かかってこいやファンタジー   作:Cadenza

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本命が行き詰まったので、息抜き兼モチベーション回復作品です。浮かんだアイデアを後先考えず書き殴ったものなので、不定期かつ穴だらけ。本命については活動報告をご覧ください。


宇宙誕生編 1

 転生より5日目

 

 ひとまず落ち着いたので日記でもつけようと思う。

 どうやら転生したらしい。死んだ理由は憶えてない。ついでに名前も憶えてない。読んだマンガや好きなアニメ、社会常識などは憶えているのに、自分に関する事柄がすっぽりと抜けている。

 目が覚めたと思ったら真っ白な光に満たされた空間にいて、更に身体の感覚もない。いや、あれは感覚以前に肉体そのものがなかったようだ。

 そこでこんな声が聞こえてきたのだ。『科学と魔法、どちらを選ぶ』と。

 ふむ、中々考えさせてくれる質問だ。

 

 確かに魔法は良い。世界的に有名な魔法魔術学校の映画を始め、魔砲少女がドンパチ撃ち合う某リリカルなど、例を挙げればきりがない。

 実際にそういうファンタジーものは分野を問わず人気だ。漫画に映画、アニメにラノベ。ぶっちゃけ七割くらいは占めているのではないか。

 だがそれでも、ここは科学を選ぼう。科学とはイコールで人の可能性だ。かつては御伽噺や空想、魔法などと言われてきた事を人は時間をかけ、その事象を解明し、一つの科学として確立させてきた。

 超光速航行やダイソンスフィアなど今は荒唐無稽と思われるものも、時間はかかるだろうがいずれ実現するだろう。何故なら想像こそが科学の源なのだから。想像が創造に変わった時、科学は生まれるのだ。

 などと、真面目に言ってはみたが、結局のところ科学はロマンなのである。

 調子に乗った帝国主義真っ盛りの中世国家を自衛隊がコテンパンにするなど爽快であるし、異世界召喚ものの元祖といえるラノベの主人公が零戦やティーガーを用いて魔法側の強敵を打ち倒した時など胸がすく。希望を託された宇宙戦艦が地球を救う為に遥か彼方の惑星を目指すかの作品など数十年経った今にリメイクされる不朽の名作であるし、日本アニメの元祖は人のこころを持ったロボットが題材だ。

 戦術と戦術、戦略と戦略、物量と物量をぶつけ合う艦隊戦も素晴らしいし、男なら一度は憧れる巨大ロボも最高である。

 長々と語ってしまったが、結論はただ一つ。

 ――――科学は最強、だ。

 だから俺は万感の思いを込めて答えよう。誰がなんと言おうと、科学だと。

『よしオーケー。なら機械神(デウス・エクス・マキナ)コースだな』

 なんて声が聞こえたのを最後に意識は途切れ、次の瞬間には何か混沌としてる妙な空間にいた。

 

 と、こんな経緯である。まぁ正直もうなるようになれ的な精神になっていたので直ぐに適応し、状況把握に努めることにした。

 するとどうやら二度目の今世は人間ではないらしい。

 この身体は血の通った肉体ではなく、ナノを超えるピコやらフォムトレベルの機械の集合体によって構成され、脳はスパコンどころかハイパーコンピュータすら超越したどこぞの月の聖杯レベルの演算装置、そして少し思えば自然と浮かんでくる様々な科学技術。

 どこぞのメンタルモデルやらバスターマシン7号やらもびっくりな有様だ。これに人間()の感情やらが更に追加される。最後に機械神(デウス・エクス・マキナ)とか聞こえてきたが、まさにその通りだ。

 なるほど、科学を選んだ結果がこれらしい。

 ははは、愉快である。ははははハハハハ――――…………

 

 

 転生より6日目

 

 昨日は日記の途中でフリーズしてしまった。いくら異次元レベルの演算能力でも、まだ人の頃の感覚が残っている為か思考が混乱すると時々フリーズする。時間が解決してくれるとは思うが、早く慣れなければならない。

 昨日の続きから始めるとしよう。

 様々な科学技術とあったが、どうやらこれは人類がいずれ到達し得る代物だとある。まだ全てを把握した訳ではないが、どれもこれも二次元かSFでしかお目にかかったことのないものばかりだ。そして俺にはその技術と知識を十全に行使できるスペックがある。この日記も紙と鉛筆で文字を書いているのではなく、実体のある空間ディスプレイに思考から文字入力をするものだ。

