真・恋姫無双〜正義の味方〜   作:山隼

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2-4 一時休憩

宛を攻略した士郎たち。

 

次は許昌の攻略になるのだが、荒れている宛をほっといて行くわけにはいかず、

別に動いている呂布たちも、洛陽の方から許昌に移動中なので、

暫しの間、宛に居る事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練場にて対峙しているのは士郎と霞。

 

互いに得物の双剣と偃月刀を構えている。

 

緊迫した空気の中、それ痺れを切らしたように霞が距離を詰める。

 

「はあっ!!」

 

神速の突きを繰り出すが、士郎は後ろに下がって避ける。

 

「まだまだやでっ!!」

 

そのまま突きを繰り出し、士郎が攻撃出来ない距離から攻撃を繰り出す。

 

(中々鋭い・・・・だがこれならっ!)

 

そう考えた士郎は、干将・莫耶を振るい捌いていく。

 

「どうした霞っ!!全然当たってないだろうっ!!

早く私に代われっ!」

 

そう叫んでいるのは、この戦いを見ている藍。なぜか柱に縛り付けられているが・・・・

 

「士郎さんっ!頑張ってくださーいっ!」

 

その横で玖遠が座ったまま士郎に声援を送っていた。

 

「分かっ・・・とるわっ!!」

 

藍に答えながら攻撃を続ける霞。

 

「もっと距離を詰めろっ!!

このままじゃ埒があかんぞっ!!」

 

「・・・・玖遠っ。そいつ黙らしといてっ。」

 

藍のヤジに痺れを切らした霞が玖遠にお願いする。

 

「はーーいっ。了解ですっ。」

 

玖遠は柱に縛り付けられて居る藍に近付き、口に布を巻き始める。

 

「おいっ・・なにをっ・・・・むぐ・・むぐーーーっ!!」

 

藍がむぐむぐ言っているが、それを無視して攻撃を続ける霞。

 

(確かにこのままじゃ埒があかん・・・・

けど・・・不用意に近付けへん・・・)

 

宛の戦い等で一緒に戦った霞は、士郎が自分より強いと判断している。

 

(恋とやったらどっちが勝つんやろ・・・

見てみたいけど・・・今はウチが勝たな!)

 

気合を入れ直した霞は、そのまま攻撃を続ける。

 

そうしていると、霞は士郎の捌き方に違和感を感じた。

 

(一瞬・・・やけど、隙ができとる。)

 

それは微かなタイミング。

 

(ここ狙ったら・・・いけるっ!!)

 

突いた後、そのまま流れるように士郎の右脇腹を薙ぎはらう。

 

―――――瞬間―――――霞に悪寒が走った。

 

それは霞の直感、強者としての感。

 

「くっ!!」

 

咄嗟に攻撃を止めようとするが、既に遅い。

 

士郎は右手の莫耶で防御しながら距離を詰める。

 

「まだやっ!!」

 

完全に攻撃に移る前だった為、ぎりぎり回避が間に合う。

 

そのまま霞は後方に跳躍しようとするが、

 

ブンッ!!

 

士郎は左手の干将を霞に投げつける。

 

「ええっ!!」

 

慌てて跳躍を止め、偃月刀の柄で弾くが、

その時既に、士郎は霞の首筋に莫耶を突きつけていた。

 

「まだ続けるか?」

 

「はあ・・・ウチの完敗や・・・」

 

そう言って霞は倒れこむ。

 

「さすが士郎さんですっ。」

 

「むぐぐぐっ!むぐーーーっ!」

 

玖遠が士郎に拍手しながら近付いて来る。

 

藍は相変わらず何か言っているが、むぐむぐとしか分からないので無視されていた。

 

「なんか今まで戦った事ないわ。あんなん。

罠仕掛けるし、剣も投げるし。」

 

「あれはびっくりしますよね・・・」

 

霞と玖遠が感想を述べる。

 

「一瞬でも思考を停止させれば、十分隙ができるしな。

力や技だけを競うものじゃないだろ。」

 

士郎の返事に呆気に取られる二人。

 

「いろんな奴がおるんやなぁ・・・・

ウチんとこの恋は本能で戦いよるから、士郎とは全然違うなぁ。」

 

「その人って呂布さんですかっ?」

 

「そやで。あんま話さへんし、いっつもぼけーっとしとるけど、

無茶苦茶強いんや。

士郎やったらええ勝負できるかもしれんわ。」

 

