この素晴らしい仲間達に救済を!   作:よっひ。〜

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ある人がこう呟いた。
すべての人が幸福を望むということ、誰かが不幸を背負わないといけないと。
だから、彼女は背負ったのです。
限りない不幸を。
誰かがこう呟いた。
誰かに求められないということは、誰もそれを求めないと。
だから、彼女は霞んだのです。
誰にも求められなかったから



第六章 防衛決戦 アクセル編
第49話 変わったものと変わらないもの


 

 

 

 

 

 

 暗い。

何も寒いし、何も見えない。  

なんだ、これ?

 

 なにかを踏んだ気がした。目も慣れてきたのか、よく見ると人の手のようなものが……

 

 

「……て、助けて……。……助けてくれ!」

 

 

 俺は逃げた。とにかく走った。

振り返れば、ゾンビのような人々が俺に手をさしのばしてくる。その人々の目は、まるで何かを恨んでいるようで、果てしない憎悪だけがそのにあった。

 

 

 

 

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 目を覚ますと、部屋が少し寒いことに気づく。そう、この世界で過ごす二度目の秋がきたんだ。

 

 

「寒い」

 

 

 開けっ放しの窓を閉め、部屋を出る。

この一年で変わったことと変わらなかったことがある。

まず、変わらなかったこととして、朝練として週に五回はジョギングをしている。まぁ、ジョギングといってもそれなりにペースは速い。

 

 

「あ!やっと起きてきました」

 

 

 でもって、練習をしない日は一番遅く起きてくるということ。スイッチのオンオフで起きる時間が変わる俺は、毎回腹を空かしたアイリスに急かされる。

 そして、変わったことと言えば。

 

 

「……。あ、お、おはようございます」

 

 

「お、おう。おはよう」

 

 

 エリスと恋人同士になったことだ。

それにしても、なぜ、お互いぎこちないのか。これには少し訳がある。俺が朝練をしない日は一緒に寝ているのだ。イチャイチャしているのとは少し訳が違う。実の所エリスは、紅魔の里でシルビアと戦った時に負った霊基の傷が治ってなかった。アクア祭の晩、その事を告げられどうするか話し合って、考えた結果、一緒に寝る結論に至った。

詳しく説明すると、どうやら、神の霊基は人の魔術回路とそんなに大差がないらしい。ただ、唯一の違いがあるとすれば神の霊基は自己再生ができる所だ。そのため、本来なら、致命傷も一日二日安静にしておけば治る。

 しかし、今のエリスはそうはいかないらしく、下界に落とされた際、女神としての権能をサツキさんに限定されたらしい。そのせいで、天界からのバックアップの魔力も使った分の最低限しかこないで、霊基の修復に割けないでいるとのこと。

 

 ということで、俺はエリスに魔力補給をすることになった。え、魔力補給で一緒に寝る意味がわからん?まぁ、実際のところ魔力補給にはドレインタッチという、リッチーのスキルでやる手もある。だが、そのときの俺らはその場の雰囲気で粘膜による補給ぐらいしか浮かばなかったのだ。案の定、一線を越えることはなかったが。正直なところ、目を合わせるとお互い恥ずかしくなるだ。

お互い酒で酔った状態なら、雰囲気的でそのままもあるかもしれない。

 だが、女性経験無し+奥手×DTが俺を完全に縛り上げ、そんな手を使わせようとはしないのだ。

まぁ、そんなこんなでキスをしては寝てをもう2カ月も続けてる。

 

 

「それじゃあ、いただきます」  

 

 

 はやくはやくと、アイリスに引っ張られ食卓につく。

それにしても、今日はいつもにまして豪華。

エビフライなんて朝の食卓にならんでる。

朝からなかなか、おもたいものだ。

 

 

「あれ、そういえばゆんゆんは?」

 

 

「ゆんゆんさんなら朝からウィズさんのお店でお手伝いに行ってますよ」

 

 

「なるほど。あ、アイリス、ソースお願い」

 

 

「どうぞ」

 

