お待ちいただいていた方すみません。
今回は「リンクスタート」迄です。
4、悪夢の足音
2022年10月31日月曜日の放課後、ここ奉仕部の部室には何時ものメンバーが集まっている。昨日の30日にSAOが発売となり自分で手に入れた者以外は今日陽乃さんから配られる事になっている。
陽乃さんが来るまでは、皆おもいおもいに勉強を進めている。何時くるか分からない陽乃さんを待つため今日のところは雪ノ下の対受験教室はお休みだ。
「お兄ちゃん、陽乃お義姉ちゃんは何時頃来るの?」
「大学が終わったら直接来るって言っていたからもうそろそろなんじゃねえの?知らんけど」
「チッ、相変わらずお兄ちゃんは使えないなー」
舌打ちと相変わらずって言葉要ります?お兄ちゃん本気で泣いちゃうよ?それにしても最近小町の陽乃さんへのなつき具合がヤバくないか?小町を取られてしまいそうで怖いんですけど。
「シスコン」
「うっせ、お前が自称も他称も美少女で問題ないように、俺も自称も他称もシスコンだから問題ない」
「相変わらず意味の分からない論理回路ね。しかも私を美少女って…」
「はいはい、そこイチャイチャしないでください。一人者には辛いですよ」
「イチャイチャって一色さん、今のどこがイチャイチャしていたのか私に説明しなさい。さあ、今すぐ」
小町の背中に隠れてガタガタ震える一色、今のは誰が聞いても一色に非はない、だが噛み付いた相手とタイミングが悪い。陽乃さんが来る事が確定していて機嫌の悪い雪ノ下に噛み付けば、噛み付き返されるのは目に見えている。後でこっそり一色に教えてやろう、触らぬ神に祟りなし、触らぬ雪ノ下に毒舌なしってな。
一人どや顔を決めていると廊下が騒がしくなってきた。どうやら待ち人が来たようだ。
奉仕部の扉が勢いよくスライドされる。
「ひゃっはろー、皆お待たせー」
「姉さん、ノック位しなさい。それじゃあ平塚先生と同レベルよ。行き遅れたいの?」
「雪乃ちゃん、静ちゃんに辛辣過ぎない?元奉仕部顧問で恩師でしょうに」
「事実を述べたまでよ」
平塚先生誰かいい人見つかったかな…誰か貰ってやってくれよ、俺はもう無理みたいだから。
もうこの場に居ない平塚先生に思いを馳せていると陽乃さんが話を進めるようだ。
「静ちゃんの事はどうでもいいや、今はソードアート・オンラインの事だよね。誰か当日都合の悪くなった人いるー?」
この人に予定を約2ヶ月前から押さえられ今さら都合が悪いです、なんて言える人間がこの場に居るんだろうか。でも待てよワンチャン有るんじゃね?試しに…
「比企谷くんは強制参加だから~予定が無いのも知ってるし~」
先回りされてしまった…それにしても俺の個人情報駄々漏れ過ぎやしませんかね?流してるのは、小町なんだろうけど…
「誰もいないみたいだね、次にナーヴギアとソードアート・オンラインの配布なんだけど、嵩張るし重いから昨日雪乃ちゃんと隼人に住所を聞いて送っておいたから家に帰ったら確認してー」
皆からの分かりましたの返事を受け、更に話が続く。
「じゃあ、後は遊ぶまでにしとかなきゃいけない事の確認だねー、比企谷くん宜しく~」
また俺かよ、陽乃さん最近俺使い荒くね?しょうがない働きますか…
「まずは、同梱されている説明書をよく読んでくれ、まーそれだけだとあれなので基本的な要点だけ確認していくぞ」
「うへぇ…説明書嫌いなんだよねー、漢字読めないし」
「アホの由比ヶ浜は、ユキペディアさんが読んだあとに要約して教えて貰え」
「ユキペディア呼びは止めなさいと…」
「ゆきの~ん、宜しくね~」
由比ヶ浜が雪ノ下に抱き付く。奉仕部名物ユルユリである。
「暑苦しいわ、由比ヶ浜さん少し離れて…」