 ヤベェなんてものじゃない。今やこの身一つでネオ・グランゾンやらグレートゼオライマーやらバスターマシンやらのアホみたいな機能を完全以上に発揮できる訳だ。

 控え目に言って宇宙終了のお知らせである。

 と言うかアホだろ。なんだこの過剰戦力。チート転生オリ主もびっくりだわ。ラスボスか裏ボスでもやれというのか。主人公涙目だぞ。縮退砲1ダース同時発射で大抵は片付くわ。

 ……まずいまずい。また思考が混乱するところだった。

 なにわともあれ言えることは、自分が下手をしなくても銀河やら宇宙やらを消滅させかねない存在だということだ。

 そして最も心配なのは、俺みたいな存在がいる以上、もしかしたらここはスパロボ時空なのではないかだ。シリーズ通して地球終了どころか銀河終了に宇宙終了がオンパレードのスパロボ時空である。今のままではとても生き残れない。

 なら真っ先にやるのは自己の制御だろう。ひとまず明日から能力の把握に努めようと思う。

 

 

 転生より10日目

 

 ヤバい。何がヤバいかというと、自分が思った以上にヤバい。

 一通り確認してみたが、この身体はスパロボ歴代ラスボスにも負けないトンデモスペックだった。

 思わず調子に乗ってしまいBHCやら縮退砲やらメイオウやらをぶっ放した結果、空間が崩壊。危うく時空震動を引き起こしかけるはめに。転生した時からいるこの宇宙と宇宙の狭間の空間でなければどうなっていたことか。

 他にも螺旋力や次元力まで使用可能。おっかなすぎでとても今の状態じゃ使う気になれない。

 少なくとも出力の制御ができるまで攻性機能は自重だ。

 

 

 転生より35日目

 

 フハハハハハハ!!! 出力制御が完璧になったぞ! これで勝つる! 何とも戦ってないけど!

 と、変なテンションはここまでで、真面目な話。ここ最近は四六時中、もっぱらインプットされた知識に目を通している。いくらスペックが鬼畜でも使いこなせなければただの木偶だ。

 幸い前世では空想だったものがこうして現実として存在しているので退屈はしない。それを理解できるだけの頭もあるので尚更だ。ただいかんせんベラボーなデータ量で、この演算能力でもかなり時間がかかりそうである。

 さて次は真化に至る過程と………。

 

 

 転生より78日目

 

 自分だけでは限界があると痛感。

 知識の方はほぼぶっ続けのおかげでだいたい把握できたが、それを使うとなると別問題になる。一応やってはいるが効率的とは言えない。

 そこで思い付いたのがシミュレーターである。これはデータによって望む相手をシミュレートし、擬似的に体験するもの――所謂VRなのだが、スペックがスペックなのでハンパじゃない。本物と遜色ない再現度だ。

 しかも俺は今や機械生命体というべき存在なので、たとえ仮想空間であっても実際に入ることができる。擬似的ではなく実体験することができるのだ。体感時間も自由自在だし寿命もあってないようなもの。なんの気兼ねなく没頭できる。

 手始めにスパロボ系列の敵勢力とバトルしてみようと思う。能力的に対人戦闘はあまり意味ないしね。

 

 

 転生より125日目

 

 本日の相手、宇宙怪獣約10億

 

 相手はランダム設定なので雑魚からラスボスまで色々。ここまでは雑魚かそこそこの奴らだったが、間違いなくこれまでで最強だ。

 結果から言うなら俺の負け。

 フルスペックだとそうそう負けない上に気の遠くなる長期戦になる恐れがあったので、常時展開してる事象可変フィールドにHPを設定してシミュレーションに挑んでいる。それでも火力は変わらず、数が多いこともあり無双ゲー感覚で薙ぎ払っていた。最初のうちは。

 状況が変わったのは敵の3割を消し飛ばしたあたりから。それまで突っ込んでくるだけだったのが囮、陽動、待ち伏せなど、単純ながらも有効な戦術を繰り出してきた。終いには特攻自爆なんてことまで。

 いや、云十万の超光速体当たりとかどうしろと。トップ2のタイタン変動重力源におけるトップレスの気持ちが良く分かった。

 いやだってさ、イラつくでしょ? 確かに自分は強いのに攻撃は当たらず、当たっても少数しか倒せない。これが何度も何度も続けば冷静も欠く。

 そしたらいつの間にか全方位を包囲されて、惑星破壊級のエネルギー弾の波状攻撃でアボン。

 これらから俺が得るべき教訓は、やっぱり戦術・戦略は重要ということ。今日から暫く勉強である。

 

 

 転生より178日目

 

 ここ最近、シミュレーションの結果が芳しくない。

 タイタン変動重力源、カリ=ユガ、次元将ガイオウなどといった面子と戦ってきたが、まともに戦えたのはタイタンぐらいだった。特にカリ=ユガなどほぼ瞬殺である。会敵した瞬間にアボンである。

