逃避の先で   作:横電池

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黒く蝕み、血を染めん

 ウイルスに侵されているランサーに攻撃させないためにも、ゴア・マガラの気をひかないといけない。

 船上ではバリスタを撃っていたアカリを無視して執拗に団長を狙ってきた相手だ。モンスターの考えなんてわかるわけではない。だから最悪を考えて、対策を考えたほうがいい。

 

 今の状況からの最悪は、ゴア・マガラが俺やルーキーを無視してランサーに襲いかかること。

 

 確実に気をひくには、危険と思わせないといけない。船に降りてきた時、片手剣を用いだしたアカリ相手には無視することができてなかったから。

 

 筆頭ハンターが四人掛かりで挑んで負けた相手に、たったの二人で挑み、脅威を感じさせなくてはならない。

 

「自分がなんとか隙を作るッス! 大剣の一撃を当てれるように準備しとくッスよ!」

「わかった!」

 

 色々考えても作戦会議の時間などないし、即興でとにかくコンビネーションを決めるしかない。出来ることと言えばひどく単純な作戦のみだ。

 

 表面は柔らかいけど思ったよりも刃が立たないとアカリは言っていた。なら重たい一撃をぶちかますのだ。

 ゲームでは出来ない一撃必殺を狙うのだ。四本足じゃなくなる前に―――変形するのは時間経過だったか、ウイルスの蔓延具合からだったか、細かい設定なんて覚えてないが、舐めプ状態なら遠慮なくその状態のまま終わらせたい。

 

 ルーキーは操虫棍の虫笛部分を振って音を立てては、猟虫に指示を出しているのだろう。こんな時にも思う。あいつ本当に凄いのな。的確に猟虫に攻撃や回避をさせている。鬱陶しがってはいるが、明確な隙はまだ生まれない。幸いランサーに襲いかかりにいくわけではないようだが。

 

 それにしても、隙を作るから準備しておけと言われたけども、この状況で動いていない自分にもどかしさを感じてしまう。役割分担だとはわかっているが、二人同時で攻撃した方がいいのではないか。そういう思いも出てくるのだ。

 

 そもそも、いくらルーキーが普段の雰囲気からは想像がつかないほどの凄腕でも、四人で倒せなかったゴア相手に明確な隙を作りだせるのか。

 

 こうして悩んでいる間にも時間が経過していく。時間が経てば経つほど、ゴアの姿が変わってしまう可能性が上がっていくのだ。

 背後からならあるいは……いや、だめだ。足元に漂う鱗粉を見てすぐに、考えを改める。やっぱりこの鱗粉による感知は厄介だ。

 

 何かないのか。何か手は……

 

 あ。

 

 すごい便利そうなのあるじゃないか。

 

 設置されたままの落とし穴があるじゃないか。

 

 これを利用しない手はない。

 問題はどう誘導するか。今は猟虫とルーキーがつかず離れずでちょっかいを出しているからランサーの元には行っていない。ルーキーにこっちに来てもらっての誘導はいささかリスクが高い。見向きもせずランサーの元へ行きかねないのだ。

 

「落とし穴の上に誘導はできなさそうか!?」

 

 自分ひとり悩んでいても解決できそうにない。ルーキーに負担かけまくりだが、見栄を張ってだんまりをするよりはマシなはずだ。

 

「ゴア・マガラの気分次第でわかんないッス!」

 

 やっぱり厳しそうだ。なら―――

 

「そいつがお前を追いかけてくることを祈って落とし穴の場所まで走れ! ランサーまでの道は俺が塞ぐ!」

「了解ッス!」

 

 ルーキーを追いかけて落とし穴に嵌ったら袋叩き。ルーキーを追わずにランサーに向かえばその進路上で俺が大剣構えて待ち受ける。ブレスなら洞穴の時と同じように大剣を盾代わりにする。

 

 正直不安だらけの即興作戦だ。だけど今のジリ貧状態から確実に状況は変わる。

 

 悪い方向に変えないためにも、何が何でも失敗は許されない。

 

