この素晴らしい仲間達に救済を!   作:よっひ。〜

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閑話 女神からまごころを込めて

 

 

 

 

それは、私がまだ天界にいた頃のこと。

 

大切な人がくれた、大切な味。

 

甘くて、優しくて、あたたかくて──どこか不思議なお菓子だった。

 

『それはね、私があなたの先輩だからよ』

 

泣きじゃくる私の手を握り、そっとぬくもりをくれた人。

 

この香りに触れるたびに思い出すのは、そんな彼女の背中だった。

 

ーーーー ーーー ーー ー

 

いつもの朝。変わらない食卓。

 

それなのに、どうしてこんなにも心が和むのだろう。皆で囲む朝ごはんは、やっぱり特別だ。

 

「いや〜今日もエリスの飯は最高だな!」

 

「まったくです。三食このクオリティを味わえるなんて、幸せ者ですよユウマ」

 

「だよな〜。エリスには感謝しないとな。あ、めぐみん、醤油取ってくれ」

 

「はい、どうぞ」

 

「サンキュー」

 

さて、目玉焼きの黄身に醤油をちょいと垂らし、それをウィンナーに絡めて──って、ん?

 

「……おいめぐみん。貴様、なぜここにいる?」

 

「たまには好敵手に我が爆裂道を見せるのも乙なものかと。あ、すいませーん!ごはんおかわりを!」

 

こいつ、自由すぎるだろ……。いくら友達の家でも、常識ってもんがだな。

 

「ぼーっとしてると、ご飯が冷めてしまいますよ? ねぇ、アイリス」

 

「たぶんユウマさんはお頭さんに遠慮を覚えて欲しいんだと思いますよ」

 

「そうケチケチしなくてもいいじゃないですか。食卓は賑やかなほうが楽しいじゃないですか! ゆんゆんスキあり!」

 

「ちょっ、あたしのタコさんウィンナーがぁぁ!」

 

「最後まで残しておこうなんて、うじうじとしているからいけないのです!」

 

めぐみん、やりすぎだぞ。誰だってお気に入りは最後まで取っておきたいものなんだから。

 

「お待たせしました、ごはんのおかわりです“お嬢様”」

 

「ありがとうございます! では朝食の続きを──えっ!?」

 

「「「ええっ!?」」」

 

一瞬で静まり返る食卓。全員が同時に、エリスを凝視した。

 

「どうかしましたか?」

 

「あの、エリスさん……その格好って……」

 

「あ、これですか? メイド服ですよ! アクア先輩から借りた漫画に描いてあって、ずっと憧れてたんです♪ どうですか? ご主人様♡」

 

朝からテンションMAXのエリスに、箸を動かしていた全員が固まる。

 

「あの、エリスさん。言いづらいんですが……」

 

「実は、私もちょっと……」

 

「どうしたんです? アイリスさん、ゆんゆんさん、そんなにかしこまって」

 

「ええい、焦れったいです! エリス、はっきり言いますが──それ、正直ちょっと痛々しいです」

 

「……え?」

 

めぐみんのストレートな一撃に、エリスの頭上には昭和漫画みたいな「ガーン」の文字が落ちた。

 

……とはいえ、普段のロングスカートからフリフリのミニスカへ、これはこれでアリかも。

 

「いや、メイド服、最高に似合ってるよ。それと、ご主人様コール、おかわりください」

 

「ユウマさんっ……!」

 

「あーあ、もういいです。そういうイチャイチャは二人でご自由に。私たちは食器を片付けますので」

 

呆れつつもどこか微笑ましい空気の中、めぐみんたちは後片付けへ。ここはお言葉に甘えつつ、ついでにあれも頼んでみるか。

 

「耳かきお願いします」

 

「かしこまりました、ご主人様♡」

 

ああ……これはもう尊死確定だ。女神様のご主人様コール付き耳かきとか、もはや冥土の土産。

 

「いい……最高だよ、エリス」

 

「もう……あまり動かないでくださいね」

 

丁寧で繊細な耳かき技術。耳に広がる快感が脳を駆け巡り、五感を包み込む。マジで昇天しそうだ。

 

「ユウマ。男の喘ぎ声はさすがに……どうかと思いますよ」

 