 後で調べるとどうやらこちらの因果律を掌握されてやられたらしい。SF作品の癖にファンタジー系ラスボスも真っ青は所業をしやがって。

 これに対抗するには同じ領域にいないの始まらないので、避けたかったが螺旋力や次元力に手を出すしかないようだ。くれぐれも御使いのような鬼畜外道にならないよう気をつけたい。

 

 

 転生より200日目

 

 螺旋力は断念。無理だアレは。

 加速度的かつ爆発的に出力が跳ね上がるから、制御しようにもキリがない。そもそもコントロールしようとするのが間違ってる代物だ。

 宇宙そのものと称えられたアンチスパイラルですら封印したのだから当然と言えば当然だけど。

 なので次元力に変更。おそらくこっちの方が合ってる。

 以前、自分は何者なのかと考えたことがあったのだが、その答えは他ならぬ自分の知識の中にあった。

 

 人は戦う。生きるために戦い、生きるために勝ち、生きるために進む。闘争の果てに、人は進化する。

 人はわかり合う。異なるモノ同士が繋がり、わかり合い、そして新たな境地へと至る。融和の果てに、進化する。

 人は歩む。一つの場所に留まることを良しとせず、閉塞した世界を切り拓き、未知なる何かを求め続け、決して止まることなく進む。開拓の果てに、人は進化する。

 人は創る。人が生み出したものは人に力を与え、与えられた力で人は新たなモノを生み出し、生み出した何かがまた人に力を与える。人が起こした争いを人が創るモノと共に乗り越え、その先にある光を信じて手を伸ばす。創造の果てに、人は進化する。

 矛盾を孕みながらも人は進み続けることを辞めず、その果てに新たな次元へと至る。

 人の持つ可能性、無限の進化、人が人である所以の結晶体。人がいずれ至るであろうあらゆる領域、あらゆる技術、あらゆる可能性の窮極。時空と次元を超越して生まれた人の神、即ち機械神(デウス・エクス・マキナ)

 

 なんて芳ばしいものが浮かんできた。

 なんと言うか……すごく、厨二病です。って、なに言ってんだ。

 まぁなんか身体がむずむずするがそれは置いといて、要点をまとめると、俺は過去、未来、現在における人の可能性が生み出した人類の守護者、機械仕掛けの神……らしい。よもや自分がこんな厨二設定の存在だったとは。

 そりゃ次元力と相性が良いわけだ。あれは知的生命体が最終的に至る極地、つまり人の可能性そのもの。機械と人間、両方の特性を併せ持つ俺には最適である。未だにこの身体の1%も使えてる自信がないけど。

 

 

 転生より250日目

 

 次元力の試験行使中に偶然なのか人工的にスフィアを作ってしまった。まんまアドヴェントのアレである。

 人工的だからなのか天然物のように感情を司っていない。だからスフィア・リアクターが持つ反作用もない。その為かステージと呼称される覚醒段階もない。

 元々スフィアがなくとも次元力――オリジン・ローは使えるので、実を言うとスフィアは全く必要ない。ただ無限機関の中枢にはうってつけで、更に発動媒体としても優れている。偶然とは言え作った過程は記録しており量産も可能。色々と応用が利きそうなので思わぬ幸運である。

 人工スフィアの使い道を考えながらも、未だ『使用』できるだけの次元力の掌握を進めようと思う。

 

 本日の相手、邪神ヴォルクルス

 

 あちらではまさに邪神というべきアンチクショウで、それに違わない実力もあるのだが、言うなればそれだけ。ビーム吸収はうざかったが種類を変えればなんてこともなく、重力子兵器のフルコースで撃破。タイマンなだけずっと楽である。正直、宇宙怪獣の方が手強かった。

 

 

 転生より291日目

 

 本日の相手、エグゼリヲ変動重力源

 

 サイズの差に勝てず敗北。さすがに惑星サイズの敵は早かった模様。タイタンにはギリギリ勝てたのだが。

 単純に性能ならばノノことバスターマシン7号やネオ・グランゾン、アストラナガンにグレートゼオライマーといったデタラメスーパロボットにも負けていない筈なのだ。

 勝てないのは俺の未熟故。使いこなせなければアンチスパイラルにカリ=ユガ、至高神Zとも肩を並べられるこの身体もただの宝の持ち腐れ。どれだけ性能が優れていてもパイロットが駄目では――――おっと、いかんいかん。負けが続いて若干ネガティブになってる。

