ギルド魔王   作:星座

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明日と明後日の仕事が決定した為に
代休の昨日と今日で書き上げました。


第2の犠牲者たち ?

10、第2の犠牲者たち?

 

 ソードアート・オンラインの世界に閉じ込められてから1週間、チーム魔王の現在の所属数は64名。内訳はサポート班41名、攻略班23名である。

 教会では手狭になってきたので、教会とは真逆に位置する町外れの廃工場を日払いでレンタルしている。サポート班の商品は現在売れるレベルにはなく、現在の収支は大赤字。食費や宿代等のチーム運営に掛かる費用は俺のαテストから持ち越されたコルで全て賄われているが、これからも増え続けるであろうチームメンバーの事を考えると何かしら売れるものの目処がつかないと1ヶ月と持たずに資金が尽きるだろう。

 かといって今はスキルレベルを上げる事が最優先で結果は二の次で構わないと思う。鍛冶班なんて武器をインゴットに戻し、また武器に打ち直すなんて作業を永遠と繰り返して頑張ってるし。

 

 攻略班の平均レベルは8。俺がパワーレベリングで絶賛引き上げ中。今も鼠達「情報屋」から買ったレベリングスポットへ、つい先日入隊した6名を連れて向かっている最中だ。

 こいつらの入隊経緯は一風変わっている。元々、自分達でチームを組んでいたのだがリーダーがハルノさんに一目惚れしたらしく、面接(O・HA・NA・SHI)時にいきなり猛アタックしたらしい。そんな事があったのに入隊を認められたんだから優秀な人材なんだろう。でも可哀想なのは他の5人、いきなりチームを解散されて他チームの傘下に入らされたんだからな。

 

「クライン、お前たちの入隊経緯は本当に変わっているな。仲間に悪いとは思わなかったのか?」

「いーんだよハチの字、俺の仲間達はそんな小さな事は気にしねぇ。それにハルノさんは『風林火山班』って俺達のチーム名を残してくれた。嬉しいじゃねえか、ますます惚れちまったぜ」

 

 ハチの字?俺は仁侠の道に足を踏み入れた覚えはない。それにあれだ、この世界では人に変なアダ名を付けるのが流行ってんのか?かれこれ3つ目だぞ。

 

 それと悪いがクライン、班名の経緯は少し違うと思うぞ。ハルノさんの事だ、鼠を使ってコイツらのチーム名を含めた情報は調査済みだろう。人が一番喜びそうな部分を的確に突いて懐柔する人心掌握術には恐れいる。

 

「お前達は本当にそれでよかったのか?」

「いーんすよ。俺達は何があってもリーダーについていくだけっすから」

 

 クラインは随分と仲間に信頼されているようだ。これは思った以上に頼もしい奴が入隊してくれたのかもしれない。

 

 

 ーーーーー

 

 

 レベリングスポットに到着した俺達は、早速レベル上げを開始した。俺のパワーレベリングのやり方は至極単純で、俺が敵の攻撃を弾いた所にソードスキルを打ち込んでもらうだけ。俺は味方のピンチな時以外には攻撃をしないから経験値は一切入らないが、その分レベル上げ対象者に割り振られる。

 

「お前達、ソードスキルに振り回されているぞ。システムアシストに任せっきりにしないで自分自身でソードスキルを放っているイメージで身体を動かせ」

「わかったぜ、やってみる」

 

 これも鼠から買った情報で攻撃力と攻撃速度及びスキル後の硬直時間が短くなるというもの。俺達はこの技術を<トレース>と呼んでいる。システム外スキルに分類されるらしい。

 

「それにしてもハチマンよ、お前強すぎないか?」

「俺はαテスターだからな、お前達より1ヶ月くらい多くプレイしているから、なれているだけだ」

「αテスターねぇ…それあまり言いふらさない方がいいぞ。ネットゲーマーは嫉妬深い奴が多いからな。まー俺達は大人だからそんな事ねえけどよ」

 

 クラインの話しによると、ネットゲーマーなる人種は嫉妬深い奴が多く、他のゲームでよく嫉妬による喧嘩を見てきたそうだ。そのほとんどがイチャモンレベルの程度の低いものらしい。うちには口ではハルノさんとユキノ、しかも数の有利もあるが一応みんなの耳に入れておいた方がいいかもしれない。知っているのと知らないのでは対処の仕方も変わってくるだろうからな。

 

「言いふらすつもりは始めからねえよ。お前達だから話したんだ」

「あのハチマンがデレただと!?」

 

 有り得ないとか天変地異の前触れか等、6人全員が騒いでいる。失礼な奴らだ。俺くらい素直な奴はいないというのに。

 

 

 ーーーーー

 

 

