逃避の先で   作:横電池

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己との戦いとは

 クエストクリア後、ハンターは報酬を受け取り、身体を休める。

 少なくとも俺はそう思っていた。

 

 たとえ相手が小型モンスターだからって、心身を休めるのは大事だと思うのだ。

 

 だというのに―――

 

 

 

「それでどうでした!? 滅多にない体験ですよ! ぜひともこの超☆メモ帳に書き記したいんです!」

「ヤメテ……ヤメテ……」

「クンチュウに抱き着かれたハンターってだけでも珍しいのに! クンチュウのお腹に顔をつっこむなんて、クライさんは素晴らしいハンターですよこれは!」

「思いださせないで……」

「どんな感触だったか一言だけでも教えてください!」

 

 

 助けて誰か。

 

 

「お嬢、その辺にしてやるんだ」

 

 そうだそうだ。団長もっと言ってやって。そしてこの責め苦を終わらせてくれ。

 

「でも……わかりました。また今度聞かせてくださいね!」

 

 またの機会になったようだ。二度と聞いてほしくないのですが。すぐに忘れたいよあんな記憶。刹那で忘れちゃいたい。

 

「ハッハッハ! なんにせよ、無事クエスト達成したようだな! さすがは我らの団ハンターだ!」

「無事って言えませんけど……」

 

 やるせない表情でつぶやく俺に対し、団長は面白そうに大笑いするばかりである。

 

「誰だって最初は躓くものサ。立ち止まるのもたまにはいいが、一歩ずつでも進歩してたら充分だ」

「はぁ……」

 

 進歩のために次も狩猟いけって流れだろうか。もうやだ働きたくないでござる。

 アカリに頼ってくれ。あの人ならなんでもいけるよ。俺はもう無理だズタボロだ。

 

「まァ今はゆっくり休むといい。そのうちアカリがクエストを見つけてくるだろうからな!」

「りょーか……い……? アカリが見つけてくる?」

「あァ、昨日はお前さんがクエストを見つけてきてくれたからな。今日はアカリが行ってるぞ」

 

 すさまじく嫌な予感がする。

 

 アカリの思考パターンを考えるのだ。というかこの場合俺のやりそうなことを考えるのだ。

 

 

 

 Q.勝手に仕事見つけては俺に押し付けてくるやつがいました。仕事を見つける役目が俺になったら、どうしますか?

 

 A.仕返しとして同じことをします。

 

 

 

 

「団長! 俺お腹痛いんで今日はクエス―――」

「クエスト見つけてきたよー! あ、2つとも指名制になってると思う! クライ頑張ってね!」

「ふざけんなぁぁあぁあぁああ!!」

 

 やっぱりやりやがったよこいつ。中身俺人格なだけあるわ。畜生め。

 

「おォ! 早かったな!」

「内容はドスジャギィの狩猟とアルセルタスの狩猟! あそこの買い物客の人と料理長からの依頼!」

「大型かァ! なら今日は準備をしっかりしないとな! クライ!」

 

 なんで大型の依頼を指名で俺にするのか。全くわからない。

 新人いびりと言うやつか。まったくもって度し難い。

 

「クンチュウの素材も手に入ったことだし、何か防具でも見繕ったらどうだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢から聞いた……。クンチュウを……狩ったそうだな」

「そっす……」

「クンチュウの素材があれば……良い腕防具ができる……」

「クンチュウアーム……ですか……」

「ああ……作ってみた……」

 

 加工屋の兄さんのローテンションに釣られて俺もローテンションになってしまう。

 いや、この人はもともとあまりおしゃべりじゃないからローテンションって訳じゃないのだろうけど。

 

「っていうかすでに作ってるんですか……」

「ああ……つい、な……使ってみろ……」

「はい……」

 

 代金はいいのだろうか。渡されたクンチュウアームを装備する。うん、こう言っちゃなんだが、キモイ。

 盾虫の防具と言えば頑丈そうだけど、盾虫そのまま使ってるような防具だ。デザインがこう、キモイ。

 実際小型モンスターの素材でできる防具としては優秀なのだろう。けどこう、キモイ。

 

「どうだ……?」

「腕がゾワゾワしてる気分です……」

「……そうか………………」

 

 なんかしょんぼりした雰囲気になってしまった。

 だけど正直な感想以外言えない。お世辞でも最高です! なんて言えないこれ。だってあの糞虫だもの。

 

