この素晴らしい仲間達に救済を!   作:よっひ。〜

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世界最大のダンジョン編
第40話 戦いの次はまた冒険


 

 

 

 

 

ここ最近はまともに眠れる日が少なく、久しぶりの熟睡に気持ちいい朝を向かえる。

とはいっても、まだ日が出てから一時間くらいで、下のリビングには誰もいない。

顔を洗い、朝一発目の水を片手に、昨日帰ったときに玄関にぶちまけられてい新聞を取り上げ目を通す。

 

 

「『王都郊外にて、謎の怪物現れる。死者多数、魔王軍の差し金か』『隣国の王子、宰相と共に謎の失踪』……」

 

 

 

 予想通りと言うべきか、やはり王都での戦いが新聞のほとんどを占めていた。

その中には、庶民の声が書かれ、魔王軍に対するヘイトがつもり積もっていたが、それと同じくらいアイリスが称えられていた。

昨日、レインさんも言っていたが、この一件は被害も多かったが、それ以上に落ちた貴族の評判を上げ、国の士気を上げられるものだったらしい。

それが、今回アイリスを王城から送り出させた理由の一つだろう。

話を聞けば、アイリスの失踪は捜索に膨大な資産をかけたらしく、国の運営に支障がでるものだったらしい。

それも、今は何とかチャラになら一件落着と言うものだった。

 

 

「エリス祭?」

 

 

新聞の間から落ちたチラシを拾い上げる。

見た感じだと、この国全体のお祭りだろうか。

国の士気が上がった状態で、さらに追い風を吹かすように国教のお祭りときた。

これには魔王軍ももう一騒ぎ起こして来るだろう。

空になったコップを台所に置きに行きながらも、片手に持ったチラシ読み続ける。

ーーと、

 

 

「幸運の女神エリス様に日々の感謝を伝えるお祭りです」

 

 

 久しぶりの冒険で早起きしてしまったのか、機嫌よくアイリスが部屋に入ってくる。

 

 

「おはようございますユウマさん」

 

 

「ああ、おはようアイリス」

 

 

 にっこりと笑う姿にさらさらとした金髪。

とどめの熊の絵柄の入ったパジャマは大きなお友達たちも発狂レベルの破壊力。

そこに、王女としての責務からふっ切れた感じが合わさって年相応の少女という感じがよく伝わってくる。

正直の所、朝だからとか関係なくいろいろとやばい。

別にロリコンという訳ではないが、アイリスのたまに出てくる無邪気さは、エリスやゆんゆん以上にドキドキさせるものがある。

 

 

「ユウマさん、浮気はだめですよ」

 

 

「う、浮気って!まだ、俺たちは付き合ったりとか」

 

 

「でも、キスはしたんですよね?」

 

 

「あれは……、その、なんというか。……、つか、何でそれを知っている!」

 

 

「ふふふ、やっぱり、ユウマさんはおもしろいですね」

 

 

 あの現場を見たやつといえば、ただ一人。

あの爆裂女!

次から次へと言いふらしやがって!

 

 

「でも、ユウマさんもユウマさんです。エリスさんの前で今のことを言ってたら当分は口を聞いてくれませんよ?」

 

 

「だから、そういう関係じゃ。確かに守るとは言ったけど、そんな奥深いことじゃ」

 

 

「だーかーら。どうやら、ユウマさんには乙女心は理解できませんか。痛い目にあって、気づいてください」

 

 

 呆れた表情でこちらを見るアイリス。

さすがの俺もここまで言われれば理解はできる。

しかし、俺は生まれてこのかた女性との交流は小学生以来ほぼ皆無だ。

経験値が足りなすぎる。

さすがにどうしたものか。

 

 

「そういえば、アイリスは起きるの早いな。そんなに楽しみだったのか?」

 

 

「はい、すごく楽しみです。なんだって、今回はベルセルクの国を出るんですから」

 

 