 ランサーまでの進路上を妨害できる位置についたことを確認してから、ルーキーが落とし穴に向かって走りだす。

 俺はいつゴアが向かってきてもいいように、そしてゴアが落とし穴に嵌ったときに備えていつでも走りだせるように、武器は背中のまま、手だけを添えて注意深く敵を見やる。

 

 ―――こっちに来る。それも突進。

 

 タイミングがずれてはいけない。確実に向かってくるゴアにぶつけるのだ。

 

 腕だけでは振れない。全身を使って振るのだ。

 

「そぉぉいっ!!!」

 

 振り下ろした一撃は突進してくるゴアの頭を迎え撃つように当たった。

 だが刃が深く入ったわけじゃない。ほんとになんだこいつ。表面柔いのに中は硬い。思った手応えじゃない。

 とはいえ今の一撃で怯ませて止めることはできた。

 ゴアの頭部に傷痕がついた。部位破壊でつく痕と同じで白い傷痕だ。間近で見るとこれって―――

 

 

「俺、モンスターをハゲさせる達人かも……」

 

 

 ぼそりと呟きながら身体を回転させる。勢いづけて大剣を横に薙ぐために。硬いのなら硬いで、何度も叩き込めばいいのだ。

 

「丸刈りにしてやらぁ!!」

 

 ハゲ・マガラにしてやらぁ!!

 

 身体を捻りながら、ゴアに向かって踏みこみ、遅れて遠心力のついた大剣をぶち当てて頭部を白くさせてやるのだ。

 

「ダメッス!!!」

 

 ルーキーの声が聞こえた。

 ダメではない、ハゲさすのだ。心の中でそう返答して気づいた。

 

 ――――――近い。ゴア・マガラが

 

 背中を向けての踏みこみだったから、距離感がわからず詰めすぎた?

 

 ―――違う。

 

 背中を向けている間に、攻撃姿勢になっていたんだ。

 

 大剣の懐に潜り込んだゴアのアギトが、右腕に食い込む。

 

「―――っ!?」

 

 そのまま身体ごと持っていかれ、振り回される。腕の防具、アニキの作ってくれたアロイアームのおかげで噛み千切られてはいない。だが牙は食い込んでいる。

 痛みと身体ごと振り回されて、何もできない。

 

 腕と肩がとてつもなく熱い。どうしたらいいか、考えることもできない。

 

「離すッス!!」

 

 ルーキーの声が聞こえたと思ったら、空中に投げだされた。地面にそのまま自然落下。もう全身痛い。

 

「大丈夫ッスか!? 意識は!?」

 

 ゴアに攻撃しながらの問いかけに、壊れたアロイアームを外しながら応えた。

 

「だいじょばない!! 超痛い!!」

「元気そうッスね!!」

 

 やけくそ気味なのだ。しょうがない。

 噛みつかれた右腕を見る。出血はしているが、そのうち止まりそうな程度の傷だ。でもしばらくダメかもしれない。痛すぎて、武器を持つにしても右手は添えるだけしかできなさそうだ。大剣で添えるだけて、無理ですわ。

 

「なんて、言ってる場合じゃ、ないよなぁ……」

 

 気合いだ。気合いは魔法の言葉なのだ。精神論だ。というか精神論とか置いといても、やらなくては絶体絶命だ。

 それに、ゴアがルーキーから目を離して、俺に向かって来ている。

 

「避けるッス!」

 

 地を蹴り、転がり避ける。避けた先に落としていた大剣を掴み、ゴアに向き直ろうとしたが、片手では引きずるのが精一杯だ。

 顔だけでも向き直らそうとしたら、目の前には、口から黒い何かが溢れ出しているゴアがいた。

 

 ブレスが来る―――

 

「―――!」

 

 大剣を両手で持ち、ガード姿勢をとる。腕に走る痛みから目を見開いてしまう。今写真とか撮ったら変顔確定だ。ネコ太郎のことを言えない。

 痛みを我慢してのガード姿勢。気休め程度にしかならなかった。

 爆発するウイルスのブレス。その衝撃で後ろに飛ばされる。ガードしてもこの威力なのか、ガードしたから飛ばされたのか。

 もうこの短時間で何度地面を転がっているんだ俺は。

 

