逃避の先で   作:横電池

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探索と出来心と

「それじゃあ行ってきます!」

「行ってくるニャ!」

 

「はい。珍しいモンスターがいたら教えてくださいね! 珍しくなくても教えてくださいね!」

 

 

 お嬢とアカリ、ネコ太郎が元気よくやり取りしている。

 これから樹海へ探索に出発するのだ。

 

 

「アー……、頭が痛い。飲み過ぎた……」

 

「うあー、頭いてぇ……。風邪っぽいしお留守番してていい?」

 

 

 そして俺と団長はダウン寸前である。

 飲み過ぎって何やってんだよ団長。

 

 

「団長もクライもしゃきっとしよう! ほら!」

 

 シャキッとしろと言われてシャキっと出来るやつはそういないよアカリさんや。

 

 一応はシャキッとした返事を返そうとしたが、俺も団長も『うー』だの『あー』だのしか返せなかった。

 

「……大丈夫でしょうか。今回の探索」

「どうだろう……」

 

 大丈夫大丈夫。

 序盤の探索って言ったらたしかドスランポスなはずだ。出てくるやつは。

 ドスランポスなんて指先一つでダウンさ。アカリの指先で。キエエエエ! とか叫びながらビームを出すアカリを想像した。狩人力53万ですわ。なんか色々混ざってしまっている。

 

「ボクがついてるから大丈夫ニャ! なんせボクはかのユウメイな筆頭オトモ! その名は! 素晴らしき―――」

「あ、ギルドの人もう待ってますよ! 急いでください!」

「ほら、団長! クライも! 行くよ!」

「うー」

「あー」

「ほら! ネコ太郎もぼさっとしてない!」

「いや、ボクの名前はネコ太郎じゃなくて素晴らし―――ニャアア!?」

 

 アカリに押され、ギルドの人が用意しているポポ車に乗せられた。なにやらぼさっとしていたネコ太郎も引っ張られるように乗せられたようだ。

 

「それじゃよろしくお願いします!」

「うあー」「あー」

 

「今回の探索お願いして本当に大丈夫ですか……?」

 

 ギルドの人にまで心配されるとは。俺だけでも風邪の療養ってことで降りるべきじゃないかな。心配されるほど顔色悪いんだよ。

 

「大丈夫です! いざとなればきっとシャキっとするはずです!」

 

 根拠のない発言はよすんだちくしょうめ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは調査お願いしますね。調査終了にはこの道具をお使いください。地面に叩き付けますと緑色の狼煙が上がります。それを目印に回収班が迎えにきますので」

「わかりました!」

「うぅーい」「おーゥ」「ニャー」

 

 

 未知の樹海についた。ゲームで何度も見た、知ってる通りの樹海である。

 とりあえず早速だが、アカリの渡された玉をすぐに使って回収されたい。まぁ無理だろうけど。

 

「ほら! だらけてないで! 気合い気合い!」

「あァ、スマン。やっぱり整えられてない道は揺れがひどくていかんな」

「うぅーい。うぅーい」

「人の言葉で話してくれない?」

 

 気合いを込めて掛け声を出してみただけなのに。

 

「ニャー。それで探索ってどうするニャ?」

「どこを調査してほしい、とかはないからな。カンを頼りに歩きまわるしかないなァ……」

 

 ネコ太郎の疑問に団長が答えた。カンを頼りにって、迷子への第一歩にしか感じられない。

 それを聞いてアカリが挙手をした。

 

「この樹海を?」

「この樹海を。 なァに、できるできる! それより酔い覚ましに効く薬草とかないか? 頭痛止めでもいいんだが」

「あ、俺もほしい」

「そんなものない!」

 

 

 

 じっと同じ場所にいるだけではいつまで立っても調査は終わらない。漠然とした調査と言えども少しは動かないと、ということで移動を開始する。

 

「なんか遺跡の残骸みたいなものとかあるね!」

「調査だからもっと声を抑えるニャ……」

 

 アカリだけ完全にピクニック気分じゃないかこれ。昨日団長が言ってたピクニック発言の影響? それとももともとこういう頭わるそうな子なの?

