「うわー!あれが、世界最大のダンジョン」
馬車から顔を出し、嬉々とするアイリス。
初めての来る場所に胸を踊らしている姿に、自然と笑みがこぼれる。
無論、アイリスだけじゃない。
エリスやゆんゆん、そして俺も、みんなが心の底から楽しみにしているのだ。
「世界最大のダンジョン。このダンジョンを観光地として栄えていて、街の規模はアクセルと同等、その賑わいは王都とさほどかわりがないほどです」
まるでバスガイドのように説明をしてくれる師匠。
その様子は落ち着いているように見えてどこか楽しそうだ。
「ちなみに、他国の境にあるほか、海に面し港を持っていることから交通の便がよく、各地からこのダンジョンに力試しやアイテム集めにくる冒険者が多いことも特徴。私は冒険者を辞めた今でも、素材集めによく来ます」
そう、話によればこのダンジョンで採れる素材はピンからキリまで幅広く、商人の穴場スポットでもあるとか。
ちなみにこのダンジョンの階層は1階からBF99階。
最下層に近づくにつれ、モンスターは手強くなり、採れる素材レア物ばかり。
その一部は師匠の店にも置いてある。
てか、もう師匠が集めて、バニルに横流ししてもらったほうが儲けられるのでは?
「脱初心者から上級者、国の騎士達まで探索に来るのに、未だに最下層に行けたのはわずか4人。しかも、下りる場所がそれぞれ違ってたことから明確なルートはない模様。うわさによればこのダンジョンのどこかには地獄に繋がってる場所があるとかないとか、挙げればきりが無くなるほどいろんな噂がある」
「え、地獄ですか!是非見つけましよう!見つけて埋めましょう。それと先輩の大魔法で水没させて……」
「ストッープ。エリス、俺たちの目的はメンバー全員のレベル40、または最下層へのルートを見つけること。変なことで時間を使うことはできないぞー」
ぶっちゃけた話、最下層へと目指していればレベルもそれなりに上がる。
そしたらすぐに帰るのつもりだ。
正直、最下層はレベル40でもムリゲーだ。
まかり間違って、行けたとしてもそこのモンスターに瞬殺されるオチ。
だから、あくまでも目的は40レベ。
これ一筋だ。
「それにしても」
右手に持った新聞に目を戻す。
安全地帯日本とは違って、さすがは異世界というべきか。
普段のほのぼのさの裏には問題がいろいろとある。
『 少年少女の神隠し事件』、『 魔王軍幹部ついに姿を現す、第一砦危機』、『隣国エルロードレヴィ政権崩壊』、『今年も迫るエリス祭、アクシズ教徒乗っ取りか』。
……。
ふぁ!?
お、落ち着け、俺。
とりあえず、最後の一文は見なかったことに。
……、何やってんだよカズマーー!!
「やっぱ、最下層目指すか」
「え、速く終わらせるのでは?」
「じゃあ、最低でも2週間はここにいるか」
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「お話はお伺いしております。職員一同、皆様のこと心よりお待ちしていました」
気持ちのいい挨拶に出迎えられる。
さすがは公務員、作法が素晴らしすぎる。
特にこの礼!
ホテルマンもびっくりの角度に綺麗さ。
一日中見れいられる。
というわけで、宿よりも先にギルドへと顔出し。
こちらのことは分かってるようで、準備の方は先に進めてもらっている。
「冒険者カードの更新完了です。ダンジョンに挑む際は必ず、このギルドを併用してください。それと、こちらが王国調査員の証明書になります。こちらはダンジョンの係員にお見せください」
「以上が、一通りの説明となります。何か質問などはありませんか?」
「ええ、それなりに理解はできました。親切にありがとうございます」
「かしこまりました。それで、皆様のご健闘お祈りします。あ、失礼しました!アイリス様。クレア様からつい先程ご連絡がこのあと、奥の連絡室にお願いします」
「ご丁寧にありがとうございます。もう、クレアったら。皆さんは先に宿に行っててください」
「さすがに、一人にはできません。私もついて行きますね」
「おう、エリス頼む」
クレアさんの圧倒的な過保護に言葉を失う。
いや、思い返せばアイリスを見る目がかなり危なかった気がする。
王都は大丈夫なのか?
あの舐め回すような目つき。
スキル、野獣の眼光Aランクだな。
「それじゃあ、宿に向かうとして……」
いや、宿に向かいたいのは山々だが、あの調子だと軽く日暮れまではかかるだろう。
それなら、ダンジョンの下見やらやりたいが。
「おう、兄ちゃんが噂の魔法使いさんかい?」
後ろから野太い声がくる。
振り返れば、あきらか重戦士な格好をした20代?くらいの男性がいた。
「さっき、ギルドの役人の話を小耳に挟んだんだが、うーむ。その体格と杖すら持ってない必要最低限の装備、盗賊家業かと思ったぜ」
「いやいや、魔法使いだなんて。俺はそんな大したものじゃないっすよ」
「またまた〜。噂によればあのデストロイヤーをやったらしいじゃねえーか」
「おーい、アーチャー。何話してるんだ?」
その後ろから今度は二人。
今度はわかりやすい装備で、槍使いの男性と多分魔術師だろうか、かなりのナイスバディの女性だ。
「ユウマさん、すごいですよ!あの人たちは隣の国の最強パーティーの一角、数多の怪物や、賞金首を狩ってきた人達です!」
「あら、可愛らしいお嬢さん。あなた、紅魔族ね?」
「え、あ、はい!」
「おい、聞いてくれよ。この子たちが噂のパーティーだぞ」
「ほーん。……なるほどね」
アーチャーの人から話を聞いて、目を細めるランサーの人。
ちょっとして、なにか理解したようだが、なんなのか?