 今度は攻撃された拍子に大剣を落としたりはしなかった。

 追撃のためか、単に距離を詰めるためか、こちらに向かってくるゴアの姿。

 

 身体中が痛い。なのにまだしつこく狙ってくるとか性格悪すぎだ。

 

 せめてガードだけでも、と大剣を再び前に構えようとしたが、うまく動かせない。ダメだこれ、やられる―――

 

「―――ってうひぃっ!?」

 

 耳元を巨大な虫が飛んでいった。

 モンスターサイズじゃないけどあれは充分巨大だ。ルーキーの猟虫だ。羽音が怖いんだよ。ゾワっとした。

 

 俺から見たら巨大なサイズの虫だが、ゴアから見たら小さいものだ。だけどゴア・マガラは虫の突撃を回避した。さっきまでは鬱陶しがってはいたが、回避などわざわざしなかったのに。

 

「喰らうッス!!」

 

 立ち止まったゴアに飛び掛かり攻撃するルーキー。そしてその背中にしがみ付いた。乗り攻撃だ。

 虫で攻撃しながら背中にしがみ付いてナイフで滅多刺しにしている。

 

 しかし見ている様子では、深くまで刃はやっぱり刺さっていないようだ。

 

 大剣を杖代わりにし、呼吸を整えながら立ち上がる。

 もうすぐチャンスが来るはずだ。それまでに、せめて少しでもまともに大剣を振れるようにならないといけない。この痛みを無視できるくらいの体力を戻したい。

 

「う、ウワァァア!」

 

 ―――チャンスこなさげな気がしてきた。

 まともに刺さらないからか、しがみつくのにも苦労しているようだ。というか振り落とされそうだ。

 しがみついている位置もどんどんとズレてきている。

 

「ああ……もう畜生が……」

 

 杖代わりにしている時間はもうすぐなくなるだろう。すぐに大剣を振れるように背中に帯刀した。

 ゴアの暴れる音と、ルーキーの必死な声、そして何かが走ってくる音が聞こえる。

 

「いたぁぁあいッス!」

 

 振り落とされた。やたらと元気に振り落とされた感じがするのはあいつのキャラゆえか。

 しかし、振り落とされたと同時に、別の人物達がゴア・マガラに飛び掛かっていた。

 

「ここだ!!」

「ここニャ!!」

 

 ネコ太郎とランサーが、ルーキーを吹き飛ばしたばかりのゴアに攻撃していた。ランサーは勢いの乗せた突進飛び掛かりによるランスの突きで、ゴアの前脚を突いた。

 それによってゴアはバランスを崩したのか、体勢がやや崩れた。そこに追い打ちをかけるようにネコ太郎の突進が同じ脚を突いた。

 倒れないようにもう片方の前脚で踏ん張りを見せるが、倒れていないだけで完全に崩れている。その状態のゴアの頭にランサーの盾による打撃があたった。そのダメ押しの追撃により、ついに転倒した。

 

「やったッス! すごいッス!! ……ってセンパイ!? 大丈夫ッスか!?」

 

 ルーキーの喜びの声と、そして一拍遅れて疑問の声があがる。俺も思っていたことを代弁してくれた。

 一方でゴアは無理やり地を蹴り体勢を戻す。その動きには誰も巻き込まれなかったが、復帰が早い。

 

「ああ、大丈夫だ。心配かけたようですまない。オトモに無理やりウチケシの実や活力剤を泣きながら口に詰められてね。そのおかげか今はこうして戦える」

「泣いてないニャ!」

 

 そのセリフはダメだネコ太郎。

 ネコ太郎が加工屋の娘っ子のアイデンティティーを奪おうとしている。

 

 武器を構えているランサーは戦えると言っているが、その顔色はあまりよくない。状況が状況だから少し甘えてしまうが、あまり長くは戦えないだろう。

 

 短期決戦で行かなくてはならない。元々そのつもりではあったけども。

 戦力が増えたことによる安堵感からか、少しだけ身体が楽になった気がした。これならいけるはず。

 

 ゴアのほうを見やると頭を振りながら、六本足で翼をはためかせていた―――

 

 鱗粉が辺り一帯に漂い、視界を黒く歪める。

 

