この素晴らしい仲間達に救済を!   作:よっひ。〜

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第2話 キャベツは飛ぶんです。はい。

 

 

 

「すいません、宅配ですー!」

 

「はーい」

 

「ここにサインお願いします。はい、ありがとうございます。それでは失礼します」

 

 

 

 下級モンスターを倒しても大した稼ぎにはならないので、装備が整うまでは宅配のバイトをすることにした。ちなみにエリスは、自分を崇拝しているという教会の手伝いに行っている。

 

 昨日は人生で初めて女の子と一緒に寝たわけだが――とりあえず、最高だった。女の子って甘い匂いがするんだな。いつも男の汗臭い中で過ごしてきた俺にとっては、まさに天国そのもの。

 

 ……それはさておき。これで今日のノルマは全部終わったし、さっそく報酬をもらいに行こう。さて、いくら稼げたかな。

 

 

 

「リーダー、ただいま戻りました!」

 

「おう、新入り! 随分早かったな。ほら、給料だ」

 

 

 

 3万エリスだと……?

 

 たった5時間走り回っただけでこの額は大きい。カエルと戯れるよりずっと楽だ。

 

 

 

「こんなにもらっていいんですか?」

 

「お前、他の連中の倍は配達こなしてたぞ。これくらい渡さないとな」

 

 

 

「リーダー、さっき出たやつが、配達物ひとつ忘れていきました」

 

「ったく、しょうがねぇヤツだ。これで何回目だよ……」

 

 

 

 何度も配達物を忘れるなんて、現代日本なら一発アウトだ。

 

 

 

「リーダー、俺が代わりに行きましょうか? 冒険仲間との集合まで時間ありますし」

 

「ああ、悪いな。行き先は魔道具店のウィズさんとこだ。頼むぞ」

 

「了解っす。それじゃ、行ってきます!」

 

 

 

 というわけで郵便局を出て15分、目的の魔道具店に到着した。人通りの少ない路地に構えられたその店は、外も中もひっそりと静まり返っている。とりあえず、ドアを開けて中に入ると――

 

 

 

「いらっしゃいませ!」

 

 

 

 そこには、豊満な胸を持つ美女が立っていた。

 

 

 

「……あ、すみません。宅配です。ウィズさんでいらっしゃいますか?」

 

 

 

 どうしよう、顔が直視できない。なんというか、目のやり場に困る魅力がある。

 

 

 

「はい、私がウィズです。お仕事、お疲れさまです。……あの、なにか?」

 

「い、いえ、なんでもありません! こちらにサインをお願いします」

 

 

 

 サインをもらっている間、気をそらすために店内を見回す。

 

 

 

「いろんな物を扱ってるんですね。他の店では見かけないものばかりだ」

 

「私の趣味で集めたものばかりなんです。あれ……もしかして、あなた冒険者さんですか?」

 

「昨日、冒険者になったばかりです。一応、ウィザード職です。名前は工藤悠真です」

 

「あら、奇遇ですね。私も元ウィザードなんですよ。冒険者はもう引退しましたけど。あっ、そうだ! よければ、何か持っていきませんか? 最初は色々と大変でしょうし」

 

「え、いいんですか?」

 

「高価なものは無理ですけど、この辺のなら大丈夫ですよ」

 

 

 

 店先には回復ポーションや爆薬、初級〜中級の魔法が記された魔道書などが並んでいる。その中で、やけに年季の入ったボロボロの魔道書がひとつ、目に留まった。

 

 

 

「……結界魔術?」

 

「それは古代文字で書かれた魔道書ですね。この文字が読めるなんて、すごいですね」

 

 

 

 読めるもなにも、これは日本語じゃないか。文字の雰囲気からして、他の転生者が書いたものだろう。

 

 

 

「少しだけ、古代語をかじってたもので。これ、いただいてもいいですか?」

 

「ええ、構いませんよ。読める方なんて滅多にいませんし、置いておいても仕方ないので」

 

 

 

 ……そういえば、魔道書ってどうやって使うんだ?