そう言って霞は立ち上がる。

 

「よしっ!じゃあ士郎もう一回「あの・・・士郎さんは・・・・・」ってどうしたんや?」

 

霞が士郎に再戦をお願いしようとすると、訓練場の入り口から援里が顔を出していた。

 

「士郎さんを・・・・呼びに・・・来ました・・・」

 

「?何かあったのか。」

 

「はい・・・・黄巾党の・・・本陣が判明したので・・・・」

 

すると、それを聞いた霞は、

 

「えーーっ、もう一回やろうとおもとったのに・・・」

 

やるき満々の霞はすごく嫌そうな顔をする。

 

「まあええわ。玖遠。ウチとやろうで。」

 

「お、お手柔らかにおねがいしますねっ・・・・」

 

霞に呼ばれた玖遠は、苦笑いを浮かべながら返事をする。

 

二人が話している間に、援里が士郎の所までやって来る。

 

「行きますか・・・・・」

 

「ああ。」

 

援里と士郎が一緒に入り口に向かって歩いていると、

途中、縛られている藍の所を通過する。

 

「あの・・・士郎さん・・・如何したんですか・・・・これ・・・・?」

 

それを見た援里がおずおずと問いかける。

 

「ああ、玖遠は帰って来るのが遅かったからな。

これは・・・・」

 

士郎が宛城を攻略した直後の話を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宛城を攻略した後、士郎と霞が本陣に帰ってくると。

そこでは藍と詠のバトルが繰り広げられていた。

 

「あんなに作戦説明したのにっ!なんで勝手に突っ込んでいったのよっ!」

 

「敵がいたら、戦うのは武人の性だ!」

 

「命令違反していい理由にはならないわよっ!」

 

「敵将一人倒してるだろう!」

 

「その後後詰めできたボクの軍に、あんたが突っ込んで来てるでしょ!

どれだけ被害が出たと思ってんのよ!」

 

・・・大分ヒートアップしてるな・・・

 

士郎は口論している二人を見てそう思っていた。

 

「え、詠ちゃん・・・少し落ち着いて・・・」

 

「藍も。一度座りなさい。」

 

一応、月と水蓮が二人を宥めているが焼け石に水だ。

 

「・・・とりあえず、命令違反した以上、何らかの罰を与えないと軍紀が乱れるだろ。」

 

それを見かねた士郎が口を出す。

 

「ぐっ・・・」

 

「ほら見なさい!」

 

それを聞いて、藍は静かになり、詠は勝ち誇る。

 

「でも、罰って何をするんだ?」

 

「そうね・・・」

 

士郎の質問に、詠は考え込む。

 

「え、詠ちゃん・・・あんまり厳しいのは・・・・」

 

その様子を見て、月が心配そうにしている。

 

「これからの藍の予定はどうなってるの?」

 

「訓練場で武官同士で手合せする予定になってるけど・・・どうかしたのか?」

 

それを聞いた詠は、何かに閃いたような顔をし、

 

「だったら藍を、その訓練場の柱に縛りつけといて!

この戦馬鹿にはそうしたほうが効果がでるわ!」

 

なるほど。

目の前で強者同士が戦っているのに、それに参加できないのが藍にとっては一番きついか。

 

そう理解した士郎は、暴れる藍を、

強化した縄で柱にぐるぐる巻きにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「そ・・・そうだったんですか・・・」

 

援里はなんとも言えない顔をしている。

 

「・・・個性的な人が多いよな・・・・」

 

「はい・・・・・」

 

士郎の呟きに援里も頷いた後、

お互いにため息をはき、

そのまま聖たちの所に移動していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり援里ちゃんっ!」

 

扉を開けると聖の元気な声に出迎えられる。

 

その声に少し元気を貰った二人は、そのまま席に着いた。

 

「士郎くんもおかえりー

お茶入れてーっ。」

 

「ただいま。ってまさかその為に呼ばれたのか、俺?」

 

「い、一応作戦の方も説明するよ?」

 

「一応・・・とりあえず待っててくれ。」

 

そう言って士郎はお茶を入れに行く。

 

「で、黄巾党の本拠地が分かったって?」

 

士郎はお茶を全員に配りながら質問する。

 

「ええ。冀州や徐州にいた黄巾党は敗走して濮陽に集結してるみたいね。

もっとも最初から本拠地だったみたいだけど。」

 

