逃避の先で   作:横電池

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荒れ狂う波浪

「クライ! 起きて起きて!」

「うぅ……うぅーい……」

 

 アカリの声がする。

 ネルスキュラ狩りから戻ってきたのか。ということはこれから船作りか。俺船作りは休むから。明日から頑張るから。だから今はもうちょっとゴロゴロさせて。

 

 にしてもなんか床揺れてね? 地震? 焦りよりも怠慢感のほうが強いため起きる気がわかない。

 

「船作り、俺、休みぃ……」

「もう出発だから起きて! 船に今乗ってるから! 世話になったナグリ村の人にせめて挨拶くらいしよう!」

「ふぇぇ……嘘だよぉ……」

「そぉい!」

「うぼぁ!?」

 

 

 何故だ。

 

 何故お腹に衝撃が走ったのだ。

 

 お腹痛い。

 

 

「あ、ごめん。ちょっとイラッとしちゃって!」

「う、うぅい……」

 

 ついやっちゃいました、みたいなこと言われても。いったい俺が何をしたというのだ。

 

「それよりもう船出ちゃうよ! ずっと寝てたとはいえ一言くらい挨拶しようよ!」

「……マジで船じゃん!? え、いつの間にできたの!?」

「クライが寝てる間だっての!」

「俺船内に移動した覚えないけど!?」

「そりゃ寝てたし? それよりほら! 村長さんとこいくよ!」

 

 寝てる間に運ばれたのだろうか。

 手を引かれながら船内を移動する。

 ……なんかネコ太郎がダウンしてるんだけど、あれ放っておいていいのだろうか。ひょっとして乗り物酔いだろうか。まだ出航してないのに。

 

 船から降りると団のみんなと村長、そしてロアルドロスの化身もとい加工屋の娘が話をしていた。マジでもう出航寸前じゃん。準備できた? いいえ、まだです。みたいなやり取りスキップじゃないか。

 

「おお? 起きたのかクライ。ちょうどいい、紹介しよう。我らの団の新たな入団希望者が来てくれたぞ。どんどんにぎやかになっていくな!」

 

 団長の楽しそうなこと。

 キャラバンがこんなクジラの船になって、さらに入団する人がいればそりゃそうなるか。

 

「もう一人のハンターさんだね! どうぞ、よろしくお願いします! 世界一の武具職人を目指して私がんばるから! ハンターさん、武具をデコりたくなったら言ってね!」

 

 デコるってなんだ。

 いや、わかるけども。装飾品のことだっけ確か。

 4以外じゃデコるなんて言わないよな。この子しか使ってないよな。一種の造語になるんだろうか。

 

 そういやスキルってちゃんと発動とかしてるんだろうか。

 イマイチわからない。というかゲームで普段使ってる防具しかスキル覚えてないから確認しようがない。メニュー画面なんてないしなぁ。

 

 ちなみに覚えてるのはジンオウ装備だけだ。雷属性強化、挑発、力の解放、業物だ。

 

 まぁ装飾品があるのならきっとスキルもちゃんと発動してるのだろう。まさか本当に飾りつけだけが専門なわけないだろうし。それなら武具職人とか言わないだろうし。

 

「えっと、ハンターのクライです?」

 

 初対面の子の対応に悩む。一応初対面だし丁寧語がいいかな、けどどう見ても年下だしなぁ。と悩んだ結果微妙な言い方になってしまった。

 

「オレっちのムスメをよろしく頼んだぜ! ムスメを送り出す親の気持ちってのはつれぇもんだな……うおおおおおおお! 我らの団さんよ! 頼んだぜ! けどたまには、いや頻繁に村に顔出せよ! ムスメを連れて顔出せよぉおおお!」

 

 村長さん元気ぃ。男泣きが始まったよ。

 と思ったら村長さん以外も男泣きしていたわ。ナグリ村の面々男泣きだわ。

 なんていうかコミカルな人たちだ。

 

「お見送りがいっぱいですね。こんなににぎやかなのは初めてで、私、なんだかワクワクしてます」

「モンスターが関わってないのにお嬢がワクワクとな……」

「まあ。クライさんの中の私ってどういう人物なんでしょうか」

 

 ただのモンスター狂信者だよ。

 そして変な無茶ぶりをしてくる危険な人だよ。

 

