あれから数日、潜ってはレベリング、負けかければ、退散した後に一つ下の階でレベリングの繰り返し。
それなりに効率のいいがいいため、俺なんかは25レベまで上がることができた。
だが、問題もある。
「あ、アンデット……」
「〈セイクリッド・ハイネス・エクソシズム〉!!」
「あの、エリスさん?あれほど、とどめを刺すのは交代でって、それはアンデットも同じって」
「なに、おかしなこと言ってるんですか。なにもいないじゃないですか」
こんな感じでアンデットを見つけるとエリスが倒しちゃうことだ。
それも、わざわざ最上級スキルで灰も残らないくらいにだ。
「こっちの敵は終わりました!」
「こっちもです」
「よし、一回休もう。そろそろエリアボスが出てきてもおかしくないし。休めるうちに休もう」
エリアボス。
この世界最大のダンジョンにて、10階ごとに現れる、いわば中ボス。経験値の塊だ。
そんなエリアボスも2体屠ったのだが、レベルがレベルでそれほど強くなかった。
しかし、話によるとこの30階はダンジョン初心者卒業に繋がる相手。
本気でいかないとこっちが全滅させられる。
だからこそ、やすんでおけるうちに休みたいんだ。
「今日はこの階が終わったら、終わりですかね」
「そうだな。時間的にもまだまだあるし、終わったらどこか食べにいくか」
「そ、それなら!ここなんてどうでしょう!家族向けのレストランで安くてかなりの量があるんですよ」
「な、なんだか楽しそうですね」
女性陣はさっそく食べるところの話を始めている。
どうやら、次のボスで気を引き締めているのは俺だけらしい。
それはそのはずか。この中で一番レベルが低いのは俺で、この中で一番弱いのも俺だ。
そう考えると、正直心苦しい。
ちなみにだが、師匠は別行動だ。
どうやら、新しい取引先でも見つけたようで、朝からバニルの金庫を片手に飛び出して行ってしまった。
バニル哀れなり。
「それにしても、なんか静かですね」
「この階の敵はほとんど倒しましたしね」
「どうやら、このダンジョンの中ボスは一定条件でランダムスポーンらしいどっから来るか分からないから。それぞれ気をつけてくれよ」
「安心してください。いざとなったらこの、聖剣で一撃です!」
「おっと、洞窟内でビーム砲は禁止な」
俺の声が響いたのを最後にダンジョン内は静寂を迎える。
やがて、誰かが強く息を吸い込むと、鈍い音がした。
「きたか」
通路の奥からこちらへと向かってくる音。
その重圧なプレッシャーはまるで魔王軍幹部のものと同等だ。
「くさいです」
「これは筋肉の腐敗した臭い。……まさか!」
エリスが勘づいた時だった。
正面から衝撃波のような咆哮が、体全体を襲う。
一瞬にして体の筋肉を縮ませた咆哮の持ち主は、ダンジョン内の影からその身を現す。
「ドラゴンゾンビ!」
ゆんゆんの動揺にパーティー全体がどよめく。
「いえ、あれはただのドラゴンゾンビではありません!桁違いなスケールと魔力。あれはドラゴンゾンビがリッチーへと進化を遂げている途中の姿。亜種です!」
ドラゴンゾンビのリッチー化。
それを決定付けるように、ドラゴンゾンビの魔力は徐々に上がっていき。
ぎゅらりゅるぅぅぅぅううあああ!!
凄まじい咆哮と共に、アンデットを次から次へと呼び出す。
まさに今、戦闘開始の火蓋が切られた。
「エリス、アイリスでアンデットを叩いて!ゆんゆんは俺と一緒に本命を落とす」
「「「了解!」」」
遅いかかってくるアンデットを、右へ左へとかわしていく。
なるべく、エリスたちの負荷を無くそうと倒すことも考え、斬ってみた。
しかし、これが思ったよりも硬い。
さすが、中ボスの眷属だ。専門職が専門のスキルを使わないと破れないらしい。
「〈 七式結界〉!!」
「〈全剣連続投射〉!」
ゆんゆんの張った捕縛結界の間を通し、聖属性付与の短剣をぶつける。
だが、本体も見た目以上硬く、腐敗した肉は鎧として短剣をはじく。
なんとなくだが、こんなことになるのは分かっていた。
そもそも、短剣を投射して突き刺さるくらいの防御力なんかその階にはいなかった。
だから、用意した。
とっておきを!
「〈六式結界・神威〉」
弾かれた短剣をゆんゆんの張った結界の点と点に突き刺す。
ぎゅらりゅる?