 

 

 

「すみません。魔道書って、どう使えばいいんでしょうか?」

 

 

 

「えっとですね、魔道書には大きく2つの種類があります。ひとつはスキルポイントを消費してスキルを取得するタイプ。もうひとつは、読んで練習することで身につけるタイプです。この魔道書は前者ですね。ただ、スキルによっては取得に条件がある場合もあるので気をつけてくださいね」

 

 

 

 とりあえず、魔道書を開いて確認してみる。

 

 

 

「……今の段階だと、三つしか習得できないみたいだ。他はレベルが足りなかったり、ジョブチェンジが必要みたいだな。じゃあ、習得できるものは全部覚えちゃおう。って、消費スキルポイント少なっ!」

 

 

 

「魔道書は、限定スキルを習得できるだけじゃなく、スキルポイントの消費が少ないのも特徴なんですよ」

 

 

 

 なんだこれ、魔道書って実質チートじゃん。とりあえず、この3つを習得っと――

 

 

 

取得スキル

 

・固有時間制御

 

・三式結界

 

・固有空間

 

 

 

 よし、完了。そろそろエリスとの待ち合わせ時間か。

 

---

 

「そろそろ仲間との待ち合わせ時間なので行きますね。今日はお世話になりました」

 

「いえいえ、こちらこそ楽しかったです。今度はお仲間さんも連れてきてくださいね」

 

 

 

 軽く会釈して店を後にする。せっかくだし、さっき覚えた魔法を試してみるか。たしか――加速の魔法があったな。

 

 

 

「《固有時間制御 二重加速(タイムアルター・ダブルアクセル)》!」

 

 

 

 周囲の動きがスローモーションのように遅くなる。

 

 この魔法は、自分の体内に“固有結界”を展開し、その中だけ時間の流れを速める技術らしい。とりあえず通りを抜けて、ギルド前まで出よう。

 

 

 

「ぐはっ……!」

 

 

 

 解除! やばい、身体中がだるい。特に肺と心臓が張り裂けそうなくらいキツい。

 

 少ししか使ってないのに魔力の消耗も激しい……この魔法は緊急用にしておこう。体が重すぎる。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 ギルドに入ると、右奥の席でエリスが手を振っていた。

 

 

 

「ユウマさん! こっちですよ!」

 

 

 

 ああ、癒やされる。この声だけで心の疲れが和らいでいく。……が、肉体疲労のほうは全く和らがない。

 

 さっきの魔法の反動がまだ残ってる。

 

 

 

「すごく疲れてますね。とりあえず回復魔法かけますね。《ヒール》」

 

 

 

 だるさが一気に消えて、体がふわっと軽くなる。まるで風船になったみたいだ。

 

 

 

「ありがと。おかげで助かったよ。……そういえば、大丈夫だった? あの、正体バレたりとか」

 

「え? ああ、そのことなら大丈夫です。どうやらサツキ先輩が誤魔化しの魔法をかけてくださってたみたいで……」

 

 

 

 ん? なんか元気がない。さっきより声が沈んでる……下を向いてどうしたんだ?

 

 

 

「どうかした? 急に黙って下なんか見て」

 

「いえいえ、なんでもありませんっ! それよりユウマさんこそ、お仕事どうでしたか? ……というか、さっきからアンデッドの匂いがするんですけど」

 

「え? アンデッド? 俺はまだこの世界で見てないけどな……?」

 

 

 

 エリスがじーっとこっちを見てくる。なんか……こわい。

 

 

 

「ちょっと手を出してもらえますか?」

 

 

 

 言われたとおりに手を出すと、エリスがそっと握ってきた。

 

 え、なになに!? 本当にどうしたの!?

 

 

 

「《祝福を!》」

 

 

 

 全身がやさしい光に包まれ、ポカポカと温かくなっていく。

 

 

 

「エリス、今のって……?」

 

「おまじないですよ。これで大丈夫です」

 

 

 

 さっきまでの真剣な表情が、いつもの優しい笑顔に戻る。

 

 やっぱり、エリスの笑顔は最強の癒しだな……。

 

 

 

『緊急! 緊急! 冒険者の皆様は装備を整えて街の正門に集合してください!』

 

 

 

 ギルド内が一気に騒がしくなる。何があったんだ?

 

 

 

「ユウマさん、急いでください! “あれ”が来ます!」

 

「あれって、なんなんだよ!?」

 

「あとで説明しますから、とにかく急いで!」

 

 

 

 街の正門に着くと、初心者とは思えないほどガチ装備の冒険者たちがずらりと並んでいた。……本当にここ、初心者の街か?

