真・恋姫無双〜正義の味方〜   作:山隼

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2-8 黄巾大乱(2)

「北の盧植、公孫瓚軍、

東の朱儁、袁術軍の攻撃を受けて、黄巾党が迎撃に出ましたっ!」

 

戦が始まって数刻、戦況が動き出す。

 

「よしっ!ここが攻め時だっ!

劉表、董卓軍っ行けえっ!」

 

その様子を見て何進が号令を下す。

 

『オオオオオオオオオオッ!!』

 

咆哮を上げ攻め込んでいく両軍。

 

その直ぐ後ろに袁紹、皇甫嵩軍が備えており、

何進の軍勢はその更に後ろに配置されていた。

 

「行く・・・・・・・」

 

先頭を走るのは恋、手にもつのは方点画戟

 

「・・・・・邪魔。」

 

横薙ぎに払われた一撃は、前方にいた黄巾の兵をまとめて薙ぐ。

 

「・・・ふっ!」

 

そのまま流れるように、その後ろにいた敵兵を袈裟に切り付け、

吹き飛ばされた兵が後ろの兵を巻き込み、恋の前に道が出来る。

 

「はぁーーーーっ」

 

「ふっ!!!」

 

その直ぐ横を、左右に分かれた藍と弧白が続き、

斧を振るい強引に道を広げていく。

 

まさにモーゼの如く、強引に道を開いていく。

 

「やっぱり鋒矢陣(このじん)

の先頭はあの三人やな。」

 

「力ありすぎですっ・・・」

 

それを後ろで見ていた霞と玖遠が呟く。

 

二人の部隊は鋒矢陣のい中央、恋達の後ろに控えていた。

 

「ぐうっっっ!!怯むなあっ!奴らを分断させろっ!」

 

それを見ていた黄巾党の大将が命令を下す。

 

鋒矢陣の弱点は横からの攻撃。

セオリー通りにそれを狙ってくる。

 

だが、

 

「霞、玖遠っ、敵が寄せてきてるわっ!任せたわよっ!」

 

鋒矢陣の最後方で、全体を把握していた水蓮はそれにいち早く気づき、

霞と玖遠に止めるように指示する。

 

「よっしゃっ、ウチらの出番やっ。

行くでっ、玖遠っ!」

 

「はいっ、了解ですっ!」

 

それを聞いた二人は一気に進んでいく。

先に着いた霞は、その勢いを殺さずに攻撃を開始する。

 

「ウチについて来てみいっ!」

 

閃光のような突きで敵兵を倒していく。

 

が、スピード重視の為、何人か生き残っているものがいた。

 

「囲めえっ!!」

 

その敵兵たちが叫び、霞を包囲しようとする。

 

がーーーーー

 

「やぁっ!」

 

玖遠が双刃槍を振り回して、それを阻止する。

 

槍を振るうたびに玖遠の左右に居る敵兵が倒れていく。

 

それを止めようと強引に切りかかって来る者もいたが、

玖遠は咄嗟に槍をばらし、短槍と短剣に変えて切り倒す。

 

霞が速さで圧倒し、その隙を玖遠が臨機応変に合わせていく。

 

全体の様子を水蓮が判断し、進軍する。

 

この勢いを止められる者はいなかった。

 

「これなら・・・何とか・・・なりそうです・・・・」

 

水蓮の傍にいた援里が呟くと、後ろから誰かが出てくる。

 

「そうだね。一気に終わらせちゃおう。」

 

「聖っ!?また前に出てきてっ・・・・・」

 

水蓮が聖を嗜めようとすると、

 

「うおおおおおおっ!!」

 

剣を振りかぶる敵兵が直ぐ傍まで近付いていた。

 

体は正に満身創痍。一兵だけなのを見ると、恐らく強引に突破してきたのだろう。

 

「っ!?敵かっ!」

 

それを見た水蓮が慌てて止めようとすると、援里が水蓮と敵兵の間に割り込んでくる。

 

「援里っ!?」

 

驚く水蓮をよそに、援里は敵兵の一撃を袖口から出した鉄扇で防ぐ。

 

「なっ!!」

 

そのまま体格差を生かして、敵の懐に滑り込むように移動し

折り畳んだ鉄扇で剣を持った右腕の脇下を突き上げる。

 

「がっ!!」

 

敵兵は苦悶の表情を浮かべた後、剣を落とし肩を抑えてうずくまる。

 

「い、急いでこいつを捕縛しろっ!