「雪ノ下さんと結衣はいくら進めてもBLに興味を示さないとおもったらGL好きだったの…」
「海老名さん、変な誤解は止めなさい。ほら由比ヶ浜さんいい加減に離れて頂戴」
えぇー、と言いながら渋々雪ノ下から離れる由比ヶ浜。このままじゃ話が進まないので手を叩いて注目を此方に集める。
「話を戻すぞ。やっておいて欲しいのは、ナーヴギアの充電とネットへの接続、それが済んだらナーヴギアにソードアート・オンラインをセットしてハードとソフトのアップデートの確認と実行、此処までで分からない事はあるか?」
「比企谷、ネットへの接続は無線LANでもいいのか」
「ああ葉山、無線でも大丈夫なはずだが、推奨はLANケーブルによる接続だったはずだ。LANケーブルは同梱する予定だとαテスターの時に聞いた覚えがある」
他に質問も無いようなので先に話を進める。
「次にナーヴギアを被って音声ガイダンスに従いキャリブレーションをしておいてくれ」
「キャリブレーション?機械の較正が必要なのか?」
「いやそうじゃない川崎、ゲームアバターの身体感覚をプレイヤーの身体感覚と対応させるためにプレイヤーの体のサイズを測る手順だと考えてくれればいい。具体的にはナーヴギアを被って身体のあちこちに手で触れる感じだ。結構恥ずかしいから誰にも見られないように部屋に籠って行うといい」
「あのー先輩、私はお父さんのナーヴギアを借りてプレイするんですけど私が登録しちゃって大丈夫です?」
「ああ、問題ない確か数アカウント分が登録出来る筈だ」
良かった、と胸を撫で下ろす一色。
「その他のナーヴギアの設定も音声ガイダンスに従っていれば終わる筈だ、次にソードアート・オンラインを起動してID、パスワード、プレイヤーネーム、アバターの作成、後は暇が有ればチュートリアルをやっておくと良いかもな」
「比企谷くん、アバターの作成はどんな姿でも作成可能なの?」
「人間の姿限定だけどな、女性なのに男性のアバターでプレイするって事も可能だぞ。でも雪ノ下は家の名代としてオープニングイベントに参加するのに制限は無いのか?」
「どうなの姉さん?」
「流石に男性アバターは、まずいと思うけれど、他は好きにしていいんじゃない?ゲームだもの」
名前は雪ノ下、陽乃さん、葉山は家の名代だから『ユキノ』『ハルノ』『ハヤト』で決定。俺はαテスターの時のアカウントを使うからそのまんまの『ハチマン』他の皆もあまり突飛なものはつけずに名前を少しいじる位に留める事で合意した。
当日の集合先も始まりの街転移門広場に面した所にある『黒鉄宮』の前に決定。初期スポーンが転移門広場なので混雑が予想されるが若干1名迷子スキル持ちがいるので近場の目立つ所に決定した。
アバター姿じゃあ誰が誰だか分からないという意見が出たので俺のアバターは現実世界と変わらないから俺を目印にすることにした。
「仮想世界でも目が腐っているのね」
「仮想世界の俺のアバターは、目は腐っていない…………再現出来なかったんだ」
「再現出来ない程の腐った目の持ち主なのね、あなたは…」
俺の彼女、辛辣過ぎやしませんかね?俺じゃなければ自殺してるレベル。
取り敢えず今日は解散し分からない事があったら電話か後日確認することにした。
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11月5日土曜日の午後11時過ぎ、陽乃さんが帰宅した後にナーヴギアにソードアート・オンラインのソフトをセットしていないことを急に思いだし、慌ててセットしてアップデートの必要時間を確認する。12時間…やってもうた…明日雪ノ下のマンションから小町を含めた3人でログインする、昼食を雪ノ下が用意してくれる事になっている為に訪問時間は昼の12時、ナーヴギアを持っていかなければならないので電車での移動時間は45分、ギリギリだな…
