今回は短いですが切りがいいので許して下さい。
6、死の遊戯、開演
はじまりの街の中央広場。
数時間前に訪れたこの場所に俺達は強制転移させられた。
次々に強制転移してくるプレイヤー達。広場を瞬く間にプレイヤーが埋め尽くす。全プレイヤーが集められているのか?
何かがおかしい。俺のボッチセンサーが警告音を最大音量で鳴らしている。
陽乃さんを視界に入れる。苦虫を噛み潰した様な顔で下唇を噛んでいる。
「陽乃さん……」
俺の顔を見て心情を察してくれたのか、頷いてくれる。
「ええ、此はただ事ではないわね。少なくともオープニングイベントではないわ」
俺もそう思う。オープニングイベントでも、ログアウトの不具合で集められた訳ではないように感じる。何が起きるというのだ。
急に上空が赤く染まっていく。真っ赤な「WARNING」というフォントとフォントの間から滲み出る、血のような赤黒い液体が、ドロリと垂れて来る。液体は垂れ落ちる事なく、空中で形を変えた。
ローブを着た巨大な顔も胴体も無い亡霊が、この場に集められたプレイヤー達の上に優雅に浮いている。
ローブの亡霊は話しを始めた。
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間である』
やっぱり茅場か、何をしてくるつもりだ?
『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない、繰り返す。これは不具合ではなく、《ソードアート・オンライン》本来の仕様である。』
仕様?
『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることができない。』
自発的?
『また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合、ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる。』
なっ…そんな事が可能なのか?
『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク切断、ナーヴギアのロック解除または分解または破壊の試み、以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果。残念ながら、すでに二百五十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』
亡霊の回りにニュースの画面ウインドウが幾重にも展開され、子供にすがって泣き崩れる母親や家族の映像が多数写し出される。
茅場ァァ、お前ェェ
『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネット等のメディアはこの状況を、多数の死者が出ている事も含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に除装される危険はすでに低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には、安心してゲーム攻略に励んでほしい』
『しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される。』
『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、第百層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』
『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』
憤る俺をよそに急にプレイヤー達が光始める。何が…
「あれ?彩ちゃん、何時もの姿になってるよ」
「結衣ちゃんも何時もの姿に戻ってる」
何?顔を後ろに向ける、そこにはいつも学校で見ている皆の姿があった。
日常の姿で戦いもがき苦しめと?日常の姿で死んでいくかもしれない仲間を見送れと?
『では、諸君の健闘を祈る』
亡霊が赤い天井目掛け上昇していく。
「茅場ァァーーーー!!!!」
ブロンズスピアを亡霊目掛け投げつけようと構える。
「比企谷くん、ダメーーー!!」
陽乃さんが俺の身体を押さえつけようとするがレベル差があり押さえつけられない。
「雪乃ちゃん、皆も比企谷くんを止めて!!」
12人で覆い被され俺は床に押さえ付けられる。レベル差を使って振りほどく事は可能だが、その頃にはもう茅場の姿は消えていた。
ブロンズスピアを手放すと皆が俺の上から退いてくれた。立ち上がりながら陽乃さんに向けて声を発する。
「何で止めたんですか?何で…」
バチーン!
え?
痛みはないが違和感が左の頬にある。俺は陽乃さんに叩かれたようだ。
「冷静になりなさい。私達は1日も早くこの世界をクリアして現実世界に帰らなければならないの。その為にはあなたのSAOの知識は必要不可欠なのよ。それをこの場で万が一にも失うわけにいかないわ!」
「それに、可愛い義弟くんも失うわけにいかないのよ、雪乃ちゃんの為にも私の為にもね」
冷静な思考が戻ってくる。俺らしくもないバカをやらかしたもんだ。陽乃さんの言うとおりだ。今優先すべきは皆を安全に現実世界に還す事。
「すみませんでした。陽乃さん。そしてありがとうございます止めて頂いて」
「冷静になったみたいだね。可愛い義弟くんの為だもの、貸し1個でいいよ」
わお、この人に貸しを作っちまたか。かなり高くついたな。まあ、今はそれよりも。
「皆もありがとな。止めてくれて」
私達も貸し1個でいいわ、何て聞こえて来る。あ~あ、俺としたことがでっかい借りを作っちまったもんだ。
「皆、聞いてくれ。ここは混乱が始まっている。今後の方針を皆で話し合わなければいけないがここでは無理だろう。近くに教会があるから一先ずそこまで移動しないか?」
皆の了承を得て、俺を先頭に走り始めた。
次回
魔王始動
7、第一の犠牲者その名はアルゴ
で、お会いしましょう。
一回やってみたかっただけです。