まだプレイヤーネーム呼びでないのは、まだそのルールを知らない及び四半日の遊びで必要ないと思っているからです。
18/01/04 加筆修正、誤字・脱字修正。
5、悪夢の幕開け
はじまりの街の中央広場。
そこは石畳の敷かれた円形の広場で、周囲には街路樹と中世ヨーロッパ風の建築物、正面には黒く巨大な城『黒鉄宮』がある場所だ。中心に転移門があるだけで見通しの良いこの広場は、このゲームの初期スポーン地点に設定されている場所でもある。
俺こと比企谷八幡も、御多分なくそんな場所にスポーンした。懐かしい、ほんの数ヶ月前にαテスターのバイトで毎日のように訪れていた場所だ。物思いに耽っている時間もないので集合場所の黒鉄宮を目指す事にする。
それにしても予想していた事とはいえ、人多くない?仮想世界なのに人ごみ酔いしそうになるのは、元ボッチの悲しい性なのか。
ん?現在進行形でボッチだろうって?だってボッチって言うと雪ノ下が目くじら立てて怒るんだもん。そんな事を考えていると、後ろから声が掛かる。
「比企谷くん、近くにスポーンしたみたいね」
「そうみたいだな雪ノ下、迷子のお前を捜す手間が省け……」
振り返りながら答えた俺の言葉が、アバターのある一点に目が釘付けになってしまった為に止まる。
雪ノ下のアバターは、本人を再現したらしく黒髪ロングにスレンダーな体、そこまではいい。胸部に由比ヶ浜並みのダブルメロンが再現されている。こいつ、俺と2人きりなら兎も角、これから学校の皆と会うんだぞ?絶対に皆に笑い者にされるぞ。まー皆、優しいから苦笑い位で済ませてくれるかも知れないが、陽乃さんは絶対に大声で笑うに決まってる。そしてその副次被害が俺に来るんですね、分かります…
「下卑た視線を感じるのだけれど」
しまった、ガン見しすぎた。誤魔化さないと罵詈雑言の嵐に俺の心が殺されてしまう。
「おおう、時間が無いから早くチュウ合場所に行こうぜ」
カミマミタ、死にたい…
「誤魔化すなら、噛まないで喋りなさい。しょうがない人ね、そもそも…」
今度は雪ノ下が固まった。俺の顔を凝視している。
「あなた、目がマトモだとかなり……いえ、なんでも無いわ。急ぎましょう」
話終わるや否や、急にあさっての方向に歩き出す雪ノ下。
「おい、そっちじゃない真逆だ」
「そ、そういう事は、早く言いなさい」
顔を真っ赤にして戻ってくる雪ノ下を伴い、目の前にある黒鉄宮を目指した。
ーーーーーーーーーー
黒鉄宮に近づくにつれ見覚えのある顔が2人見える。まったく同じ顔、え?俺の知り合いに双子っていたっけ?
「遅いぞ、比企谷くん」
「遅いよ、比企谷くん」
左右の腕に抱きついてくる謎の双子。
え?え?陽乃さんが二人?どうなってんの?