 

「ありがと」

 

 

 他愛のない会話。

これも俺たちの変わらない物だ。

 

 

 朝飯も済んで何をするか。

アイリスはなにやら、めぐみんと内緒の集まりがあるとかでさっき家を飛び出したところ。

エリスは洗濯物だし、俺だけが暇人だ。

……て、これじゃあただのニートじゃないか。

と、とりあえず散歩でも行くか。  

 

 

 

 

 

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 たどり着いたのはカズマ邸。

結局いつもカズマのところにたどり着いてしまうが、決して友達が少ない訳ではない。

逆に家を持ってる冒険者が珍しいのだ。

 

 

「カーズーマ!」

 

 

「なーあーに!」

 

 

「入れてくれ」

 

 

「そこはト◯ロパロじゃないのか」

 

 

 期待を裏切らないツッコミに少し感動。

それにしても、ここはいつ来てもおもしろい。

使いきれてない個室に、多分アクアとカズマがインチキに引っかかって買ったエセ高級品の装飾品。

その中に稀にある、きっとダクネスが持ってきたであろう、本物の絵画や壺を探すのも面白さの一つだ。

異世界に来てまで一軒家に住み続ける俺からすれば、うらやましい。

 

 

「あら、ユウマじゃない。こんな所まで来て、ひきニートのお世話なんてご苦労ね」

 

 

「まぁ、どちらかと言えば俺の遊び相手になってもらいにきたんだが。ほれ」

 

 

「流石ユウマさん!これ世界で五本の指に入る高級お酒の女神殺しじゃない!」

 

 

「この馬鹿が調子に乗るだけだから、持ってなくていいぞ。てか、アクア。お前、一人占めするきだろ?」

 

 

「当たりまえじゃない。これはユウマが私にくれたものよ。DTくそニートにはもったいなくてあげないわ。べーだ」

 

 

「んだとクソ女神!人が下手にでてれば好き放題言いやがって。〈スティール〉!!」

 

 

 アクアの腕に大切に抱えられた高級酒は、輝いたカズマの手へ。

わかってはいたが、ここまで予想通りの展開になるとは。

てか、カズマのスティールはチートすぎる。

 

 

「これは没収だアホ女神!お前には一口も飲ませねぇー」

 

 

「そんなー、カジュマさん!私が調子乗ったのが悪かったから。一口だけでも頂戴」

 

 

「駄目だ、駄目だ!そんなに言うなら今すぐツケを払ってこい。毎回俺の名義でツケやがって。店に入れば請求される俺の身にでもなれ」

 

 

「まぁ、そこまでにしといてやれよカズマ。気がつけば、高い酒ばかり並んでて、毎晩エリスの悪酔いで困ってるのをアクアには助けてもらってるし」

 

 

「いーや、ユウマ。こいつを甘やかすのはいけない。そうやって調子に乗らすからこうなるんだ。てか、アクアお前、毎回ユウマの家でいい酒飲ませてもらってるんならいいだろこれくらい」

 

 

「そうはいかないわ。私だってまだその子飲んだことないもの」 

 

 

 終わりのない論争。

まぁ、アクアに助けられてるのは本当だ。

正直なところアクアよりエリスのほうが酒癖は酷い。

どっちもどっちなように見えるが、そもそも、悪さが違う。

アクアは飲んで暴れて、最後は吐いて終わる。

しかし、エリスはアクア以上に酒に強く、まず吐かない。

しかも、アクアと違い治すことより癒すことに特化しているせいで、二日酔いがまずない。

そのため、終わりが果てしなく遠く、酔うと性格が変わって、酒を強要してくる。

これを振り切るのがとにかくだるく、飲んでる酒も度数が高いせいで、飲んだらこっちがすぐ酔う。

この前なんか、エリス勢いに負けて遂に飲んでしまった。

しかも、運が悪いことにめちゃめちゃ度数が高いやつで、一杯で記憶が曖昧にまった。

詳しくは聞いた話になるが、酷く酔った俺は聞けば、恥ずかしくなるようなことを言ってエリスを押し倒したらしい。

エリスもエリスで結構酔ってたこともあって、アイリスやゆんゆんがいるなかで、行為の了承を軽くして、脱がされ始めたらしい。

思い返せば、それらしいことをした記憶があるちゃある。

しかし、そのあとのことはどうしても思い出せない。

気がつけば朝になっていて、アイリスとゆんゆんからの視線が痛かった。

 