 アカリが頭悪い子=俺も頭悪いってことになるのでは。いや、これはあれだ。何かの誤解だ。

 

「この遺跡の残骸もいつの時代のモノかわかってない。未知だらけな樹海だな!」

 

 団長も復活したのかもう元気である。声抑えてってネコ太郎言ったばかりなのに。

 

「うぅ~い」

「だから人の言葉を使って?」

「うぃ……。いや、やっぱり団長がここに来るのがなんか違和感があって」

「ん? そうか?」

 

 ゲームだと絶対町にいるし、それにモンスターが出るとこに一般人って危ないと思う。ましてや未知だらけの樹海で。

 

「どんなモンスターがいるかわからないとこに、ハンターじゃない団長は危険じゃないかと思ってさ。あと俺風邪ひいてる気がするんだけど、危険だし団長と一緒に帰るために回収の狼煙あげない?」

「まだ探索始まったばっかだから却下ね?」

 

 一般人を安全な場所へ送る精神がないのかこの上位ハンターは。

 

「まァ確かに危険はあるな。だが未知の樹海だぞ?」

「はぁ」

 

 未知の樹海だぞ? って言われても、だから何って話である。

 

「未知の樹海に何か気になることがあるのかニャ?」

「そうだ。未知の樹海にも、と言ったとこだな!」

「うーい」

 

 よくわからないからテキトーな返事で濁すことにした。

 

「クライ、よくわかってないけどとりあえずって感じでテキトーな返事してない?」

 

 ばれるとは。自分だってそうしようとしたはずだ絶対。

 

「はっはっは! スマンスマン。そういやお前さんたちにはまだ言ってなかったな。俺の目的について。ネコ太郎は知ってるよな?」

「あの白いののことかニャ」

「あァ!」

「目的? 旅の目的みたいな?」

 

 団長の目的っていうと確か、シャガルンか。

 

 団長は帽子から純白の鱗を取り出した。ポケット使わずに帽子に収納する理由はなんなのか。

 

「コイツだ」

「白い、鱗?」

「あァ。コイツは偶然手に入れたものでな。……不思議でキレイだろう? こんな不思議なモノ見たことなくてな! 学術院で資料を探し回っても載ってない。そりゃもう、うずいたよ! コイツのことが知りたくて知りたくて、いても立ってもいられなくなった!」

 

 それにしても本当に真っ白だ。シャガルって純白というより黄色がかった白だった気がするんだけど。

 

 実はほかのモンスターの鱗でした、とかないよな? なんかこう、バタフライエフェクト的な感じで。

 BCにドスジャギィが出てきたくらいだから何かしら違う点があるかもしれないし。

 

「それで相棒と一緒にキャラバンを作って飛び出したってワケだ。いろんな場所でいろんなモノを見てきたが、未だにコイツの正体のシッポさえつかめていない。……だが俺はあきらめてはいない! なんせ世界はまだまだ広いんだ! 探す場所はまだまだある! この樹海も探す場所のひとつというワケだ!」

 

 白い鱗といえば何がいたっけな。モノブロス亜種? モノブロスって鱗とかあったっけ。甲殻とか背甲はあったけど鱗はなかったような……。

 あと白いモンスターは……ドドブランゴ? 鱗ねぇわあいつ。

 ミラルーツ? もしそうなら旅はあきらめてもらうしかない。

 

 

「うーん、私も見たことないなぁこんな鱗のモンスター……うん、わからない!」

「はっは! まぁそういうワケで、コイツ探しのために目的地は変わっていくぞ。ちなみにこの調査が終わったら、海を渡るためにキャラバンを船に改造する。そのためにもの作りに長けた村へいく! ……まぁその村がどこにあるかまだわかってないがな! はっはっは!」

 

 見切り発車か。

 まぁその行動力でストーリーができるしなぁ。

 

「ついつい話し込んでしまったな。すっかり頭痛も収まった! さァ元気よく行くか!」

「はーい!」

 

「だから声は抑えたほうがいいと思うニャ……」

 

 ネコ太郎がんばれ。

 

「旦那さんもなんとか言ってやるニャ」

「うぅーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「珍しいな。この辺りじゃドスランポスなんて見ないぞ」

 

 樹海探索してしばらくしてのことだった。ランポスの群れを発見したのである。そしてその先頭にはドスランポスが。

 向こうには気づかれていない。

 

 しかし超ほっとしてる。

 なんかアルセルタスとドスジャギィみたいに、ゲームではない展開になるのではって不安だったんだ。

 

 樹海はいろんなモンスターが出るからドスランポスとラージャン、とか意味の分からない出方するんじゃないかってな。

 

 だが今のところゲーム通り、ドスランポスだけだ。しかもゲームと違う点として、戦闘不要なのだ。

 

 それからしばらくランポスの群れを観察する。

 樹海ならではの特殊な行動がないかよく観るためだそうだ。なので団長とアカリは双眼鏡を使って観察している。

 双眼鏡とかゲームじゃネタアイテム感覚だったわ。

 ちなみに俺とネコ太郎は周囲の警戒である。双眼鏡でランポスたちの一挙一動見逃さないようにしているため、周囲を気にしてられないだとか。

 

 そう、周囲を気にしてられないのだ。団長とアカリは。

 

 アカリの防具は上位のジンオウ防具である。

 

 

 ジンオウ防具ってね。ゲーム中だとね。パンチラがあるんだよ。

 

 

 今なら覗き放題じゃね?