「あ、あれは……やばいッス……」

「……」

 

 その頭部から、紫に光る触覚が生えて、産声をあげるかのような咆哮が響き渡る。

 

 その姿を見て、一瞬眩暈を感じた。

 

 戦力が増えたが、向こうの舐めプ終了にショックを受けてしまったのかもしれない。自分のことでもわからないことは多いのだ。眩暈を感じたが、絶望感は持ってない。それどころか、戦いたい高揚感がある。戦闘民族になった覚えはないが、今は好都合だ。

 

「クライくん、君は下がっていたほうがいい。その怪我ではまともに戦えな―――!?」

「そぉい!!」

 

 ランサーの言葉の途中でゴアに向かって剣を振り下ろす。

 軽々と躱されたが大丈夫、戦える。

 

 翼脚による薙ぎ払いが襲いかかる。避けるのは無理だ。だから前へ進む。ゴアにやられたことをやり返してやるのだ。根元の部分ほど、威力は掛からない。大剣も、この大きい翼脚も、的確な距離でなければ威力は激減する。

 

 根元と言えど、身体ごと持ち上げられる威力だ。だけど痛みはない。大丈夫、戦える。

 

「無茶しすぎッス! ってああ!?」

 

 ゴアは背後から飛んできた猟虫を振り向きながら叩き潰した。漂う鱗粉のためか、格段に精密さが上がっているようだ。

 

「ま、マルドー!!!」

 

 ルーキーの悲痛な叫び。ひょっとして猟虫に名前を付けて可愛がっていたのだろうか。

 

「っそぉい!」

 

 剣の柄の下に足を入れ、蹴りあげる。下から襲いかかる大剣の攻撃を、上体を逸らすことで避けられた。そのまま両翼脚で叩き砕くつもりのようだ。

 

 振り上げた勢いのまま、後ろに数歩下がる。笛の動きと似たような動きをしてしまった。大剣なのに。

 目の前に叩き付けられる両翼脚。

 

「無茶をするな!」

 

 ゴアの横から突きを繰り出しながらランサーが言った。

 

 ランサーに言われたくはない。顔色がひどく悪いくせに。

 それに無茶ではない。身体はまだまだ動くのだ。痛みも不思議とない。それに闘志も湧いているのだ。

 

「マルドーの仇ッス!!」

 

 ルーキーの叫び、やっぱり名前だったようだ。

 高く跳び上がりながら武器を振るルーキーを、無視してゴアが後ろに大きく飛び上がる。

 

 虫の仇討ちに燃えるルーキーを無視。ふふ、しょうもな―――

 

「痛ぅ!!?」

 

 急に全身に痛みが走る。視界がチカチカとする。

 なんでさっきまで戦えてたんだ俺。全身傷だらけじゃないか。右腕なんて血だらけだ。

 

「滑空してくるぞ!」

「りょ、了解ッス!!」「避けるニャ!!」

 

 ランサーたちの声が聞こえる。二人と一匹が各々散らばりだす。その一方で俺は動くことが出来なかった。

 

「旦那さん! 避けるんだニャ!」

 

 とてつもない速さで飛んでくるゴアの姿。

 どうすれば、どうしたら、避けなくては、でもどうやって。そう悩んでいる間に視界が黒く歪んでいく―――

 

「舐めんなぁぁああ!!」

 

 地を蹴り前へ飛び込む。ヘッドスライディングである。

 刹那、真上を風を斬りながら通っていく巨体の音が聞こえた。そして地面を削るような音。

 

 振り向けばこちらに向きなおっているゴア・マガラの姿がある。そして両翼脚で地を踏みしめ、今にも突進をしようとしているようだ。

 立ち上がり大剣を振りかぶる。

 

「無茶だ! よせ!!」

「旦那さん!!」

 

 確実に行ける。無茶ではない。

 全身の痛みは何故かまたも、なくなっているのだから。

 

 どんどんとゴアとの距離が縮まっていく。右腕から何かが流れているが気にならない。ただ一撃を叩き込むのみだ。

 

 

「ぶちかますッス!!」

 

「――――――!!」

 

 

 紫の触覚に大剣が入った―――

 