「で、でも頑丈そうですし、心強いです!」

「そうか……」

 

 ま、まあ実際頑丈だろうし、ブレイブ防具よりは防御力は高いだろう。ゲーム的には。俺の場合どうなってるかはまだわからないけど、それでも盾もどきとしては充分なはずだ。

 

 しかし防具もいいがどうせなら武器も新調したい。ハンターナイフはちょっと心もとない。

 

 相手はアルセルタス、ドスジャギィだ。同時ってことはないだろうけど。あとたぶん後ろにアカリがいるだろうけど。

 とにかくハンターナイフでは不安である。

 

 片手剣を扱ってみてわかったのは、案外武器は振り回せるということだ。

 つまり俺でも大剣やハンマーなどの重量武器もいけるのだ。

 転移じゃなくて憑依だからこそかもしれない。元々の体だったら片手剣すら両手で持ってそうだ。

 

 って考えが脱線してしまった。とにかく新しい武器である。

 

 ドスジャギィはともかく、アルセルタスは言ってしまえばでかい虫だ。

 片手剣で近づいてザクザクするにはちょっと……

 

 というわけで片手以外だ。至近距離すぎるの嫌だし同じ理由で双剣も避ける。

 

 近づかずに戦うのであれば、ボウガンか弓。ボウガンは弾代がなぁ。余裕がぶっちゃけない。

 弓はゲームなら矢の本数気にしなくてよかったけど、さすがにそうはいかないだろう。

 つまりほぼ外さず戦うのを強いられる。無理だ。おとなしく剣士でいこう。

 

 せめてリーチが長いやつなら……

 

「アイアンソードって作れます? できたら改まで鍛えたいですが」

「大丈夫だ……大剣を使うのか……」

「明日までに……間に合いますか……」

「ああ……それと……」

「はい……」

「普通に話してくれていい……。俺に……合わせなくていいぞ……」

「はい」

 

 自然と合わせちゃうものなんです。

 

 しかしあれだ。自分の装備ができていくとなるとモチベーションが変わってくる。採取専門を志していたけど、アルセルタスとかドスジャギィ程度ならいいんじゃないかな。

 あとケチャワチャとか。大型というか中型的なモンスターまでならやれる気がしてくる。

 

「あ、加工屋さんッスね! 自分の武器強化したいッスけど!」

 

 モチベーションの上昇を感じていたら誰かが来ていた。

 

 このあからさまな後輩口調……。

 

 こいつは筆頭ルーキーか。

 

「あ、ひょっとしてお話中だったッスか! 邪魔して悪かったッス! ところでアンタもハンター? 自分もハンターなんだ! よろしくッス!」

「お、おお」

 

 なんだこの勢い。俺と加工屋さんのさっきまでのトーンと比べるとうるさいくらいだ。

 

「あ、加工屋さんこれッスこれ! この武器を強化してほしいッス!」

「素材は……あるか……」

「それならポーチに……あれ? ない……ないッス!? ドスジャギィの素材を確かに入れてきたはずなのに!」

 

 素材忘れとは。哀れな奴よ。

 

 しかしドスジャギィとな。

 

「なぁ、ドスジャギィの素材が足りないんだろ?」

「そうなんスよ! ひょっとして落としちまった!? うおー、まずいッス! リーダーにどやされるッス!」

「俺とドスジャギィ狩りに行かね? ちょうどドスジャギィのクエストあってさ」

 

 筆頭って着くくらいなんだから優秀だろうし。ゲーム中じゃアレだけども。

 

「まじッスか!? 行く行く! 行くッス!」

 

 よし、釣れた。アカリと行けばほとんど俺ばっかり戦うことになって辛いけど、こいつとならむしろ逆。俺じゃなくてこいつが頑張ってくれるだろう。

 

「それじゃ早速行くッスよ!」

「いいのか……?」

 

 加工屋の兄さんが心配げに聞いてきた。まぁ明日予定だったのに今からに変更だしな。

 

「大丈夫……。明日はアルセルタスを行くけど、今日はドスジャギィ……する……」

「アイアンソード改は……今から出発なら間に合わないぞ……」

「あーそっか」

「アイアンソードなら……大丈夫だが……」

「あ、じゃあそれで行く」

 

