真・恋姫無双〜正義の味方〜   作:山隼

20 / 71
3-4 神弓の射手

「士郎ー次はあっちの店見てみよー」

 

士郎は天和に引っ張られ楽器店に連れられて行く。

 

「あっ!?まってよお姉ちゃん。」

 

「姉さん。慌てるとまた転ぶわよ。」

 

その二人に地和と人和も一緒に店の中に入っていった。

 

「なんでこうなってるのさ・・・・・」

 

事の発端は前日の話である・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと・・・・欲しいものがあるんだけど・・・・いいかな?」

 

会議が終わり、皆が解散していると、天和が聖に話しかける。

 

「?何かな。そんなに高いものじゃ無ければ良いよう。」

 

「うん。実は楽器が欲しいんだ~」

 

「ちぃ達、こっちに来るとき楽器を置いてきちゃったからね。」

 

「新しい楽器に慣れるのにも時間が掛かりますから、

出来れば早く欲しいんです。」

 

地和と人和もそれに続く。

 

「そうなんだ・・・

うん。それだったら全然大丈夫だよ。

街なら幾つかお店もあったはずだよ~」

 

そう言いながらいそいそと準備をし始める聖。

 

「・・・・・何をしてるの聖。」

 

その時、聖の後ろから誰かが話しかけてくる。

 

「うん~~~?

天和ちゃんたちが街に買い物しに行くから、

私も一緒に行こうかなって~」

 

後ろを振り向かず、準備をしながら答える。

 

「あら?仕事があったんじゃないのかしら?」

 

「えへへ・・・・

そうなんだよう。だから水蓮ちゃんに見つかる前にいかなきゃ・・・・」

 

「そう・・・・それは大変ねぇ・・・・」

 

その言葉を聞いた瞬間、聖の動きがピタッと止まる。

 

「・・・・・・・・え~~~っと・・・」

 

恐る恐る聖が振り向くと、其処にはとても清々しい笑みを浮かべた水蓮が立っていた。

・・・・・額に青筋を浮かべて・・・・・・

 

「残念♪捕まっちゃったわね♪」

 

そのまま水蓮は聖の肩に手を置き、肩に担ぎ上げる。

 

「きゃあッ!す、水蓮ちゃんっ、服が捲れてるよう~~」

 

強引に担がれたため、あられもない姿になっている聖。

 

「駄目ですっ。こうしないと逃げるでしょうが!」

 

「士郎くんに見られる~~~」

 

「ちょっ、そんなつもりは・・・・」

 

慌てて士郎が下に目を逸らすと、其処には何時の間にか蓬梅が立っていた。

 

「・・・・・・見るなです。」

 

思いっきり脛を蹴られる士郎。

 

「っ!た~~~っっっ・・・

なんで其処ばっかりなのさ・・・・」

 

士郎は、以前も同じ所を蹴られたことを思い出しながら抗議する。

 

「ここが一番蹴りやすいです。」

 

「・・・・そう言えば鈴梅も向朗の脛蹴ってたな・・・」

 

そうこうしている内に聖は連れて行かれた・・・・

 

「あ〜ん、士郎さ〜ん・・・・」

 

「・・・・・なんか凄いデジャヴが・・・・」

 

その光景を見て思わず呟く士郎。

 

「え~と、誰が道案内するのさ?」

 

聖が連れ去られた為、士郎がポツリと呟くと、

 

「士郎!アンタが行きなさいっ。」

 

蓬梅と一緒に来ていた鈴梅が士郎に命令してくる。

 

「俺?別に大丈夫だけど・・・・・他の皆は?」

 

「私たちは政務!援里と玖遠は戦略や軍の編成の勉強中よ!

ほら、分かったらさっさと行く!」

 

そう言って半ば強引に行かされたのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉さんこれは如何かな?」

 

「う~~~ん・・ちょっと重いかな・・・・・

こっちの方が軽いけど見た目が・・・・・」

 

「ちぃはこれにするー。」

 

「・・・・・高いからダメ。戻して来て。」

 

「えーーーっ、気に入ったのにーー」

 

店内に入ってもキャイキャイと賑やかな三姉妹。

 

店員も三姉妹の可愛さと雰囲気に圧倒され、近付いて来ない。

 

「三人寄れば姦しいって正にこのことだな・・・・」

 

士郎はその様子を見てしみじみと呟く。

 

「しろーこれ買ってーーー」

 

人和から許可が出ないので士郎に集って来た地和。

 

購入資金は人和が預かっている為である。

 

「と、やっぱりそう来るよな・・・・」

 

「ねえねえっ、お願いっ。

ちぃはこれが欲しいのっ!」

 

地和は手に持っている二胡を士郎に見せながら、お願いしてくる。

 

「ほら、人和。」

 

士郎はそんな地和を見て、人和に幾らかのお金を渡す。

 

「いいの?」

 

士郎からお金を渡されて驚く人和。

 

「ああ。俺が持っていてもあんまり使わないしな。」

 

客将として幾らかの報酬は貰っているが、

士郎自身あんまりお金を使わないので、幾らかは余っていたのである。

 