結界魔術の結界は相手の体の関節を軸に結界発現させ、行動不能に持っていくスキル。
なら、この関節に直接、短剣を突き刺し釘付けにしたらどうなるだろう。
場所によるが、捕縛力はより強固に、そして、関節は粉々になりどちみち行動不能だ。
だが、今回みたいな硬い相手はどうするか。
そこは安心して欲しい。
短剣には〈 仮・壊れた幻想〉を付与してある。
つまり、短剣は中の聖気をもとに爆発しながら、皮膚を破り骨を砕く。
鬼畜やら、ど畜生だと思われるが、これこそ確実に相手を無力化できる一手だ。
「チェックメイト。あとはこいつを誰が倒して経験値にするかだが」
「〈 スターバースト〉!!」
「〈 エクステリオン〉!」
どうやら、向こうも終わったらしい。
というとり、うちのパーティー、オーバーキル攻撃を持ちすぎだな。
「とりあえず、ゆんゆんがとどめを刺してくれ」
「え、えい」
脳を完全に破壊されたドラゴンゾンビは見るも無残に朽ち果ててゆく。
こういうアンデットの仕組みは分からないが、心臓が止まっている以上、頭を破壊するのが確実だと思っている。
実際はどうなのだろう。
「案外、呆気ない終わり方でしたね」
「緊張していた自分が馬鹿馬鹿しく思ったよ。とりあえず、このあと行く場所は決めたか?」
「はい!それならさっき、このアイリスちゃんの行きたがった場所に決まりました!」
「それならよかった」
あの数分で話がまとまるとは。
恐るべし団結力というてべきか。
それにしても、俺は意見を聞かれなかったことに少し悲しく思う。
「じゃ、帰るか」
「待ってください」
俺がスクロールを開こうとして時だった。
突然のエリスの静止の呼びかけに一同動きが止まる。
「どうかしましたか?」
「はい、さっきからこちらをジロジロと見られている気がするんです。多分背後を見せたらサクッと」
それは本当突然だった。
エリスの読みは見事に当たっていて、フロアー全体に、声がひびく。
「ブラボー。素晴らしい連携だったよ諸君」
ドラゴンゾンビの現れた通路から一人の男性が姿を見せる。
「友情、信頼、絆、そんなくだらないもので、私の計画が泡になったことを思い出すと今にも、腹のわたが煮えくり返りそうだ」
「あんた、誰だ一体。この階は俺たちしかいなかったはず。それに入口は俺たち側に」
「元からいた。となると納得いくだろう?クドウユウマ君」
「下がってくださいユウマさん!」
「これはこれは赤の他人にいきなり槍を向けるとは、随分物騒じゃないか」
エリスのものすごい剣幕に顔色一つ変えず、男は話す。
いや、顔色を変えてではない。
そもそも、この男は変える感情がないのだ。
あるのは憎しみだけ。
この感じは紅魔の里の……。
「紹介が遅れたね。私はラグクラフト。エルロードの元宰領にして、魔王軍幹部だ。そう、君たち人類にとっては例えることのできない恨みを持つ相手で、私にとって君たちは計画を台無しにした張本人として憎い者。お互いがお互い、殺したいほど憎む間柄さ」
「な、魔王軍幹部!」
「ちょうどいいです。アンデットばかりで飽きていました。あなたを討ち取って、早くアクセルに帰りましょう」
「フハハハハ。討ち取る?そうか、出来るものならすればいい、先程、ちょうど人工の魔力保存庫が出来たところだ」
「!?」
ラグクラフトの後ろから一列に現れた子供たち。
その姿に誰もが唖然とする。
子供たちは白目をむき、ただただ、呆然と泡を吹いていてなんとも痛ましい様になっていた。
「なんて、残酷な」
声にならない怒りをあらわにし、軽蔑の目で睨みつけるエリス。
しかし、その中でアイリスだけは未だに、呆然と驚いていた。
「レヴィ王子……!?」
レヴィ王子。
聞いたことのある名前だ。
いや、その後ろの子供たちもだ。
そう、ここにいる子供たちはみんな新聞に載っていた、誘拐された子供たちだ。
「この、王子には本当に世話をやかされた。浅はかで傲慢。国なんかよりギャンブルばかりで、能力も魔法の素質もまるでない。それなのに、ベルセルクなんかに多額の王女の捜索費なんか出して、おかげで私の計画はめちゃくちゃだ」