士郎の質問に詠が答える。

 

「大体人数はどれ位になるんだ?」

 

「・・・・30万くらいね・・・」

 

士郎は驚き、

 

「そんなにいるのか・・・」

 

「この国全体で乱が起きてたからね・・・・

それが一箇所に集まってるから。」

 

「これは他の官軍と連携しないと話にならないな。」

 

「ええ。」

 

援里が地図を広げる。

 

「冀州方面は・・・・今・・・平原に兵を集めているみたいです・・・・

揚州は・・・寿春を攻略中です・・・・」

 

援里が地図を指差しながら説明していく。

 

「官軍の・・・・本隊は・・・陳留に・・・移動中ですね・・・」

 

「ということは、まだ準備には時間がかかるのか。」

 

「はい・・・」

 

すると、水蓮が士郎の方を向く。

 

「その間に私達は許昌を攻略する予定よ。」

 

「許昌には約2万位の黄巾党がいるけど、

私達の方は今大体4万位の兵がいるから大丈夫でしょう。」

 

「それに、途中から恋さんの軍も合流しますから。」

 

水蓮と月がこちらの軍の状況を話す。

 

「今回は大分優勢に戦えそうだから良かったよ~」

 

聖が安心した顔を浮かべている。

 

「まぁ恋も合流すると武将も増えるからね。

余裕は出来てくると思うわ。」

 

詠の言葉に月も頷く。

 

「あとは作戦なんだけど・・・・」

 

そのまま詠と援里を中心に作戦等を打ち合わせ、軍議は終了した。

 

「じゃあ俺は霞達に話して来る。」

 

そう言って士郎が立ち上がる。

 

「まって士郎、私も行くわ。

軍の編成とか話しておきたいし、訓練もしておかないといけないし。」

 

「ボクも行くわよ。藍の様子が見たいし。」

 

水蓮と詠も立ち上がり、士郎と一緒に訓練場に移動する。

 

「やっぱり気になってるんだな・・・」

 

「きちんと罰になってるか見ておかないといけないからね。」

 

士郎に詠が答え、そのまま移動していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練場の入り口に着く。

 

「訓練が終わってるの?それらしき音がしないんだけど?」

 

水蓮が首をかしげている。

 

「そうかもね。霞が訓練してたらもっと騒がしいし。」

 

詠もそれに頷く。

 

「とりあえず入れば分かるだろ。」

 

そう言って士郎はドアを開け、中に入る。

 

そこには、体育座りで落ち込んでる藍と、必死にそれを慰めている玖遠と霞がいた。

 

「あっ!士郎さんっ!」

 

士郎を見つけた玖遠が近付いてくる。

 

「如何したんだ一体?」

 

「それはですねっ・・・」

 

玖遠が説明しようとすると、詠が少し怒り気味に話し出す。

 

「ちょっと、藍を解いたら罰にならないじゃない!」

 

「実はそれなんですっ、ずっと縛っていたんですけどっ!

途中で訓練の邪魔になるからって口も塞いでたんですよっ・・・」

 

そこまでは士郎も見ている。

士郎はそれに頷いて話を聞いていた。

 

「それで・・・ずーっと縛ってたまま、声も出せなかったですからっ。

漏r「わーーーーーーーっ!!言うなーーーーっ」

び、びっくりしましたっ!」

 

急に藍が叫ぶ。

が、既に遅く、全員が理解していた。

 

そのまま藍は、キッと霞を睨み、

 

「大体っ!霞が口を塞がせたからだっ!!」

 

「まぁ・・・・うん・・・そやな・・・・」

 

「哀れむなーーっ!!」

 

霞も多少の罪悪感があるようで、藍の方を見ようとしていない。

 

「なんか・・・・凄い事になってるわね・・・・」

 

そうとしか言いようが無い水蓮は、苦笑いを浮かべて立ち尽くしている。

 

「詠、罰はこれ位でいいんじゃないのか?」

 

「そ、そうね・・・」

 

詠もまさかの事態に苦笑いを浮かべており、士郎に賛成した。

 

「打ち合わせの話するの、遅れそうね・・・」

 

軽くため息を吐いた水蓮は、

何とか藍に機嫌を直して貰えるように、士郎達と一緒に宥めに行く。

 

その後何と藍の機嫌を直してもらい話をし、

その日は終わっていった・・・・


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