真・恋姫無双〜正義の味方〜   作:山隼

13 / 71
2-6 許昌での一日

「朝か・・・・」

 

基本的に士郎の朝は早い。

 

士郎たちが今居る許昌を攻略した後、

後から来た聖達に事情説明していたせいで、まともに睡眠時間が取れていないが、

相変わらず早起きだった。

 

そのまま着替え、顔を洗った後厨房に立つ。

 

「大分人数が増えたから量を作らないとな・・・」

 

新しく恋、音々音、弧白が増えた為、いつもより量が多い。

 

「・・・・・・」

 

黙々と料理を作っていると、誰かが横の食事場に入ってくる。

 

「おはよう・・・・あら、士郎はやいわね。」

 

「おはよう御座います~」

 

「水蓮に弧白か。お茶が入ってるけど・・・飲むか?」

 

「貰うわ。悔しいけれど士郎のお茶はおいしいからね・・・」

 

「そうなんですか・・・・では私も~」

 

二人も一緒に座って飲み始める。

 

「他の皆はまだ寝てるのか?」

 

「みたいね・・・・とりあえず聖は、見ため通り弱いわよ。」

 

「こっちは基本的に恋さんが遅いですね~」

 

「最近戦が続いてるから疲れてるんだろうな。

・・・・二人はなんか元気だけど。」

 

士郎が二人の方に目を向けて話す。

 

「そうね・・・まぁ海戦と比べたら楽な方よ。」

 

「恋さんと音々音さんに振り回されてますからね~」

 

「・・・・苦労してるんだな・・・」

 

そのまま士郎は料理を続けていく。

 

「ずっと気になってたんだけど・・・・・

士郎も大分変わった服装してるけど、弧白も変わった服着てるわね。」

 

「ああ。ここらでは見かけないな。」

 

ふと水蓮が玖白に話しかける。

 

「この服ですか。

ほら、私達って西涼の方が本拠地じゃないですか~

それでたま~に大秦・羅馬の方から商人が来るんですよ~」

 

「と言うことはそっちの方の服装なの?」

 

「はい。

意外と着心地いいんですよ~」

 

ひらひらとしているローブの裾を掴んで弧白が答える。

 

そのまま三人は他愛もない会話を続けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

「遅いわね・・・・」

 

水蓮の呟きに他の二人も頷く。

 

「朝食の準備も出来てしまったしな。」

 

「士郎さんのお茶、美味しいですから、

このままじゃお茶だけでお腹一杯になっちゃいますね~」

 

「仕方ないわね・・・ここは手分けして起しに行きましょうか。」

 

水連の提案に賛成する二人。

 

「じゃあ私は聖のとこに行くわ。」

 

「それなら私は恋さんと音々音さんから行きましょうか~」

 

「なら俺は玖遠と援里を見てくるか・・・

起したら他の奴の所に行ったらいいんだよな。」

 

「ええ。よろしくね。」

 

そのまま三人は立ち上がり部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

こんこん。

 

「玖遠、援里、朝だぞっ。」

 

二人がいる部屋の扉越しに、士郎が声をかけるが中からの反応はない。

 

「仕方ない・・・入るか。」

 

扉を開け中に入る。

カーテンを閉め切っており中は薄暗い。

壁際に大きなベットが置かれており、そこに二人が寝ていた。

 

「凄い寝相だな・・・・」

 

援里は大人しく寝ているが、玖遠は中々に酷い。

掛け布団が援里の方にすべて移動しており、服も捲れている。

 

「玖遠、起きろ。朝だ。」

 

玖遠を軽く揺する。

 

「・・・ん・・・・ふぇ?・・・・」

 

どうやら頭が回ってないらしい。

ぼーっとした目を士郎に向けている。

 

「ん・・・・ん?・・・・」

 

そのまま自分の服を見て、再度士郎の方を見る。

するとだんだん玖遠の顔が赤くなっていく。

 