「小町ちゃん、大成功だね。イエーイ」
「陽乃義姉ちゃん、やったね目論見どおり。イエーイ」
俺の腕を離れ、目の前でハイタッチをするダブル陽乃さん。ていうか片っぽは、小町か。どうやら俺を驚かせる作戦の様で成功して喜んでるらしい。「子供か!!」と、口に出すと怒られそうなので心の中で突っ込んでおく。
「あれ?雪乃ちゃんその胸…」
「何かしら姉さん、何か問題でも」
俺に顔を向けてくる陽乃さん。無言で顔を左右に振り、俺は関わっていない事をアピールする。
「な、なんでも無いよ。雪乃ちゃん」
「そう、それならよかったわ」
あの陽乃さんが突っ込まないだと!?この話題は、姉妹でもタブーなのか。小町は陽乃さんの隣で苦笑いしている。うん小町、この場合はそれが正解だ。後で褒めてやろう。
「ヒッキー!」
「八幡~!」
由比ヶ浜と戸塚か、さてどんなアバターにしたのかと思い振り向くと…
ムキムキマッチョの身長2M越えの大男が2人いた。完全に虚を突かれて固まってしまう。
「やったね。彩ちゃん大成功!!」
「うん、結衣ちゃん大成功だね!」
「お前らもかよ!!」
俺にしては、あり得ない位の大声で思わず突っ込んでしまった。なぜか負けた気がする。超悔しい。
あと戸塚の癒し成分が何処にも無いんですけど、それは…
この後に合流した面々は、
葉山は、そのまま現実世界と一緒。イケメンはいいですね。
三浦は、自分を少し大人にした感じ。モデルで通るぞ。また葉山の隣に立つと絵になるんだこれが。
海老名は、BLに出てくるような男性。嫌な予感しかしないから近くに寄るのは止そう。
一色は、三浦と同じで自分を大人にした感じだが、完全に小悪魔。世の男性諸君、気を付けて下さい。骨の髄までシャブられますよ。
川崎も自分を大人にした感じだが、一言で言うならエロイ、男子中学生なら目の前に立たれただけで身体をくの字にしてしまうだろう。俺も思わずなりそうになって雪ノ下に睨まれたし。
大志は、如何にもRPGゲームにでてきそうな勇者って感じ。俺もそうしたかったんだけどな。いいよね、勇者って。
最後は…
ゆっくりとこちらに歩いてくる麻呂って感じのアバター…
絶対にあいつだよね。しかも後ろに格闘ゲームのキャラクターみたいな奴を何人か連れているし。
「皆の衆、待たせたか?」
「中二、遅いし!」
「あ、はい、すみません遅くなりまして」
「で、その後ろの人たちは?」
あれ?、陽乃さん本気で怒ってる?
「はい、ゲームセンターの仲間で運良く買えた連中です。邪魔しないようにキツく言い聞かせてありますので、同行させてもらっても宜しいでしょうか?」
「ふーん、私達の邪魔をしないならいいけれど」
「はい、ありがとうございます」
何時ものキャラは何処へやら、直角に腰を曲げ頭を下げる材木座。その姿勢はいいが、一言アドバイスしとかないと死人が出そうだ。
「材木座、ちょっと此方に来い」
「なんだ我が同朋八幡よ」
「陽乃さんの言う『邪魔をしない』の意味分かってるか?」
「え?」
「話し掛けるな、近くによるな、視界に入るなだぞ。破れば黒鉄宮に死に戻りすることになるからな、仲間に良く言い聞かせておけよ?」
「そこまでか?」
「そこまでだ」
顔面蒼白になりながら仲間の所に歩いていく材木座。それを横目に見ながら先にフレンド登録だけでも済ませようと皆に提案した。
「よかったわね。ゲームの中とはいえ友達がたくさん出来て」
「雪ノ下、盛大なブーメランだって気付いてるか?」
なんて、やり取りもあったが確かに俺のスマホに登録されている人数より多いかもしれない…
フレンド登録をした時に分かったことだが戸塚が『サイト』由比ヶ浜は『ユイッチ』(その体格でユイッチって…)他は本名と同じだった。あー、1人『剣豪将軍』ってのも居たわ。
ーーーーーーーーーー
取り敢えず次は武器屋に行くことになり、歩きながら今回はスキル構成どうしようかな?と、右手で操作しスキルウインドウを展開させた。え?
「ええ~!?」
「うるさいわよ比企谷くん、こんな往来で奇声を発しないでくれるかしら。そんなあなたと知り合いだと思われたらどうするの。死んで責任を取って貰うわよ」
「すみません。以後、気を付けます」
俺の彼女、怖すぎませんかね?平気で彼氏を殺そうとするんですけど?
