逃避の先で   作:横電池

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ナグリ村編
気がつけばナグリ村


「無事で何より! さすがは我らの団ハンター! 見事、緊急クエストを達成したな! お前さんのおかげで、商人達の流通経路が安全になったぞ! 竜人ジィさんも大喜びだ!」

 

 バルバレに戻ったら団長の暑苦しい出迎えが待っていた。

 ねぎらいの言葉は有難いですが鼻水まみれなんですよ俺。

 

 というわけで水浴びしてきたい。何故お風呂がないのか、これがわからない。ユクモ村なら温泉はあるのに、ぐぬぬ。こんなことならユクモ村のある3rdのキャラに憑依したかった。いや、もともと用意してたMMOキャラが一番だけど。

 

「それにしてもお前さん、なんだかカピカピだな!」

「ケチャワチャに粘液まみれにされたんす……」

 

 移動中に渇いたけど、洗い落としたわけじゃないからカッピカピだ。

 

「ケチャワチャの粘液なんですかそれ! 全身カピカピということは、全身粘液まみれになったんですね!」

 

 お嬢のスイッチが入ったようだ。羨ましいなら変わってあげたかったよ。

 しかし全身粘液まみれって薄い本要素だな。なんで俺が薄い本要素の被害者なの。薄い本でも腐臭漂う薄い本かよ。

 

「あー、ケチャワチャについてはアカリかネコ太郎に聞いといて。水浴びしてくる。カピカピつらい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カピカピを落としたあと、竜人商人に挨拶をしに行った。

 ちなみに、お風呂なら私の料理鍋を使って焚くニャルよ? と料理長に言われたけど断った。衛生面考えて? その鍋また料理に使うとか抜かしたら絶対食欲なくすからね?

 

 

「お、あんたさんがケチャワチャをこらしめてくれたんやな! ありがとさん! おかげでまた、商売ができるようになったわな!」

 

 ありがとう300万zな方が仲間になりました。

 

 ゲーム中じゃ素材っていうか、採取とかで取れるアイテム増やすキャラだけど。

 

 商売ってキャラバンの旅でどうするんだろ。売り上げの何割かをキャラバンに献上?

 まぁその辺はなんでもいいや。団長が把握できてたらきっと大丈夫だろう。

 

「もし狩りに入り用なアイテムがあったらワシに言うといいわな! 取り寄せるのが困難なモノでも、どの店に並んであるようなモノでも、バッチリそろえて見せるわな!」

「どんなものでも?」

「ワシは手広く商売しとるからな! なんでも言いや!」

 

 ん? 今なんでもって言ったな。

 

「モンスターの天鱗とか」

「そういうのを扱うとギルドに睨まれるからできんわな。ワシは商人であって犯罪者やないからなあ」

 

 なんでもって言ったのに、広告詐欺じゃないか。

 

「いきなり頼ることなさそうになってきたんすけど」

「まあ今は思いつかんだけかもしれん! 何か思いついたら言うんやで!」

「あ、そうだ。回復薬とか、あと秘薬とかも扱う?」

「ちょっと値が張るけども大丈夫だわな! もう一人のハンターさんも同じこと言ってきたわ! ハンターはみんな同じやわな!」

 

 あ、お金とるのか。当たり前か。秘薬も扱ってくれるなら罠とかも扱いそうだ。

 何気に結構有難いかも。調合ってよくわからないんだよ。

 

「それなら今後頼ることありそうだなあ」

「そりゃよかった! ぜひよろしゅうに!」

 

 了解です300万z。300万zって意味がイマイチわかってないんだけどな。

 

 そんな会話をしていると、加工屋兄さんがやってきた。なにやら背負っている。なにそれ。

 

「よう……」

「やあ……」

「どないしたんや! もっと笑ったほうがええわな! 笑う門には300万zって言うやろ? 言わんか? 言わんわな!」

 

 俺と加工屋兄さんの空気に汚染されない商人だ。強かさが大事ということだろうか。

 

「見てくれ……仲間が増えた記念に……看板を作ってみた……」

 

 よくわからん模様の看板を見せられた。

 仲間が増えた記念ってかわいい一面を見せてきたか。

 

「キャラバンのシルエットを……模している……」

「ふむ……」

「そうやったんか! わからんかったわ! ワッハッハ!」

 

 ドストレートに言っちゃったなこの商人。

 

「わからんか……そうか……」

 

 しょんぼりしちゃったよ。

 

「お、俺はいいと思う!」

「そうか……」

 

 もうちょっとメンタル強くなった方がいいとも思う。うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし! 全員準備はできたな!」

 

 団長が確認してくる。いよいよ別の村へ出発なのだ。

 

 全員の施設を連結させたけど、これをポポだけで引くって大変そう。というか施設の連結手伝ったけど、なんというかシュールな感じ。

 加工屋のはわかるけどさ、料理長と商人はなんで連結可能なんだよ。この世界じゃ連結可能じゃないと施設持てないのだろうか。

 

