真・恋姫無双〜正義の味方〜   作:山隼

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にじファンの閉鎖によりこちらに移りました山隼です。

初めての方は始めまして。
お久しぶりの方はお久しぶりです。

のんびりと執筆をして行きますので、
よろしくお願いします。

なお、結構一気にコピペ&修正作業を行いましたので、
どこか文字がおかしい所や、ルビの振りミスがあれば、
教えてもらえれば幸いです。


プロローグ

「はぁ……はぁ……」

洞窟の奥深く、荒い呼吸をしているのは衛宮士郎。

封印指定になったお陰でここ数ヶ月ずっと逃走を続けてきた。

ろくに食事も採らず、休まずに。

 

「何とか撹乱出来たけど、見つかるのも時間の問題か……」

 

そう呟いて、今体を休めさせている洞窟の入り口に目を向ける。

そこには静かに雪が降っていた。

 

「……イリヤが逝ったのもこんな雪の日だったな……」

 

イリヤが逝ったのはこんな雪が降る夜。

封印指定を受ける前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時と同じように、縁側に士郎とイリヤと並んで座っていた。

お互いに分かっている。イリヤがもう逝ってしまう事を。

ふとイリヤがシロウに話しかける。

「ねぇ……シロウ」

 

「どうした?」

 

「私まだキリツグに怨んでる事があるんだ。」

 

「……それって、置いて行かれた事か?」

 

「ううん。それは死んであの世で会った時に、

たっぷり文句言ってやるからいいんだ。私が怨んでるのはシロウの事。」

 

「俺?」

 

「うん。キリツグはシロウに正義の味方になる。ってゆう呪いをかけたから……」

 

「っ……でもそれは!」

 

そう言って、士郎は少し怒った感じでイリヤの方を見ると、

 

「分かってる。その想いがシロウを支えてて、

キリツグとの大事な約束だっていう事も。

でも、そのせいでシロウは人を助ける為に、自分自身を犠牲にしてしまう。」

 

「…………」

 

「だからね、私と約束して。キリツグと同じように。」

 

「どんな?」

 

「シロウの周りにいる人達の、シロウに対する想い。

シロウに傷ついてほしくない。一緒にいてほしい。そういう想いを守って欲しいの。

キリツグと約束した、正義の味方としていろんな人を助けるのは大事だよ。

けど、私との約束も守ってね。シロウが傷つくと私が悲しいから。」

 

「分かった。絶対守るよ。イリヤとの約束、俺がカタチにしてみせるから。」

 

そういうと、イリヤの体がこっちに倒れてきてシロウの膝の上に頭を乗せる。

そのまま雪を見つめながら……イリヤは静かに目を閉じて、

 

「うん。じゃあ覚えてて。

誰かを助ける時、士郎が死んじゃったりしたらダメなんだからね。」

 

そう言って士郎に頭を撫でられながら、

静かに息を引き取った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識を戻し、ふと見上げるとそこには見知った顔があった。

 

「遠坂か……」

 

「久しぶりね士郎。」

少し怒った感じで、しかし哀しそうな目をした凛が立っていた。

 

「イリヤとの話は聞いたわよ。約束を守って世界と契約しなかったのは良かったけど、

封印指定されてるじゃない!」

後半少しヒートアップしながら凛は士郎に詰め寄る。

 

「ごめん遠坂。あんなに心配かけといて。」

 

士郎の魔術が協会にばれるのを防ごうと、

凛はいろいろ手をまわしていたが、結局無駄になってしまった。

 

「仕方ないわよ、士郎の性格考えたらいつかはばれると思ってたし。」

 

「ふぅ……それで俺はどうなるんだ?」

 

そう言うと凛は

「協会の奴らなんかに士郎を渡すわけないでしょ!あんたには並行世界に行ってもらうわ。」

 

「並行世界って第2魔法の!?たどり着いたのか?」

 

「それはまだよ。師父に士郎の事をお願いしたら士郎に興味をもってね、

少し頼み事があるって。」

 

「師父って!?まさか……」

 

すると凛の後から人が姿を現す。

 

「お前が切嗣の息子の士郎か。」

 

「そうですけど、あなたはまさか……」

 

驚いている士郎に凛が答える。

 

「そうよ。宝石翁キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。」

 

なるほど確かにそれならば並行世界に行く事が出来る。

 

だが……

 

「頼み事とは一体?」

 

「うむ。今から行ってもらう世界に知り合いがおっての、

少々厄介な事になっているようじゃから、手助けをして貰いたいんじゃ。」

 

「手助けですか。」

 

「うむ。このままだとその並行世界が無くなってしまうかもしれん。」

 

「っ!……」

 

士郎はかなり驚愕する。

 

それもそうだ。

世界が丸々一つ無くなるなんて事、正義の味方として見過ごす訳にはいかない。

 

「分かりました。」

 

「よし。まずはこの銅鏡を持て。」

 

そう言ってゼルレッチは古びた銅鏡を士郎に渡す。

 

「わしの宝石剣で並行世界への道を開ける。

そして目的の世界までは、その鏡が案内してくれるじゃろう。」

 

「ありがとうございます。」

 

士郎が礼を述べ、準備を始めると、

 

「士郎!」

 

「どうした、遠坂?」

 

涙を堪えている凛に呼びかけられ……

 

「イリヤと約束したんだから私ともしなさい!

絶対あんた自身が幸せになるのよ!分かった!」

 

「ああ。心得た。俺も頑張るから、行ってきます」

 

そう言って綺麗な笑い顔を見せて宝石剣の、光の奔流に消えていく……

 

最後、全て消える前に凛が

 

「行ってらっしゃい……

私が好きになった男なんだから、幸せにならなかったら酷いんだからね!」

 

と、ただ涙を流しながら見送った……

 

 

 

 

 

 

 

士郎の新しい物語が始まる。

大事な人達との約束を抱いて……

 


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