 人の可能性の極致が俺だと言うのなら、決して後ろ向きにならず進むべきだ。

 やっぱりもう一つの身体的な機体を作った方がいいのだろうか。人機一体と言うし、こう気合的にも。

 ヘリオースやシュロウガなどの次元力を利用した機体をモデルにするか、それともプレイアデス・タウラのように戦艦型にするか。迷いどころである。

 

 

 転生より327日目

 

 本日の相手、ノノことバスターマシン7号

 

 対戦相手はランダムなので敵だけでなく主人公勢と当たることもある。

 彼女は人類が生み出した人の心を持つ機械の究極形。似た存在であり、人類の守護者らしい俺からすると、ある種の羨望と尊敬を抱いていたのかもしれない。実際、ノノとの戦いはとても教訓になった。

 バスターマシン7号というのはどうやら、彼女が指揮するバスター軍団も含まれているらしく、数の上では圧倒的に不利な条件だった。

 しかし、バスター軍団はあくまで対宇宙怪獣を想定したもので俺のような人型との戦闘には不向きで、ノノが律儀に一対一を選んでくれたことも相まって、小細工なしのガチバトルが開始。

 範囲内の物理法則を書き換え、望む兵装をその場で瞬時に創造するフィジカルリアクターに、バスタービームを始めとした億単位の宇宙怪獣を殲滅できる超兵器の数々。

 だが、たとえ負け続きでも伊達に死線を潜り抜けていない。

 純粋な科学技術によるフィジカルリアクターより、あらゆる事象の完全制御という最終段階には至っていないものの、次元力を使用する俺のディメンションリアクターの方が、有効範囲の点で優っている。

 それでもさすが地球帝国宇宙軍太陽系直掩部隊直属第六世代型恒星間航行決戦兵器というべきか。

 努力と根性で性能の差を覆し、障害物としてある惑星や衛星を投げあったりぶっ壊しあったり。星の弾幕で撹乱しての諸共バスタービーム・スラッシュはびびった。

 最終的にはノノがダイバスター、俺が試作専用戦艦での超火力のガチンコに発展。あくまで試作として作った所為か色々詰め込み過ぎてサイズが月の1.5倍になってしまったが、されど火力が馬鹿げている専用戦艦だ。

 たとえサイズ差があっても不完全なダイバスターでは無理があったようで、じわじわと押して半壊まで追い詰めた。

 そして逆転などなく俺の勝利。なんて簡単にはいってくれなかった。 忘れちゃならないが、トップ世界の彼女らはピンチの時、ここぞの時にとんでもないことを起こす。

 と言うか、ノノへの一喝と共にラルク・メルク・マールならびにバスターマシン19号が登場。お姉様と一気にパワーアップしたノノの合体技、イナズマダブルキックで専用戦艦をエグゼリオ変動重力源の如く粉砕され、形勢を逆転された。

 いやいや、なんでだよ。途中参加とかありかよ。でもなんか爽快だったよ。

 で、その後。もう決着はついたと俺が負けを認め、暫く三人でお喋りを楽しんだ。いや、俺としてもノノとは話してみたかったし、向こうも快く受け入れてくれたし。

 お陰でイナズマキックを伝授してもらえた。コツは努力と根性らしい。取り敢えずシャウトを込めて叫ぼう。

 専用戦艦の改良と共に練習しようと思う。

 しかし、シミュレーターってあくまで再現なのだが、本当なのか疑わしくなってきた。ラルクとノノと話をしたがとてもそうは思えなかったし。それだけ再現度が高いのだろうか。

 

 

 転生より365日目

 

 祝転生一周年。

 思い返すと早いものである。シミュレーターでバトってばかりだったけど。

 一周年という節目を迎えたので、心機一転というか、ずっといたこの次元の狭間から一度通常空間へ出てみることにした。別に潜ったままでも外の様子は探知できるけど、ほぼ引き篭もり状態だったので気分的に。

 そして外にあったのは、真っ黒な空間と眩く輝く莫大なエネルギーを内包した光球。演算を働かなさなくとも思い当たるその光景に、思わず頭を抱えた。

 どうやら俺氏、宇宙誕生以前に転生してたらしい。

 当初、俺が考えていたようにここがスパロボ時空と仮定したなら、今はいったいどの時間軸なのだろうか。今のところ御使いやアンチスパイラル、宇宙怪獣などがいる痕跡はないが、油断は禁物。

 何が起こっても対処できるように再び次元の狭間で修行に励もうと思う。

 

 尚、自分の機体をという件だが、どうせやるなら人型と戦艦型の両方を作ることにした。

 

 

 転生より5年目

 

