俺、佐藤和真から見た工藤悠真は、不思議な人間だった。第一印象は、ザ・スポーツマン。人生で多分こういう奴とは一生関わらないと思ってた人種だった。だが、これが話してみれば以外と気が合う。努力家の癖に妥協を知っていて、そのくせ突き通すと決めたら命すら捨てて突き通す。守りたい者のためなら自分すら簡単に捨ててしまう。こいつには自分が無いのかと心底驚かされた。
ぶっちゃけ、俺は怠惰だ。こいつみたいに一生懸命になったことなんかない。それでも、俺は自分と真逆なこいつに共感してしまった。
王都での戦いは俺と悠真との根本的な考えの違いから生まれたものだった。アイリスに答えを出させたいあいつと、無理矢理でも助けようと、アイリスの手を引っ張ろうとした俺。その結果アイリスは俺じゃなく、悠真の考えを答えにした。
正直、あのとき俺は悠真に嫉妬はしなかった。逆に、この考え方こそあいつの生き方だと納得した。助けようとしたのに、結局自分のために走った俺。最後までアイリス自身を尊重し、考えた悠真。冷静に考えた時、俺は工藤悠真という人間を完全に理解した。
他人を幸せにすることで自分の存在意義を示そうとする人間。それが工藤悠真だった。よく、あいつは『周りに認めてもらいたいだけだ』と自虐的に言っていた。だから、周りを救うのも認めてもらうことの手段だったと。正直、俺は最初の頃ピンとこなかった。
しかし、言葉を交わして、行動を共にして、王都でぶつかりあったとき、ようやくわかったのだ。結果的に王都の時は、アイリスを幸せにして、多くの仲間から讚美をもらっていた。
しかし、どれだけ讚美をもらっても、あいつは気づかない。なぜなら、今まで褒めてもらったことがないからだ。結局あいつに気づかせるには寄り添うほかがないのだ。
だから、俺は悠真に共感すると共に同情した。こんな悲しいやつがいていいのかと同情した。
これが俺、佐藤和真から見た工藤悠真だった。
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私から見たエリスは本当にかわいそうな子だった。何に対しても一生懸命に取り組む。
それが評価されて、私と同等の地位まで登りつめた。しかし、結果は評価されても、彼女自身を評価するものはいなかった。当然私もエリス自身に心から寄り添うことはなかった。
寄り添う資格が私には無かったの。私はサツキみたいに何か目的を持っていたわけでもなく、エリスみたいに真面目でもなかった。
だから、あの子の「先輩」て言葉を聞くたびに息苦しかった。呼ばれる資格なんてないから。あの子の背中にどれだけの苦しみが乗っかっていたのか。幸福の女神なのに人々の憎悪と不幸を背負うしかなかったその背中を見てみぬ振りをした私には。何もかもを押し付けた私には、彼女に呼ばれることも寄り添うことも評価してあげる資格はなかった。
だから、私は願った。いつかあの子がいい人と出会うことを。その人と心から寄り添ってあって、辛いこと悲しいことを共感できることを。そして、エリスという一人の女の子としての評価をもらうことを。
私ができなかったことを、その人にしてもらえるように。
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「あ、もうこんな時間ですよ!」
「マジだ!悪いそろそろ帰らしてもらう」
気がつけば日も落ちて、外は真っ暗な状態。
なにかを忘れていたかのように席を立った二人の姿はまるで仲のいい新婚さんのようだ。
「二人ともお腹空かせてなければいいんですけど」
「最悪なんか買ってくしかないな」
晩御飯のことを考える二人を見ていると、こっちまで幸せな気分になる。
「それじゃあなカズマ。また来る」
「……待ってくれ」
扉を開ける悠真を引き留める。とっさに呼び止めたから何を言うか決めてなかった。どうしたかという顔でこっちを見てくるが、なんて話すべきか。
「なぁ、カズマ」
「……ん?」
「紅魔の里の道中の話覚えてるか?魔王を倒したらどうするかってやつ」
「ああ、覚えてるよ」
その先のことはその時の考えると言った悠真。あのときのことは色濃く覚えてる。
「俺さ、桜を見たいんだ。エリスやアイリスにゆんゆん。そしてカズマたちと」
安心した。
自分のことを簡単に捨てて、突っ走っていた青年はこれからも変わらずに走り続けるだろう。だが、その突っ走った先のゴールが明確なものなら。たとえ、奈落に堕ちようと、道を見失ってもたどり着くことができるだろう。
「ああ、いいなそれ」
カズマとユウマが話しているうちに私も話しておこう。
「ねぇ、エリス」
「なんですか?先輩」
不思議な顔を浮かべる彼女はいつものように私を呼ぶ。
私が聞きたかったこと。私が誰よりも幸せを願った子に、今までどうしても聞きたかったこと。
それは……。
「幸せ?」
私の問いに彼女はそっと微笑む。
「はい!幸せです」
それが、聞きたかった。この子のこの答えを聞けただけで、下界来た意味があった。
屋敷を出ていく二人の背中が、建物の影に消えて行くのを見守る。
「ねぇ、カズマ。今日は私がご飯作ってあげようか?」
「俺が作るよ。だって、お前の料理ってマヨネーズかけご飯だろ?」
「失礼しちゃうわね。エリスに料理を教えたのは私なんですけどー」
「あー、分かった分かった。もうめぐみんたち帰って来るから。とっとと取りかかるぞ」
秋の風が玄関の中に入ってくる。
その風はどこか寂しいものだが悲観するものではなかった。
突然ですが、僕はカズアクがめっちゃ好きです。
もうね、何がいいかなんてたくさんあって書ききれないんですけど。
あえて言うなら二人の距離感なんですよ。
ほかのメンバーと比べてアクアとカズマは過ごした時間が多いんですけど、だからこそ、二人ともお互いを理解している。
それでいて二人とも、ただの人、ただの女神なんですよ。
別に才能があるわけでもない、権力を使うわけでもない。
ただ、怠惰なだけ。
そんな似た者同士な二人の関係が、僕は好きです。
ちなみに、ユウマとエリスもこの二人のような関係を参考にしてます。
まぁ、性格が二組で真逆にしていますが。
今回は自分とは真逆な性格で同じ立場な人から見た話でした。
平和な時は一瞬で過ぎ、次回から話が進みます。
お楽しみに!