それよりも、奇声を上げた理由は、スキルはセットされているしレベルも完ストしているもある。慌ててステータスウインドウを開くと…やっぱり…αテスター時のステータスだ。今度はアイテムウインドウを開くが極一部を除いて文字化けしている。装備している物は初期装備だけど。コルもαテスターを辞める時に8並びにしといたのがそのまんま。運営さん?大丈夫なんですか?これ低~中階層序盤位までなら一人で突破出来るレベルだぞ。
まあ、攻撃センスゼロの俺じゃ無理だけど。なんとかソードスキルを発動出来る位のレベルだけれども。でもねパリィ技術は凄いんだぞ。余りにも俺がどんな攻撃でもパリィするから、パリィのタイミング時間を短くされたくらいだぞ。それでもパリィしてたけどな。結局最後には他のαテスター全員から難し過ぎるという事でもとに戻されて、俺が変態扱いを受けるという黒歴史の1ページになったけれども。
何か説明で疲れた…
まあ良いやどうせ遊ぶのは今日1日だけだろうし、混雑していて運営も気付かないでしょ。それに次にプレイすることがあって、アカバンされてても、一から作って勇者顔にすればいいし。
開き直って、文字化けしているアイテムを次々に捨てていく。残ったアイテムは装備品が7点ばかり。確かかなり高階層のモンスターのレアドロップ品。≪隠蔽スキル≫の効果を高め状態異常耐性が高い黒いマント<隠者のローブ>が3着、状態異常耐性がかなり高い黒い布服装備<隠者の服>が2着、足音を消しAGIにボーナスが付く黒いブーツ<隠者のブーツ>が2足、流石に此は不味いだろうと捨てようとしたが、アイテムを集めた時の苦労を思い出してして躊躇してしまう。
ドロップ率のテストの時、どうせやるならとステルスヒッキーに必要そうなアイテムを狙って検証をしたんだが、必要な装備を落とすモンスターが高階層にしか居らず、攻撃センスの無い俺は、ひたすらパリィして通常攻撃を当てるという作業を繰り返したんだよな。勘違いしたスタッフに誉められて時給が少し上がったのは嬉しかったけどさ。
結局使わなければ良いかと捨てるのを止めてしまった。
そんな事をしていると武器屋に着いたようだ。
「比企谷く~ん、何か武器を選ぶコツってあるの?」
「初期金額じゃあそんなに種類は買えないんで、売っている武器を一種類づつ皆で買って、フィールドで順番に回して自分に合う武器を探すっていうのはどうですか?」
「え?お金なら有るわよ。ね、雪乃ちゃん」
「ええ、うちの父が、世界の注目するゲームなのだから世界に向けて放送が有るかもしれないから雪ノ下家として恥はかけない。それに友達と遊ぶんだからおこずかいも必要だろうって、姉さんと私にウェブマネーをくれたのよ」
「そーそー、で二人してこのゲームの課金ページを見てみたんだけど何を買っていいか分からなかったから全額このゲームの通貨に変えたのよ」
「は?幾らづつですか?」
「うん?100万円づつよ、確かこの世界の通貨と桁は同じだったわ」
このブルジョワさん達め。俺には課金するシステムさえ無かったぞ。招待客専用か?
「おい、葉山お前もか?」
「ああ、俺は10万円だけどな」
やっぱり金持ち限定のシステムかよ。俺にあったとしても課金するお金が無いから関係無いし、それに課金してないのにこの中で1番のお金持ちだし!ゲーム内通貨だけどな…言ってて泣きたくなってきた…
取り敢えず適当に数本ずつ武器を買い漁りフィールドに出ることにした。
敵の居ない場所で、皆に武器を試し振りをしてもらっている。俺は使いなれた≪片手槍≫ブロンズスピアと≪盾≫ラウンドバックラーを装備して感触を確かめる。
αテスターの時に唯一話していた人が作っていたあるスキルに合わせた組み合わせだ。茅場に内緒で作っていたスキルらしく茅場が居ない日にテストプレイをさせられていた。
感覚を取り戻す為に槍のソードスキル<ツイン・スラスト>(踏み込みながらの2連続突き)を発動させてみる。最近の走り込みのせいか、下半身が安定していてスムーズにスキルが発動出来た。ゲームの中にまで影響あるの?スゲーな走り込み。攻略サイトに書き込んでやろうかな?