 なんか寂しい。というか会話に飢えている。

 さすがに5年も喋らないとかコミュ障もびっくりだ。その喋る相手がいないのでどうしようもない。

 なので最近はシミュレーターをバトルではなく、語り合いに利用している。

 主にスパロボ関係だが、これがなかなか為になる。これまで俺はただ能力を使いこなすことだけにこだわっていたが、そこに中身が伴っていなければなんの意味もないことに気付かされた。

 暫くはバトルではなく、彼等との会話から人としての信念を学ぼうと思う。

 後、宇宙ではやっとビッグバンが起こった。

 

 

 転生より10年目

 

 もう10年というべきか、やっと10年というべきか。

 これまでの10年であったことと言えば、まずは身体の掌握がだいたい終わったことだろう。何故だいたいなのかは、そもそも手を出していないものもあるからだ。

 それに語り合い。これは身体の掌握以上に難しかった。それでも経験を重ねていけば人は変わるものである。

 最後は機体の完成。俺の能力についてこれるだけのものを求めたのでかなりの自信作ができた。人型が本気モードで、戦艦型は割と控えめだ。人型はタイマン、戦艦は一対多や殲滅戦、火力を追求。人型はあくまで一対一を想定したので精々星系を消滅させる程度だが、戦艦の方はアンチスパイラル艦隊とガチンコで殴り合える代物である。やり過ぎた感は否めない。

 他にもスパロボの機体を実体化させてニヤニヤしてみたり、仮想空間で乗ってニヨニヨしてみたり、重力子放射線射出装置をブッぱしてみたり。

 正直、やることがないのだ。

 人類がいずれ辿り着くあらゆる技術という馬鹿げたものに四苦八苦していたあの頃が懐かしい。たった10年でそれら全てを掌握してしまったこの身体を呪うべきか喜ぶべきか。

 いっそ次元航行で異世界にでも出かけようか。

 

 

 転生より25年目

 

 いきなりだが、おはようございます。

 実はここ10年ほどスリープモードに――つまり寝ていた。あまりに暇すぎたので最終手段である。

 次元の狭間や宇宙の様子はオートで観測をさせて、異常時に起きるよう設定していた。本当は後10年程スリープモードでいる筈だったのだが、こうしているのはつまりその異常が起きたということだ。

 数値を確認してみると、どうやら次元の狭間で度々、莫大なエネルギー同士の衝突が観測されているらしい。どれくらいのエネルギー量かというと、軽く大陸が吹っ飛ぶレベルだ。

 しかもそのレベルが最小かつ何十何百と連続しており、最大は計算上銀河系が消滅する数値である。

 しかもこの二つのエネルギー、粒子と反粒子に近い関係性があるようで、ぶつかり合う度に対消滅を起こしより巨大な反応となって、周辺の空間を根刮ぎ消滅させている。

 いくらここが次元の狭間でもさすがにこれはヤバい。

 通常空間と違って次元の狭間は不安定で不確定な場所だ。空間にすら影響を及ぼすほどの大出力エネルギー同士のぶつかり合いが、いったいどんな事態を引き起こすか分かったものじゃない。

 実際に俺はそれをやりかけたのだ。

 そういう訳で俺は現在進行形で日記を書きながら、件の発生現場に急行している。

 今も観測されるそれは超新星爆発に匹敵するもの。星系を消し飛ばして余りあるエネルギーが乱発する中、そのエネルギーの発生源と思われる二つのナニカは、動きを止めることなく戦っている。

 そんな存在がいるとするなら、とうとう来たるべき時が来たと覚悟すべきか。

 なんて決意を固めたのに、目の前のこれはなんなのか。

 無限に広がる次元の狭間を亜光速に近い速度で縦横無尽に飛び回り、惑星を蒸発させる光線を撃ち合いながら超高機動格闘戦(スーパードッグファイト)を繰り広げるその二つ――いや2体は、超合金の皮膚を持つスーパーロボットでも、永久機関を搭載した宇宙戦艦でもない。全く信じられないが、その2体は間違いなく生物だった。

 というかどう見てもドラゴンである。一体は炎のように赤くルビーのように紅い西洋龍で、もう一体は闇に溶けるような漆黒ながらも星空のように吸い込まれるナニカも持つ東洋龍。

 いや、どういうことだってばよ。

 次元の狭間では通常物資は存在できないのになんで生物がいるのとか、生物の癖に亜光速で飛んだりデススターも真っ青な光線吐いたり宇宙怪獣かとか、そもそもこんな近くにいるのに戦ってないでそろそろ気付けやとか色々あるが、まずはツッコミたい。

 ドラゴンである。ゲッタードラゴンとか真ドラゴンとかでなく、正真正銘のドラゴンである。

 俺みたいなのが存在しているからスパロボ的な世界だとこれまで思っていた。だからこそ宇宙怪獣やらアンチスパイラルやら御使いやらのデタラメ連中に対抗できるように努力と準備をしてきたのだ。