「し・・士郎さんっ・・・

さ・・流石に横に援里ちゃんがいるのは恥ずかしいですようっ・・・」

 

そのままあたふたしだす。

 

「まぁ流石にそ体勢は恥ずかしいと思うけど・・・」

 

「そ・・それにまずはお互いの確認をとってから・・・・」

 

「・・・・なにがさ・・・・」

 

何か重大な勘違いが発生している。

流石に士郎も気がついた。

 

「え・・だって夜這いに来たんじゃ?」

 

「なんでさ・・・・」

 

そのまま士郎が崩れ落ちる。

 

「ん・・・あれ・・・・」

 

大分騒がしくなっているので、流石に援里も目が覚める。

 

「もう・・・・朝ですか・・・・・」

 

目を擦りながら援里が上半身を持ち上げる。

 

「え・・・・・朝?」

 

それを聞いてキョトンとしている玖遠。

 

「そうだよ・・・・ほら。」

 

そう言いながら士郎がカーテンを明ると、明るい光が差し込んできた。

 

「士郎さんっ・・・遅いですよっ・・・・」

 

「だから違うって・・・・」

 

なぜか士郎が攻められている。

 

「と・・・とりあえず、朝食出来てるから起きてくれ。」

 

士郎が立ち上がって出て行こうとすると、援里に服の裾を引っ張られる。

 

「ん、どうしたんだ?」

 

「・・・・しゃがんで・・・ください・・・・」

 

言われた通りに士郎がしゃがむと、援里が背中に乗ってくる。

 

「ん・・・いいです・・・・」

 

「・・・・・了解。」

 

そのまま援里を背負う。

 

「いいなあ・・・それ・・・」

 

玖遠が羨ましそうな目を向けているが、

 

「とりあえず服を直した方がいいと思うぞ。」

 

士郎に指摘され慌てて布団で体を隠していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

援里を送り、玖遠の分も一緒に新しくお茶を入れた後、

士郎は霞の部屋に向かっていた。

 

「おはよー士郎くんっ。」

 

「おはよう。起きたんだな聖。」

 

途中で聖と出会う。

 

「うん。水蓮ちゃんに起されたよ。

まだちょっと眠いけどね・・・」

 

寝起きの聖は欠伸をしながら答える。

 

「まだお茶が余ってたはずだから、飲んでくるといい。」

 

「うん、ありがと。

じゃあ待ってるね。」

 

そのまま聖と別れ霞の部屋の前に立つ。

 

「霞っ、朝だぞっ。」

 

士郎がノックしながら声を掛けるが反応がない。

 

「霞が寝坊するのも珍しいな・・・入るぞ。」

 

士郎が入ると、其処には・・・

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・なんで服着てないのさ・・・」

 

着替えの途中で下着姿の霞が立っていた・・・・・

 

「キャーーーーーッ」

 

「ご、ごめんっ!」

 

霞がわざとらしく叫び、士郎が慌てて出て行こうとすると、

 

「何があったの霞っ!」

 

ドアが開いて詠が入ってくる。

 

「「「・・・・・・・・・・」」」

 

一瞬三人の行動が止まり・・・

 

「し~ろ~う~っ!!」

 

「ちゃ、ちゃんと確認して入ったっ!」

 

「男にしてはまともな奴だと思ってたのにっ!」

 

詠に誤解され、責められる士郎。

士郎は詠の誤解を解くのに大分時間を費やした・・・・・・

 

 

 

 

「あはははははっ!ほんま面白いわー」

 

霞が二人に士郎を吃驚させる為にやったと、笑いながら説明する。

 

「士郎、霞は朝食抜きにしといていいわよ。」

 

「ええっ!それはアカン!