 そういえば、そうだ。

今回は今までにない未知なものだ。

少し時は遡り、昨日の王城でのことだ。

アイリスを魔王退治のパーティーとして連れていくためのレインさんからの条件。

それはカズマ達を抜いた俺たち4人のパーティーの平均レベルを40超えにすること。

または、世界最大にして最果てのダンジョン。

そのベルセルク王家もまだ未探索の階層を探索することだった。

ここで、一つ確認として我がパーティーのレベルを見てみた。

エリス、アークプリーストでレベル26。

ゆんゆん、アークウィザードでレベル24。

アイリス、英雄仮(冒険者ギルドへの職業登録無し)レベル30。

そして俺、アークウィザードでレベル20。

……、おかしい。

アイリスは小さい頃からいいものを食べたり英才教育でレベル上げしてたし、つい最近大物を倒したからそれなりのレベルの高さなのはわかる。

エリスやゆんゆんは魔王軍幹部を倒したりなどはしてないが、教会の手伝いや修行でモンスターを倒してるからレベルが上がってるのもわかる。

しかしだ。

なぜ、2体の魔王軍幹部を倒して、デストロイヤーだって完全破壊したはずの俺が一番レベルが低いのだろう。

ウィザードからスタートだったからか?

めぐみんにいいとこ持ってかれたりして、経験値が半々になってるのか?

理由は謎だが、パーティーで一番レベルが低い。

そんなこんなで絶望した俺は、何年かかるかわからないレベル上げを諦め、世界最大のダンジョンの探索を選んだ。

まぁ、おかげ様でアイリスは久々の冒険者に心踊らせていてよかったといえばよかった。

しかしだ。

 

 

「そのお祭りが気になるんですか?」

 

 

「あぁ、このパーティーでお祭りとか行ったことないしな、できれば行きたかったけどちょうど期間が重なったからな」

 

 

「こう言うのはあれですけど、私も毎年、挨拶としてお祭りには参加していたんです。ですが、皆さんで騒いで楽しむというよりは、お祈りをして静かに楽しむものなので、それほど楽しいものではないですよ」

 

 

「え、そうなの?」

 

 

 これは予想外だ。

エリスのためのお祭りだと思ったら、祈りを捧げる感謝祭だったとは。

少し残念だが、エリスからしたらやっぱり大切な日だろう。

できたら参加したいのだが。

 

 

「まぁ、こっちも期限付きだからな。遅らせる訳にはいけないよな」

 

 

「で、でも一つ、エリス祭といえば花火大会といわれるものが、最終日に行われます。早く終わらせて、テレポートで帰ってきて見るのはどうでしょうか?」

 

 

 花火大会だと!?

相変わらず、文明が遅れているのか進んでいるのか、ごちゃ混ぜすぎて頭を悩ませられるが、そんな一大イベント見逃す訳にはいかない。

 

 

「そうだな。さっさと終わらせて、みんなで見たいな」

 

 

 上り始めた太陽の薄い光が部屋を照らす中、アイリスはただ静かに、俺に笑い返した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 祭の用意でいつもより賑わうメインストリートを抜け、いつものあの店を目指して通りを歩く。

 

 

「こちらはいつもと変わりませんね」

 

 

「祭の中心はメインストリートの大通りをまっすぐだからな。住宅地側は寂しいまんまだよ」

 

 

 というわけで、魔道具店に行くと言うとほぼ絶対ついてくるエリスと一緒です。

まぁ、なんというかこの前の一件以降、いつも通りの調子に戻ったのか、バニルにカチコミに行こうするいつものエリス戻っている。

元に戻ってくれたことは確かにうれしいのだが、バニルのめんどくさそうな顔が今から目に浮かぶ。

まぁ、実力的にはバニルの方が上だから大丈夫だろう。

 

 

「それにしても、今回の冒険。私たちだけなのは初めてですね」

 

 

「ん?あ、そうだな。いつもはカズマ達パーティーと一緒だもんな」

 

 