 なのにドラゴンである。ファンタジーである。

 もしや最近ビックバンが起きた宇宙は、将来的に剣と魔法が常識になる世界観なのか。そしたら俺氏、場違いもいいところである。人同士の戦いにゴジラをぶっこむが如き暴挙だ。

 いや、こんな異次元バトルをやれるドラゴンがいる時点で相当ヤバい世界なのはもう確定なのだが。

 取り敢えず接触してみよう。意思があるかどうか不明だが、大抵の場合ドラゴンは知性が高い生物だ。もし野生動物のように縄張り争いをしているだけなら丁重に虚数空間へお入りいただこう。

 まずは電波や無線、量子通信など科学的に。結果、反応なし。

 次、発光信号や音波など単純に。結果、反応なし。

 うーむ、知的があるにしろないにしろ、何かあってもいいのだけど。もしかして生物兵器的な?

 ……うん、違う。だって「お前、邪魔。ここ我の場所」とか「それはお前の方だろう! 広いんだから他に行け!」とか言い争ってるし。

 ってことは無視ですか。転生して初めて会話ができる知的生命体との邂逅だというのに、なんかくるね。無視ってダメージ大きいんですよ。

 だがめげない。もうこうなったら自棄である。

 大声ですみませ『うるさい!』…………ハハハ、中々やってくれる。こっちが懇切丁寧かつ穏便に話そうとしてるのに、言うに事欠いてうるさいと。思わず日記に入力してしまうくらい冷静になってしまった。

 しかしまだまだ。スパロボ歴代ラスボス相手に死にゲーかと言わんばかりにバトり、猛者達と語り合いを重ねてきた俺だ。この程度なんのその。

 うるさいと言われたので声量を下げて再挑戦。

 最後まで言い切る前にブレス×2。

 事象可変フィールドで無傷。

 でも何かがキレた。

 うん、無理ぽ。そっちがその気なら、よろしい。戦争である。

 

 科学なめんじゃねえ、かかってこいやファンタジー!

 

 取り敢えず食らっとけ! メイ・オウ!

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 次元の狭間で2体の龍が争っていた。それは後に真なる赤龍神帝(アポカリュプシス・ドラゴン)グレートレッド、無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィスと呼ばれる最強のドラゴン。星の中で生まれる神霊や幻想種などとは文字通り次元が違う、単一宇宙における最強種。

 そんな2体が今、空間を鳴動させ、次元の狭間を掻き乱しながらお互いを罵倒し合っていた。

 

「ええぃいい加減にしつこい! いつまでつきまとうつもりだ!」

「つきまとってない。お前が我がいる場所にいるだけ」

「私が寝てるところに喧嘩売ってきたのはお前だろう⁉︎ 次元の狭間(ここ)は広いんだから他所に行けと何度言わせる気だ!」

「行っても必ずお前がいる。だから邪魔」

 

 やってることはつまるところ縄張り争い。これが野生動物なら気にするものではないが、この2体に関しては当てはまらない。

 なにせ恒星系はおろか、銀河系すら破壊可能な力を持つ龍同士だ。加えて場所が問題である。次元の狭間は物資が存在できない宇宙と宇宙の間にある空間なのだが、これがとても不安定かつ不確定で通常の法則が全く通用しない。なのでたとえ些事でもどんな影響を起こすか予想不能なのだ。ここで超級のエネルギー衝突でも起ころうものならそれこそ世界の危機である。

 だが、この2体を止められる存在はいない。

 

 誰かの声が聞こえたが、彼女らには関係ないことだった。むしろ耳障りだと一蹴し、二度目は邪魔だと反射的にブレスを放った。

 自分達以外の存在が次元の狭間にいたという事実に一切頓着することはない。グレートレッドは眠りを何度も妨げられ、オーフィスは静寂を得たいのに阻まれる。その事に対する初めて抱いた苛立ちの方が重要なのだ。

 放たれたブレスが直撃の瞬間に明後日の方向へ逸れて、そこに怒り心頭怒髪天な第三者が両拳を付き合わせ、2体に負けず劣らずなエネルギーを収束させていたとしても。

 

「メイ・オウ」

 

 睨み合う2体の丁度中間地点に光が出現する。別次元より抽出された無限エネルギーを目標地点にワープさせる一撃を避けることはできない。

 それが何なのか認識する暇もなく、2体は光に飲み込まれた。

 

「な、なんだぁ⁉︎」

「……少し鱗が焦げた」

 