「それじゃあそろそろ出航するか! さぁ、我らのイサナ船に乗り込め!」

 

 団長の号令がかかった。だいたいの荷物はすでに船に移ってるのだろう。みんな荷物が少ない。

 洞窟から出て、村が見えなくなるまでナグリ村住民たちの声が聞こえていた。到着したときと比べてだいぶうるさい系村になっちゃったなぁ。いや、元々そうなのか。ダウン状態が珍しいだけで。

 

 日の光が眩しいぞい。

 

 

 

 

「ところで団長。目的地ってどこなの?」

 

 村から離れ少ししてからアカリが尋ねた。そういや次の目的地ってどこなんだろ。あの猫島は事故でたどり着いただけだよな確か。元はどこ行くつもりだったんだろ。

 

「あァ。船での移動でも結構な距離になるが、フォンロン大陸へ行こうと思う。あそこは謎が多いままだからな」

 

 うーむ。地名を聞いても全然わからん。

 

「フォンロンといえば謎の塔とバデュバトム樹海だわな! 塔では珍しいモノがぎょうさんあるらしいわ」

 

 あー、あそこかぁ。

 

 村クエと見事に関係ないなぁ。まぁゴアに襲われて正しい目的地へいけるのだし、ある意味運がいい団だなあ。

 

 ん?

 

 

 あ、やば。

 

 

 ウチケシの実、用意してない。

 

 起きてからでいいだろうとかふざけた油断をしていた。

 まぁボックス漁ればあるだろう。

 

 甲板から船内に移動する。中にはポポとネコ太郎がいた。ポポ、お前もちゃんと一緒に来てくれてたのな。

 

「ネコ太郎、大丈夫か? 乗り物酔いかー?」

「ニャ、ニャァ……ウプ……。ぼ、ボクの名は混世魔王―――ウプッ……」

 

 ウプって変な名前だなぁ。いや、アイルー界じゃ普通かもしれない。でも呼びにくいしネコ太郎って呼ぼうこれからも。

 

「ボ、ボクのことは放っておいてくれニャ……今、喋る余裕はないニャ……」

 

 そっとしておこう。

 それよりも俺はウチケシの実を取りに来たのだ。

 

 ゲーム中じゃそもそもめったに使わなかった記憶。プレイスタイルによるかもだけど。

 

 とりあえずポーチに詰めれるだけ詰めておこう。

 そういうわけで詰めに詰めて30個近く入った。もっと入りそうだけどこれ以上はなんかキモいしやめておこう。ウチケシの実がぎゅうぎゅうに詰まったポーチ。同じのしか入ってないのってなんか、ねぇ。

 

 よし、とりあえずできる準備はこんなものか。

 

 海上戦ではネコ太郎は無理そうだし、ネコ太郎の分まで俺が頑張ろう。メインはアカリですが。

 

 決意を再度固めて甲板に向かう。

 

「何運んでんの?」

 

 アカリが何やら槍みたいなのを抱えて歩いていた。

 

「バリスタの弾だよ。船倉にあるより甲板に置いといた方がいいでしょ?」

「なーるなる」

「結構急造だったから物の配置が色々変だしね」

 

 なるほどなるほど。

 あ、アニキもなんか運んでる。これは俺も手伝おう。

 

 あ、でもアニキよりかあちゃんの手伝いした方がよさげだわ。大砲の弾でしょあれ。落としたら爆発もんでしょ。フラフラ運ばれるの超こええ。

 

「かあちゃんかあちゃん、俺それ運ぶわ。見てて超怖いわ」

「大丈夫、ニャル……これも配膳の練習ニャル……」

「でもそれ落としたら爆発しそうだし、俺が運ぶわ」

「大丈夫……ニャルよ……」

 

 そこまで言うならいいけども、こわぁ……

 

 

 

 

 

「団長さーん! なんか空暗くなってきたよ!」

 

 娘っ子が大きな声をあげて言う。ものすごい勢いで雨雲が、暗雲が近づいてきたのだ。

 

 山の天気は変わりやすいって聞くけど、海もすごい変わるんね。

 とかのんびり感想を言ってる場合じゃなかった。

 

 雨風が強くなってきた。そして波も強くなり、船の揺れが激しくなる。

 

「ジィさんやお嬢、ムスメっこに料理長は船内に入れ! 相棒! 皆を船内まで誘導しといてくれ! 海錨を降ろしてくる!」

 

 こんなに荒れてたっけ、なんかクシャルダオラでも近くにいるんじゃない? ってくらい荒れてる。

 

 団長がイサナ船の船首に向かっていく。俺どうしたら、いやそうだ。ゴアが来るのだ。

 

 本当に来るのかこれ? こんなに荒れた天気の中飛んでこれるのか?