ごめんな士郎ー」

 

「まったく・・・心臓が止まるかと思ったよ・・・・」

 

「まぁまぁ。士郎もええもん見れたやろ♪」

 

「うっ・・・・・・」

 

思わず思い出しそうになる。

 

「し~ろ~う~っ」

 

「そ、そうだ朝食できてるから早く来てくれよ。

ついでに月さまを起しておいてくれっ!」

 

詠の生暖かい視線に耐えかねた士郎は、慌てて部屋を出て行く。

 

「全くっ、これだから男はっ!」

 

「まぁまぁええやん。別に減るもんちゃうし。」

 

「精神的に疲れるのよっ!

と言うか元々貴女のせいじゃないっ!」

 

二人は士郎が部屋を出た後も、元気?に言い合いを続けていた。

 

霞の部屋を出た士郎が藍の部屋に向かっていると、なにか音が聞こえてきた。

 

「これは・・・何か振り回してる音だな。

行ってみるか。」

 

中庭の方に行ってみると、其処には素振りをしている藍がいた。

 

「朝から頑張ってるんだな。」

 

「ん?・・士郎か。」

 

士郎が声を掛けると一旦手を休める。

 

「次の戦は大きくなりそうだからな。

気は抜いていられん。」

 

軽く汗を拭きながら答える。

 

「うん。調子は戻ったみたいだな。」

 

藍の動きが停止する。

 

「な・・なにがだ?」

 

士郎の問い掛けに口篭る。

 

「いや、許昌

ここ

を攻略するときは、

なんか元気が無かったって聞いてたからな。

けどもう元気そうだし、あの事件を引きずって無いように見えたからよ・・・・」

 

「よかった。」と士郎が言おうとすると、

急に近寄って来た藍に両肩を押さえられる。

 

「あ・・あの事件とは何のことだっ!

私は何もしらんぞっ!」

 

どうやら無かった事にするらしい。

 

「・・・すまん。俺の勘違いだ。

朝食出来てるから早く来いよ。」

 

「ああ、解った。」

 

おそらく全員呼んだので一度食事場に戻る。

すると・・・・

 

「あっ!士郎くんっ、水蓮ちゃんがまだ来てないんだけど・・・・・・・

どこかで見なかった?」

 

「他の人でも起こしに行ったのじゃないのか?」

 

「もう士郎くんと水蓮ちゃん以外全員そろってるよっ。」

 

士郎は少し考え、

 

「じゃあ俺が探してくるから、聖は朝食の準備でもしていてくれ。

暖めるだけで十分だと思うから。」

 

「うん。よろしくねっ。」

 

戻っていく聖を見届けた後、水蓮を探し始める士郎。

 

「どこに行ったんだろうな。・」

 

一度来た通路を戻っていく。

 

「そういえば、聖や月さまがいた方はまだ行って無かったな・・・」

 

士郎がそこに近付くと、何か怪しい音が聞こえてくる。

 

「?聖の部屋から聞こえてくるな・・・・・」

 

不審者かもしれないので、注意を払いながら、そっとドアを開ける。

 

 

 

 

そこには・・・・・・・・

 

 

 

 

「ふうっ・・・・・聖の匂いがする♪」

 

 

 

 

聖の布団に顔を埋めている水蓮だった・・・・・

 

「・・・・・・・・・・」

 

また思考が停止する士郎。

 

「♪~~~~~~~」

 

しかし等の本人は満足そうにしている。

 

そうこうしていると、士郎のおかしな気配を感じ取ったのか、振り向いてくる。

 

「ん?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

なんともいえない沈黙が場を支配する。

 

そして・・・・

 

「!いや・・・・・これは・・・・そのっ・・・・」

 

水蓮は急に顔を真っ赤にして慌てだす。

 

「・・・・まぁ・・・その・・・朝食出来てるからな・・・・・」

 

士郎はそう言い残してさっと部屋を出て行く。

 

「ちょ・・・待てぇっ!!」

 

慌てて士郎を追いかける水蓮。

 

「なんで追い駆けてくるのさっ!」

 

「逃~げ~る~な~っ!!」

 

「たまには平穏な朝を迎えさせてくれっ!!」

 