 

 ともあれ、それ以降我がパーティーでは酒の規制を強くして、以来アクアに酒を飲んでもらっている。

そんじょそこらの酒なら酔わないのに、エリスの酒はレベルが違いすぎる。

 

 

「とりあえず、これはお預けだ。ユウマ、この馬鹿を見張っててくれ。片付けてくる」

 

 

「おう」

 

 

 そういって部屋を出ていくカズマ。

きっと自分の部屋だろうか。

 

 

「まぁ、落ち込むなよ。同じの買ってきたら飲ませてやるから」

 

 

「……」

 

 

 アクアの様子がおかしい。

急にだまりこんで俺の顔を見てくる。

 

 

「どうしたんだよ、いきなり「あんた、死ぬわよ」……へ?」

 

 

 いきなり物騒なことを言う。

マジでどうしたんだ?

 

 

「死ぬってどうして」

 

 

「最近、怖い夢見るでしょ。憎悪を持った人たちに追いかけられる夢」

 

 

「どうしてそれを」

 

 

 言葉を失った。

いくら女神でもここまで見透せるものなのか。

 

 

「そこまで侵食してたのね」

 

 

「え?」

 

 

「こっちの話よ。とりあえず、あんたは死ぬわ。前に話した話覚えてる?」

 

 

「爆裂魔法とインストールは最大で3回しか使えなくて、それ以上使ったら死ぬってやつか?」

 

 

「そう。あんた前に蛇と戦ったとき、一回爆裂魔法使ったわよね?あと2回。それが限度だった。だけど、話が変わったわ。あんたはあと1回爆裂魔法か大技を使ったら、運がよくても半分自分が無くなるわ」

 

 

 自分の半分が無くなる。

身体が無くなるんじゃない。

精神や感情、工藤悠真という人間の崩壊。

なんとなく察してはした。

しかし、それがあの夢とどう関係があるのか。

俺はそれが知りたい。

 

 

「あの子は、エリスは我慢強い子なの。世話焼きで面倒見がよくて、いつも他人のことばっか。自分ことは後回しで、結果としていつも背負い込んでばかり。それがあの夢。理不尽な死にかたをして、行き場のない怒りがあの子に向けられたの。それでもあの子は背負うしかない。多分、それしか知らないの」

 

 

「本当、私はあの子に押し付けてばっかだから言えないけど、あの子は背負い込み過ぎて今にもパンクしそうよ。あんたが死んだら、本当に壊れちゃう。だからね……」

 

 

「死なないで。あの子の隣にいてあげて」

 

 

 それは、今まで見てきたアクアの中で、一番誰かのためを思った表情だった。

他の誰かより、あのサツキさん以上にエリスと一緒にいたアクアだからこそ言える言葉。

だけど、

 

 

「約束はできない……」

 

 

「エリスを傷つけるやつがいるなら、俺はそいつを倒す。怪物だろうと、世界だろうと、あの夢だろうと。俺はエリスを守るって約束したから」

 

 

 目の前の女神は悲しい顔をする。

俺は彼女の期待に答えることなんてできない。

だから、約束をすることはできない。

でも、もし俺が死ぬことでエリスが自分を傷つけることになるなら。

俺は、守らないといけない。

隣にいて守り続けること、それが俺の役目だから。

 

 

 

 

 

 




美遊がでないーーー!!
突然取り乱してすいません。
あまりに出ないもので、投稿が遅れました。己運営(運営のせいにするな)
次回こそはもっと早く出すんで、お楽しみに!
そして皆さんのfgoにも美遊が出ますように!!

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