劉表さまの周りを固めるのも忘れるなっ!」

 

咄嗟に自軍に指示を出す水蓮。

 

その様子を聖はにこにこしながら見ていた。

 

「ねっ。大丈夫でしょっ。」

 

「・・・・・・・・」

 

ゴン!!

 

「痛いよ~~~~っ!!」

 

水蓮に頭を叩かれる聖。

 

「何かあってからじゃ遅いでしょっ!全く・・・・」

 

「私だってそこ等の兵士位は戦えるよ~っ・・・・」

 

聖が何か抗議をしているが其れを無視している水蓮。

 

「に、しても強かったのね。」

 

鉄扇を広げ、歪みをチェックしている援里に声を掛ける。

 

「・・・・そこそこは・・・・戦えます・・・・・」

 

その様子を見て苦笑を浮かべる水蓮。

 

「ふふっ。とりあえず聖は任せたわよ。私も出来るだけ近づけないように指揮するから。」

 

そう言って戦線の方に目を向ける。

 

「数に恐れるなっ!!質は此方の方が上!将軍らが居る限り敗北は無いっ、押し込めぇッ!」

 

号令によりいっそう奮起する自軍。

 

「士郎くん・・・大丈夫かなぁ・・・・・」

 

聖はそんな自軍の様子を見て、別行動をとっている士郎の事を心配していた・・・・

 

 

 

 

――――――戦前――――――

 

「聖、次の戦いは別行動をとりたいんだが・・・・・」

 

戦に向けて、聖が軍の報告書に目を向けていると、士郎に話しかけられる。

 

「え?・・・・っと・・・・・どうしたの?」

 

ぽかんとした表情を浮かべたまま聖は聞き返す。

 

「少し気になる事があってね・・・・張角達と私一人で会う必要があるんだ・・・・・

だから、頼むっ。」

 

そう言って士郎は頭を下げる。

 

「うん、分かったよっ。皆は私が説得しておくね。」

 

「いいのか?」

 

聖の反応に驚く士郎。

 

「うん。士郎くんが客将でいるのはこう言う事があるからでしょ。

軍の方も皆が居るから大丈夫だよ。

それに・・・・」

 

一旦言葉を置き、士郎の目を見つめる聖。

 

「それに・・・その目。

とっても強い目をしてる。きっと士郎くんにとって、大事な用があるんだよねっ。」

 

「・・・・・ああ。」

 

「うん。じゃあ大丈夫っ。

私達も頑張るから、士郎くんも頑張って!」

 

聖はにこにことしながら答える。

 

「ああ。ありがとう。」

 

 

 

 〜 聖 side 〜

 

聖は士郎を送り出した。

しかし、聖も送り出したとは言え、自分達と一緒に戦って欲しいという思いは勿論あった。

 

だが―――――

 

(何時までも士郎くんに甘えっぱなしじゃいけないよねっ!)

 

聖が前線に出てきたのも、その思いがあったからだった。

 

しかし士郎が行ったのは黄巾党の本陣。いかに士郎と言えどもただでは済まない。

 

(急がなきゃ・・・)

 

「皆頑張ってっ!!この戦いを終わらせる為にっ!!」

 

聖の鼓舞で士気が上がる。

まるで聖の気持ちに答えるかのように進軍速度は上がっていく。

 

士郎がいるであろう濮陽へ向かって聖達は進んで行った・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタガタガタガタガタ・・・・・

 

士郎は今、東門から潜入している。

 

ガタガタガタガタガタ・・・・・

 

「うわぁッ!なんだこの衝車はっ!!」

 

「止まれっ!止まれ・・・・・うわああああっ!!」

 

