僕達は突然の告白に驚きを隠せなかった。次期当主の座はすでに奪われているなら確かに大人達の話しは無駄だ。当主の隠し財産も彼女の物になる。それを大人が手にするのは不可能だろう。
「僕達は君が次期当主であることを知ったけど、それを大人達に伝えてもいいかい?」
「まだ教えちゃダメ。その時が来たら私が直接言うわ。」
「それなら次期当主様に聞くが、なぜ莉亜と芽琉には教えていたんだぜ。」
「莉亜と芽琉は私を慕っていて言うことも聞いてくれるから、一番信用できる人間として教えたわ。」
つまり莉亜と芽琉は優妃の右腕というわけだ。下手なことをあの2人の前で言ったら直接優妃に伝えられそうだ。
「きゃふふふ。私は次期当主の権限を使う気は無いけど、いざとなれば次期当主として莉亜と芽琉を動かすわ。」
「優妃お姉様。お任せあれ。」
「優妃お姉様。私達はお力になります。」
「It's perfect! 私達はこの南野家をお祖父様から引き継いでさらに偉大なものにしてみせるわ!」
この時僕達3人は優妃、莉亜、芽琉の3人がいつも以上に恐ろしく思えた。だが、僕達は次期当主に逆らう事は出来ない。その方がもっと恐ろしかった。
「まさか次期当主の指輪が出て来るなんて思わなかったよ。」
「あれは本当に存在するものよ。現在わたしがしているのは当主の指輪だけど、あの時は次期当主の指輪を隠し持ってたわ。」
「それにしても、君にあんな野望があったんなんて驚いたよ。」
「うふふ。今回はちゃんと推理しないといけないわよ。だから、私の力を借りたくなったら言いなさい。駒の私が次期当主権限で助けてあげるよ。」
「そんなものに頼る気は無いよ。バアルと僕の2人だけで十分だ。」
しかし、その申し出は悔しいけど魅力的でそれを拒否するのが間違いな気がした。それにクロノエルは憎たらしい笑みを浮かべていた。
「さぁ、時間は過ぎたぞ!第1の殺人の発生だ。現場をよく見て推理して、私を倒してみせよ!」
9月8日午前6時。使用人の照間清子さんが起こしに来た。
「大変です!お嬢様方、お屋敷で大変なことが起こりました!」
とても焦っている様子の清美さんに連れられて僕達はお屋敷の当主の部屋に向かった。当主の部屋に着くとお屋敷にいる人間が勢揃いしていた。大人の制止を無視して入ると、当主と四兄弟全員が死んでいた。
「どうなっているんだよ。どうして親父達が死ななきゃいけねぇんだよ。」
「奏太、今は泣くのをよそう。芽亜里ちゃんや優妃ちゃんの方が悲しいはずだからね。」
「莉亜と芽琉、この扉の魔法陣はなんだと思う?」
「これは黒月の第3の魔法陣だと思います。」
「意味は、魔女は不可能を可能にして奇跡を起こしたり。だったと思います。」
あの3人の口から魔女や魔法陣の単語が出た。普段ならこんな時にそんな話をするなと言うだろうけど、優妃ちゃんが次期当主だと分かった時点で何もすることが出来ない。
「優妃ちゃん、流石に不謹慎ですよ。ご家族や当主様が亡くなられたのですよ。こんな時に魔女の話しはやめなさい。」
それを春香おばさんが言った瞬間、優妃ちゃんは嬉しそうに笑って春香おばさんの向いた。
「口を慎みなさい。私を誰だと思っているのですか。お祖父様から当主の座を引き継ぎし者ですよ。証拠の次期当主の指輪はここにあります。」
そう言って次期当主の指輪をはめた右手を掲げて見せた。その瞬間カラスを身につける使用人は全員頭を下げた。
「隼人さん、これは本物であるかどうか。皆さんに言ってあげてください。」
「優妃様がはめているあの指輪は正真正銘次期当主様の指輪でございます。」
「きゃふふふ。私が本物の次期当主であることが分かったのなら、私に逆らう事は止しなさい。」
「くっ、いつの間にそんな物が渡されたというのですか。」
春香おばさんはまだ現実を受け入れられないらしい。他の大人3人も同様に疑いの目を向けていた。
「これはお祖父様に5年前、直接呼ばれた時に渡された物です。証人は隼人さんと莉亜と芽琉です。」
そこまで言われてはもう何も言うことが出来ない。
「次期当主として言わせていただきます。ここは殺人現場です。これ以上荒らす事は警察の捜査の邪魔になるでしょう。早急に全員この部屋から出ましょう。」
「かしこまりました。次期当主様の命令に従わせていただきます。」
「僕達も指示に従うよ。」
「仕方ありません。我々もここから出ましょう。」
「当主の部屋を出たら一階の客間で籠城しましょう。犯人はまだこの森や屋敷の中にいるかも知れませんから、一箇所に集まっていた方が安全でしょう。」
次期当主である優妃の手によって生きている全員が客間に閉じ込められる形になった。犯人が他にいる可能性もあるが、あの中に犯人が隠れている可能性もある。だから、これが吉と出るか凶と出るか。全く予想ができなかった。
魔女の悪魔の所業は始まったばかりだ。ゲームの本格始動に振り回されることになるだろうが、人間側はそれでも勝てるのだろうか?