「それにキミたちも、演奏するな気に入った道具を使いたいだろ。

これから頑張ってもらわないといけないしな。」

 

「・・・ありがとう・・・」

 

そんな士郎に人和が礼を言っていると、

 

「ありがとーーっ、士郎。」

 

「ありがとー。やっぱりしろーね!」

 

横合いから天和と地和が士郎に抱きついてくる。

 

「うわあっ!?」

 

慌ててバランスを崩す士郎。

 

「もうっ、姉さん達!何やってるの。」

 

「あははははっ。ごめんね士郎。」

 

「感謝の気持ちを表しただけよっ。

お姉ちゃん、奥の方見てみようよっ。」

 

そう言って士郎から離れた二人は、

より良いものが置いてある、店の奥に移動して行く。

 

・・・・・店長が青い顔をしているが気のせいだろう。

 

そんな店長を尻目にドタバタと走って行く二人だった・・・・

 

 

 

 

 〜 人和 side 〜

 

「もう・・・姉さん達は・・・・・」

 

人和はそんな姉たちを見て、思わずため息をつく。

 

そんな様子を見た士郎が声を掛けてきた。

 

「あれだけ元気があるんなら大丈夫さ。」

 

「・・・そうね・・・」

 

そんな士郎の言葉に少し弱々しく答える人和。

 

(ほんとに良いのかしら・・・・

私、こんな事してて・・・・・)

 

人和は士郎に向かって、少し弱々しく答える

 

「ああ。これから皆を元気にしていくんだろ?

だったら、君たち自身が元気で居なくちゃな。」

 

「え・・・・・」

 

人和は士郎の言葉に呆気に取られる。

 

「だってそうだろ。

君たちはこれから民に、元気づけるために歌うんだから。」

 

(そうね・・・確かに私たちが落ち込んでいたんじゃ、

気持ちなんか絶対に伝わらない・・・・)

 

「は・い・・・ですよね。」

 

士郎の言葉に少し元気が出たのか、さっきよりかは少し力強く答える。

 

(そうね、先ずは一生懸命歌おう。

悩むのは其れが終わってからでも遅くは無い)

 

 〜 人和 side out 〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても人が増えたな・・・・」

 

士郎は三姉妹に買い物にまだまだ時間が掛かりそうだったので、

警邏するついでに街を散策していた。

 

元々人口が多かった襄陽は、中原からの移住者も増えた為、

新野ほどではないが人口が密集していた。

 

「これは・・・・危険だな・・・・」

 

人が密集すると、スリや誘拐などの犯罪も増えてくる。

 

士郎がそんな事えお考えながら、注意深く周りを見回しながら歩いていると、

道の端に座り込んでいる一人の女の子がいた・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――襄陽城 休憩室――――――

 

政務が一段落着いたので、聖、水蓮、蓬梅、鈴梅の四人が休憩をとっていた。

 

「疲れたよう~~~」

 

聖が机の上に頭を乗せてだらけている。

 

「ほら。お茶飲んで元気出しなさい。」

 

水蓮が運んできたお茶を飲みながら、徐々に復活して行く。

 

「聖さま~

今日、来客が来るので時間を空けておいて貰えますか?」

 

「来客?」

 

鈴梅に聞き返す聖。

 

「はい。前に武官に心当たりがいるって言ったじゃないですか。

今日その人が来るんですよ。」

 

「そういえば言ってたわね・・・・

どんな人なの?」

 

「長沙の人よ。

ほら、聖さまたちが黄巾党討伐に行ってる時に、

反乱があったって言ったじゃない。」

 

黄巾の乱は主に中原や冀州、豫州あたりを中心に起きており、

あまり影響が無かった南荊州や涼州、益州では中央の目が薄くなった隙をついて、

反乱が起きていた。

 

元々漢室に対する不満もあったのだろう。

 

涼州では韓遂が反乱を起こしたが、董卓に制圧され、

益州では漢室の血縁である劉焉が独立を果たしている。

 

そして、南荊州の長沙でも丁度それまで太守を努めていた人が亡くなった為に、

盗賊の区星が反乱を起こし、

零陵や桂陽でも周朝、郭石が暴れだしていたのだった。

 

「それで急いで劉磐に兵を預けて向かわせたんだけど・・・・」

 

劉磐は聖の親戚の武官であり、

孫策も劉磐に対して太史慈を当たらせる程の武将である。

 

「亡くなった長沙太守の奥さんが鎮圧したです。」

 

「ほう。」

 

水蓮が思わず歓心する。

 

「劉磐さんが着く前に、軍を率いて区星、周朝、郭石全員倒しちゃったです。

それで、一度会って話してみようと思って呼んでるです。

うまく行けば武官が一人増えるです。」

 

「凄い人なんだね・・・・・

で、いつ頃くるのかな?」

 

聖に聞かれ困った顔を浮かべる二人。

 

「もうそろそろ着く筈なんですけど・・・・」

 

「まぁ気長に待つです。」

 