「それじゃ熱さの煮えたぎるナグリ村へ、出発だ!」

 

 そう、ナグリ村である。

 

 ゲーム通りの行先である。そこで船を作るのだ。そのために、何体かモンスターを狩るのだろう。ネルスキュラはなんでだっけ。蜘蛛だし船の素材じゃないよな。

 

 

 

 

 

 

 移動中、俺は荷車の屋根の上にいた。

 

 だって中だとお嬢がね。もうね。ケチャワチャの鼻水の感想とか、クンチュウの感触とか、アルセルタスの複眼模様とか、モンスターについて聞きまくってくるもの。

 果てにはモノマネで再現してくれとか無茶ぶりしてくるもの。なので逃げたのです。

 

 

「交代だ……」

 

 そろそろ日が沈むなあと思っていたら、加工屋兄さんが顔をのぞかせてきた。

 

 交代って、別に見張りしてたわけじゃないんだけど。もしかして見張り期待されてたのだろうか。たしかに旅だし見張りは大事か。やっべぇさぼってた。

 

「もう日が暮れる……夜になれば……そこだと風邪をこじらせるぞ……」

 

 心配してくれてのことだと。

 

 やだこの人、素敵……トゥンクってなっちゃう。

 

「アニキ……」

「ア、アニキ……?」

 

 もうアニキだよ……。アニキって呼ぶよ優しいよアニキ!

 

「とにかく……お嬢たちにも休ませてやるように……伝えておいた……暖かくしてゆっくり休め……」

 

 アニキィ……

 

 この団で一番の良心だよアニキ……!

 

「ありがとうアニキ……俺、しっかり休む……!」

「ああ……」

 

 

 そして荷車の中で俺は毛布に包まった。

 アカリたちは俺にちょっかいをかけてはこなかった。アニキの優しさは本当やっばい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気づけば荷車は止まっていた。寝てる間に移動が終わったのだろう。

 少しだけ頭がガンガンするが、だいぶスッキリだ。

 

 団のみんなは荷車内にいない。村についたのだろう。俺も出るか。

 

 外に出たら団長がいた。

 

「おはようさん、我らの団ハンター! よく眠れたか?」

「もうぐっすり」

「そうか、そりゃいい! はっは!」

 

 もうすでにキャラバンの人たちは思い思いの場所に、自分たちの施設を広げている。

 初めてきた村だろうに、もう村の住民の風格である。

 

「思ってたのと違う雰囲気の村だろう? どうも厄介ごとがあるみたいでな」

 

 あ、村に関しては特に何も思ってないです。団の方々の風格に圧倒されてただけなんです。

 

「採掘所でモンスターが暴れてるらしくてな。それのせいでやる気がなくなって活気が消えたらしい」

「はぁ」

「その解決に今アカリが向かっている。すぐに仕事が大好きな村に戻るはずだ! 俺は仕事は嫌いだけどな。はっは!」

「アカリが向かっているということは俺は出なくていいんですねやったー!」

 

 そういやナグリ村と言えばあれだよあれ。

 ロアルドロスの擬人化がいる村だよね。仲間になるよねあの子も。

 

「村の問題はアカリに頼むとして、お前さんには別のことを頼みたい」

「おおっと、嫌な予感がするぞう?」

 

 いや焦るな。きっと地味なことだ。だって村の問題、つまり狩猟はアカリって今言ったばかりじゃないか団長は。だから俺に任せることはきっとその他。今日は魚料理が食べたいから釣りでもしてきてとかそんなんだ。

 

「釣りをして魚を釣ってきたらいいんだな!」

「いや? ゲリョスを狩ってきてもらいたいんだが」

「ああっと!」

 

 思いっきり狩猟じゃないか。狩ってきてって思いっきり狩猟じゃないか。この村での狩猟はアカリがやるんじゃないのか。

 

「アカリに頼むんじゃなかったっけ!?」

「アカリには村の問題を頼んでるからなァ。ゲリョスは村というより我らの団の問題だな! 船を作るための素材が必要でな、それでゲリョスを狩ってきてもらいたい」

 

 大型モンスターの問題はすべて村の問題と言うわけではなかったか。

 

 どう断ろう。というか断れるのこれ? 無理くさくね? 今までの流れ的にも。

 

 

 

「書記官殿、彼はいったい何者ですか」

 

 

 悩んでいると誰かが訪れた。初期感度の彼? あ、書記官殿か。

 

「おお、お前さんか。我らの団のもうひとりのハンターだ!」

 

 あ、この人。

 

 筆頭リーダーだ。双剣で、友達が少ない疑惑の筆頭リーダーだ。ギルカの数が悲しいリーダーだ。

 

「ふむ……」

 

 どんどん俺に近づいてくる。眉間にしわを寄せながら。

 ひょっとして俺怒られる? たしか最初怒られるよねこの人に。それは覚えてる。なんだこいつって思ったし。

 

「君に1つ尋ねたい。君は、キャラバンをさまざまな脅威から守る自信はあるのか?」

 