 片手剣を加工屋兄さんに渡し、アイアンソードを受け取る。

 

 うん、わかっていたけど重いなこれ。

 

 背中に帯刀だ。いや、大剣を背中に帯剣だ。ふふ。

 

 しょうもな―――

 

「早くいくッスよ!」

「うおおお!? 急に引っ張るな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本日2回目の遺跡平原である。

 

 ここのドスジャギィが街道まで出てくるので狩猟してくれとのことである。

 そういやアルセルタスもいるんだよね。ゲームと違って同時に出てくる可能性もあるのでは、今更ながら思えてきた。

 

「さぁ、張り切っていくッスよー!」

 

 まぁアルセルタスもいようと、この張り切り筆頭に任せれば大丈夫だろう。

 

「まずは探し回るッス!」

 

 そういって走りだす筆頭ルーキー。

 落ち着きないなぁこいつ。

 

 ぼんやりしていたらあっという間にどっかへ去って行った。

 

 ふむ。

 

 

 計画通り。

 

 

 いや、厳密には違うけど。まぁ筆頭ルーキーが張り切って倒してくれるっていう目論見だし、ほぼ計画通りだ。俺も探し回ってたけどたどり着いたころには戦いが終わっていた、がベストである。

 

 そのためにも一度筆頭ルーキーとはぐれないといけないと考えていたが、自分からはぐれてくれるとは。チョロいわあいつ。

 

「俺もードスジャギィをーさがすぞー」

 

 ひどい棒読みだと自負している。まぁ誰も聞いちゃいないから問題ないけどな。

 

「どこだードスジャギィはー」

 

 そういいながらBCで釣り竿を使う。

 釣りはいいものだ。

 

「ここかー」

 

 魚が食いついた。サシミウオだったらいいのにな。けどBCにはサシミウオいないんだっけ。

 

 これは……キレアジかな。

 背びれがすごい硬い。砥石の代わりにもなる魚だ。武器にもなりそうだなこれ。とりあえずポーチへ入れる。

 

「それともここかー」

 

 この調子でガンガン釣っていこう。

 

「ここだなー」

 

 うわ、針みたいなのついてるこの魚。

 ハリマグロか。これってボウガンの弾にもなるんだっけ。調合のリストはすっかり忘れたけど。

 

 これまたとりあえずポーチへいれる。

 

 どうせ釣れるなら黄金魚とかがいいのに。

 

 いや、欲張ってはいけないか。せめて小金魚が釣れたらいいのに。

 

「でてこいードス小金魚ー」

 

 今頃筆頭ルーキーは戦っているのだろうか。

 筆頭になれるくらいだ。負けはしないだろう。

 

 俺も今己との戦いをしているのだ。魚釣りはまさに忍耐の勝負。

 

「そこだなー。おっ? おおっ??」

 

 結構デカいのが掛かったのか、引きが強い。

 

 まさか大物が、ひょっとしてカジキマグロとか古代魚だろうか。カジキマグロなら冷凍マグロにしてやろう。

 なんにせよ、逃しはしない。

 

「うおぉおおおおお!」

 

 手ごわい、こいつ。

 まさかBCにこれほどの猛者がいたとは。やはりモンハン世界は侮れない。

 だが俺とてモンハン世界のハンター。簡単にやられたりはしない。まだ、余力を残しているのだからな。

 

 一気に力を込めて引っ張る。

 

「そぉい!!!」

 

 ブチッという音がしたと思ったら、突然抵抗がなくなった。糸が切れた。

 

 急に均衡が崩れ、そのままの勢いで釣り竿を引っ張ってしまった。

 

 結果、後方に竿が勢いよく振られる。

 

 

 

 ぎゃう という鳴き声と、バキっという何かが折れた音が聞こえた。

 

 

 

「へ?」

 

 

 鳴き声のする方角には折れた竿の先端が目に刺さっている、ドスジャギィの姿があった。

 

 

 

 なんでBCにモンスターがいるんだよ。改造データかよこれ。

 

 

 ドスジャギィが怒りの雄たけびをあげる。仲間呼び? これ?

 どんどんジャギィ達が現れてくる。

 

 

 これはあれだ。

 

 うん。

 

「筆頭ルーキー!! 早く来てくれー!!!」

 

 

 俺の叫びを合図と言わんばかりに、周囲のジャギィ達が襲い掛かってきた。

 

 

 

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