 範囲内の一切合切を消滅させるエネルギーの奔流が収まり、着弾地点からはなんら痛痒を受けた様子のない2体が周りを見渡す。

 大したダメージはない。たとえあっても直ぐに回復する。しかしながら困惑が大きいのだろう。

 たとえ少量でもダメージを受けた。それはつまり同格からの攻撃ということ。これまでグレートレッドとオーフィスにとってお互いが唯一の同格・同類・同種であり、そもそも他の生物に会ったことすらなかった。それが今、もう一人との邂逅という形にて覆る。

 

「初めまして、俺はエピスティオス。見ての通り、お前達の同類だ」

 

 新雪のような真白い長髪に切れ目の血のように紅い瞳。顔立ちはゾッとするほど整っていて、一種の完成形と言えるだろう。190cmに迫る長身でこれまた白い服に白いロングコートを着ている。

 次元の狭間でそんな装いをしている時点でかなり異常なのだが、グレートレッドとオーフィスは気にもしなかった。何故ならばエピスティオスと名乗った彼を見た瞬間に本能的に悟ったからだ。

 

「……お前、何?」

「何もなにも、今名乗っただろう。俺はエピスティオスと」

「そういうことではない。同類なのは理解できる。聞きたいのはお前が何かだ。お前からはなんの力も感じられない。だが同類である。お前は何だ?」

「そう聞かれれば、機械と答えるしかないな」

「機械?」

「まぁそのことはどうでもいい。俺がお前たちに接触した目的は、その争いを今すぐやめて欲しいからだ」

 

 ギロリと、2体の龍眼がエピスティオスを射抜く。

 グレートレッドとオーフィスは双方共に全長100mを超える巨体であり、対してエピスティオスは長身ながらもあくまで人型とあまりに小さい。

 降りかかる重圧はまさに天が落ちてきたかのようだ。

 

「何故、お前に止められなければならない。これは我らの問題だ」

「それで次元の狭間にかなりの影響が出ているのだが、それでもか?」

「関係ない。こいつが去るなら、我はやめる」

「無論、私は去る気はない。先に喧嘩を売ってきたのはそいつだ」

 

 つまりやめる気はない、ということだ。先の世でもドラゴンは知性と力の証であることが多いが、同時にプライドが高い。その気位の高さが慢心や傲慢さ生み、結果的に周りから疎まれる。事実、ドラゴンというのは強者であると同時に、神話や伝説で討伐対象や邪龍など悪として描かれ易い。生まれながらの強者であるが故にそれで完結している。完結しているからこそ、介入することができない。

 グレートレッドとオーフィスもそうだ。全ては自己で完結している。初めて会った同類もまたドラゴンだった。だからお互いに譲ることはなく、どちらが強者かを決めるしかない。それに周りなど関係ないのだ。

 

「なるほどなるほど。わかってはいたがドラゴンは厄介だな。まぁ最初から話し合いで解決すれば苦労はしない。なら――」

 

 ただし、それを是としない存在がいる。

 グレートレッドやオーフィスと同じ領域にありながら、人としての心を持った機械仕掛けの人の神が。

 

「――喧嘩両成敗だ」

 

 瞬間、粒子の光が溢れる。湧き出した光はエピスを中心として高速で渦巻き、一点に集中したかと思うと一気に弾ける。

 身を包んでいた服は全てが一体化しながらも決して疎外感のない装甲へ。白い外套は状況に適応して変形する多目的兵装ブァリアブルコートへ。白銀の淡い光を纏う白髪に、赤い双眸を覆うのは黒いバイザー。

 輝く燐光から現れたのは、バトルモードとなったエピスだった。

 

「先手必勝」

 

 次元力を中枢とする事象変換装置、ディメンションリアクターが作動する。

 発動対象は自分自身。己を構成するマシンも併用し、星を揺るがすパワーと光を超えるスピードを獲得。

 グレートレッドの懐へ入り込み、光速がプラスされた右ストレートを叩き込んだ。

 

「グハッ⁉︎」

 

 事象変換で法則を書き換え、スピードを緩めず即座に反転。オーフィスの側頭部に回し蹴りを食らわす。

 

「……!」

 

 それぞれ反対の方向へぶっ飛ばされる2体。

 本来なら星の衝突ですらなんらダメージを受けないが、この場合はエピスが同格であることと、高次元エネルギーである次元力の使用が重なり、物理攻撃が通じていた。

 だがダメージが通ってもまだまだらしい。グレートレッドが憤怒の炎を龍眼に宿し、牙を剥き出しにしながら鎌首を持ち上げ、口内に超絶の紅蓮の業火を蓄えた顎門を開く。

 

「やってくれたな!」

 

