逃避の先で   作:横電池

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武器の練習

 武器訓練。

 ゲーム中でも一応あった。強制じゃなくてクエスト一覧に、だが。

 それゆえにスルーしている人がほとんどだと思う。

 

 ゲームでの訓練はドスジャギィ相手にするやつだった。

 

 

「それじゃ、まずは一通り振ってみてくれ」

 

 

 ここでは素振りである。しゃーないっすね。ドスジャギィさんサイドも訓練のたびに痛めつけられるのは辛いだろうしね。

 

 しかしブンブン振り回すだけって地味だ。

 

 時々ランサーから動きの指定などがある程度だ。右へ跳んですぐに前へ斬りかかれ、とか反転して振れ、とか。

 

 

「ふむ、それじゃ次は別の武器を試してみようか」

 

 

 しばらくしてからランサーがそんなこと言いだした。

 これ全部の武器を使う感じだろうか。一応全種武器はあったけども。ほとんど初期の武器ばかりだけど、すべて試すのだろうか。

 ちょっと楽しい。自分にあった武器を探すってなんかワクワクする。

 

 

 そんなわけでキャラバンに戻って武器を持ちだす。

 

 何度も繰り返し戻るのもめんどいし、武器全部持ってこ。無理やり持てばいけるだろうきっと。あ、でも虫棒は使う気完全にないし、それは置いていこう。

 

「旦那さん、そんなに武器を持ってどうしたんだニャ? 夜逃げでもするニャ?」

「夜逃げするならもっと軽くて価値のあるもの持ち出すわ。ちょっと武器の扱いの訓練受けてるんだよ」

 

 ネコ太郎が夜逃げかと聞いてきたのでそのまま答える。

 そういやネコ太郎ってランサーの元オトモだっけ。

 

「今筆頭ハンターのランサーの人来ててな、教え受けてるんだよ。お前も―――」

「ボクもいくニャ!!」

「ア、ハイ」

 

 ネコ太郎急に気合満点になったな。せっかくだし武器の持ち運び手伝ってもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、久しぶりじゃないか。元気にしてたか?」

「もちろんだニャ! ボクはジコカンリも完璧な筆頭オトモなのニャ!」

 

 旧友との再会という感じの雰囲気が漂う。

 

 そして俺は友達と友達の旧友が盛り上がっている状況に、置いてけぼりをくらった雰囲気になっている。

 

「今じゃランスを使わせれば並ぶものはいないほどのウデマエだニャ!」

「ははは、そうか。機会があればぜひとも見てみたいものだ」

「弟子に超えられる恐怖を味わうニャー!」

「ははは、楽しみだ」

 

 仲良しさんですね。

 

 ところで俺の訓練忘れてませんか。

 

 今黙々と双剣を振り回している俺のこと忘れてませんか。

 

 ……無心の境地で頑張ろう。

 

 先生はいないが俺にはゲーム知識がある。ゲームと同じ動きを再現できるか確認だけでもいいだろう。

 片手剣もそんな感じで素振りしたことだし。

 

 双剣と言えば鬼人化からの乱舞だ。できるだろうか、まぁチャレンジだ―――

 

 

 

 

 

 いや、鬼人化ってなんだ。

 

 

 双剣を頭上に掲げてポーズとったら効果音でも出ないだろうか。

 

「ふんっ!」

 

 ……

 

 …………ふむ。

 

 まあ出ないっすよね。気合入れて掛け声まで出してみたのに。

 

 ゲームで出来るのはゲーム仕様だからなだけで、今は出来ないのはゲーム仕様じゃないからということだろうか。発掘武器が発光してたのを見たせいで境界がイマイチわからない。あれはゲーム仕様じゃなくてなんか理由でもあるんだろうか。

 

 まぁ考えたらゲーム仕様じゃないことの方が多いか。

 

 ドスジャギィを大剣で一撃だったことや、ケチャワチャがアイアンハンマーの2撃と片手剣の1撃で仕留めれたことといい、普通な物理法則で成り立ってそうだ。アタリハンテイ力学なんてなかったのだ。

 

「双剣で何か悩むことがあるのかい?」

 

 あ、やっと俺に意識向けたですか。

 せっかくだし聞いてみようかな。鬼人化? 何言ってんだこいつって反応にならないことを祈って。

 

「あー、鬼人化ってどうやるのかなーって」

 

 Rボタンだよ。とか言われたらどうしよう。

 

「鬼人化か。双剣については私よりリーダーのほうが詳しいが、そうだね」

 

 リーダーさん絶対俺のこと嫌ってるよ。ゲームの時より嫌ってるよ。あのやり取り今にして思えば馬鹿正直すぎたわ。取り繕えばよかった。

 

