逃避の先で   作:横電池

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其の名はフレーメン反応

「あんなに嫌そうにしてたのに、どっちももう終わらせちゃったんだ? ふーん……」

 

 

 何故クエストを達成してきた人に対してどこか不機嫌な対応をしてるんですかこの人。

 

 

「いやよいやよも好きのうち、と言うやつですね。わかります。モンスターの魅力には誰も抗えませんよね!」

 

 

 緑の受付嬢ことお嬢がよくわからない同意を求めてきた。

 

 

「魅力はさっぱりだけど、なんとか終わらせてきたですはい」

 

 

 普通さ、こうさ、ここは褒められる場面じゃないだろうか。

 

 いきなりドスジャギィとアルセルタスを倒した期待のハンター! みたいな感じでさ。

 いや、そりゃアカリと比べたらしょぼいだろうけど。

 

 そういやアカリって上位ハンターって団長言ってたっけ。まぁ防具も上位のだから間違いないだろうけど。

 

 上位のどのあたりになるんだろう。

 ダラ・アマデュラ狩猟してたりするのだろうか。村未クリアで集会所クリアとかなのだろうか。俺のプレイスタイルは村をクリアしてから集会所だ。アカリもそのはずなんだけど、うーん。

 

 今度機会があったら聞いてみよう。

 自分のキャラなのに自分自身が把握できてないってどうよ。

 

 

「そんで、アカリはなにゆえ不機嫌なのでしょうか」

「別に普通だけど? 普段通りだけど?」

「わー、こわい」

 

 これで普段通りとか友達無くすぞ。フレンドからブロックされるぞ。部屋に入れなくなるぞ。

 

「一緒にクエストデートって楽しみにしてたのに終わらせちゃったことが不満なようですよ。それも誰かと二人きりで行ったことに対しても」

「違うから! そんなんじゃないから! ただ、やる気がなくなったと思ったら突然やる気だしたのが気になっただけだから!」

 

 ふぅむ。

 

 デートて。

 

 ここもそういや謎だ。

 アカリと俺の関係ってどうなってんだろ。なんだか団長やお嬢の言葉的に、カップル的な認定なのだろうか。もしくは団長たちが勝手にそう言ってるだけで、実際は兄妹? 姉弟? それとも同郷のただの幼馴染とか?

 

 正直、このことについてはあまり考えたくない。確かめたいとも今は思わない。

 

 

「っていうか二人きりで行ったって、相手男なんですが。男二人で人気のない平原へ、とか言葉にするとすごいむなしくなるんですが」

「自分で言葉にしてるじゃん……」

 

 今度行くことがあればせめてオトモ連れてこ……。

 

「でもそっか……男の人とだったんだ……」

「…………何度も言うなぁ!」

 

 

「おぉ、優秀なる我らの団ハンター! 帰ってたか!」

 

 よくわからないアカリとやり取りをしていたら、団長がやってきた。相変わらずの西部劇に出れそうな渋い恰好してらっしゃる。いつの間にやら俺も優秀なるハンターと見られているようだ。

 まぁ優秀と言われるのは悪い気はしないが、だからといって危険な場所には行きたくはない。そのため団長には再度言っておかねばならない。

 

「あ、はい。ところで団長! 前言った俺の希望覚えてますか!」

「ん? 何かあったか?」

「採取専門ハンターって!」

「そんなことあったっけなァ……」

 

 なんとなく思ってたけど、やっぱりうやむやにするつもりだ!