 

 

 

 その中に、カズマの姿を見つけた。

 

 

 

「よっ、カズマ」

 

「おー、ユウマも来てたか」

 

 

 

 カズマの周りには三人の美少女がいた。……あいつ、モテるタイプだったのか。

 

 

 

「異世界来て早々ハーレム作ってるのか~。カズマすげぇな」

 

「やめろ、冗談言うな。こいつらは俺のハーレムメンバーでもなんでもねぇ。見た目はいいけど中身は最悪だ」

 

 

 

「さあ、めぐみん! たくさん捕まえて、今日は飲みまくるわよ!」

 

「今こそ私の秘められし力を使う時……!」

 

「今年はどんな攻撃を受けられるのか楽しみだわ。ジュルル……」

 

 

 

 ……うん、なんかすごい個性豊かだ。

 

 

 

「探しましたよユウマさん! 素人が一人で行動するのは危険なんですからっ!……せ、先輩!?」

 

「……あー! 上げ底エリス! なんであんたがこんな所にいるのよ。って、今日はパッド入れてないのね」

 

「ア、アクア先輩!? な、なんのことですか!? ワワタシハパットナンテツカッテマセンヨ!?」

 

 

 

 え、パッド? てかエリス、めちゃくちゃカタコトになってるんだが……。

 

 

 

「そんなことどうでもいいの! なんであんたがここにいるのかって聞いてるのよ!」

 

「えっと、サツキ先輩が……」

 

 

 

「来たぞーーーーー!! キャベツの大群が!!」

 

 

 

「……もう、あとでにするわ。さあ、キャベツたち! 私の酒代になるのよぉ!!」

 

 

 

 ……キャベツの大群?

 

 

 

「な、なんでキャベツが飛んでるんだよ!!」

 

 

 

「えーとですね、この世界のキャベツは強い魔力と生命力を持っていて、腐る前に自ら旅立つんです。大陸を渡り、海を越えて、人知れぬ秘境を目指して飛んでいくんですよ。出来のいいキャベツは一玉一万エリスで売れるので、かなり稼げます」

 

 

 

 なるほど、説明ありがとうエリス。納得はしてないけど……とりあえずやるしかない!

 

 

 

「おい、ユウマ! 危ない!!」

 

「え――」

 

 

 

 やばい、キャベツの大群が真っ直ぐこっちに……!

 

 

 

「《固有時間制御 二重加速(タイムアルター・ダブルアクセル)》!」

 

 

 

 ギリギリで回避成功。しかも、前より体への負担が少ない……?

 

 

 

「間一髪だったな。よし、俺たちも捕まえに行くぞ!」

 

「お、おう!」

 

 

 

 その後は、結界でキャベツの動きを止めてダガーで刺す……の繰り返し。

 

 結果、俺は30万エリスを稼げた。どうやら捕まえたキャベツの質がよかったらしい。

 

 

 

 エリスも回復をしながら戦って15万エリスほど稼いでいたが、原型をとどめていないものが多くて大幅に値引きされたらしい。

 

 カズマたちは……相変わらず賑やかに騒いでいた。

 

 

 

「今回けっこう稼げたし、宿変えようか?」

 

「いえ、馬小屋のままで大丈夫ですよ。馬たちも可愛いですし」

 

 

 

 でも、美人と一緒に馬小屋生活ってのも……いろんな意味でキツいな。

 

 

 

「この世界には、もう慣れましたか?」

 

「うん、だいぶ。でも……野菜が飛んだり、魚が畑にいるのにはまだ慣れきれないな」

 

 

 

 さっきカズマの飲み会で聞いた“サンマが畑に植えられてた”って話には、本気で驚いた。

 

 この世界の生態系、作ったヤツ正気か?

 

 

 

「大丈夫ですよ。すぐ慣れます」

 

「いや、慣れたくないよ、そんなの!」

 

 

 

 なんか今日は本当にいろいろ疲れた……でも、なんだか楽しかったな。明日はどんな日になるんだろう。

 

 

 

「ふぁ〜あ……おやすみ」

 

---

 

 




キャラの見た目についてですが、ユウマは黒髪で黒目で白と紺色のジャージです。エリスは服装は変わってないのですが、パットをしてません。はい、そのため貧にゅ……、いえ特に変わりはありません。
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