「鬼人化というのは言ってしまえば集中力を高めている状態のようなものらしい。ただ集中しているのでなく、感覚を普段よりはるかに研ぎ澄ましている状態と聞いたことがあるな」

「ふぅむ」

 

 感覚理論みたいな教えをされても困るでござる。

 

「こればかりは教えることは難しいね。太刀についても同じだ。双剣と太刀について共通して言えるのは、どちらも達人となれば凄まじい集中力を持っているということかな」

「なるほどわからん」

 

 とりあえず双剣の才能はないということだろうか。

 

 諦めをつけて双剣から手を離す。

 

 次はどの武器を使ってみよう。操虫棍以外とりあえず全部試すつもりだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様。さすがに疲れただろう」

 

「う、うぅ~い……」

 

「またダメダメモードになってるニャ……」

 

 

 しょうがないだろう。全部の武器をひたすら振り回したのだから。

 ひたすら素振りって精神的にもきついわ肉体的にもきついんだぞ。ましてや俺風邪気味だっての。やたら動いてるけど風邪気味だっての。

 

「一通り見たところ、やっぱり扱ったことがあるからか大剣と片手剣が安定しているね」

「そーですかね」

 

 片手剣はともかく大剣はどうだろう。重すぎて相変わらずの遅さなのだが。

 

「大剣はその重量から腕だけじゃ振るえないからね。それでも無理して振ろうとして怪我をする者もたまにいるんだ。君は全身をちゃんと使えているから見ていて安心だ」

 

 あんなの腕だけで振れるやつなんてそりゃいないだろう。いたらそいつは人間じゃない絶対。

 

「そういえば一番大事なことを聞くのを忘れていたよ」

「なんすか?」

「君が使いたい武器はなんだい?」

 

 使いたい武器……。

 全部、じゃダメなのだろうか。

 

「全部、じゃダメすか?」

「様々な武器を使えるというのは強みだが、やはり自分にとって一番頼りになる武器と言うのはあった方がいい。未知数な相手と戦う時、悩んだとき、不安な時、そんな時に頼れる武器は大事だよ」

 

 うおぅ……

 

 先生っぽい……

 

「ちなみにボクならランスニャ」

「そうだな。私もランスだ」

 

 うおぅ……ランスにしようぜって空気になってる。

 

「えっと……」

「ガンランスも素敵だと思うニャ」

「そうだな。確かにあれも憧れがあるな。だが私はやっぱりランスだな」

「確かにだニャー」

 

 なんやこの師弟。

 

「あ、あとで言うので今はとりあえずさっきの素振りの総評とかほしいですはい……」

「ははは、すまないね。ではそうしようか」

 

 からかっていたのか、茶目っ気出してきていたのか。

 仕返しとしてボソッと『うわ、お爺ちゃんの匂いする』ってお前の背後で言うぞ。

 40あたりの年齢には怖いであろう精神攻撃するぞ。

 

 

「まぁまずは君に向いてないのは―――」

「あー、はい」

 

 双剣、太刀、チャージアックス、スラッシュアックス、弓、ボウガンである。

 

 双剣、太刀は鬼人化、練気がさっぱりだった。『君の振り方だと太刀が痛む』と言われもした。叩き付けるじゃなくて押し斬るor引き斬るらしい。叩き斬るじゃないらしい。

 

 チャージアックス、スラッシュアックスは変形機構を扱う時もたつきすぎるのだ。正直しょうがないと思う。『もっと早く』と言われて焦ってやったらチャアクに至っては盾が吹っ飛んだ。幸い怪我人はいなかった。

 

 弓、ボウガンは弾と矢の無駄になった。

 

 

「今のところ、という話だがね。この先練習次第じゃ化けるかもしれないよ」

「だといいんすけどねぇ」

「あとは、私の見立てでは、大剣、片手剣、ハンマー、ガンランスが君にはいいかもしれないな」

「あれ? ランスはないんだ」

 

 あと狩猟笛もないんだ。

 

「こう言っては何だが、君は少し腕力が足りない気がしてね。ランスだと火力不足になりそうに感じた」

 

 おおっと、割と酷な評価。

 腕力足りないのに大剣、ハンマーが選択肢にあるのはいったい何ゆえなのか。あ、両手使うからか。

 

「ところでなんで操虫棍は試さないんだい? やってみれば案外いいかもしれないよ」

「断固拒否です。腕に虫つけるとか正気じゃない」

「なるほど。まあ、操虫棍は扱いが難しいからそれでもいいかもしれないね」

 

 難しいのか。ゲームの4のころはお手軽ダウンとれる武器ってイメージだったんだけど。バッタゆうた大発生するくらいの。

 