東門は今、混乱の極みに達していた。

 

城門をあっという間に打ち破った衝車が、何故かそのまま城内にも攻め入り、

敵兵を轢き、なぎ倒すと大暴れをしているせいだった。

 

「さあっ、ドンドンやっちゃって下さいね~」

 

衝車部隊の指揮をとっているのはショートヘアの女性。

海軍の服装みたいな服を着ている。

 

「たしかあの軍旗は袁術軍の筈だけど・・・誰なのさ、あれ・・・・」

 

士郎は立てられている軍旗を見ながら呟く。

 

「・・・・巻き込まれる前に行くか・・・・・」

 

士郎は張角達を探し、濮陽城の更に奥に進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

濮陽城北門はまだ破られていない。

 

東は既に破られており、南もつい先程、官軍が門を突破し進行してきた。

その為、濮陽から逃げようとする者は皆北門に集まっている。

 

西門もまだ破られていないが、出ても川しかない為、逃げるのには不向きだった。

 

その北門に張角姉妹の姿があった。

 

「どう言うつもりなのっ、趙弘っ」

 

姉妹の目の前には黄巾党の仲間だった趙弘と、若い男の姿があった。

 

「左慈さま、どうぞ。」

 

非難する地和の声を無視して、趙弘は本を左慈と呼んだ男に渡す。

 

「ふん・・・・・どうやら大分溜まったみたいだな・・・・・・」

 

左慈は本を見ながら呟く。

 

「その本・・・・どうする気なの?」

 

「貴様らが気にする必要は無い。」

 

人和の質問に答えない左慈。

 

「趙弘、後は好きにしろ。

俺の用は済んだ。」

 

「くくくくくっ・・・これでお前らは俺の物・・・・・」

 

そう言って近付いて来る趙弘。

 

「地和ちゃん、人和ちゃんっ!逃げようっ!」

 

急いで三人は逃げ、趙弘はそれを追う。

 

四人が去った直後に北門が破られ、盧植、公孫瓚の軍がなだれ込んで来る。

 

「他の軍も来たのか・・・・ここで何人か殺してもいいな。」

 

そう言って左慈は北門の方に進んでいった・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら此処までだなあ・・・・」

 

途中で天和が脚を挫き、趙弘に追いつかれてしまう。

 

「くっ・・・・・」

 

趙弘を睨みつける地和。

 

すると、誰かの声が聞こえてくる。

 

「張角さまーーっ!!」

 

その声を聞いた天和は直ぐに顔を上げ助けを呼ぶ。

 

「ここよーーっ!助けてーーっ!」

 

張角を探していたのは黄巾党副将馬元義と厳政。

 

「ご無事でしたかっ・・・・何をしているのだ趙弘っ!」

 

事態を把握し趙弘を問い詰める馬元義。

 

「なに。今からこいつ等を俺の物にする所だ。」

 

「何いっ・・・おのれ・・・裏切ったなっ!!」

 

其れを聞いた二人は激怒し、剣を振りかぶって襲い掛かる。

 

が――――――

 

「「なっ!」」

 

二人はすれ違いざま、一瞬で趙弘に切られる。

 

「強い・・・・・」

 

思わず呟く人和。

 

「くくくくくくっ。これが張曼成が得ていた力か・・・・・

これならば貴様らなど相手にならんわっ!」

 

そう言いすて、再度天和達に近付いて来る。

 

「さあ・・・今度こそ・・・・」

 

と近付いた瞬間―――――

 

ドゴオッ!!!!!

