逃避の先で   作:横電池

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仲間を探して

 空が青く、広い。

 

 この空の下のどこを探しても、かつての俺の姿は見つからないだろう。それとも人格コピー&貼り付けッテ感じで、オリジナルの俺はまだ普通に普通な日常を過ごしているのかもしれない。

 

 そういやまだアカリの中身を確認できていない。後で会えたら何気ない質問から探りを入れるつもりだ。

 

 しかし憑依って謎だ。ゲームキャラへの憑依とかなおさら謎だ。

 まぁ、どれだけ考えても説明はつかないものはあるのだ。なら考えるだけ無駄だろう。今考えるのは、安全かつエンジョイできる新生活だ。

 

「オマエさま全然似顔絵と違うニャル。本当に大丈夫ニャルか」

「我らの団ハンターは二人いるんだよ。俺はおまけ。その似顔絵は俺とは違うもう一人のほうだよきっと」

 

 団長に、採取専門ハンターを宣言したが、まあまあ。まあまあ。と謎の押しでうやむやになった。

 満面の笑みでまあまあ。って言われ続けると結構怖い。

 

 まぁ採取メインではあるけど、もちろんそれ以外手伝えることがあれば手伝う気である。採取しかしないハンターとしては肩身が狭いのだ。

 そして今、すでにクエスト募集のチラシ配りをしていたらしく、そのチラシを見て頼みごとをしようとしている相手と話をしているのだ。これも手伝いに入るだろう。

 その相手が目の前のアイルー。屋台の料理長である。

 

 チラシの似顔絵はやたらまつ毛がふさふさなハンターの絵が書いてあった。アカリだろうきっと。俺ではない。俺こんなにまつ毛長くない。

 ゆうしゅうなる我らの団ハンター とか書いてるし、アカリで確定だ。

 

「まあいいニャル。私、メラルーの手を借りたいほど困っているニャル。タル配達をしている知り合いがクンチュウに配達をソシされているニャル。ムシのソシをソシしてほしいニャルよ」

「了解了解。あの緑の服の人に依頼として出しておいて。あ、アカリというハンターを指名って条件付けてね」

 

 クンチュウ相手か。クンチュウ相手なら俺でも勝てる、と思う。小型だし、虫だし。気持ち悪そうだけどまぁ大丈夫だろう。

 しかし、だ。

 こうやってちょっとずつ小型狩猟をはじめ、そのうちだんだん相手が強くなっていく。定番のパターンである。以前あいつ倒したんだし、次はちょっと強いやつチャレンジしよっか。みたいな流れになってしまうパターンである。

 そんな流れは認められない。危険だ。たとえ小型の狩猟でも俺はやらない。俺は採取をするのだ。

 

 仮に行くとしてもアカリと一緒に行きます。守られます。あ、俺BC待機してますね。

 

「わかったニャルね。ありがたやニャル、ありがたやニャル。では、よろしく頼んだニャル」

 

 クエストを受けるために話をするだけ、って言うのも十分仕事にならないだろうか。ならないだろうなぁ。

 まぁとりあえず、採取以外はアカリを指名するようにしておけば大丈夫だろう。

 

 この調子でバルバレでチラシの影響を受けた人から話を聞いて回ろう。

 

 

 

 

 

 街の人たちと一通り話をして、キャラバンに戻った俺は今正座をしています。

 

 

「で、なんで全部私を指名しているクエストになるわけ?」

 

 押し付けしまくりだもんね。そりゃ怒るよね。俺も同じ立場ならそうするっす。

 

「いや、あの、全部ってわけじゃなく……、サシミウオの納品とかは、指名なしだし……」

「他はなんで指名させたわけ? なんで?」

「さ、採取専門で行きたいから、採取以外はアカリさんに―――」

「そぉい!」

「おったぁ!?」

 

 何故鼻をデコピンするのか。何この人。暴力ヒロイン目指してるの? こっわい。

 

「ハッハッハ! その辺にしてやれ」

「団長! でも!」

 