拙いパソコン知識をフル動員しセーブデータをパソコンに移したら速くなるんじゃね、とアップデートを中止し実行してみる。αテスター用のナーヴギアの為に入出力端子が付いている。パソコンにセーブデータを移動し終わり、再度アップデートをしてみると、12時間…変わってねー。成るようにしか成らないとアップデートは継続して、ふて寝する為にベッドに潜り込んだ。
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11月6日日曜日、ソードアート・オンライン正式サービス日の午前10時、念のためアップデートの進捗率を確認しようとナーヴギアを手に取る。終わってる…12時間て何だったんだよと思いつつもLANケーブルを抜き、セーブデータをナーヴギアに戻し全てを箱にしまって雪ノ下のマンション訪問の準備をする。
「小町、そろそろ出発するぞ準備は出来ているか?」
「ごめーんお兄ちゃん、小町所要があるから先に行ってて」
「お前ナーヴギアを1人で運べるのか?」
「お兄ちゃんと違って頭のいい小町は既に雪乃さん家に発送してあります」
小町、お前うちの高校に入る為に俺がどんだけ勉強を教えてやったんだ?高校に入ってからも文系で赤点を取っていないのは誰のおかげだと?まあ、確かに発送しちまうって考えは無かったけどさ…小町の頭を片手でワシャワシャしていると
「ほらほらお兄ちゃん、小町で遊んでないで準備が出来たならさっさと行く」
「あ?今から行ったら30分以上前に着いちまうぞ」
その間も小町の頭をワシャワシャする手を止めない。あーもう、と俺の手を小町が振り払う。
「お兄ちゃん、雪乃さん家でただご飯を食べて遊んで帰ってくるつもり?早めに行けばご飯のお手伝いも出来るでしょ」
皿を並べる位は、という小町の迫力に負け家を追い出されてしまった。仕方ない雪ノ下のマンションに向かいますかね。とぼとぼとナーヴギアの入った箱を持ちながら歩き始める俺だった。
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時刻は11時20分、いくらなんでも早すぎるとエントランスのソファーに腰掛けていると布団を2組運び出すクリーニング業者がマンション内から出てきた。日曜日なのにお仕事ご苦労様ですと心の中で敬礼し、せめて働くなら週休2日制の会社がいいなと考えていた。
11時30分、そろそろいいかと雪ノ下の部屋番号を押す。
『どちら様でしょうか?』
「俺だ」
『誰?』
「分かってるんだろう?」
『俺さんという知り合いはいないのだけれど?』
「あーもう、俺だ比企谷八幡だ」
『ふふっ、始めからそう言いなさい。時間より随分と早い様だけれど』
「小町に追い出された」
『そう、取り敢えずあがって』
目の前の自動扉が開く。中に入りエレベーターに乗って雪ノ下の部屋に到着するとインターホンを押す。
「いらっしゃい、少し肌寒いでしょ?早く中に入りなさい」
「おー、お邪魔します」
中に入り催促されたのでジャケットを脱いで雪ノ下に手渡す。ここに掛けておくからと玄関脇の来客用のハンガーに掛けてくれたようだ。雪ノ下に続いてリビングに入る。
「ソファーにでも腰掛けて待っていて、今昼食を作っているから」
「それを手伝うように言われて、小町に追い出されたんだよ」
「そうなの?手伝って貰う事なんて特に無いのだけれど。お皿を並べる位?」
「それも小町に言われた」
そうなの?、とクスクス笑いながら、じゃあお願いしようかしら、と指示を出してくる雪ノ下。
