少女牧場物語   作:はごろもんフース

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小ネタ:日記(その1)

ふゆの月二十三日。

 

今日からもじのれんしゅうでにっきをつけることにした。

もじのれんしゅうなので なにも見ずにかいてみる。

まだかんたんなかんじ しかかけないので ほとんどがひらがなとカタカタになってしまう。

まぁ、れんしゅうだしいいかとおもうことにする。

 

 

きょうは、はじめて つゆくさのさとにユーと××××といっしょに行った。

なんでも私たちに かいものをたいけんさせるらしい。

そのついでに にちじょうできる ふくもかうと言われた。

 

まえのせかいでは いつもおなじふくばっかりだったので あまりぴんとこなかった。

ぶっしがほうふだと ひとはみために きをつかいはじめるのだろうか?

 

ふくをかうため 大黒屋っておみせに行くとシズとであった。

シズはいままであった人の中では 二人めのおとなのじょせいだ。

おっとりとしていてわたしやユーとは ぜんぜんちがったふんいきをかんじる。

とりあえず じょせいでやさしい人でよかったとおもった。

 

ふくえらびはたいへんだった。

いろんながらに いろんなかたち きじもかたいものからやわらかいものまで いっぱいある。

そこから じぶんようのふくを なんちゃくもえらぶのは ほねがおれるさぎょうだった。

でも たのしかったのでよしとする。

 

えらんでいるときに シズが『やっぱり、おんなのこはいいわね』とつぶやいた。

そのつぶやきに ユーがはんのうして『なんでー?』ときく。

シズは すこしためいきをつくと『私にはおとこの子の子どもが二人いるのだけど、こうやっていっしょにふくをえらんだりするのをいやがるのよ』と言った。

くわしくきくと 『ししゅんき』と言うじょうたいとのこと。

おやといっしょになにかするのをいやがったり はんこうしたりするらしい。

 

私は おじいさんをおもいうかべて いっしょにいろんなことをする 私とユーをおもいうかべる。

そしたら となりにいたユーが『私ならうれしいのに……おとこの子ってりかいできないね』と小さくつぶやいた。

ユーもおなじようにおじいさんといろんなことをたいけんすることをかんがえてたらしい。

私はユーのことばに すこしうれしくなり『そうだな。 りかいできないな』とどういした。

 

 

 

ふくをえらびおわるとしごとにもどるシズにあいさつをしてから てんないにもどった。

てんないにもどると すでにもどっていた××××とごうりゅうして すきにかいものすることになった。

そのさいにじかんはあるのかをきいてみると××××はうでどけいをとりだしてみせた。

そういったものがあるとはしっていたが、みるのは はじめてでついむちゅうになってユーといっしょにのりだしてしまう。

とちゅうで××××の かおがちかいことと こまったようなひょうじょうをしていることにきづいて あわててさがった。

ユーはきづかなかったので むりやりひきはがす。

 

ひきはがすもユーはうでどけいをみてほしくなったらしい。

いまもっているおかねでかえないかと ××××にきいていた。

きいてみれば 大黒屋でもうっているとおしえられて ユーといっしょにみてみる。

うでどけいは ほんとうにいっぱいあった。

ユーとおそろいのを一つかおうかなとおもったけど けっきょくはユーがかわなかったのであきらめた。

 

そのときにユーがへんなことを言ったのでいつものようにとめる。

とめたあとにひろうかんがおそってきたので ためいきをついていると××××にあたまをなでられた。

きゅうなことですこしおどろいたけど いやじゃなかった。

むしろ おじいさんにあたまをなでられたときをおもいだして あんしんできた。 

 

まんぞくするまでなでてもらうと やっぱりというかユーが××××にねだった。

ねだったユーに××××がなでようとするとモリヤがきておこられてしまった。

よくかんがえれば おみせのなか なのであたりまえかとおもう。

 

モリヤはわたしたちにきびしいことをいった。

それでもそのきびしさのなかに やさしさらしきものがかいまみれて ぶきようなひとだとおもった。

ただ きになったのが わたしとちがって といっていたぶぶんだ。

もしかしたら モリヤは むかしにだれかをしんようして きずついたことがあるのかもしれない。

いつか わたしとユーがしんようされたら はなしをしてくれる日がくるだのだろうか?

 

 

そのあとは モリヤとわかれて てんないをみてまわる。

てんないはすっごくぶっしにあふれていて めをまわしそうになった。

わたしのすきなほんも いっぱいあって なんじかんでもいられそうだなともおもう。

けっきょくはじかんもなく いえにあるほんもよみきっていないので あきらめてべんきょうようのものをかった。

 

ユーはいつもどおりというか かんづめをかっていた。

かんづめもわたしたちのしっているかんづめとすこしちがう。

しゅるいもおおく さかないがいにも とりとかもあった。

 

ユーはどれもこれもまとめて かおうとしたが あじがわからないため 一つ一つおためしでかったほうがいいよと××××にいわれてあきらめた。

けっきょく きになるものをすうしゅるいほどえらんで かった。

わたしは さんしょく まい日たべてるのに いつたべるのだろうとおもったけどいわなかった。

あと なつかしいものもあって ユーがそれをかった。

ざんねんながらユーのてもちだけでは たりなかったので わたしのおかねからもだしてあげた。

わたしもつかうことがあるだろうし ふたりのしょゆうぶつとしてあつかうこととなった。

 

