使用人室で隼人、弥勒、業の3人の遺体が発見された。彩芽おばさんの検死によると死後10分くらいらしい。やっぱり犯人はまだお屋敷の中にいるようだ。
「なんて酷い。遺体が原型を留めている部分が無ければ誰かわからない状態だわ。」
「これは全員見せられない状態ね。」
その酷い有様を目にした優妃は膝から崩れ落ちた。
「そんな、私の責任です。私が外に出る許可を出さなければこの3人は死なずに済んだのに。」
「優妃ちゃんのせいじゃないよ。これは仕方のないことなんだ。僕達のために食料を取りに行って起きた不幸な事故なんだよ。」
僕の慰めの言葉は今の彼女には届かないだろう。完全に自分のせいだと思い込んでるうちは何を言っても無駄だ。
「きゃふふふ。今回のゲームも大詰めよ。どうかしら楽しんでもらえているかしら?」
「こんなゲームを楽しめるわけがないだろう。」
「クロノエル様、早く第2の殺人に行きましょう。」
「それもそうね。私も退屈したくないから早く次のゲームに移りたいわ。」
このゲームも大詰めだが、まだ終わる気がしない。第9の生贄を捧げられて本当のENDを迎えるのだから。まだ終わることはない。
「そろそろ復唱要求をするよ。隼人、弥勒、業は使用人室に居た。」
「その復唱要求を受けるわ。『隼人、弥勒、業は使用人室に居た』」
「さらに復唱要求。隼人、弥勒、業は厨房に行った。」
「受けようぞ。『隼人、弥勒、業は厨房に行った』」
ここで矛盾が生じる。厨房に行ったのに、使用人室に居た。これは殺される前になんらかの方法で使用人室に移動させられたのだろう。
「あっははは!あの3人が静かに厨房を出て行く理由がどこにある?あるはずが無い!私が魔法で移動させたのだから理由など必要ない!」
そこが分からない。理由も無しに隼人さんが部屋を出て行くとは考え難い。何かあるはずなんだ。部屋を出て理由が。
「きしし、莉亜の手によって客間の全員が外に出てないことを証明してあげるよ。」
「ここに来て莉亜の登場か。お手柔らかに頼むよ。」
「きしし、客間は薫お兄ちゃん達が出て行った後に私が簡単な封印を施しておいたわ。特殊な模様を描いておいたシールを扉と窓の両方に貼っておいたのよ。事件発覚までシールは貼られたままだった。つまり『封印された客間から誰も出ていない』アリバイは完璧よ。」
魔女見習いでも赤が使えるなんて最悪な展開だ。
「その他の人にはアリバイがないよ。僕と美紅利は薔薇庭園に居た。剛座さんと神威君も外にいてアリバイがない。外にいる人間には犯行が可能だ。」
「それが不可能なんだよね。『犯行時、薫、美紅利の2人は薔薇庭園にいた』『犯行時、剛座、神威の2人は厨房にいた』これは4人のアリバイがあることを示す赤です。つまり、全員にアリバイがある。殺人を行えるのは魔女だけになるんだよ!」
「どういうことなんだ。全員のアリバイが赤で言われてしまった。」
「きしゃははは!お姉様が楽しそうに遊べてた理由が分かったよ。簡単には思考を停止させない。魔女に勝つことしか考えてない。これは確かに面白いよ。薫お兄ちゃんは最高のオモチャだね!」
魔女見習いってだけでこんなにも最低な性格になるのか。クロノエルの影響は最悪なものしか産まないな。
「あははは。オモチャと言われしまったか。それならトリックを暴いてもっと楽しませてやるよ!」
「きしし、莉亜を楽しませて!初のゲーム参加なんだからもっと遊ばせて!」
「まずは莉亜の密室を破る。バアル、あれは密室であってるよね。」
「あれは完全に密室を構成しています。何人たりとも外に出ることはかないません。」
あれが密室なら出る方法は絞られる。でも、通用するかどうかは分からない。一種の賭けだ。
「それじゃあ、行かせてもらうよ。莉亜は封印された客間から誰も出ていないと言った。しかし、すでに出ていたのならそれは意味をなさない。」
「きしし、馬鹿なんですか?外に出た7人以外に外に出る意味がないでしょうが!」
「外に出る意味ならある。僕と美紅利の話が気になって出てくる人間がいるかもしれない。特に優妃と芽亜里はそういう話に興味があるから出てくる可能性は高い。」
「だとしてもどう理由をつけたと言うんですか?」
「次期当主なら全員の身の安全のためにどこに行ったかのチェックをすると言って出ることも出来ただろう。」
こんな屁理屈まみれでも魔女には少しづつでもダメージを与えられる。
「きしし、赤で宣言します。『7人が外に出てから犯行発覚まで優妃は客間から出ていない』これで次期当主は犯行不可能になりましたよ。」
「本当に次期当主様を慕ってるんだね。でも、君が守ろうとしたせいで新たな可能性が出て来たよ。次期当主が僕と美紅利がどこへ行ったかを知るために莉亜に見に行くように指示したんだ。君が作ったシールは芽琉が貼ったんだろう。つまり、次期当主じゃなくても外に出ることは可能だ。」
「そ、それは。えっと。赤で宣言します。『7人が外に出てから犯行発覚まで全員外に出ていない』」
「残念だけどチェックメイトだ。その全員の中に誰がいるのか赤で宣言してもらいたい。」
「いいですよ。赤で宣言してやる!『あの時客間に居たのは』」
それを言おうとしたところで莉亜はクロノエルに止められた。
「莉亜、見苦しいわよ。私の弟子がこんなにも不甲斐ないなんて、ガッカリよ。」
「うぅ、すみません。リザインします。」
すごく恨めしそうな顔で僕を見つめながら莉亜は言った。悔しそうに唇を噛み締めながら恨みを積み上げているのがよく分かった。
魔女との戦いを順調に進めるが魔女見習いの怒りに触れて生きて帰れるのだろうか?