士郎はそう叫びながら逃げ続ける。

 

相変わらず女難の相が続く士郎だった・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼過ぎ、特にする事が無くなった士郎は城内を当ても無く歩いていた。

 

「手が空いたしな・・・何か差し入れでも作るか。」

 

陽も頂点を過ぎ、時刻で言えば大体三時位である。

 

兵の再編をしている水蓮や霞、弧白達に何か差し入れでも作ろうと思った士郎が

厨房に行くと、そこには先客がいた。

 

「あれっ、援里と詠に月さま?」

 

士郎の声に三人が振り向く。

 

「士郎さん?・・・・・どうしたんですか・・・・・」

 

「手が空いたからな。差し入れでも作ろうかと思って。」

 

援里の問いに答える士郎。

 

「皆はいったい何をしてるんだ?」

 

「士郎さんと一緒ですね。援里さんがお菓子作りが得意って聞いたので・・・・

教えてもらうついでに、差し入れでも作ろうってなったんです。」

 

「私は止めたんだけどね・・・太守がする事じゃないって。」

 

どうやら援里と月が乗り気で、詠が監視やくのようだ。

 

「あの・・・だったら・・・・士郎さんも・・・・一緒に作りますか・・・・?」

 

「そういえば朝食、とっても美味しかったですね~

料理得意なんですね。」

 

「こいつも入るのっ!?・・士郎・・・月に変なことしたら殺すからねっ!」

 

援里と月は友好的なのに、詠はなぜか敵意がむき出しである。

 

「するわけないだろ・・・」

 

「だって霞の着替え覗いてたじゃないっ!」

 

「「え・・・・・・」」

 

(まずい、二人が引いてる・・・・・)

 

慌てて士郎が弁解する。

 

「霞が説明しただろ。

わざとやって、俺の反応を見て楽しんでただけだって!」

 

それを聞いて月が「ああ・・・霞さんならやりそう・・・」と呟く。

 

「とにかくっ!変なことするんじゃないわよ!」

 

ドタバタしながら作業を開始する。

 

「なんか今日は朝から疲れるな・・・・

で、何を作る気なんだ?」

 

「月餅を作ろうと思ったんですけど、あれって太りやすいんですよね・・・・・」

 

「それで・・・・如何しようかと・・・・・」

 

援里と月が頭を悩ませている。

 

「西涼の方にしかないような物は無いのか?」

 

「う~ん・・・羅馬の方には違う物があるらしんだけど・・・・」

 

詠の発言を聞いて士郎が材料を見回す。

 

「うん・・・・この材料ならクッキーとマドレーヌあたりなら作れるな・・・・」

 

士郎がそう呟くと、

 

「それってどんな物なんですかっ?」

 

月が興味津々に聞いてくる。

 

「とりあえず作った方が早いな。」

 

そう言って四人は料理を始めた。

 

 

 

 

「中々美味しいわね。」

 

「はい・・・・」

 

四人は完成したものを試食している。

 

「月さま、どうぞ。」

 

士郎が空になっている月のコップにお茶を注ぐ。

 

「あっ、有難う御座います・・・・

なんか士郎さんに「月さま」って言われると落ち着きませんね・・・・」

 

月が士郎に礼を言いながら答える。

 

「そういえば士郎がさまって呼んでるの月だけよね。」

 

「聖からは呼び捨てで良いって言われてるしな。」

 

「あ、でしたら私も呼び捨ての方がいいです・・・・

あと敬語もです。なんか壁があるみたいで嫌ですから・・・」

 

「俺は構わないけど・・・いいのか?」

 

士郎は詠の方を見ながら問いかける。

 

「はぁ・・・私は反対だけど、月って結構頑固な所があるからね・・・・・」

 

「そうなのか・・・・・解った。じゃあ・・・そう呼ばせてもらうよ。月。」

 

「はい。」

 

そうして平和な一日は過ぎていく・・・・・


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。