「……だが、子供というものは実に良いものだ。中身はどうであれ、純粋な魔力と体力を持っている。おかげで、素晴らしい魔力の電池ができた。さぁ、諸君。来るがいい。ここにいる子達を廃人にできるというのなら、な」
「人間電池なんて……。うっ」
魔法の知識に優れた紅魔の族だから理解出来たのか、ゆんゆんは途端に涙を流しながら、腹の中のものを出した。
「とんだ下衆野郎ですね!魔王軍というのは」
「下衆なのはお前たち人間のほうだろう。人間というのはいつも自分のことばかり。我々、多種族は貴様らたちのせいでどれだけの屈辱を味わったことか」
「だが、魔王様は違った。人族の末裔でありながら、その志しは常に我々のことを思ったことばかり。貴様ら下等な人族に魔王様の全種族平等という崇高な考えが分かるか」
「屑の分際で夢物語ばかり……」
「エリスさん!!」
怒りが爆発寸前なエリスに強い呼び止めが入る。
振り返れば、その声の主はアイリスだった。
「アイリスさん……」
「エリスさんは下がってください。……魔王軍幹部、ラグクラフト。私はあなたを許せません。人を、人を人以下に扱うあなたたちの考えを私は認めません」
「どの口が言うか。元はと言えばアイリス王女。あなたが責務から逃げ、お仲間と冒険ごっこをしたのが、元凶だ。あなたが大人しく、城の奥に座っていれば、レヴィ王子もこの子供たちもこうはならずにすんだ。あなたが私の、魔王様の計画を邪魔しなければ!!」
ラグクラフトは自身の怒りにより、子供たちから魔力を吸い取り、自身の魔力を膨脹させていく。
この魔力の質量、先程のドラゴンゾンビなど比較にならない。
シルビアと同等、下手したらそれ以上だ!
「えぇ、ですから、私はあなたを討ちます。ベルセルク王家の名と、私の懺悔にために。あなたを討ち、民を救います!!」
「やって、見せるがいい。鳥かごの小娘よ!」
叫び声と共に二人の間合いは一気に縮まる。
互いの魔力放出のぶつかり合いによって、ダンジョンの壁は砕け、辺りに沸いたモンスターは本能に従い逃げ始める。
魔法と剣のぶつかり合い。
もはや、俺たちの入る瞬間はない。
その一撃一撃が必殺の威力で互いが即決着を望んでいた。
「〈カースド・ライトニング〉!!」
「〈セイクリット・エクスプロード〉!!」
ほんの一瞬のことだった。
焦ったアイリスの放った大技にできた、僅かなタイムラグ。
それをラグクラフトは待っていた。
「さようならだ、王女よ。永久に眠るがいい。〈ナイトメア〉!」
「クッ!」
我ながら恐ろしい反応速度だと、振り返ってみれば思う。
ラグクラフトが呪文を読む前に体は動いていた。
「〈時止め〉」
俺のスキル発動により、周りの時が止まる。
いや、詳しくは俺の周りの空間が止まるだ。
瞬時に発動させた〈時止め〉のスキル。
自らの周りに結界を張り、その中の時を止めるこのスキルは回避スキルとして最高峰のものだ。
「間に合った」
アイリスの前に立ち、ラグクラフトに対峙する。
残念ながら、このスキルの発動中はなにかを動かしたりと、敵の前にナイフを並べたり、周りに影響を与えることはできない。
できるとしても、手持ちの銃の装填だけだ。
つまり、アイリスをどかしたり、ラグクラフトに危害を加えたりはできない。
なら、俺がアイリスの変わりにこのスキルを受けるに他わない。
スキルの感じ的に、睡眠系だろう。
俺と比べれば、あの三人の方が力もあれば知能もある。
ラグクラフトを何とかしてくれるだろう。
あとは、起きたりするのはこっちからできると信じて、スキルを解除するだけ。
「時止め〈解除〉」
時が動き出したと共に、体にとてつもないだるけを感じる。
「なん、だと」
ラグクラフトは間抜けな声をかきけすように悲鳴が響く。
「ユウマさん!!!」
声の主は誰だったのか。
悲痛に嘆く、彼女の声を最後に俺の視界は暗くなった。
次週は2話くらい投稿できたらと思っている、うぷ主です。
ついにfgoはボックスイベントですね。
皆さんはどれだけの開けるのでしょうか?
自分はなんたか初日で一枚礼装を泥できたので、200は越えたいなーと思ってます笑
ちなみに、僕はちょくちょくボックスを開けていくのですが、皆さんは貯めてから開けますか?それともちょくちょくですかね。
とりあえず、僕はティータイム凸目指して走ります笑