 

「できた」

「できたって何がー?」

「何がって日記だよ、日記」

「あー……日記用の買ったって言ってたっけ?」

 

 チトが日記を書き終えて顔を上げるとユーリが二つのカップを持って、チトの隣に立っていた。

 

「はい」

「ありがと」

「結局、牛乳飲むんだ」

「××××にチトが飲まないと捨てる羽目になるって言われたし」

「ふ~ん」

 

 ユーリは、持っていたチト専用の青色のカップを渡すとそのまま隣の席に座った。

チトはユーリからのカップをありがたく貰うと息を吹きかけ冷まし、一口口に含くむ。

含めば、何時ものように暖かくて優しいホットミルクの味わいが口いっぱいに広がる。

 

 チトはやっぱり牛乳が美味いと思い飲むのを止められないなと思った。

実際、あの後にチトが心配になり青年に聞いてみるとチトが飲んでいても問題ないことが分かった。

ハーベストムーン牧場には二頭の牛が居り、牛一頭から一日で取れる量が二十から四十リットル。

それに対して、家で飲む量は一日三人で一リットルと二十分の一、四十分の一だ。

チト一人で飲むにしても小さな差で懐を痛めるほどではないと言われた。

むしろ青年に『美味しそうに飲んでくれるし、僕は飲んで貰えた方がいいなと』と言われてしまえばチトとしては断れない。

結局チトは青年に感謝しつつも此れからも飲み続けることにした。

 

「はぁ……うまい」

「見せてー」

「いいよ」

 

 チトが体から力を抜けばユーリが身を乗り出し、チトの日記に手を伸ばす。

 

「……長くない?」

「そうかな?」

「うん、まえの奴はもっともっと短かったよね」

「んー……そういえば、そうだった。 まぁ、此方の世界だと毎日が未知の体験だし……書くことも多くなるよ」

 

 ユーリに言われてチトは初めて気付いた。

確かに言われて見れば、チトの今回書いた日記はだいぶ長い。

前の世界で書いていた日記は、十行から二十行位の間隔で短いものであった。

なのでチトも『日記のような日誌』と思っていたものだ。

 

「そして……読めない」

「だろうね。 此方の世界の文字で書いてるし、ユーには読めないよ」

「えぇー……」

「残念そうな声を出すぐらいなら勉強しろよ」

「やだ」

「……」

 

 チトが提案してみればユーリは考えもせず断りを入れる。

そんなユーリにチトは『やっぱり駄目か』と目を瞑り溜息を付く。

 

「そういえば、何で書き始めたの?」

「何でって……文字を書く練習になるし、後で見直せるだろ」

「見直す……」

「そう、記憶は薄れていくものなんだ。 忘れない為にこうやって記録しておくんだよ」

 

「……まえにもこんな会話したような」

「あぁ……河童の時か」

「あー……そうそう、かっぱ!」

 

 吹雪の中、ある建物で泊まった時の事を二人は思い出す。

あの時は、チトが日記や本の必要性をユーリに語った。

 

「躊躇無く燃やしやがって……」

「ちーちゃん、ごめんって……あの時はぼーとしてて……」

「いや、別にいいけどさ」

「あーでもさ、ちーちゃんって頭いいじゃん。 これを見直すことってあるの?」

「先は長いんだ……見直すことだったあるさ。 それこそ、十年後とか」

「十年後……」

 

 チトとユーリは、そこまで話をして黙り込む。

前の世界では考える事がなかった遠い未来。

しかし、此方の世界で暮らしていればよほどに不幸でなければ届き得る未来だ。

 

「……ねぇ、ちーちゃん」

「なに……?」

「十年後、読み返そうね」

「……もちろん、ユーが自分で読むんだよな?」

「えぇー……」

「まて、さすがに読めるようになっとけよ。 読み返す時、どうするんだよ」

 

 ユーリの言葉にチトは呆れて溜息を付いた。

しかし、ユーリはそんなチトに対してきょとんと不思議そうな表情をする。

 

「え……だって、ちーちゃんが読んでくれればいいじゃん?」

「……」

 

 そして、何を言ってるとばかりにそんな事を言った。

チトは、その言葉にもう一度溜息を付いた。

 

「まぁ……ね」

「十年後が楽しみだねー」

「別に大したこと書いてないけどな」

 

 わくわくと目を輝かせて日記を見るユーリ。

そんな彼女にチトは、呆れつつも頬を緩めた。

 

「ちなみに読んではやるけど……読み書きは出来るようにさせるからな」

「え……」

「ユーの分の漢字ドリルと計算ドリルを買ったって言ったろ」

「あー……忘れてた」

「しっかりとやらせるからな」

「うあぁぁぁぁああああ……」

 

 最後にチトが釘を刺せば、楽しそうな顔から一変、ユーリは絶望的な表情となるのであった。 

 

「さてと……続き書こうかな」

「……あれ出来たって言ってなかったっけ?」

「途中まではね。 買物が終わった所まで書いたからイナリ様に会った事とギンジロウ達と会った事を書かないと……」

「……にっき?」

「毎日が充実してるってことでしょ」

 

 チトはユーリにそう言うと楽しそうに日記を書く作業へと戻って行った。


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