 触角は折れ、ゴアの姿勢が崩れる。だが突進の勢いは多少衰えただけで、そのまま突き進んできた。それを大剣を軸に横に転がり避ける。そしてすぐさま立ち上がった。

 

 ゴアもまた、前に転がり倒れ、そしてすぐさま立ち上がり向きなおった。

 

 ――――――六本足じゃなくなっている。

 

 

「や、やったッス!! すごいッス!!」

 

「旦那さん! もうボク達に任せて下がるんだニャ!」

「これ以上は危険だ! いったん下がれ!!」

 

 何故あの師弟は止めるのか。大丈夫、まだ俺は戦えるのだ。それにゴア・マガラに痛手を負わせた。この勢いのまま仕留めれるなら仕留めたい。

 

 槍師弟の言葉を無視して大剣を構えながら距離を詰める。

 

 しかし、ゴア・マガラは翼を広げ――――――空に飛び立った。

 

 ―――――――――また、逃げられた。

 

 

 

「に、逃げたッスか?」

「分からないニャ……船の上で襲ってきたときも、逃げたと思わせてもう一度襲ってきたって聞いたニャ……」

 

 唖然としていたルーキーが、ネコ太郎の言葉であたりをキョロキョロと見回した。

 

「……クライ君、すぐに応急手当てをしたほうがいい。ひどい傷だ」

「あ…………はい」

 

 ランサーに何を言われてるのか一瞬わからなかったがそうだ。怪我をしてたのだ。なんでか途中から痛くなくなっていたけども。なんだろ、脳内物質がこう、色々して痛みを忘れてたとかかな。ハンター必須の技術、的な。

 

「そうニャ! 旦那さん、今回は無茶しすぎだニャ! いつものヘタレっぷりはどうしたんだニャ!」

「お前いつも俺のことどういう目で見てんの?」

「とにかく早く手当てするんだニャ!」

 

 手当用の道具は洞穴に入れている状態らしい。ゴアのブレスで汚染されてたと思うんだけど、殺菌とか大丈夫なんだろうか。

 

「じゃあひとまず手当てが済むまであの洞穴にいたほうがよさげッスね。またランポスやコンガに襲われたらたまらないッス」

 

 まぁ殺菌も何も、この辺りはさっきの戦いで汚染されたようなものか。なら洞穴もここも、汚染度は変わらないのかもしれない。

 ランサーにネコ太郎、ルーキーが洞穴に向かっていく。

 

 そういや回復薬とかって飲んだことないけど、この世界だとどうなっているんだろうか。飲んだらすぐ傷が治るのだろうか。まぁそれはないだろうなぁ。

 

 ていうか普通ポーチに応急薬とか入っててもいいもんだと思う。今までずっと入ってなかったのはなぜなのか。支給してくれていいと思うのだ。

 

 そう思いながらポーチの中を見る。

 

「うへぁ!?」

 

 ポーチの中がとんでもないことになっていた。

 なんだこれ。

 

 なんか気持ち悪いものがいっぱい入っている。よくわからない、表現しづらい気持ち悪いものがいっぱいだ。

 

「気持ち悪っ! なんだこれ!?」

 

 ポーチをひっくり返して中のものを捨てる。

 なんだってこんなものが入っているのだ。鳥肌立ちそうだわ。

 

「旦那さーん! 何してるんだニャ! 早く洞穴まで来るニャ! 痛くて動けなくても頑張って洞穴まで移動してほしいニャ!」

「いや、そういうわけじゃないんだけど」

 

 すぐに洞穴に来ないことを訝しんだのか、そばまでネコ太郎が迎えに来てくれた。別にまた痛みだしたわけじゃないから動ける。動かなかった理由はなんか気持ち悪いのがポーチに詰まってたからだ。

 そう説明しようと思ったがやめた。わざわざあんな気持ち悪いのをネコ太郎に見せる必要はないだろう。

 

「んじゃ洞穴で優しく介抱してもらうとするか」

 

 逃がしてしまったことが少し残念だけど、ハゲコンガと違って、またすぐ機会があることはわかっている。

 そう思うと少し気が楽になり、軽い足取りで洞穴へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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