紅茶を飲みながら考えた。このゲームのルールはどのようなものなのか。それがはっきりしない限り本気で戦うことができない。
「クロノエル。1つ聞いていいかい?」
「答えられるものであれば答えるわよ。」
「このゲームのルールはどんなものだい。」
「そういえば、言ってなかったわね。このゲームは私の用意した殺人の謎を人間で説明すればいいのよ。ただし、私は真実を語るとき『赤い文字でそれを語るわ』これを赤き真実というのよ。」
なるほど、なかなか興味深いゲームのようだ。だが、彼女の用意する殺人は密室トリックを使うものがある。この謎を解くのは難しいかもしれないが、赤き真実というヒントがあれば勝てるかもしれない。
「復唱要求されれば、私は答えられるものなら赤き真実を使うわ。答えたくなければ復唱拒否するわ。それと、あなたにサービスでゲーム盤の外ではバアルがあなたに力を貸してくれるわ。」
「随分と気前がいいね。気前がよすぎて怪しいくらいだよ。」
「安心しなさい。バアルは魔女も人間も関係なく契約するような悪魔です。きっと手を貸してくれるでしょう。」
「ご安心を、薫様。悪魔使いが荒いクロノエル様に報復出来るならいくらでもお力をお貸しします。」
確かに72柱のトップの悪魔なら役立つかもしれない。それだけの力があれば知識もかなり持っているはずだからね。バアルは一時的に僕の使い魔というわけだ。
「そういうことなら、早速で悪いが第1ゲームの第1の殺人について戦おうか。」
「へぇ、いきなりやるんだ。薫お兄ちゃんはやっぱり面白いね。何処からでもかかってきなさい!」
まずはどう攻めるか。そこから考えなくてはいけないな。
「薫様。まずはゲームに慣れる事と理解する事が必要です。初手は見本として私が行かせてもらいます。」
「うん。頼んだよ。」
バアルの申し出は嬉しい事だ。確かに不慣れで理解していない今の状況だと勝てる戦いも勝てないわけだ。
「それでは参ります。復唱要求。被害者は源蔵、春香、優香である。」
「その復唱要求を受けよう。『被害者は源蔵、春香、優香である』これは変えられぬ真実である。」
なるほど、こういう戦い方か。ヒントを聞き出して積み重ねれば答えにたどり着けるわけか。それに赤き真実は証拠もいらないわけか。赤で否定されたら簡単に負けるな。
「バアル、見本ありがとう。」
「お役に立てて光栄です。」
「今度は僕から行かせてもらうよ。復唱要求。源蔵、春香、優香が眠っていた部屋は密室である。」
「それも受けよう。『源蔵、春香、優香が眠っていた部屋は密室である』」
「復唱要求。この館のマスターキーは8本である。」
「それも受けてやろう。『この館のマスターキーは8本である』なお、マスターキーは複製を作ることは不可能。ついでにバアルへの感謝の気持ちを込めてもう一つ赤で言おう。『お屋敷の扉全てマスターキーとその部屋の鍵以外では開かない』」
これは難しい、どの角度から攻めても破るのは時間がかかりそうだ。だが、確認できることはしておかなければいけないだろう。
「復唱要求だ。遺体は薔薇庭園の東屋に存在する。」
「受けてたとう。『遺体は薔薇庭園の東屋に存在する。」
「続けて復唱要求。源蔵、春香、優香は東屋で殺された。」
「復唱を拒否する。」
「復唱拒否、つまりは東屋以外で殺されたというわけだね。」
しかし、クロノエルの表情に変化が見えない。もしかしたら、あの復唱拒否は別の意味のものなのかもしれない。
「薫様。騙されないでください。クロノエル様は人間の心を読むのが得意なお方です。復唱拒否も答えられないからではなく。答えたくないからなのかもしれません。後から赤き真実で一気に潰して心をえぐるつもりなのかも知れません。」
「バアル、本気で主人を倒す気みたいだね。それなら、バアルはこのゲームが終わるまで一時的ではなく完全に契約しなさい。その方が気兼ねなく私も戦えるわ。」
「かしこまりました。許可が出ましたので契約します。片手を出してください。」
言われるがままに片手を差し出すとバアルはそっと手を重ねてきた。すると、眩しい光が突然発生した。バアルが離した自分の右の手の甲を見ると悪魔の紋章が刻まれていた。
「これで契約成立です。一緒にクロノエル様を倒しましょう。」
「あぁ。これからよろしくお願いするよ。」
心強い味方を手にしてゲームが動き始めた。初戦はどちらが勝利をするのか。まだ誰にも分からない。