 いいぞいいぞ。この責め苦を止めてくれ団長。

 

「明日はサシミウオの納品とクンチュウ退治が残ってたよな? お嬢」

「はい。アカリさんがジャギィと卵の運搬を今日で済ましましたからね」

「よし! なら明日はその2つはクライがやればいいな!」

 

 なんですと。

 

「団長! 俺採取専門ハンターを目指しているんですが!」

「それのどこがハンターなの!?」

「まあまあ。まあまあ」

 

 またも団長のまあまあ。まあまあ。がでた。

 

「お前さんだって立派なハンターなんだ。自信がないかもしれんが、それなら少しずつ自信をつけていけばいい。そのためにもまず、クエストに行ってみるのが手っ取り早いサ」

「いや俺よわっちいですし! 狩猟はアカリ、俺は雑用とかでいいですよ!」

「お前さんならできるできる!」

「その言葉で誤魔化されると思うなよ!!」

 

 ここで流されてたまるものか。このままずるずると危険なクエストも俺に回ることが増えていくんだきっとそうだ。

 誤解ないように言うが、クンチュウが怖いのではない。この先の大型モンスターが怖いのだ。

 

「まあまあ、クライさん。クライさんだってハンターさんなんですから大丈夫ですよ。それにひとたび狩場に出れば、モンスターたちの魅力に夢中になれますよ!」

「お嬢もこう言ってることだし、な?」

「クライ、私も一緒に行くからわがままばっかり言わないで?」

 

 ぐぐ、この場にいる皆から説得されている現状、これ以上ごねるのは危険だろうか。

 ちなみに加工担当の兄さんは筆頭オトモと買い出し中である。

 

 あまりごねすぎて追い出されるのも避けねばならない。

 妥協案、折衷案を、思いつくのは情けないが、せめて―――

 

「アカリと一緒なら……」

 

 やだボクったらすっごいかっこ悪い。

 

 だがやむを得ないのだ。1人で行ってクエストクリアして、今後も1人で大丈夫だねってなっては困るのだ。

 情けないが命に代えられない。

 上位ハンターがいれば大丈夫だろう。あ、俺BC待機してますね。

 

「ハッハッハ! そうかそうか! じゃあ明日は頼んだぞ!」

「…………え。あ、はい!」

 

 アカリがポカンとしていたが団長の言葉に慌てて返事をしていた。

 やっぱり恥ずかしい。

 

 あ、そういやアカリの中の人確認チャンスじゃないかこれは。明日狩場で二人きりになれるのであれば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺とアカリは遺跡平原へ出発することになった。

 二人きりだと思ったが、筆頭オトモがついてこようとしてきた。そういやいたね君。アカリ操作してたころはオトモ連れずにやってたからすっかり忘れてたよ。クエストについてくるわな普通。

 

 だが、せっかくの中の人確認チャンス。今回は留守番してほしい。

 

「ちょっと二人きりで狩場に行きたいから今回だけ留守番しておいてほしい」

「へっ!? んなっ―――」

 

 しっかりと言ってみた。受付嬢があらあらうふふ的な反応してたのが気になるところだ。

 

「ニャ……! ボクも馬に蹴られて死にたくないニャ。今回だけニャ!」

「ありがとう心の友よ!」

「どういたしましてニャ!」

 

 なんか知らんけど筆頭オトモからの好感度高い。まぁアカリはオトモ連れていかないスタイルだったしなあ。ゲームのころのが少し影響してるんだろうか。いや、それだったらストーリークリア後だし、謎だ。

 

「ではサシミウオの納品と、クンチュウ退治お願いしますね」

 

 受付嬢に見送られクエストへ出発する。この受付嬢も名前あったよね。なんだっけ。まぁいいや。そのうち知れるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 狩場まで荷車に揺られてのんびり待つ。

 アカリがだんまりなのが気になるが、今はいい。御者がいない狩場に着くまでは確認できないしな。

 

 ちなみに今はブレイブ一式を身につけている。インナーのままいたら変態かと怒られたのだ。武器はとりあえず片手剣。アカリは大剣だ。

 ハンターナイフと比べて立派な剣でござる。ジークムント、だっけ。絶対発掘装備だ。なんか変な発光してるし。クンチュウ相手にオーバーキルすぎない?