「武器の取り扱いだけでなく、虫の扱いや虫の訓練、虫の栄養管理などやることが多いからね」

「栄養管理て」

「そうして手間暇かけて育てた虫と狩りに出ても、運が悪ければ虫食のモンスターに喰われてしまうということもあるからね。ラングロトラは操虫棍使いには恐れられるほどだよ」

 

 そんな場面見ちゃったら俺絶対爆笑しちゃう。メシウマとか言っちゃう。

 

 

「まぁこんなところだ」

「ははぁ」

「それで、使いたい武器は何か決まったかい?」

 

 こだわりがあるわけじゃないからなぁ……

 

 とりあえず大剣、片手剣、ハンマー、ガンランスから考えるとして。

 

「とりあえず、さっきの4種全部……とか……」

「ふむ。焦らずじっくり考えたらいいさ。とりあえず先当たってはゲリョス狩りなのだろう? なら大剣かガンランスがいいかもしれないね。ゴム質の皮を気にせず戦えるだろうから」

 

 うげぇ。

 まさか訓練が一日とかからず終わる流れになっている。

 これでは明日あたりゲリョス狩りじゃないか。やはり覚悟を決めるしかないのだろうか。

 

「まぁ、明日決めるっす……」

「ああ、今日はしっかり身体を休めて明日に備えたほうがいいだろう。ひどく疲れているようだしね。しかし、そんなに素振りは辛かったかい?」

「あー、いや、ちょっと風邪気味でして」

「そうだったのか。そうと知らずに訓練をさせてすまなかった」

 

 すまないついでに『風邪で狩りにいくのは危険だ私がやろう』とかなりませんか。なりませんよね。

 

「もう数日くらい風邪っぽいのニャ。ハンターなのにひ弱な旦那さんニャ」

「うっせぇやい」

 

 ハンターだって風邪をひくっての。ひくよね? ぶっちゃけ知らないけど同じ人間だしひくよね?

 

 

「……風邪が続いているのかい?」

「ええ、まあ」

 

 

 何か真面目な表情で聞いてきた。え、なに。まさかマジでハンターは風邪引かないとかなの。

 

 

 

「……ゲリョス狩りはやめておいたほうがいい。私から団長に言っておこう」

 

「へ?」

 

 

 え、まじで? いいの? 嘘じゃないよね? ぬか喜びとか嫌だよ?

 

 

「少なくとも風邪が完治するまではゲリョスは……いや、ゲリョスだけじゃなく毒を扱うモンスター全般はやめておいたほうがいい」

 

 

 まじかよ。風邪治す気なくなったんですけど。もうデフォで風邪状態だしこのままでいいっす俺。

 

「いったいどうしてニャ? そりゃ風邪だと危ないかもしれないけど旦那さんは元気いっぱいなのニャ」

「いや常に死にかけて一周回って元気いっぱいなだけっすよ、うん」

 

 余計なことを言うでないネコ太郎よ。

 

「だいたいのハンターはあまり風邪を引かないんだ」

 

 まじで引かないんだ。人間やめてません?

 

「引いても1日で治るのが大半だ。ハンター生活を続けていると自然と抵抗力が強くなっていくからだ。だがクライ君は抵抗力が少し弱いのかもしれない。それにただでさえ風邪で身体が弱っているんだ。ゲリョスのような毒を扱うモンスターを相手すると思いのほか大事になるかもしれないからね」

 

 

 毒を扱うモンスターということは、ネルスキュラもアウトだな!

 

 

「じゃ、じゃあ団長に言っておいてもらっても……!」

 

「ああ、私から言っておこう。一応毒を扱うモンスターだけでなく不衛生な場にも近づかないようにするんだよ」

 

 風邪が治れば大丈夫かもしれないからそれまで我慢するように、と言ってランサーは行ってしまった。

 

 大義名分ができてしまった。

 狩りをアカリに任せる大義名分が。

 

 

 ゲリョスとネルスキュラを終えたら次はさらに強いモンスターだろう。そしたらもう俺は戦いようがない。段階踏んで強い相手と戦うのが普通の流れなのだから。

 ケチャワチャの次はガララアジャラ狩ってね。みたいなことをさすがに言いだしはしないだろう。

 

 つまりナグリ村にいる間は風邪で寝込んでいればあとは安泰。

 

 

「ネコ太郎、それじゃ俺は風邪を治すため寝てくるわ」

「ニャー……全然大丈夫そうにも感じるけどニャー……」

 

 

 大丈夫じゃない大丈夫じゃない。風邪だもの。

 

 

 とりあえず毛布はかぶらずに寝よう。

 

 ナグリ村を出るまでは粘ってもらわないとな、この風邪には。

 

 

 

 

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