 

 

 自キャラだから特に興奮する、なんてことはないだろうけど、ユーモアって必要だよね。

 それにゲームとはもしかしたら違うかもしれない。確認って大事だよね。

 

 

 さてさて、ではでは、ちょっと拝見―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お腹痛い。

 

 腹パン超痛い。

 

 拝見しようとしたら即座にバレたんだけど、周り見えてないんじゃないの?

 

 あ、前は見えるかそうだよね。双眼鏡で前を見てるんだもんね。俺馬鹿じゃねーの? 正面回り込んだらそりゃバレるわ。

 

 

「うぅ……うぅぅ……」

「だ、大丈夫ニャ?」

「うぅ~い……」

 

 ネコ太郎が一番優しい。このパーティー不安しかないです。

 

 団長が双眼鏡から視線を離した。

 

「よし、そろそろ移動するか」

「了解!」

 

 だから何故アカリさんはそうも声を出してしまうのか。

 

 だがランポスたちは気づかなかったようだ。ひやひやするわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ランポスたちから離れた場所へ移動している最中だ。

 

「うげぇ」

 

 クンチュウがいた。糞虫は本当にどこにでもいるな。

 

「クンチュウか。まァこいつらの生息域は広いからなァ」

「調べる必要はなさそう?」

「あァ。まァ何か変な動作をしたら観察だな」

 

 そんなやり取りをしている最中に早速変な動作をしだした。

 

 コロコロ丸まりだしたのだ。その動作にアカリがキョトンとする。

 

「んー?」

 

 あー、これは。

 

「みんなこっちこっち。この木の影に隠れよう」

「クライ、なんか知ってるの?」

「たぶん俺の予想通りだと鳥さん」

「鳥?」

 

 

 隠れてから10秒もしないうちに、その鳥は来た。

 

 

 怪鳥イャンクックだ。

 

 

 イャンクックは丸まったクンチュウをつつき、それから―――

 

 

 丸呑みした。

 

 

 

 それを見た俺は――――――

 

 

 

 

 ガッツポーズをした。

 

 

 

 

 ありがとう、先生。

 その調子でどんどんその糞虫をやっちゃってください。

 

 みんなの俺を見る目が変なものを見る目になっているが、気にならない。

 喜びが自然とあふれたのだ。

 

 アカリだけが可哀想なものを見る目である。気にならない。

 

 

「あそこにいたクンチュウ全部丸呑みだったな……。6匹くらいはいなかったか? よく腹に入るよなァ」

「先生さすがです……! さすが先生です……!」

「お、おい、どうしたクライ……」

「あー、クライはこないだのクンチュウ討伐の件まだ引きずってるかと……。と、とりあえずイャンクックも観察かな?」

「あァ、そうか……。そうだな、観察だな」

 

 少しだけ鬱憤が発散された気がする。先生さまさまだわ。

 

 そして再び観察か。

 

 じゃあ俺とネコ太郎はさっきと同じで周囲の警戒か。

 

「ネコ太郎、クライが変なことしようとしたらその槍で思いっきり突いてやっていいからね?」

「任せるニャ!」

 

 任されないでほしい。

 というかもう覗こうだなんてしないよ。お腹まだちょっと痛いんだからな。

 

 

 

 その後の観察も、特に何もなく、滞りなく終わった。

 

 

「それじゃモドリ玉使うよ」

「うーい」

 

 そういってアカリは最初にギルドの人に渡された玉を地面に叩き付けた。緑の狼煙が上がる。

 

 ワープとかはしないかさすがに。ゲームならBCへワープできるのに。

 

 

「あとは迎えを待つか」

「ラジャー!」

 

 まさかマジで狩猟0とは。今後も探索ならやってもいいかもしれない。

 

「そういやクライ、採取してなくない?」

「ん? まぁなぁ。採取やらなくていいならやらないさ」

「自称採取専門ハンターなのに?」

「なのに」

 

 アカリはため息をついたと思ったら俺に近づき―――

 

 

「そぉい!!」

「ぱぴぃ!?」

 

 

 何故鼻頭にデコピンをするのか。

 超痛い。涙出ちゃいそう。

 

 

「はないたひ……いたひ……」

 

 

 いったい何が気に食わなかったんだ……

 

 

 

 数分後、迎えに来たギルドの職員は、涙目になっている俺とは目を一切合わせなかった。

 

 

 

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