 

「クライまだそんなこと言ってんの?」

「そんなこととはなんだ! 俺は堅実安全を好むハンター路線で行きたいんだ! あなたとは違うんです!」

 

 今回はクエスト行ったけど、採取専門で行きたいのだ。

 採取だって大事だよ。ゲーム中じゃ面倒だったけど今は採取を優先したい。超優先したい。

 

「まあまあ。まあまあ」

「またそれか!」

「まあ落ち着くんだクライ。それよりもちょっと頼みたいことがあるんだが。まぁクエストだ」

「この流れで!?」

 

 狩猟クエストなら拒否するぞ今度ばかりは。

 だって今の会話の流れはそういう流れのはずだ。狩猟なんてお断りだ。

 

「どういう内容なの?」

 

 アカリが尋ねるが、どうせ狩猟だ。序盤の流れは覚えてないけど、たぶんケチャワチャあたりだろう。アカリがんばって。アカリ様がんばって。

 

「狩猟ならアカリお願い。俺、お留守番、スル」

「狩猟であっても内容次第じゃクライがやりなさい! 厳しい相手は私がするから!」

 

「安心しろ! 今回は狩猟じゃないぞ! ちなみに二人とも来てもらうからな!」

 

 

 なぬ。

 

 

「今回は探索クエストだ! どんな発見があるか楽しみだな! はっは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 探索クエスト。

 未知の樹海の探索をするやつだっけか。

 ゲームではギルクエ作りにためと、旅団ポイントのために何度もやるやつ。

 出てくるモンスターがランダムな感じだったはず。

 

「まァ探索と言ったが実際は調査だな。ウム。ギルドの未調査の地にどんなモンスターがいるのか、調べてギルドへ報告が目的だ」

 

 出てきたモンスターの落とし物を拾う、もしくは狩猟をすることによって、調査した証拠、ってことになるんだっけか。そして何故かギルクエが出来る。そして右ラーが流行り過ぎてラージャンハンターに―――

 

 考えがそれた。とにかく落とし物を拾う、もしくは狩猟することが調査ということは―――

 

「やっぱり狩猟じゃん!?」

「いや、調査だが」

「調査じゃない?」

 

「どうしたクライ、なんだかんだ言って実は狩猟したいのか? はっは! 血の気が多いな!」

「いや違うけども。でもほら、調査でモンスターを狩猟するんじゃ……」

「何言ってるんだお前さん。モンスターと遭遇はあるかもしれんが狩る必要はないぞ。見つけてもメモを取るとか程度だ。襲われたりしたらそうはいかんが」

「なんで調査で狩猟になるのさ?」

 

 メモ? あれ?

 

「見つけ次第狩るつもりだったか? それだと調査と言うよりも、もはや侵略だぞ」

 

 あれぇ?

 と、とにかく

 

「ということは、こっそり行って色々メモったりするだけ……?」

「まぁそうなるな! ああ、採取は別にやっても構わないぞ!」

 

「採取ありだって。よかったじゃんクライ!」

「お、おお」

 

 いや、別に採取がすごい好きってわけじゃないけど。これ言ったら腹パンコース不可避だよね。

 

 まぁなんにせよ、こっそり調査なら別にいい、か。

 

「出発は明日の朝だ。それまで自由にしていいぞ! 調査中は酒が飲めないだろうからな。俺は調査前に酒をしこたま飲んでくるぞ!」

「あれ? 団長もひょっとして来るの?」

「あァ、こう見えて調査とか昔は結構やったからなァ。だから明日は我らの団ハンターの二人と、俺と、ネコ太郎の四人でピクニックだな! はっはっは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明日の予定が決まってしまった。

 それまで自由にしていいと言われたので、俺は今、バルバレの中でも人気のない物陰に潜んでいた。

 

 何故物陰に隠れているのか。自分のことだが、理由は複雑で、説明が難しい。自分自身のことというのは案外わからないことが多いものなのだ。

 

 だが、一応自己分析は済んでいる。ドスジャギィとアルセルタスとの死闘を繰り広げたのが大きな原因だとにらんでいる。

 

 人は絶体絶命のピンチに陥ったとき、種の保存の本能とかそんな感じから、こう、ふふ……下品なんですが、あれなんですよ。えっちなのに飢えるんです。って何かに書いてあった気がするんだ。

 ドスジャギィに追われ、アルセルタスと事故にあいかけ、そんな命の危機があったのだ。そりゃこう、飢えちゃうよ。

 