 

「なッ!これは・・・・剣?」

 

シンプルなデザインの剣が天和達との間に割り込んでくる。

 

「誰だぁッ!!」

 

趙弘が剣を飛んできた方向を見ると、一人の男が近付いて来ていた。

 

「オマエは・・・確か劉表軍の!」

 

「そこの三人に用があるんでな。退いてもらおう!」

 

近付いてきた男、士郎は干将・莫耶を構えながら言い放った。

 

「ふん、俺は張曼成の様にはいかぬわっ!」

 

そう言いながら士郎との距離を詰めて、斬りかかって来る。

 

「張曼成?・・・成る程。宛城で逃げた敵将はお前だったのか。」

 

その一撃を受けながら士郎は答える。

 

「あの時の俺とは違うッ!うおおおおおッ!」

 

再度、袈裟に斬りつけてくるが、

 

士郎は左の干将でそれを流し、右の莫耶で浅く斬りつける。

 

「ぐううううっっ・・・・」

 

苦悶の表情を浮かべて座り込む趙弘。

 

「膂力は中々だが技術が全くだな。」

 

そう言って剣を突きつける。

 

「さあ、貴様にの後ろに居る人物を答えてもらうッ!」

 

すると、突然趙弘の体が震えだす。

 

「?どうした・・・・・」

 

心配した士郎が声を掛けた瞬間、

 

「ぐふうッ!」

 

血を吐いて倒れる。

 

「なっ・・・・・」

 

士郎が呆気にとられていると、誰かが近付いてきた。

 

「多分左慈に口封じされたのよん。」

 

そう言いながら近付いてきたのはビキニパンツ一枚しか来ていない、

ムキムキマッチョの男だった。

 

「「「へ、変態っ!」」」

 

余りのインパクトに張角三姉妹が怯えてしまっている。

 

「だぁれが、ムキムキマッチョの変態ですってぇ!?」

 

言ってない。誰もそこまでは言ってない。

 

謎の変態の迫力に気絶する三姉妹。

きっとこれまでの疲労もあったのだろう。

 

に、しても、

 

(自覚あるのかよ・・・・・)

 

士郎はそう思いながら話しかける。

 

「え・・・っと・・・だれ?」

 

「うふ。わたしの名前は貂蝉よん。」

 

「俺は衛宮士郎。

それで・・・・貂蝉って・・・・あの・・・・?」

 

士郎が知っているのは、三国志でも絶世の美女と呼ばれている人物の事だ。

 

「なんでさ・・・・・」

 

落ち込んでる士郎を置いて貂蝉が話を続ける。

 

「貴方がお爺ちゃんが送ってくれた人かしらん♪」

 

「・・・宝石翁に送って貰ったのは俺だけど・・・・・」

(宝石翁の知り合いってこいつなのか?)

 

「新しいご主人様が、男前で良かったわん。」

 

クネクネしながら喜んでいる。

 

(こんなのと知り合いでいいのか、宝石翁?)

 

「なんでご主人様なのさ・・・・・」

 

士郎は気持ちを切り替えつつ、話を続ける。

 

「説明すればわかるわん。

宝石翁が平行世界を放浪しているのは知っているかしらん?」

 

「ああ。」

 

第二魔法「並行世界の運営」の事だろう。

宝石剣ゼルレッチを使って放浪しているらしいが・・・・

 

「その時、偶然この世界に来てしまったのよん。」

 

「この世界って・・・・平行世界じゃないのか?」

 

「似ているんだけどちょっと違うのねん。

この世界は外史といわれる世界なのん。」

 

「どう違うんだ?」

 

「外史は人々が「想像した世界」なのよん。

三国志の武将は女だったとか、曹操と夏侯惇は百合だったとかん。」

 

「な・・・・・」

 

そんな事で世界が増えるのかと絶句する士郎。

 

「で、その外史を滅ぼそうとしている者達が居るのよん。」

 

「数が増え過ぎるからか?」

 

士郎の言葉に頷く貂蝉。

 

「そうよん。このまま増え続けるのなら、

幾つか消してしまおうとしているの。」

 

貂蝉は一度言葉を切る。

 

「でもご主人様はこの世界で過ごしてみてどう思ったかしら?」

 

「・・・・・・・」

 

士郎が思い出したのは今までの事。

 

自分の民を守るために必死に頑張っていた聖や水蓮。

この戦乱を終わらせようと、まだ幼いのに戦っている玖遠や援里。

 

そして共に戦ってきた董卓軍の皆。

 

彼女達の思いがそんな理由で消してしまわれるのは、納得が出来なかった。

 