皿を並べ終わってソファーに座って待っていると昼食の準備が終わったようだ。
「さあ、冷めない内に頂きましょう」
「悪いな、昼食迄用意して貰って」
「比企谷くん違うでしょう?」
ん?何を間違った?ああ…
「ありがとう雪ノ下、昼食を用意して貰って」
「はい、良くできました。正解者には私特製の昼食をプレゼントよ」
「でも、小町を待たないと」
大丈夫よ、と雪ノ下
「あなたが来る少し前に小町さんから連絡があってナーヴギアの送り先を私の家ではなく、姉さんの家にしてしまったから今日は姉さんの家からログインするそうよ」
俺の事さんざん馬鹿扱いしといて何やってるんだあいつは。少し抜けている所も小町の魅力ではあるんだが。
「じゃあ、遠慮なくご馳走になります」
「ええ、召し上がれ」
昼食を食べ終わり、今は雪ノ下が入れてくれた紅茶を飲んでいる。今頃になって2人きりだということに気付いて顔が赤くなったが、ソードアート・オンラインにログインする時は別々の部屋だろうし大丈夫かと気を取り直し雪ノ下に声を掛ける。
「なあ雪ノ下、そろそろログインの準備をしたいんだが俺はどの部屋を使えばいいんだ?」
「私の部屋よ」
「は?」
「だから私の部屋よ」
「いやいや、聞こえてない訳じゃなくて何でこんなにいっぱい部屋が有るのにお前の部屋なんだ?」
「あら、比企谷くんは私に余分な電気代を払えというの?」
「ぐっ…」
お嬢様が、電気代なんて気にした事無いだろうと言いたいが、家主にこう言われては、俺には何も言えない。
「分かった、セッティングの時間があるから早くこの場を片して部屋に案内してくれ。勿論片付けは俺も手伝うから」
「ええ、じゃあお願いしようかしら」
二人で洗い物を済ませ、ナーヴギアを持って雪ノ下の後ろをついていく。部屋に入るとベットが一台あるだけで布団も敷いていない。
「俺に床で寝ろと?」
「そんな鬼畜じゃあないわよ。布団がクリーニングから戻って来なかったのよ。2組一緒に出したから時間が掛かっているのね。だから、今回は仕方なくだけれど、非常に遺憾ではあるのだけれど、私のベッドで一緒に横になる事を許可するわ」
雪ノ下は何を言っているんだ?青春真っ盛りの男子高校生が雪ノ下みたいな美少女と同じベットに並んで横になる?いやいやいやいや、いくら理性のバケモノと言われる俺でも理性を保てる自信はないぞ。
あれ?さっき布団を2組運び出すクリーニング屋に会わなかったっけ?うん?あーこりゃ、小町もグルだな。多分陽乃さんも。ほーん、3人して俺を嵌めたのか…逃げ道なしか…悔しいから家に帰ったら小町だけにでも説教しよう。雪ノ下と陽乃さんには出来ないもんね…
「分かったよ。どうせログインしちまえば身体は動かないしな、セッティングさせてもらうぞ」
「ええ、お好きなように」
満面の笑みの雪ノ下を見ると、お前虚言は吐かないんじゃなかったの?という嫌みも言えず淡々とセッティングを進める。セッティングが終了すると丁度良い時間である。
「雪ノ下、ナーヴギアを被って横になれ、時間だ」
「ええ、分かったわ」
俺もナーヴギアを被り雪ノ下の隣に横になる。すると俺の手を握りしめてくる雪ノ下。まあ、これくらい良いかと俺も握り返し、二人声を合わせて魔法の呪文を唱える。
『リンクスタート』
俺と仲間たちのソードアート・オンラインが始まる。
SAO系の設定は独自設定を含みます。
今回は修正の裏側を一つ
この小説のもとになっている小説は3年前に入院していた友達の暇潰し用に頼まれて書いた物です。
その頃はまだ、静ちゃんが八幡達が3年生の時には転任してしまうとは思っていなかったのでレギュラー位の勢いで小説の中に登場してるんです。
今回の修正で一番手間の掛かっている所ですね。