 まぁ、そういうわけであれだ。かっこよく言うならあれだ。

 

 

 

 性欲を持て余す。

 

 

 

 要するに、自家発電をこれからしたいと思うのです。

 

 なので誰かに見られるなどあってはならない。そのため人気のない物陰に隠れているのだ。通行人すら見当たらない。もうバルバレの外って言ってもよさそうな場所である。

 

 ちなみに、誰にも見られてはいけないのであれば、トイレとか個室ですればいいのでは、と最初は考えた。

 

 だがしかし、だ。

 

 自家発電後って匂いがするらしいではないか。自分自身の匂いってわからないけど、とにかくするらしいじゃないか。

 そして俺の寝る場所ってキャラバンじゃないか。団のみんなでキャラバンの中雑魚寝するようなものじゃないか。

 

 そんな中、匂いしてたらやばくね? 羞恥心で寝れないよ。俺だけひとり寒空の下で寝るしかなくね?

 

 匂いの危険を考えると、そもそも自家発電は不可能だ。だが、発想の転換で俺はその問題を解決しようと思う。

 その発想の転換ゆえに、個室は避けたのだ。

 

 

 その方法、悪魔的閃き。

 

 

 匂いが危険なら別の匂いでかき消せばいいじゃない。

 

 

 そして今、俺の手元にはそのためのアイテムがある。発電後、地面に叩き付けたら完璧だ。

 性欲を持て余しながらも、こうも冷静な考えができる自分が恐ろしい。

 

 

 

 さて、準備もできたし、賢者になるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の俺の寝床は、ひとり寒空の下である。

 キャラバンの温かさが恋しい。

 

 何一つ冷静ではなかったようだ。

 

 まぁあれだ。自家発電の匂いが原因で外に出されたわけではないのだ。

 

 別の匂いでかき消す作戦は、まぁある意味うまくいったのだ。

 

 

 

 こやし玉の匂いは圧倒的だったのだ。

 

 

 

 こやしの匂いがついた時点で『あ、この作戦だめだ』って思ったよ。

 だからキャラバンに戻る前に水浴びしたり、草の上をゴロゴロして匂いが消えないか試したよ。

 

 でもやっぱりダメだったよ……

 

 

 

 俺が馬鹿なことをしている間に、屋台の料理長が正式にキャラバンの仲間になったらしく、豪勢な料理を作って待っていてくれたそうだ。

 

 そしてこやしの匂いを漂わせる俺登場。

 

 全員からのブーイングである。あの団長ですら真面目な顔で『お前さん、ちょっとそれはな……』と言葉を濁していた。

 

 アカリからは『くっさ! くっさ!!』と連呼されて距離を取られ

 

 加工屋兄さんからは無言で距離を取られ

 

 お嬢からは『ババコンガの真似ですか?』とババコンガディスを聞いた。ババコンガは彼女的にはアウトなのだろうか。匂いすらも興味津々になったりしないのだろうか。

 あのお嬢が夢中になっているリーゼントの彼は住んでる場所的に臭いイメージあるんだけど。

 

 

 特に印象的だったのはオトモの……名前なんだろ、とにかくネコ太郎と料理長だ。

 

 口を開けて固まっていた。

 

 無言で固まっていた。

 

 口をあけっぱなしで、なんとも言えない表情で固まっていた。

 

 

 

 結果、ご飯は俺だけ別に盛られ、離れて食事。

 

 寝る時間になっても匂いが取れず、俺だけこうして外にいるのだ。

 

 

 明日調査に行くんだよね俺?

 労わってほしいんだけど?

 

 

「未だに臭いし寒いよぅ……ふぇぇ……」

 

 

 俺が幼女だったらきっと誰か優しい人が中に招き入れてくれるのに。

 幼女風台詞ではやはりみんなの心には響かなかったようだ。

 

 

 

 風邪ひいて調査お休みとかならないかなあ……

 

 割と真面目に風邪引きそうなんですけど。

 

 

 

 

 

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