「話によればあと二人、剣士と聖職者がいるようだが。なるほど、君結構鍛えてるだろ?」
「一応、日課なので」
「走ることだけに特質し、余分なものを取った下半身。それに比べ上半身はあまり筋肉がつかないようだな」
「ほう、魔法使いと思ったら、ただの筋肉バカときたか!」
「お前も人のことは言えないだろう。そんな重装備で弓を刀のような振り回すやつがどこにいる。とりあえず、青年。ようこそ、世界最大のダンジョンへ歓迎する」
「あ、ありがとうございます」
このランサーの人、かなりの芸達者だ。
こちらの分析をこんな短時間で、それに、当の本人も必要なもの以外は削いである体。
本物だ。
「噂よりもいい子たちじゃない。良かったわね、アーチャー?」
「さっきから、その噂って言うのは?」
「なーに、ろくでもない嫉妬だ。実績を鼻にかけた、高慢ちきなろくでなしパーティーと言っている者がいてな。実際に役人の話とお主らを見たら、まったく違ったというものよ」
高慢ちきとは心にくるな。
そう言われるのは結構慣れてるが、仲間まで貶されると、言ってる奴をとっちめたくなる。
「まぁ、何にせい。実に話の分かる坊主でよかった」
「話が分かるといえば、例の勇者もそうだったろう?」
「あれは駄目だ。剣の力に頼ってはだけで、ただのもやしだ」
剣の力というとミツルギのことだろうか?
「あの、その剣の使いって魔剣使いだったりします?」
「う?あぁ、あのいけ好かないガキとは違う。本物の聖剣使いだ」
「そう、おとぎ話の英雄。かつて女神の導きによって、魔王を討ち取ったとされる、勇者佐藤の子孫よ」
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勇者佐藤。
この世で最初に魔王を討ち取った勇者。
デストロイヤーのできる、何百年も前の伝承で諸説は色々あり正しいことは分かってないらしい。
話によれば、ベルセルク王国を建国した初代王だったり、魔王討伐後に実は二代目として魔王をやったり、また違う話では、この世界最大のダンジョン、その最終階層の最果てに玉座を構えているやら、いろんな話がごっちゃになっている。
ただ、正確に伝わっているのは佐藤という苗字と女神からチート武器を貰った日本人てことくらいだ。
しかし、よく考えればおかしなもんだ。
アイリスの剣は確かにあの最強の聖剣。
しかも、その最初の持ち主は異世界から来て(多分日本人だが)、魔王を倒したという。
ルーツが同じだからといえ、聖剣が二本あるのはおかしい。
それじゃあ、どちらかが偽物になるからだ。
アイリスのあの一撃は到底偽物とは思えない。
逆に、その勇者の子孫も嘘とは断定できないし。
頭がこんがらがる。
「大丈夫ですか?」
「あ、いや、大丈夫だよ。ただ考えてただけ」
ゆんゆんが心配そうに見てくる。
とりあえず、この話はあとでエリスに聞くとして。
いい加減宿に行こう。
さすがに師匠一人に留守番はあれだ。
「あれ、工藤さん?」
ふと、前を見れば、見慣れた茶髪と神気。
「サツキさん?」
「お久しぶりですね。クリスから話は聞いてます。王都で派手にやったとか」
「派手にやったのはそちらの相方のほうなんですが。あ、そうだ。紹介するよ。えーと」
「後輩のエリスと同期のアクアがお世話になっています。掘り出し屋と冒険者を兼用しているサツキといいます。以後お見知りおきを」
「はい!こちらこそ、いつもエリスさんとアクアさんにはお世話にな、なっています!ゆんゆんといいます
」
こんなに他人と話せたのは生まれて初めてと、泣き始めるゆんゆん。
最近はこの癖が落ち着いたと思っていたが。
俺たちの知らないところでやっぱり、こじらせちゃってたのかな……。
「かなり、シビアな子なんですね」
「はい……」
それにしても、こんな所で会うとは驚きだ。
格好は前に掘り出し屋であった時とさほど変わらないが、冒険をするにも、相方の姿が見えない。
「クリスなら、今ギルドでダンジョンの探索届けを出しに行っているんです。私たち、ここにはよく来るんです。掘り出し物集めにはピッタリなんですよ」
「なるほど、横流しですか」
「そういうことはあまり見ないで下さい」
「はい」
なんという威圧。
目の笑ってない、満面の笑み。
エリスの笑みはこんな所から、受け継がれていたのか。
「ユウマさーん。まだ、こんな所に。さすがにウィズさん一人は寂しそうです……よ」
「お久しぶりですねエリス」
「さ、サツキ先輩!?な、なんでこんな所に!!」
ついに、出会ってしまったか。
動揺が隠せないエリスとにこやかなサツキさん。
てか、エリス、幽霊が出たみたいな反応やめーい。
「私たちの知らないところで、他の女性と関係を持ってたんですね」
「おい、いきなり現れて、意味深な言い方はやめてくれよアイリス」
突如横から現れたアイリスの一言に、エリスが俺の方を向く。
サツキさんはにこやかですね。
あーらま。
こりゃ、ちゃんと説明しとくべきだったか。
さすがに、目の前に突然、自分から権限取って下界に落とした相手が現れて、親しい人と話してたらびびりますよね。
結局、登場人数減らしても、オリキャラやらで増やしちゃうのでプラマイゼロという。
相変わらずの計画のなさです。
なんとか12月中にはこの章終わらせて、年末年始で新章入りたいなと思っているのですが、全く書き溜められません。次回もどうぞよろしくお願いします。