 1つ尋ねられた。

 守る自信はあるのかだって。そんなの―――

 

「ないです」

「なっ―――!」

「はっは! どうだ、面白いやつだろう?」

 

 馬鹿正直に答えてしまったけどないものはない。アカリさんいるんだしそっち頼って本当に。

 

「書記官殿、このようなものよりもっと優秀なハンターを雇ってはどうですか。腕がどれほどのものか知りませんが、志が低すぎる」

 

 目の前でディスるのはどうよ。ちょっとカチンときちゃうよ。けど正論だし言い返せませんわ。俺は採取を志すハンターなんですよ。

 

「はっは! ひどい言われようだなクライ!」

 

 そこはかっこよく否定してほしかったなぁ団長。クライを信じなくてもいい。クライを信じた俺を信じろ! て感じで。

 

「俺より優秀な上位ハンターが団にはいるんでその人に頼るかなぁ」

「そのハンターがいないとき、君がキャラバンを守らないといけないんだぞ」

「その時は優秀なネコ太郎に頼るかなぁ」

「君は―――!」

 

「リーダー、落ち着くんだ」

 

 また別の人来た。

 ごつい鎧を身に纏っている。あー、えっと、筆頭ランサーだっけ。

 しかしこの人たち名前ないのだろうか。いや、あるだろうけど、ゲーム中ではでなかったよなぁ。呼び合うのもガンナーとかリーダーとかランサーとか。

 

「頼れる者がいるのなら頼る、それもひとつのやり方さ」

「先輩……」

 

 あ、先輩呼びだったか。

 

「……私は君のやり方は認められん」

 

 そう言い残してリーダーさんは去って行った。

 

「すまないね。彼、言い方がきつかったろう?」

「あ、いや、大丈夫です」

 

 正論だったしね。それに俺としても新しいハンター雇ってくれたら採取に専念できて平和に暮らせるってもんよ。

 

「厳しい言い方ばかりだが、心配の現れなんだ。許してやってほしい」

「心配?」

「ああ、君はハンターになって間もないのだろう? 彼なりの、新人への忠告なんだよ」

 

 ランサーさんの必死のフォローって感じがする。

 っていうかやっぱり新人ってわかりますか。俺新人オーラでまくりっすか。新人にゲリョス狩りって厳しいと思いませんか。一緒に団長説得してくれませんか。いや、団長説得よりも―――

 

「俺新人ですしねぇ。ところで唐突なんですが頼みがあるんです」

「本当に唐突だね」

「はい、俺マジで新人なんですよ。そんな中ゲリョスを狩りにいけって団長が言うんですよ」

「なるほど、つまり頼みたいことと言うのは」

 

 おお、悟ってくれたか。優秀な筆頭さんである。

 

「ゲリョスの狩りの時のアドバイスかな」

「あ、いえ違います」

 

 まぁそうだと思ったけど。

 一緒に行ってほしいもとい倒してほしいですはい。

 

「俺、狩猟経験全然ないんですよ。狩りに出た回数なんて片手で余裕で足りる回数……。そんな俺を助けてほしいんです!」

「そういうことか。なるほど。君のことを少し誤解していたよ。すまないね」

 

 初対面の人は頼らない、みたいな人に見えてたのだろうか。すまないねその誤解を解いて。厚かましい系で行こうと思うのだよ。

 

「わかった。私たちは任務中の身だが、すぐに出発するわけじゃない。それまで協力しようじゃないか」

「おお! ありがたいです! じゃあ善は急げって言いますし、さっそく!?」

「ああ、さっそく取り掛かろう!」

 

 

「武器の扱いの訓練を!」

 

 

 んん~?

 

 

「今まで使った武器はなんだい」

「え、あ、えっと、えーっと……片手剣と大剣です。あ、あの訓練て―――」

「じゃあまずは片手剣をちょっと持ってきてくれ」

 

 違うんですけど、いや、片手剣と大剣を使ってたのは本当だけど、訓練を求めてるわけじゃないんですけど。

 

「訓練か、何事も練習は大事だな! はっは! 助かるぞ、我らの団ハンターのもう一人は教えるのが苦手みたいでなァ」

 

 おおっと、団長が退路を防ぎにかかってないかこれ。

 

 ……いや、しかしこのまま訓練を受けて、その間にアカリが帰ってきて、そしてゲリョスを狩ってきてもらえばいいんじゃないか?

 というか案外今狩ってるんじゃないか? 乱入とかされて。

 

 訓練はそう考えるといいかもしれない。

 武器の扱いについて指南を受けつつ、安全に過ごせるのだ。

 

 それにこういう訓練を経て、俺の、クライの才能が開花されるかもしれない。

 

 ならば―――

 

「お願いします! 先生!」

「ああ、先生と言うほどではないから普通にしてもらえると嬉しいが」

「了解です! では片手剣を取ってきます!」

 

 

 俺は訓練を頑張ろう。そうしよう。

 

 ゲリョス狩り? ああ、そのうちね。そのうち。

 

 

 

 

 

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