僕達はしばらくして対局部屋に戻った。対局部屋にはクロノエルが1人で対戦相手の席に座っていた。クロノエルは僕達を目視すると笑顔を見せた。
「やっと戻ってきたわね。退屈して死にそうだったわ。」
「クロノエル様。再開しましょう。」
「了解したわ。第1の殺人から再開よ。」
「それじゃあ、もう一度推理を披露するよ。犯人は鍵を使用せずに侵入したんだ。孫の誰かであればお祖父様に部屋に入れてもらえる。鍵を使用したのは当主の源蔵だ。これなら中に入り犯行に及べる。後は鮮やかに5人を殺せば完璧だ。これで推理は完成だ。」
僕がそこまで推理を披露すると、クロノエルは歯ぎしりして悔しげな表情していた。
「まさかこうもたやすく破られるなんて。」
「クロノエル様、単純な物では私を止められませんよ。薫様を操作できても私はあなたの手を理解しています。」
「バアル、本当にあなたは優秀ですね。主人を理解して完全に味方として力を貸す。これだから72柱の1位になれるのですね。」
クロノエルは抑えているが今にも発狂して襲ってきそうだった。
僕達は一階の客間で籠城している。次期当主の命令で犯人を警戒して生き残っている大人には4本の銃を所持するようにした。お屋敷の中を移動するときも1人では行動せずに団体で移動することになった。
「まさか次期当主様がここまで命令を出来て、その上全員の安全を最優先に出来るなんて凄いです。」
「確かに春香さんの言うように私の娘はすごいわ。でもね。あの子は本来は恥ずかしがり屋で人見知りでこんな事が出来るような子じゃないんだけどね。」
「この状況だ。何かがあの子を変えたのかもしれないですね。春香さんも城助くんも自分の子が次期当主になれなくて残念でしたね。」
「蓮司くん、君も息子達が当主になる可能性がほとんど無くなった本当は悔しいんじゃないのかい?」
「まさか、悔しいなんて思うわけがないだろう。優妃ちゃんほど当主にふさわしい子はいないよ。」
僕達は今とても危険な状態にある。ここまで空気の悪い状況だと何が起こってもおかしくない。部屋の奥で椅子に座って周りを見回している優妃はそれを警戒しているようだ。
「あの、すみません。優妃様。使用人一同、一度使用人室と厨房に行きたいのですがよろしくですか?」
「剛座さん、すみませんが全員を行かせるわけにはいきません。5人で行ってください。美紅利ちゃん、清美さん、美代子さんの3人は残ってください。」
「おの、優妃様。私と薫様も外に出ていいですか?こうやって長い間缶詰状態だと息苦しくなってしまいますので。」
「まぁ、いいでしょう。剛座さんと薫お兄ちゃんは春香おばさんとお母様から銃を受け取ってください。外に出たら警戒を緩めないようにしてください。どこから犯人が襲ってくるか分かりませんから。」
「かしこまりました。」
「十分に気をつけておくよ。」
僕と剛座さんは春香おばさんと彩芽おばさんから銃を受け取って客間を出て行った。
「それで、美紅利ちゃん。話があるって言うから薔薇庭園までやって来たけど、一体なんの話なんだい。」
「実は私、薫様のことが好きなんです。ずっと前から好きでした。この屋敷から生還できたら一緒にいさせてください。」
僕はこの告白に戸惑った。でも、彼女が本気であるのがよく伝わってきた。だから僕は出す答えを決めた。
「僕も美紅利のことが好きだ。今から付き合おう。生きて帰れたら結婚しよう。」
「うふふ。嬉しい。薫様、ありがとうございます。」
「伝えたいことは全部伝えられたかい。」
「はい。これで大丈夫です。」
「それならお屋敷に戻ろうか。」
そうして僕達は手を繋いで頬を赤らめて一緒にお屋敷に戻っていった。
「おかしいですね。ここに缶詰があったはずなんですが。」
「この間清美さんが色々やってたから、その時にどこかに移動させたんじゃないでしょうか。」
「そうかもしれませんね。」
神威が辺りを見回すと異変に気付いた。
「剛座さん、警戒してください。」
「どうかしましたか?」
「隼人さまと弥勒と業が居なくなった。」
その言葉を聞いた剛座は怯えた表情になった。銃を構えて警戒し始めた。2人で厨房の外に出て使用人室に向かった。使用人室の前に立った途端に2人は驚きを隠せなかった。
「なんなんだこれは、魔法陣なのだろうか。」
「扉がこの状態だともしかして3人は中で死んでいるんじゃ。」
嫌な予感がした2人は大急ぎでチェーンカッターを持ってきてドアチェーンを切って中に入った。ベットの上を見ると3人の遺体が置かれていた。
「そんな、3人とも別々の酷い殺され方をしてる。」
「一体誰がこんなことを。」
「このことを優妃様達に早く報告しなければ。剛座さん、早く行きますよ。」
「あぁ、早く行こう。」
第2の殺人が起きた。次のトリックも人間側は解けるのだろうか?