「そっか・・・・早く会ってみたいな。

ね、水蓮ちゃん。」

 

「そうね。同じ武官としては話して見たいわね。」

 

一人の武人として、是非会ってみたいと思う水蓮だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、璃々のお母さんの名前はなんて言うんだ?」

 

士郎は迷子になっていた女の子を見つけたので、その子の母親を探していた。

 

なんでもこの街に入った時、余りの人の多さに母親の手を話してしまい、

人の波に流されたらしい。

慌てて追い駆けたが、見当違いの方に走ったらしく、

途方に暮れて座り込んでいたようだ。

 

「お母さんは紫苑って言うの。長沙から来たんだよーーー。」

 

(紫苑・・・・真名の可能性もあるから迂闊に呼べないな)

 

「長沙っていうと南荊州か。

お母さんの特徴とか分かるかな?」

 

すると璃々は一瞬考えて、

 

「長い髪の毛してるーー」

 

「うーーん・・・・長い髪の毛の女性は沢山いるからなぁ・・・・・」

 

(俺がいた時代と違って警察署とかが無いから、

迷子の子や落し物を預かっておく場所もないんだよな

・・・・・兵士を街中に何人か駐屯させて、そういう場所を作ったほうが良さそうだ)

 

いろいろ改善点を見つける士郎。

 

「・・・・そうだ。これならお母さんを捜し易いだろ。」

 

そう言って士郎は璃々を持ち上げ、肩車してあげる。

 

「ふわっ!?・・・・あははははっ面白いーっ。

遠くまで良く見えるよーー」

 

どうやら好評のようだ。

士郎の上で楽しそうにはしゃいでいる。

 

「よしっ。頑張って璃々のお母さんを探すか。」

 

「うんっ。がんばろーーー」

 

そう言って士郎は人通りが多そうな所に向かって移動して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士郎たちが人通りの多い交差点に出たとき、

士郎の上に居る璃々が遠くを指差す。

 

「あーーーっ!?お母さーーーーーんっっ。」

 

すると、遠くでキョロキョロしていた女性が此方に気付き、近寄ってくる。

 

「璃々っ!?大丈夫、怪我とかはしてないのね?」

 

「うんっ。お兄ちゃんと一緒にいたから、だいじょうぶだよーーー」

 

士郎から降りた璃々を抱きしめる女性。

 

「良かった・・・・

あっ、申し遅れました。私は黄漢升と言います。

璃々がお世話になったようで・・・・本当に有難う御座いました。」

 

ぺこりと頭を下げながら士郎に挨拶してくる黄忠。

 

(黄漢升って言うと・・・あの黄忠か。

・・・やっぱり女性なんだな・・・・)

 

「いえ。困ったときはお互い様ですから。

俺は衛宮 士郎と言って、劉表さまの所で客将をしています。」

 

下手に怪しまれないように自分の素性を話す士郎。

 

「あら・・・・そうなんですか・・・・・

実は私、劉表さまにに呼ばれて此処に来たんです。」

 

「そうだったんですか・・・・

だったら案内しましょうか?もうそろそろ戻る頃なんで。」

 

「そうですね・・・初めて来た所で、道に迷ってしまっていたので・・・

お言葉に甘えさせて貰いますわ。」

 

すると、璃々が士郎に近寄ってくる。

 

「お兄ちゃんも一緒に行くの?」

 

「ああ。」

 

士郎が頷くと、璃々は満面の笑みを浮かべ、

 

「お兄ちゃん、さっきのやってーーー」

 

士郎に肩車をお願いしてくる。

 

「こら璃々、士郎さまが困るでしょう。」

 

黄忠が慌てて注意するが、

 

「よしっ・・・・ほらっ!」

 

「たかーーいーーー」

 

「・・・・もう。」

 

仕方無いわねといった感じの黄忠。

 

「ちょっと行く所があるんで、このまま行っても大丈夫ですか?」

 

「はい。」

 

士郎は一旦天和たちと合流する為に、最初に行った店に戻る。

 

「あれ~~~

士郎結婚したの?」

 

士郎たちを見た天和に第一印象はそれである。

 

「なんでさ・・・・・

劉表さまに呼ばれたらしいから、道案内してるんだよ。」

 

「でも、傍から見ると凄いお似合いね・・・・・」

 

「背も高いし、顔も悪くないし。ぴったりね。」

 

そんな様子をみて地和と人和がヒソヒソと話している。

 

「まったく・・・・・

買い物は終わったんだろ?ほら、行くぞ。」

 

そう言って進んで行く士郎。

 

「ふふふ。そうですね、行きましょうか。」

 

何か不思議な笑みを浮かべた黄忠と一緒に、

城内に向かって移動していった。




紫苑さんが登場。

士郎に対しての誘惑要員としても活躍して貰います。

ちなみに焔耶は益州にいます。
紫苑と一緒に仲間にしても良かったんですが、
桔梗や桃香との関係を考慮しました。

三国志演技じゃ思春も最初から仲間にいますけど、
さすがにそれは恋姫と大分ずれてしまうので、無しにしてます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。