「比企谷くん、今のは何をしたの?」
「見てたのか、ソードスキルだよ」
「今のがそうなのね。私も使ってみたいのだけれど」
「武器は決まったか?」
「ええ、この≪曲刀≫ブロンズシミターという武器が刀に似ていて扱い易かったわ」
「ご明察だな。≪曲刀スキル≫はレベルを上げていくと≪刀スキル≫を獲得出来るぞ」
「ますます気に入ったわ」
「そうか、じゃあまず≪曲刀スキル≫を取得しようか」
システムウインドウを呼び出させて、スキルスロットに≪曲刀スキル≫をはめてスキルを取得させる。
「これからどうするの?」
「曲刀の初期ソードスキルは<リーパー>(曲刀を肩に担いでからの突進しながらの振り下ろし)だな。誰も居ない方向を向いてから曲刀を肩に担いでみてくれ」
「ええ、分かったわ」
「曲刀が光を放ち少し感覚が変わる瞬間に思い切り振り抜いてみろ」
「ええ」
光った次の瞬間に曲刀を動かした時、<リーパー>が発動して身体が強制的に突進し、曲刀を振り下ろす。
「きゃあ、身体が勝手に動いたわ」
「それが<システムアシスト>だよ。ソードスキルは、発動さえさせてしまえば勝手にシステムが動かしてくれるんだ」
「妙な感覚ね」
「そうだな、慣れて身体に覚えさせるしかないな」
そんな事をしているうちに皆も武器を決めたようだ。
陽乃さんは、両手剣。
小町は、短剣。
葉山は、片手剣と盾。
三浦は、両手槍。
由比ヶ浜は、片手棍と盾。
戸塚は、細剣。
川崎は、両手棍。
大志は、短剣。
海老名は、片手斧と盾。
一色は、細剣。
材木座は、曲刀にしようとしたが両手斧にさせた。理由?余って勿体なかったからだ。
残った武器は材木座の友達に陽乃さんの指示で渡した。何だかんだいっても面倒見のいいお姉ちゃんである。
各自に武器のスキルを取得させ、ソードスキルの練習をさせる。全員が一通り様になってきた所で、モンスターと戦ってみようという事になったので場所を移動することにした。
初期敵のノンアクティブモンスター<フレンジーボア>を狩ってみる事に決め、各々ソードスキルを放つ。どんなソードスキルスキルでも一撃当てれば倒せる雑魚なので、予め練習してきた俺達の敵ではなかった。
途中飽きたのか陽乃さんと小町がMPKばりのトレインで大量の青いイノシシを引き連れて来た時には焦ったが、所詮雑魚、俺が突進してくる猪を次々にパリィでひっくり返し、他の皆がソードスキルを叩き込み事なきを得た。陽乃さんと小町には、雪ノ下にマナー違反だということを教えて説教をしてもらったけど。
皆で楽しく遊びながら、全員のレベルが2に上がった頃には時刻は17時を回っていた。
「悪いんだけど、妹の京華の様子が気になるから先に落ちるね」
「自分も一緒に落ちるっす」
「おー、川崎、大志お疲れさん。ケーちゃんに宜しくな」
他のみんなからもお疲れさまと声が掛かる。
「じゃあ、俺達はオープニングイベントを見に始まりの街に移動するか」
「そうね、遅刻する訳にもいかないでしょうからそろそろ移動しましょうか」
皆が始まりの街に向けて歩き出した。
「待って、比企谷。ログアウトってどうするの?」
「そういえば教えて無かったな。システムウインドウを開いてシステムのボタンを押すと一番下にあるぞ」
「私も説明書にそう書いてあったから確認したんだけど、無いんだけど?」
「はあ?ちょっと待ってろ。俺も確認してみる」
システムウインドウを操作し、ログアウトのボタンを探す。確かに無い。有るべき場所がただのスペースになっている。
「無いな。バグかもしれない。少し様子をみるしか無いな。」
「そんな、困るんだけど」
「悪いが俺に言われてもどうしようもない。可哀想だが」
「悪かったね。確かにあんたの言うとおりだ、でも何か手はないのかい?」
「1つ手があるとすればGMにメールしてみるのもアリだが、多分他の奴もメールしてるだろうからな」
「ありがとう。ダメ元でメールしてみるよ」
川崎は、メールを送っているようだ。だが俺には一抹の不安が押し寄せる。あの天才茅場晶彦が、こんな決定的な事故を起こすだろうか?そんなことを考えていると
『ゴーン、ゴーン、ゴーン』
と不気味な鐘の音が鳴り響き、俺達は強制転移させられた。
SAOの設定は独自設定を含みます。
材木座の友達を存外に扱い過ぎたかな?