 

 しかし発掘装備の発光があるということはやっぱりゲームシステムよりなのだろうか。現実的に考えて武器が発光するとかわけわからないし。

 じゃあ1乙でゲームオーバーでなく、3乙で村戻りもあり得る? いや、楽観視はやめておこう。

 

 人差し指を口に含んでみた。

 

「……何してんの?」

「痛いか実験」

 

 指先を噛んでみた。痛いわやっぱり。ちょっと強めに噛んだため血が出た。

 

 ため息をつかれた。

 

 大事な実験なんだ。仕方ないだろうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やってきました遺跡平原。

 

 御者もいない。とうとう二人きりである。

 BC待機してますね。って勢いよく言いたいところだがたぶん言えばお腹痛くなりそう。腹パンされる予感。

 

 まぁそれより今は中身確認である。

 

 中身俺だったらほら、なんかこう、悲しいじゃん。寂しいともいう。

 

「さて、私はあまり手を出さないから!」

 

 アカリが言った。

 いきなりBC待機発言かこの野郎。上位ハンターなのにそれはどうなんだこんちくしょう。

 

「いやバンバン手を出してほしいんだけど」

「何言ってんのさ。クライに自信をつけてもらうっていう目的でもあるんだから今回のクエストは!」

 

 くっ、俺を育成する気か我らの団は。

 

 その方針にはモノ申したいが、それよりも中身確認の試金石。質問を投げさせてもらう。

 

「それよりアカリ」

「ん、何?」

 

 俺なら答えられる、そして俺じゃないにしても、あの世界の人物なら反応してしまうであろう質問。用意してきているのだ俺は。

 

 

 

「ぷよぷよで、何連鎖までできる?」

 

「ぷよぷよ? ナンレンサ?」

 

 

 

 ふむ。

 

 ちなみに俺はフィーバーモードなしで最大13連鎖だ。

 

「ぷよぷよだよぷよぷよ」

「ぷ、ぷよぷよ?」

「うん、ぷよぷよ」

「えっと……なにそれ?」

 

 

 ふぅむ。

 

 これは、元の世界とは関係ない?

 中身が俺じゃないとしても、ぷよぷよを知らないってことはないだろうきっと。

 いやしかし、アカリの人格っていうか、性格っていうか。特徴? これは俺の知ってる特徴なんだよなぁ。

 

 俺の人格コピー&貼り付けで、元の世界の知識0、とかそんな状態なのではと勘ぐってしまう。

 

 俺の予想では、訳の分からないことを言われたら、『とりあえず別の話題を出す』

 

 俺ならそうするからだ。

 

 そしてアカリは―――

 

「とりあえず、そんなことよりクエストしよう!」

 

 

 これやっぱり俺の人格コピー貼り付け&元の世界知識なしって感じだよ。つまり俺だよきっと。

 

 さっきからアカリのしゃべり方も覚えあるもん。

 

 語尾に何もないのは冷たい印象を受けるんじゃないかって思って語尾は『!』『?』『…』を絶対つけてたよ俺。

 アカリのしゃべり方ずっと語尾に何かしらついてるしゃべり方だよ。

 

 

 なんだかなぁ。

 

 アカリがヒロイン的な考えをちょっと持ってたりしたけど、中身俺って思うとちょっと、なぁ……。

 

「ため息ついてないで、クンチュウ退治いくよ!」

「おーう……」

「よっぽど危なかったら助けるから、とりあえず基本一人だと思ってね!」

 

 

 

 

 

 

 

 クンチュウ。盾虫とも呼ばれている。もしくは糞虫だ。

 色は環境によって異なり、ここでは黄色く、キモイ。カブトガニのような頭に、げじげじみたいな胴体とでも言えばいいのだろうか。とりあえずキモイ。そしてでかい。威嚇っぽいモーションしたら人間の子供くらいはあるんじゃないだろうか。