 

 

「まずいかも……」

 

 

 アカリが海を見ながら言う。この天候の中でも来たのかやっぱり。

 

 

「団長! 何か来る!」

「アニキ! アニキも船内に避難を早く!」

 

 

 こんな嵐の中で飛んでるだけでもおかしいというのに、襲ってくるとか何考えてるんだあの黒いのは。

 そんなにこの鯨の形をした船が気に食わないのか。

 

 船を通り過ぎてくれないかと少しだけ期待したが、あの黒いのは、ゴア・マガラは船の周りを飛んでいる。

 

 ゲームと同じように律儀に襲ってくるのを期待してはいたけど、どうせなら快晴の時に来てほしかったわ。その方がゴアちゃん側も飛びやすくて楽だろうに。

 ハンターとして頑張るとは決めたけど、やっぱりこういう状況は怖いのは怖い。故郷帰りたい。平和なリアルに帰りたい。いや、でもあそこはあそこで辛いけども。それに帰る方法なんてさっぱりだけど。転移系って帰る方法ありそうでなかったよな。

 思考が現実逃避気味だ。故郷に帰る方法なんて考えても無駄なのに。帰る手掛かりがあったところで、俺の場合身体がそもそも違うし。

 

 いや、そんなことより目の前のゴア戦だ。船に突っ込んで来たら戦いが始まる。

 

 しかし、ゴアも寄り道なんてしてないで故郷へ真っ直ぐ帰れよ。わざわざ嵐の中道草なんてせず、に―――

 

 

 頭にある考えがよぎった。

 もしかして、この船を襲う理由は

 

 

 故郷の手掛かりが、船にあるから―――?

 

 

 ゴア・マガラはシャガルマガラになって、故郷に戻るというストーリーだったはずだ。

 

 もちろんゴアが実際そういう発言とかしたわけではないけど。できないけども。NPC達が、そうなんじゃないか、という推測を立てていただけだが。

 

 細かい理由はわからない。だが、もし故郷を求めているとしたら

 

 あいつの故郷に関するアイテムが、この船にはある―――

 

 

「クライ!?」

 

 

 アカリの焦る声が聞こえるが気にしない。

 団長のもとに向かって走る。団長は甲板の船首寄りの場所に、海のそばにいる。ロープのようなものを海に投入している団長が

 

 

「団長! そこから早く離れろ!!」

 

「ダメだ! まだ錨を下しおわってない! もう少しだ!」

 

 

 船の周囲を飛んでいたゴア・マガラの軌道が変わった。進む方角は真っ直ぐ団長に向かっていた。

 このままじゃ団長のもとに間に合わない。せめて団長がゴアの接近に気づいてくれれば―――

 

 

「団長!」

 

「よし! 終わっ―――」

 

 

 何かを撃ち出す音が荒れる海の音の中に、わずかに聞こえ―――

 

 団長の頭上を黒い翼爪が通っていった。逸れた―――?

 

 

「うおっ! な、なんだあのモンスターは!? あいつは一体!?」

 

 

 ぎりぎり当たらずだったため団長も今のところ無事だ。少しだけホッとした。

 こんな時だけど、魚を模した船の上でうおっだって。ふふ。しょうもな―――

 

「クライ油断しない! また来るよ! 団長早く避難して!」

 

「あ、あァ!」

 

 

 バリスタを構えているアカリに喝を入れられた。

 そうだ。まだ全然危険状態なんだ。この荒れた海の上で気を抜いている余裕なんてないのだ。

 さっきの射出音はバリスタだったか。それで軌道が逸れたのだろう。

 

 今は推測の範囲から出てないが、考えていることを言う。

 

 

「アカリ! あいつの狙いはたぶん団長だ! 団長が船内に入ったら船を攻撃されるんじゃないか!?」

 

「―――ちっ! 団長伏せて!」

 

「ぬぅっ!」

 

 

