影がそんな問いかけをしてくる。
「どうしたんだ?こんなところで止まっちゃって」
後ろには不思議そうな顔をしたユウマさんが立っていた。
「ほら、早く入って手を洗わないとエリスに怒られちゃうぞ」
ガチャりと私の手に重ねて扉を開く。
「お帰りなさい。あれ、二人とも帰り道が同じだったんですか?」
「ちょっとそこでね」
結界から取り出した荷物をゆんゆんさんにみせる。
それからしてエリスさんが玄関を見に来る。
「あ、お帰りなさい。もうすぐでご飯ができるんで手を洗いに行ってくださいね」
人が帰れば、みんなで迎える。
なんとなくおきるこの状態がとても暖かい。
「ほら、手洗いにいこうぜ」
ユウマさんに引っ張られながら家の中に入る。
あぁ、難しいことは今はいいのかもしれない。
今はとにかく、この暖かさに包まれていたい。
私は今日もこの場所で言う。
「ただいま」
Fgoのイベントで忙しくて全くかけませんでしたが、このすばの情報を見て急いで書きました。
映画化おめでとうございます!
ただできるなら3期がよかった。
多分アイリスの話まではやれそうにないですよね……。
映画を成功させて、動くアイリスちゃんが見たい!
それと、アイリスの抱き枕楽しみ