 

 そんな糞虫のゲームでやることは

 

 ダンゴムシのごとく丸まり、そしてそのまま転がってハンターを転ばせる。

 大型モンスターにひっついて、盾のごとく大型を守る。

 どんな優れた切れ味の武器でもはじかれモーションを取らされる。

 

 正直どれもうざい。糞虫足るゆえんである。

 しかもこいつらは火山地帯だろうが極寒地帯だろうがいるのだ。生息域が広すぎる。

 

「記念すべき初狩猟がクンチュウとは……」

「お? やる気になってきた?」

「いや、そうじゃないけど、なんだかなぁ」

 

 なんでデビュー戦が糞虫なのか。普通アプトノスとかじゃないのか。

 

 とりあえず背中はガッチガチに硬いから腹を斬りつければいい。腹を向かせるならまず蹴ればいい。

 

 まぁ余裕ですわこの程度。

 

 

 ウゾウゾじわじわと近づいてきた糞虫に狙いを定める。

 

 俺のデビューのための贄となるがいい。

 

 

 足を振り上げ、蹴りをかまそうとしたら足にひっついた。

 そのままウゾウゾ腰まで登ろうとしてくる。

 

「ひっ、ひぇぇぁああぁぁあぁぉぉおおおおぉぉおおおおお!?」

「うわぁ……」

 

 右手の盾で叩いて落としたが、すっごい気持ち悪い。

 

「キモイキモイキモイ!!」

「お、落ち着いて……」

 

 未だに右足に感触が残ってる気がする。やべぇきもい。

 

 叩き落したクンチュウがひっくり返りながらじたばたしている。そうだ、とどめを刺さなくては。

 

「うぇ……」

 

 腹の部分きもーい……

 

 え、これに片手剣突きつけるの? きもいよこれ? 近づきたくないよ。

 

「クライとどめ! とどめ!」

 

 うぅぅ……。

 

「うう、そぉい!!」

 

 クンチュウの腹に片手剣を突き刺した。まだウゾウゾ動いてる。キモイ。

 

 なんかこう、命を奪う重み……、とかで気持ちがダウンするもんじゃないのこういうのって。

 俺の今までの調査じゃだいたい命の重みが! ってなるもんだったのに。絶対デビューがクンチュウなのが間違ってるんだこれ。アプトノスなら重みを感じれたかもしれないのに。

 

「や、やっと動きが止まった……」

 

 剣を引き抜く。

 引き抜く際、死骸もついてきたから足で押さえて引き抜いた。靴ごしとはいえ、気持ち悪ーい。

 

「あと7匹だよー! あとほら! 剥ぎ取り剥ぎ取り! 甲殻部分剥ぎ取るの!」

 

 まじかよ……。

 

 こんなのあと7回もやらないとなのか。そして剥ぎ取りってなんですか。こんなの剥ぎ取るって正気ですかあなた。中身俺じゃないの? 俺なら嫌がるでしょ。

 

 剥ぎ取ろうと糞虫の死骸を見る。

 

 動かないただの死骸だ。もう急に体にひっついてくることはない。だから大丈夫だ。

 

「あっ……」

「えっ」

 

 後ろから何かがぶつかった。その拍子で前に倒れこむ。

 

 前方には、クンチュウの死骸が―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺、ハンターやめたい……」

「ど、どんまい……こ、今回たまたま運が悪かっただけだって!」

 

 BCの川で何度も顔を洗う。

 

 あの時背後からぶつかってきたのは別のクンチュウだった。その勢いによって俺は前に倒れこみ、顔面からクンチュウの死骸に、死骸に……っ。

 

 あまりのキモさで、一目散にBCまで走ってきたのだ。

 

「と、とりあえず次はサシミウオでも釣ろう? ね? 残りのクンチュウは今回は私がやっとくから……」

「あ、あい……」

 

 

 

 サシミウオは5匹、あっさりと釣れました。

 

 

 

 とりあえず糞虫は滅べ。

 

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