 アカリの撃ったバリスタの弾を回避し、団長のもとに再び滑空して襲ってきた。団長は横へ跳びこむようになんとか躱せたが、今ので推測が確信に変わった。

 

 やはりあいつの狙いは団長だ。正確には、団長の持つアイテムだ。

 

 

「どうやら本当に俺を狙っているようだな! この齢になってモテるとはなァ!」

 

 

 こんな時に軽口いう余裕あるんだこの人。団長は避難をやめてゴアから目を離さずその場で立ち止まった。

 きっといつでも回避行動に移れるように身構えたのだろう。

 

 

「クライ!」

 

「なんだ!」

 

「私が武器を持ってくる間、1人で持たせれる!?」

 

「無理! っていうか武器身につけてないのかよ!?」

 

 

 普段身につけてるのに何でこんな時に限って。船作りや設備の移動に邪魔だったからかひょっとして。

 取りに行ってもらってる暇はない。バリスタも回避されてる様子から武器は必要だ。こうなったら―――

 

 

「アカリ! これ使え!」

 

 

 星紋の剣を投げ渡す。盾は渡さずに。

 

 

「クライはどうするの!?」

 

「団長を守る! 悪いけどそれでなんとかしてくれ!」

 

 

 いつまで団長が回避行動を成功させれるかわからない。

 片手剣の盾なんてたいした性能はないけど、ないよりはましなはずだ。ブレスくらいなら防げるはずだ。

 

 

「また来た!」

「ぬぅ―――うおっ!?」

 

 

 ゴアの身体が船に掠ったのか、今までと段違いな揺れが襲う。

 

 

「このままでも不味いな……船が持たん……!」

 

 

 団長が小さく呟いた。確かにそうだ。いつ船に攻撃されてもおかしくない。団長狙いとはいえ、船を狙わない理由はない。それに流れ弾が、やつの体が船に当たるだけで、転覆してもおかしくはない。

 

 アカリも滑空メインで攻撃してくる相手に、片手剣じゃ太刀打ちが出来ないのだろう。

 バリスタを撃ってはいるが、最初の襲撃の時以降、警戒しているのだろうか。ことごとく避けられている。

 

 

「突進してくるときならバリスタ当たりそうじゃないか!?」

 

 

 どうしたらいいかわからない。とにかく思ったこと、考えたことを言ってみる。事態の解決に向かう糸口を探したいのだ。

 

 

「駄目! それなら当てれるだろうけど、アイツがバランス崩して船にそのままぶつかってしまいそう!」

 

 

 ダメか。一方的な展開が続いてしまう。

 以前見たアルセルタスとドスジャギィの戦いのように、滑空してきたら乗って落とせないだろうか。いや、駄目か。仮に乗れたとしても、落ちる場所はこの荒れた海だ。その時は乗った人物も一緒に海に落ちてしまう。

 

 

「来る!!」

 

 

 回避方向を間違えたら一瞬で持ってかれる。ギリギリまでしっかりと見極めるのだ。

 

 これは、この軌道は―――攻撃じゃない。

 

 より一層、激しく揺れるイサナ船。船室のほうからも悲鳴が聞こえた。

 

 直接船に乗りこんできたのだ。

 

 

「クライ!! 団長を!!」

 

 

 名前を呼ばれてすぐさま行動する。

 団長を掴み大きく横に跳ぶ。

 

 

「ぬおおっ!? ス、スマン、助かったぞ! まさか船に直接乗り込むとは!」

「急いで立って! さっきより危険になったんだから!」

 

 

 ゴア・マガラが船に乗りこんだ。つまり今度は滑空で襲うのではなく、より精密に襲ってくるということだ。

 

 甲板の中心、ゴアの降り立った場所を向いたら目の前に黒い塊が襲ってきていた。

 無意識に体をかばうように腕を前に出す。

 

 

「―――ったぁ!?」

 

 

 盾があったということをすっかり忘れていたが、ちょうどブレスを盾で防ぐ形となった。しかし盾ごしでも衝撃がきつい。腕が痛い。

 

 

「そぉい!!」

 

 

 アカリの掛け声だ。

 しかしこんな場面でもその間抜けな掛け声なんだな。

 

 そんな間抜けな掛け声だが、ゴア・マガラの前肢を鋭く斬りつける。

 バランスを崩し、倒れこむと思ったが耐えられた。

 