「多分ご主人様は私と同じ事を考えているわねん♪

其れを防ごうとしているのが私なのね。」

 

「今までも何回か阻止してきたんだけど、今回は大分力をつけてきてるみたいなの。

それで、知り合いになったお爺ちゃんに相談したって訳よん。」

 

「そうだったのか・・・・ってなんで俺がご主人様なのさっ!?」

 

危うく最初の疑問を無かった事にされそうだった士郎は、慌ててつっこんだ。

 

「以前来た人をそう呼んでたから、癖になってるのよん。」

 

「ああ・・・・そうなのか・・・・

って、俺のほかにも来た奴がいるのか!?」

 

士郎が気にしているのは、自身が元の世界で追われていたからだ。

もし別の方法で来られるのならば、士郎だけではなく、この世界自体が危なくなる。

 

「大丈夫よん。この世界に来るためには銅鏡が必要になってくるわ。

よっぽど特別な方法じゃ無ければそう簡単に来れないわん。

お爺ちゃんもこの世界に来るときは銅鏡を使ってるし、

その銅鏡もお爺ちゃんが管理しているからだいじょうぶよ♪。」

 

貂蝉の言葉にほっとする士郎。

 

「とりあえず事情は分かった。

で、これからどうすれば良いんだ?」

 

すると、貂蝉は少し困ったような顔をし、

 

「今さっき話した消そうとしているのは左慈と于吉って言う導師なんだけどん、

その左慈って言うのが太平要術の書を使って何かしようとしているみたいなのん。」

 

「やっぱり魔術書の類だったのか・・・・」

 

士郎は張曼成の言葉を思い出していた。

 

「今北門の方にいるみたいだからいきましょう♪」

 

貂蝉が行こうとすると、士郎が其れを止める。

 

「ちょっと待ってくれ、張角達をこのままにしておけない。」

 

士郎は気絶している三姉妹の方を見る。

 

「大丈夫よん。直ぐそこまでご主人様の軍が近付いてきているからん。」

 

貂蝉が言った瞬間、馬の蹄の音が近付いて来る。

 

「士郎くーーーーんっ!」

 

「聖っ!私が先行するから下がりなさいっ!」

 

「聖っ、水蓮っ!」

 

来たのは南門から進軍していた聖と水蓮。

 

「士郎くんっ!大丈夫だった!?」

 

心配しながら、まるで抱きつくように士郎の体をチェックし始める聖。

 

「ちょっ・・・近いっ・・・・」

 

「聖っ、はしたないからやめなさい・・・・ってきゃああああっ!!」

 

水蓮が貂蝉に気づいて驚く。

 

「ううっ、そんなに驚くなんて酷いわ酷いわ。」

 

またクネクネしている・・・・

 

「し、士郎いったい何なのこいつはっ!?」

 

水蓮が波及を貂蝉に向けながら質問してくる。

 

「あ、ああ・・・どうやら踊り子みたいで、この街の道案内をしてもらってたんだ・・・」

 

苦し紛れの嘘を言い放つ。

 

「こんな踊り子見たことないわよ・・・」

 

水蓮は呆れながら槍を下ろす。

 

「うん・・・怪我はないみたいだね・・・・・」

 

そうこうしている内に聖が士郎から離れる。

 

ちょっとほっとしていると、水蓮から睨まれたので気を引き締める。

 

「そ、そうだ聖。

俺は此れから用があるから、この娘達を預かっていて欲しいんだ」

 

士郎が張角達に目を向けながら話す。

 

すると、丁度張角達が目を覚ます。

 

「う・・・・・ん・・・」

 

「あれ・・ちぃ達は・・・?」

 

「ねえさん・・・大丈夫・・・・」

 

寝ぼけ眼を擦りながら、周りをキョロキョロしているが、

直ぐに自分達の状況に気付く。

 

「彼女たちは?」

 

「彼女たちが黄巾党首領の張角だよ。」

 

「「えええええっ!」」

 

聖と水蓮がかなり驚いている。まぁ無理も無いだろう。

 