「ユウマさん……」

 

「最低です」

 

誹謗中傷の嵐。だが俺はめげない。……いや訂正。アイリスの「汚物を見るような目線」だけは、ちょっと刺さる。

 

「お嬢様方、あまり旦那様をいじめないでくださいな。それより、そろそろ出来た頃だと思います。冷蔵庫から取ってきますね」

 

「なんと! デザートまで。流石エリスです!」

 

「エリスさんばんざーい!」

 

「ちょ、待って! エリスー! 旦那様コール、もう一杯!」

 

みんな、あからさまにテンション上がってないか? ゆんゆんも笑顔が漏れてるぞ。

 

「これは……プリン! まさにデザートの王道!」

 

「今回は手作りに挑戦してみました」

 

カラメルソースが黄金色のプリンにとろりと垂れ落ちていく。……なんと、神々しい。

 

「ふむ。この素朴な味……お母さんが、お父さんのなけなしの給料で買ってきた食材で作ってくれたプリンのよう」

 

「クレアが初めて料理に挑戦した時の、あの甘くて苦い焦げの風味……」

 

「これ……私の10歳の誕生日。誰も来なかったあの日、お父さんが買ってきてくれたケーキの味です……」

 

……あのさ、全員思い出が違いすぎるんだが。特にゆんゆん、それは切なすぎる。

 

「味の感想がバラッバラなんだけど。……ハム」

 

だが俺も、確かに感じた。懐かしさ。

 

これは──母さんの味だ。

 

部活で結果を出した日は、ほんのり苦味のあるカラメルプリン。

 

結果が出なかった日は、ホイップとさくらんぼ付きの、あまあまプリン。

 

あの味に、何度救われたことか。

 

「母さんが作ってくれた、あのプリンの味がしたよ」

 

「えへへ。実はこのプリン、ちょっと特別なんです」

 

「へえ、隠し味でもあるのか?」

 

「それは……秘密です」

 

ユウマは笑って「そうか」と言った。

 

このプリンは特別──私がまだ新人だった頃。アクア先輩が作ってくれた、思い出の味だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〈カズマ邸にて〉

 

「めぐみんのやつ、朝っぱらからどこ行ったんだ?」

 

「年頃の女の子よ。友達と遊びたいに決まってるじゃない。……はい、出来たわ!」

 

「そういうもんかね。……で、何作ってたんだ?」

 

「プリンよ。ちょっとカズマ、ダクネス呼んできて」

 

久しぶりに作ったけど……うん、上出来。前に作ったのは──

 

「すごいなアクア。このプリン、私が幼い頃になくなった母上の香りがするぞ」

 

「この味……まさか……!」

 

みんな、それぞれの“思い出”を語り始める。

 

──そう。このプリンには、女神の奇跡を隠し味に加えてある。

 

その人にとって、いちばん大切だった記憶をそっと呼び起こす、奇跡のスパイス。

 

私も一口、口に運ぶ。

 

思い出すのは、天界でのこと。

 

『なんで私が失敗したのに、先輩が怒られるんですか!?』

 

『それはね、私があなたの先輩だからよ』

 

神器の管理書を失くしたエリスの代わりに全能神に怒られたあの日。

 

泣きじゃくるあの子に、このプリンを作ってあげた。

 

それまで料理は趣味の程度でしかやってこなかったから、失敗してしまったが。

 

涙でぐしゃぐしゃの顔で、幸せそうに笑ったあの時。

 

私、この子の先輩で、本当に良かったと思ったんだ。

 

「なあアクア。この隠し味、なんなんだ?」

 

「それは秘密よ。当ててみなさい、クソニート」

 

これは私と、あの子だけの秘密。

 

いつか私以外の前でも心から笑えるようにと込めた願いのスパイスだ。

 

 

 

 




今回の閑話はアクアとエリスをメインに書きました!原作より少し女神ぽくアクアを書いてみましたがいかがでしたか?なんだかんだアクアて面倒見がいいんですよ。母性が強いというか、原作のような駄女神様も好きですが、稀にみせる面倒見の良さが好きです笑
次回からいよいよ後半戦に突入します!更新ペースは遅いですがお楽しみに!
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