この素晴らしい仲間達に救済を!   作:よっひ。〜

50 / 67
第37話 エゴ

 

 

 

 

 

 巷で噂の義賊からの襲撃から一晩が経った朝。

俺は城内の食堂へ向かっていた。

あの後、義賊から姫様を救ったお礼として城で朝食付き宿泊をプレゼントされた。

そんでもってしばらくしてから、門にいた所をアクアに保護されたカズマを加え賞状何かをもらったり、騎士団への勧誘を受けた。

もちろん一つ一つ丁寧に断ったのだが、側近のクレアさんは諦めることなくしつこく勧誘してきた。

まぁ、それはいろいろと吹っ切れたカズマのスティールで諦めてもらったのだが。

その後の女性陣からの冷たい視線はそれはもうすごいものだった。

まぁ、今は何とか話を聞いてもらえるようになったらしく、いつものカズマに戻っている。

なにはともあれ今回の件は一件落着だ。

終わり、閉廷!

 

 

「痛てぇ」

 

 

 曲がり角で何かとぶつかる。

反射的に痛いと言ったがそうでもない。

誰かとぶつかった感じだ。

 

 

「あ、エリス。ごめん」

 

 

 ぶつかった相手はエリス。

なのだが、その意識は遠くボーッとしている。

 

 

「エリス?」

 

 

「ふぇ!?」

 

 やっと俺に気づいたのか、声を上げる。

 

 

「あ、おはようございます」

 

 

「う、うん。おはよう」

 

 

 やっぱりおかしい。

ぶつかったことには気づかず、我ここにあらず。

それに、いつもの笑顔に違和感を覚える。

なんというか、無理をして作っているような。

 

 

「夜はよく眠れましたか?王城の枕って大きいんですね!私わくわくしちゃいました」

 

 

 本人は無邪気そうに言っているつもりなのだろうが、違和感ありありで見ていてつらい。

思えば、あの後からずっとこんな感じだ。

 

 

「エリス。昨日何かあった?」

 

 

「……。なにもないですよ」

 

 

「いや、そんなわけ」

 

 

「皆さんもう集まってると思うので私たちも急ぎましょ」

 

 

 うつむいたまま急ぎ始めるエリスの袖を抑える。

無意識だった。

本当、今しかないと思ったら勝手に体が動いていた。

 

 

「ほら、皆さんを待たせるのはいけませんよ……」

 

 

「どうして、そんなに背負い込むんだよ……」

 

 

「別に何も背負いこんでなんて」

 

 

「じゃあ、なんでそんなに震えてるんだよ」

 

 

「え?」

 

 

 白く綺麗なその足は、今にも崩れそうに脆く震えていた。

そして、そのことに気づいたのか地面に一つ、また一つと滴落ちていく。

 

 

「私は……、好きで耐えてるんじゃないんですよ……」

 

 

 消えそうな声で言った言葉。

それは確かな物。

彼女の本心だった。

 

 

「自分が独りよがりなのはよくわかってます。独りよがりでわがままで、自分のためなら、平気で誰かを蹴落とす。そして、蹴落とした罪悪感を消すために周りに手をさし伸ばす。都合のいい自己満足。だから、耐えるしかないんですよ。こんな存在がやっぱり救われてはいけないんです。本当、私はわがまま女ですよね」

 

 

 切ない笑顔を俺に向ける。

ひどい自虐だ。

今、俺の前にいるのは、国教と慕われる女神でも、完璧な後輩でもない。

ただ一人の少女。

そんな少女に俺ができることは。

 

 

「それは違う。たとえわがままであろうと、なんであれ、救われちゃいけないやつなんて一人もいない」

 

 

「でも、それでは……」

 

 

「そもそも、罪悪感なんてただの自己満足、人のエゴなんだよ。そんなものに捕らわれてたら壊れるだけ。いいんだよ。そんなこと考えなくて。もし、それで誰かがエリスを責めるなら俺が守る。そのために俺がいるんだ」

 

 

 これは俺のエゴなんだろう。

彼女に救いを求めた俺の自己満足。

バニルは言った。

この選択が一番過酷なものだったと。

あぁ、その意味が今ならわかる。

こんなに、自分が壊れてるなんて実感してると、今にも吐きそうなくらいつらい。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王都から少し遠いアクセル近郊の湖。

そこに一つの厄災がいた。

 

 

「クローズンヒュドラか……」

 

 

クローズンヒュドラ。

普段は大地から魔力を吸収し、充分な魔力を貯めた時目覚め、破壊行為を繰り返す厄災。

邪神と蔑まれた自分と同じ存在に同情に似た感情を持つ。

 

 

「厄災って言うのはいつかは人に倒されるもの。せっかく魔力を貯めて目覚めるというのに、ただみすみすと倒されるなんて嫌よね」

 

 

 ポケットから取り出す不気味に光る宝石を取り出す。

かつて、グロウキメラのシルビアに渡された強化石、

その改良版。

 

 

「彼女ったらこんなものどうやって作ったのかしらね。邪神の私でも知らない厄災。まぁ、いいわ」

 

 

 強化石を湖に投げ入れる。

同時に汚れていた湖は禍々しい魔力を放ち、荒れ始める。

 

 

「もう、休暇は充分でしょ?さぁ、目覚めの時よ。クローズヒュドラ。いえ、6の獣。こことは違う世界で神を弾圧したもの。人類を滅ぼす厄災」

 

 

 

 

 

「『マザーハーロト』」

 

 

 

 

 




きりのいいところで切らせてもらいました。
次回は戦闘回で、結構長く書く予定なので、少し箸休め的な回でした。
といっても、ちょっと雰囲気は暗く。
エリスのユウマ、似た者(破綻者)同士の傷のなめあいが今話の盲点です。
この作品のエリスは、どんなことしようも結局自己満足でしかない。
救われちゃいけないと耐え続ける、それで罪悪感への償いにしようとしている自己満足なんです。
ユウマはユウマで、自分を慰めてくれるエリスを救うことで、自分のためを無意識で考えちゃってるんです。
毎話毎話、少しずつ壊れて続けていく二人がどう救われるか、どうか見守ってください
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。