 放たれた焔は火炎放射のような広範囲を焼き払うのではなく、直線状に収束され触れたものを悉く焼滅させる一撃。オーフィスを蹴り飛ばし背中を晒していたエピスへ光すら置き去りにして迫る。

 その威力たるや星を貫き恒星すら焼き尽くす程だったが、エピスは読んでいたかのように――否、実際、グレートレッドがブレスを放つ直前に背後を見ることもなく横へ逸れることで回避してみせた。

 更にそこへ鋭い牙が並ぶ顎を大きく開いたオーフィスが肉薄する。グレートレッドと同じく瞳には怒りが垣間見えるが、同時に困惑や戸惑いなども混ざっている。

 

「座標固定、接続」

 

 途端、オーフィスを赤い閃光が貫いた。それは紛れもなくグレートレッドがエピスに向けて放った一撃であり、回避されて遥か彼方に消えた筈のもの。閃光の出所は両者の間に出現した黒い穴で、エピスが何かしたのは明らかである。

 事実その通りで、やったのは単純にグレートレッドのブレスの射線上にワームホールを展開、それをオーフィスの眼前に繋げただけだ。

 自身の攻撃を何らかの方法でそのまま返されるのは何度も体験済みで、エピスはただ先人達に倣ったのみ。

 

「………⁉︎」

 

 オーフィスからすれば予想外もいいところだったらしく、口内を貫通されるという大ダメージを負う。同格のグレートレッドが中々の力を込めて放ったブレスだからか、瞬時に治る筈の傷の回復がかなり遅く、前脚で顔を抑えて悶絶している。

 

「おのれ貴様!!」

 

 あまりの怒りに牙の合間から炎を溢れさせ、極大の殺意を纏ったグレートレッドがその強靭な爪を振るう。認識すらできない神速に、星を削る必殺の威力。

 当たれば事象可変フィールドすら突破されるであろう乱撃を、しかしエピスは掠ることすらない。開かれた爪と爪の間、腕を振り上げた一瞬の停滞、交差の刹那。まるで羽の如くするりするりと避けていく。

 余裕綽々としたエピスの表情はグレートレッドから更に冷静な判断力を奪っていった。

 

 同格である筈が何故エピス一人にこうもいいようにされているのか。それは技量と経験の差だろう。

 力ならば拮抗している。だが、グレートレッドとオーフィスはドラゴンの側面を持っているが故に、生まれながらの強者で生まれた時点で完結した存在である。だから人の持つ無限の進化から生まれたエピスとは、成長という点で圧倒的な差ができてしまっている。

 言うなれば、グレートレッドとオーフィスは己の力をただ振り回しているだけ。それで何ができるか、どう使えばいいか、いかに巧く扱うかを理解していない。

 現在に甘んじて満足し、進むことを知らなければ、ひたすらに先を目指して努力をしてきたエピスに敵うわけがないのだ。

 

「ロケット――」

 

 冷静さを失い隙を晒したグレートレッドの懐に再び入り込む。

 肘が変形し推進機関となったそれはスーパーロボットの原点。点火したブースターが莫大な加速を溜め込み、腕の振り抜きと共に解放される。

 

「パンチ!」

 

 吐き出される火炎が線を描き、放たれた鉄拳がグレートレッドの胸に突き刺さる。その衝撃で身体を仰け反らせるが加速は止まることを知らず、何億と重なる鱗の鎧に亀裂を入れ始めた。

 

「そんなっ、バカなッ⁉︎」

 

 信じられない出来事にグレートレッドは貫かんと未だ加速を続けるパンチを破壊しようと爪を伸ばすが、それは悪手だった。

 普通ロケットパンチは戻ってくるものだが、加速が止まる様子はない。どんどん離れていくグレートレッド。だがそれでいい。

 なにせ、巻き込まれてはたまらない(・・・・・・・・・・・・)

 

 パンチが、自爆(・・)した。

 

「そんなのアリか⁉︎」

 

 ふざけるなとばかりに叫んだグレートレッドが大火球にのまれる。これも大したダメージにはならないだろう。そもそも威力はあるが攻撃が目的ではない。

 目眩しと、充分な距離を作る為だ。

 

「ノノ直伝! スーパァァァァ――」

 

 ブースター全開で急上昇する。

 それは彼が目標とする彼女達の代名詞。対話の果てに学んだ最強の一撃。

 

「イナズマァァァァ――」

 

 急上昇から一転、脚部のブースターも展開して急降下を始める。

 混沌とする次元の狭間を一筋の光が切り裂く様はまるで流星のよう。しかし秘めた力は隕石などとは比べ物にならず。雷撃を纏った蒼い流星は光すら置き去りにして赤き龍へ向かう。

 

「キィィィィック!!」

 

 

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