「だったらここで保護してもいずれは殺されるわよ?」

 

「う~~~ん・・・・」

 

水蓮の言葉に否定できずに悩む聖。

 

すると――――――

 

「待ってくれっ!天和ちゃん達は悪く無いんだっ!」

 

「そうだ。俺達が勝手に暴走してただけなんだよっ!」

 

慌てて声を掛けてきたのは、倒れていた馬元義と厳政。

二人とも致命傷を受けており、死ぬ間際だと言うのに声を張り上げてきた。

 

「どう言う事なの?」

 

水蓮が二人に問いただす。

彼らが言うには、公演中に彼女たちが『このまま天下取っちゃう~?』と

言った事を真に受けて、それが何時しかこの様な騒ぎになったという。

 

「・・・・・・・・」

 

水蓮が余りの真実に口を開けている。

 

「恐らく今この国の皇帝にも不満があったんだろう。

遅かれ早かれ、其れが爆発していたさ。」

 

士郎がフォローを入れる。

 

「そ、そうなんだよっ!その責任を天和ちゃん達に押し付けるなんて

俺には出来ねぇッ!」

 

「それに言い訳になるけどっ、反乱起している時は何か変な感じだったんだよっ!

反乱を起すのが正しいって言う考えが、頭ん中一杯でさ・・・・」

 

「貂蝉、それってもしかして・・・・」

 

「ええ、多分太平要術の書の影響ねん。」

 

士郎は周りに聞こえないように貂蝉と話す。

 

「太平要術の書は持ち主の願いを叶える力があるのよん。」

 

「それってまるで・・・・」

 

聖杯じゃないか――――――

 

士郎がそう考えていると、水蓮が話し出す。

 

「とは言っても、黄巾党の首領の首を取らないと、この戦いは終わらないのよ・・・・」

 

「だったら、俺達の首を使ってくれっ!」

 

馬元義の発言に厳政も頷く。

 

「なっ!!」

 

水蓮が驚いているが、構わず話し続ける。

 

「俺達はこの傷じゃもう助からねぇ・・・・

俺達とそこの趙弘を合わせたら丁度三人だ。」

 

「だけどっ・・・・・」

 

「いざって言う時は、俺達が身代わりになるつもりだったのさ・・・・・」

 

「っ・・・・・・」

 

水蓮は言葉を失う。

 

「分かったよ。」

 

そこで話し出したのは聖だった。

 

「いいの聖?」

 

「うん。理由があっても、この罪は償わないといけないと思う。

だからってすぐ殺してしまうのも違うと思う・・・・一度彼女たちと話て決めたいの。

もし、この彼女達が罪を償いたいのか、逃げたいだけなのかを・・・・」

 

聖は強い目を天和たちに向けながら話す。

 

「分かったわ。とりあえずこの場は、貴方達の首で決着をつけるわ。

いいわね。」

 

水蓮の発言に頷く馬元義と厳政。

 

「あっ・・・士郎くんも用事がああるんだよねっ。

・・・・ちゃんと無事に帰って来てね・・・・」

 

「ああ。行こう貂蝉。」

 

「了解よん。ご主人様♪」

 

そうして走り去っていく二人。

 

「「・・・・ご主人さま???」」

 

新たな問題を残しつつ、乱は終結を迎えていく・・・・・




貂蝉と宝石翁の関係は大分フランクな感じです。

そもそもあの爺さん自体が大分フランクな性格ですし……

『宝石翁があんな変態と同等に話しているのは納得出来ん!!』
って言う人もいるかもしれませんが、許してください……

太平要術の書に関しては、私の自己解釈です。

アニメは見ていないんですが、wikiで設定を見ていると、
どうしても聖杯と似たような物としか思えなかったですから……
(聖杯ほど力は無いです。あくまで方向性が同じだけ)

批判等があるかもしれませんが、
とりあえずはこの設定で進んで行きたいと思いますので、
ご了承の程、よろしくお願いします。

また、おかしい文法等がありましたら教えてもらうと有難いです。

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