 実は、今回初めて俺たちパーティーだけの冒険だ。

理由は簡単だ。

単純にカズマを誘ったら断れたからだ。

ここ最近は冒険続きで、あっちこっち国の中を回って、行く場所場所で魔王軍幹部やらと戦ってたせいで疲れたらしい。

思い返せば確かにそうだったと、無理に強要はしなかった。

なにげに、俺たちパーティーだけの冒険で、しかも初めて国の外にでることに心のどこかで楽しんでいる。

ちなみにだが、俺たちが冒険に出ている間カズマたちは、たまたまなった祭の実行委員会で祭を魔改造するらしい。

忙しいもんですね……。

 

 

「あ!ユウマさん。あの方は」

 

 

 突然、驚いた表情でエリスが指差す。

 

 

「あの人って……」

 

 

 そう、そこにいたのは以前アルカンレティアの街道で会ったアクシズ教の残念シスターのセシリーさんだった。

 

 

「何か探しているのでしょうか。さっきほどから、左右を気にして歩いていますが」

 

 

「なんで、この街にいるのかはさておき。今日の昼過ぎには出発したいから、やり過ごそう、って気づかれた!」

 

 

 ちょうどこちらが物陰に行こうとしたとき、目があってしまった。

 

 

「あーー!ユウマ君にクリスちゃんじゃない!!久しぶりー」

 

 

「はい……、お久しぶりですセシリーさん」

 

 

 宝物を見つけた子供のように目をキラキラさせたセシリーさんに少し引きつつも、エリスの方を見る。

……、どうやらエリスも引き気味のようだ。

 

 

「と、ところでセシリーさんはどうしてこの街に?確かセシリーさんは総本山アルカンレティア担当だったんじゃ」

 

 

「あー、それね。実は司祭のゼスタ様からの特命でね、この街のアクシズ教会の責任者に任命されたの!」

 

 

「「え」」

 

 

 空いた口が閉じられないとはまさにこの事か、あまりの衝撃に俺もエリスも次の言葉を出せずにいる。

この街のアクシズ教会の責任者だと。

つまり、これからこの街に住むと。

 

 

「どう、どう?うれしい?もちろん私はうれしいわよ。これからはあなたたちにも毎日会えるし、それに、紅魔の妹にも会えるからね」

 

 

 紅魔の妹……。

なるほど、わかった。

完全に理解した。

あのとき感じた、違和感はまさにあれだ。

あの爆裂マセガキのことだ。

それしかない。

この街にいる、紅魔族は二人。

だけど、ゆんゆんじゃこの人にはついていけない。

そう確信できる。

それなら同族みたいな雰囲気を持っているめぐみんこそセシリーさんの妹?なんだろう。

よし、終わり、閉廷、解散。

 

 

「その、もしかして妹っていうのは……」

 

 

「あ、そうだった!もうこんな時間!せっかく会えたのに、私もういかなくちゃ。今度は教会でゆっくり話ましょ!じゃあ」

 

 

 それの言葉はちょうど12時を知らせる鐘の音に妨げられ、嵐のように現れたセシリーさんは、まさに嵐のように消えていった。

 

 

「忙しい人ですね」

 

 

「ああ、もう疲れた」

 

 

 エリスの苦笑いに答えながらも、今の意味不明な時間は何だったのかと、歩きを再開し始めた。

 

 

 

 

 




今月は2回の投稿だったと、振り返りながら、このまんまじゃ来年の3月までに終わらせられないと焦り始めた投稿者です。
はい、そろそろ前みたいの投稿ペースにしたなーと思ってます。
それが本当に実行できるからさておき、新章です。
ここは完全オリジナルですが、前のあとがきにも書いた通り、カズマサイドはとくに変わりません。
そのため、ぜひ原作をご覧になってください。
そして、ついに今週15巻発売です!
これでなんとかセレナ辺りの設定をしっかり手に入れられて、後半の話しも作っていけます!
終わりの近くなった原作とやっと折り返した今作。
どっちが速く終わるかは神のみぞ知るです。
それと映画楽しみです。
個人的には第3期もやってアイリスを出して欲しいです。
作者様、アクアにもどうか光を。
それでもまた次回もよろしくお願いします

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