 鬱陶しく感じたのか、ここで初めて狙いを団長から別の存在へ切り替えた。

 アカリを噛みつこうと身体を捻り襲いかかる。

 

 

「そぉぉい!」

 

 

 ぎりぎりの回避、からのすれ違いながらゴアの顔を斬りつけていくアカリ。

 そのまま怯んだゴアに対し、剣を逆手にもち頭部に突き刺す。

 

 ……もうあいつひとりでいいんじゃないかな。

 

 

「やったか!?」

 

 

 おおっと、団長。それ言っちゃあかんやつ。

 

 

「団長それ言っちゃ駄目だから!! 危なっ!!」

 

 

 アカリが注意しながらゴアの反撃を、背中に畳んでいた翼脚による薙ぎ払いを回避する。なんで避けれるんあの人……。見てるだけの俺だけど、今の攻撃が終わるまで認識できなかったんだけど。

 

 

「表面は柔らかいのに、奥の方は筋肉でも詰まってんのかな! 思ったより刃が通らない!」

 

 

 もう完全にゴアの狙いがアカリになった。

 今のうちに、団長を船内に移動させる。

 

 見てるだけじゃダメだろう。今やつはアカリに注目している。いや、注目せざるを得ないのだろう。あの人化け物だしね。

 なのでこの隙に、バリスタを構える。

 

 ―――ダメだ。撃てない。

 

 いや、撃ち方がわからないとかじゃなくて、動きが激しい。

 あと不安だ。外したらどうしよう。ただ外れるだけならいい。もし船に当たったら、アカリに当たったら。そう思うとなかなか撃てない。

 

 

「あっ!」

 

 

 ゴアが再び空に上がった。そして船とは違う方向へ移動を始めた。

 今度は最初のような船の周りを旋回するわけではないようだ。

 

 

 逃げた―――?

 

 

「なんだったんだろうあいつ……」

 

 

 あなたの戦闘力もなんなんでしょう。え、無傷やんあんた。え、初見なんだよね言葉的に。

 星紋の剣じゃなかったら、いつもの武器だったらマジでここで仕留めてそうな勢いだった気がするんですけど。

 

 しかし緊張した。バリスタに寄りかかってホッと一息つく。まだ波は荒れてるけどだいぶ気が楽になった。

 

 

「よくやってくれた! アカリにクライ! しかしなんだって俺を狙ったんだろうな」

 

 

 団長が船内から出てきてねぎらいの言葉をかけてきた。

 狙ってきた理由を話すべきだろうか。いや、話して目的をゴアに変えられたらダメだろう。ゴアを追いかけるのは筆頭ハンターに今は任せた方が確実だ。

 

 そういえば、この後って―――

 

 団長の肩に乗っていた鷹っぽい鳥が大きく鳴きだした。何事かと見ると―――

 

 再びこちらに向かって滑空してくるゴアの姿があった。

 

 

 バリスタの照準を確認してい暇はない。直感だよりに撃ちだした。

 当たってバランスを崩し、船にあたったらどうしようなどと考える余裕はなかった。

 

 撃ちだしたバリスタの弾は、確かにゴアにあたった。

 

 しかし軌道は変わらず襲い掛かってくる。狙いは団長―――

 

 

 団長は回避する余裕なんてなかった。ただ目前まで迫るゴアに対し、両腕を、身を庇うように前に出すだけで精いっぱいのようだった。

 

 

 ゴア・マガラは団長と肉薄し

 

 横から来た別の船の体当たりに突き飛ばされた。

 

 

「ほぁ!?」

 

 

 思わず間抜けな声が出てしまった。突き飛ばされたゴアは海に落ち―――たと思ったが、体勢を直し再び空に上がる。どこへ飛んでいくか見る余裕はなかった。

 

 なぜなら

 

 

「た、たっけてアカリ!」

 

「へ? って何やってんのクライ!?」

 

 

 海に落ちそう。っていうか落ちちゃう。甲板の縁になんとか今しがみついているけどだんだんずれてく、やばい助けて。

 

 ゴアと船の体当たりの衝撃で海に落ちそうになってしまっているのだ。不可抗力だ。

 

 

 

 

 どうにかアカリに引き上げられた。ゲーム通りハンター1人なら今ので俺死んでたわこれ。アカリ様々すぎるわ。

 

 

 

 

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