 クライン達のレベルが2上がったところで俺達は始まりの街に戻ってきた。時刻は17時過ぎ、もう少しで日も落ちるだろう。

 

「クライン達は、廃工場に寄ってさっき入手したアイテムを渡してきてくれ。俺は教会に顔を出してみる」

「おう、今日はサンキューな。助かったぜ」

「気にするな。同じチームの仲間だろ」

「ハチマンがまたデレた!」

 

 本当に失礼な奴らだな。泣いちゃうよ?グスン。

 

 クライン達と別れ俺は教会に足を向けた。

 

 

 俺達の出ていった教会は今は孤児院の様相を呈している。この世界に閉じ込められたプレイヤーの中にはR-15のゲームにもかかわらず10歳前後の子供たちが少なからずいた。そんな子供たちを保護して俺達がまだいた教会を訪ねてきたのがサーシャという女性プレイヤーだった。ちょうど教会では手狭になってきていたので俺達はサーシャさんに教会を譲り、廃工場を借りたわけだ。そんな子供たちの今の人数は23人。サーシャさんにチームに入ってもらい子供たちはチームの庇護下にある。

 

「うっす」

「あなたは何時になったらまともな挨拶が出来るのかしら」

「ハッチー、やっはろー!」

「ハチマン、やっはろー!」

 

 どうやら先客がいたようだ。

 

「お前ら何でいるんだよ」

「サーシャさん1人じゃ何かと大変かなと思って、ユイちゃんとユキノさんを誘って来てみたんだ」

 

 教会に天使が降臨された。思わず両膝を地面について拝みそうになる。

 

「気持ち悪い顔をさらしてないで、こちらを手伝いなさい。これから食事の準備なのよ」

「ユキノン、私も手伝う~」

「ユイさん、ここは私とハチマンくんで十分よ」

「おう、俺とユキノでなんとかなるから2人で子供たちの面倒でも見てきてくれ」

「えー、でも大勢で作った方が早く終わるよ?」

「ユイちゃん、ハチマン達を2人っきりにしてあげよ?最近2人とも忙しかったみたいだしさ」

「うーん、わかった。サイちゃん行こ。2人ともごゆっくり~」

 

 ユイッチの頭の中のお花畑具合はどうにかならないものか。絶対に恋愛の話をふられた途端に料理の事はどっかに飛んでったよな。「ごゆっくり~」ってこれから食事の準備するってーの。

 

「料理スキルの上がり具合はどうなんだ?」

「順調よ。でも食材のレベルが低いものしか手に入らないから、それなりの物しかできないけれど」

 

 今現在食材はモンスタードロップと採取でしか入手できない。モンスタードロップは安定しないし、採取もリポップ迄の時間がランダムだ。それを考えると≪農業スキル≫や≪漁業スキル≫を専門にしたサポート班の設立も将来的な視野に入れたほうがいいのかもしれない。

 

「ねぇ、料理班で面白いアイデアがあるみたいなのよ。皆のレベルがもう少し上がれば実現出来るみたい」

「面白いアイデア?」

「ええ、<料理代行>よ。みんな食材は持っていても料理スキルが無かったからお店に売るしかなかったでしょ?それをこちらで料理して、その分の手数料を頂こうというわけよ。みんなの料理スキルのレベルも上がるし一石二鳥でしょう?」

 

 ほーん、確かに面白いアイデアだ。宿屋にある無料キッチンスペースを使えばラウンジを食事スペースとして使う事も可能だろう。それに中央広場に面している巨大な宿屋なら場所も一等地だし、確かレンタルカウンターもあったはずだ。イロハにも隣に並んで商売してもらえば良いんじゃないか?

 そんな事を考えながらユキノと話しているうちに、夕食の準備も終わり机の上に配膳し終えると騒がしい声がだんだん近づいてくる。子供たちが集まって来たようだ。

 

「お、ハチマンにいちゃん来てたの?」

「ハチマンにいちゃん、また槍の使い方教えてー!」

「ハチマンにいちゃんだ、突撃!!」

「ごふっ」

 

 腹に見事な人間ロケットをくらい、その場に尻餅をついた俺を子供たちが囲んでくる。みんなそれぞれ違うことを話し掛けてくるから何を言っているのかよくわからん。

 

「こら、ハチマンさんが困っているでしょ。せっかくユキノさんが美味しいご飯を作ってくれたんですから冷めないうちにいただきましょう」

 

 サーシャさんの言葉に「はーい」と返事をし自分の席に座り食事を始める子供たち。

 

「あなたはなぜか昔から、子供にはモテるのよね」

 

 ユキノの言葉を背に受けながら、俺も席に座り子供たちとの騒がしくも楽しい夕食に混ざることにした。




次回
11、女鍛冶師

バレバレですね。
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