真・恋姫無双〜正義の味方〜   作:山隼

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4-2 継ぎ接ぎだらけの一枚岩

連合軍の会議室に各諸侯が集まって、これからの事の話し合いを始められていた。

 

劉表軍からは聖と水蓮が其処に参加しており、

他のメンバーは天幕の直ぐ外に待機している。

 

「さて、皆さん集まりましたわね。

始めて顔を会わせる人もいますし、まずは私から自己紹介から始めますわ。」

 

場を取り仕切っている麗羽から自己紹介を始める。

 

「私が!名門袁家の袁本初ですわっ。」

 

自信満々に言い切る麗羽。

 

「はぁ・・・・こいつはいつもこんな感じだから

ほっとくわよ。」

 

そんな麗羽の様子を見て言い放つ曹操。

とりあえず無視して話が進んで行く。

 

「私が陳留太守の曹孟徳よ。」

 

次は麗羽を挟んで曹操の反対に座っている、

軽鎧を着た女性だ。

 

「私は公孫瓚 伯珪だ。よろしくなっ。

それと・・・」

 

「劉玄徳です。よろしくね~~」

 

公孫瓚やその付き添いの桃香は士郎との面識はあるが、

聖と会ったのは始めてである。

 

聖にとっては幽州太守の公孫瓚より、

同じ劉性の桃香の方が気になっていた。

 

「やっぱり私の遠縁になるのかなぁ・・・・」

 

「自称してる人も多いし・・・・

判断しづらいわね。」

 

聖の呟きに答える水蓮。

 

そうしていると次の人に移って行く。

 

「西涼の馬騰の娘馬超だ。

母さんが体調を崩してるから、代理として来てるんだ。」

 

「へぇ・・・・貴女があの錦馬超ね。」

 

「そ、そんな錦馬超なんて凄くは・・・・」

 

曹操に言われた瞬間、照れ始める馬超。

 

「華琳さんっ!誘惑するのは終わってからにしてくださいます!?」

 

「あら。妬いてるの麗羽?」

 

「な、なにを仰ってるのかしらっ!?

この小娘っ・・・・・」

 

「あーーもうっ、会議が進まないだろっ!?

二人ともそこまでにしとけってーー」

 

二人の言い合いを見かねた公孫瓚が止めに入る。

 

「仕方ありませんわね・・・・

では次の人お願いしますわ。」

 

次の人は赤を基調とした服を着た女性二人だ。

前に座っている方は獰猛な目付きをしており、

後ろに立っている方は静かに目を閉じている。

 

「袁術の代わりで来た孫策よ。」

 

「その軍師の周瑜だ。」

 

孫策と周瑜が静かに挨拶する。

 

「美羽さんはどうしたんですの?」

 

「長旅で疲れたからめんどくさいと仰っていました。」

 

麗羽の質問に答える周瑜。

 

「まぁいいですわ。

あの小娘では袁家の名は重すぎますわ。」

 

そんな様子を見ながら、聖と水連が周りに聞こえないように話し出す。

 

「あの人が孫堅さんの娘・・・・・・」

 

「彼女からすれば私たちは親の仇になるから、

気をつけなきゃいけないわね・・・・・」

 

そうしているうちに他の諸侯も挨拶が終わり、

最後に聖たちの番が回ってくる。

 

「荊州牧の劉景升です。よろしくおねがいします~~」

 

「水軍都督の蔡徳珪です。」

 

聖が挨拶した瞬間、周りの諸侯の目が一斉に向けられる。

 

黄巾の際、月たちと一緒に行動していたのを各諸侯は知っており、

聖は「自分たちからは戦を仕掛けない」と言うのを言っているため、

疑惑の目が向けられているのだ。

 

「皆さん、聖さんは私の古い友人ですわ。

この度は私に協力して下さったから、ここに居るのですわっ。」

 

直ぐに麗羽からのフォローが入り、騒ぎにはなら無いですんだが、

まだ信用はされて無いようだ。

 

特に、孫策からの視線は凄まじい。

聖のことを目に焼き付けるように、

鋭い目でジロリと見てくる。

 

緊迫する空気の中、聖は真っ直ぐ前を見つめる。

 

そんな聖から孫策が目を離した所で、軍議が再開された。

 

「・・・・・これで自己紹介が終わりましたわね。

作戦を決める前に決めておく事があります。」

 

「なによ一体?」

 

曹操が頭に?マークを浮かべて質問する。

 

「それは・・・・この連合軍を率いる総大将を決める事ですわっ!!」

 

『・・・・・・はぁ?』

 

聖たちを除いた他のメンバーが皆、呆気に取られる。

 

「今、私達連合軍と董卓さんとではほぼ同じくらいの勢力ですわっ。

ならば後はい・か・に優秀な人がいるかで決まりますわっ!」

 

謎理論が発動する。

勿論他の諸侯は置いてけぼりである。

 

付き合いが長い聖も苦笑いを浮かべており、

曹操は「また始まった・・・」というような顔をしている。

 

「やっぱりそれなりの立場の人じゃ無ければいけませんわねっ」

 

長くなりそうな気がしてくる・・・・

 

「もう自分がしたいって言えよ・・・」と言う風な空気になるが、

麗羽がそんな空気を読めるはずも無い。

 

「・・・・・あれ?袁紹さんが総大将じゃないんですか?」

 

そんな空気の中、桃香が発言する。

 

「あら?やはりそう見えてしまいます?」

 

白々しく言い放つ。

 

「もう決まってると思ってたんですよ・・・・・

それだったら袁紹さんで良いんじゃないんですか?」

 

「そうですわね。

他の人はそれでいいですの?」

 

「別に良いわよ。」

 

「と、言うより代理で来てるから、決まった事連絡するだけだから別に良いけど・・・」

 

「異論は無いわ。」

 

というよりこの面子で「総大将やりたい!」

なんていうのは麗羽くらいである。

 

「決まりですわね♪

ではこの名門袁本初が連合軍の総大将を努めますわ。」

 

陣内に麗羽の高笑いが響き渡る。

 

『はぁ・・・・・』

 

他のメンバーがため息をついた所で、

次の話に移っていった・・・・・・・

 

 

 

「では、私たちはまず汜水関の攻略に取り掛かりますわ。」

 

洛陽に至る途中にある汜水関、虎牢関の二つの関。

この関を越えたら洛陽は制圧したも同然になる。

 

まずは汜水関の攻略の話からである。

 

「まず先陣ですが・・・・劉備さん。お願いしますわ。」

 

「・・・・・・えええええええっっっっっ!?」

 

麗羽の発言に驚く桃香。

 

「だ、だって私たちが連れてる兵が一番少ないんですよっ!?」

 

「ですが、私を責任重大な総大将に推薦したのは貴女じゃないですの?

だったら一緒に責任を負って欲しいですわ。」

 

無茶苦茶である。

 

だが、他の諸侯は口出しが出来ない、と言うよりはしない。

 

敵軍の情報を入手する為、誰かがを捨て石にするのは非常に効果的であるからだ。

それが連合軍の中で最も弱い勢力なら損害も最小限ですむ。

そう言う思惑があるから無言の肯定を示しているのだった・・・・

 

「ううっ・・・・」

 

言葉に詰まる桃香。

 

「心配なさらなくても、直ぐ後ろには私たちが控えていますわ。」

 

問題点は其処では無いのだが、

話が進み、決定して行く。

 

「じゃあお願いしますわ・・・・・・「ちょっといいかな?」

・・・・どうしたんですの聖さん?」

 

麗羽がそう言った瞬間、

聖が間に入る。

 

「やっぱり劉備さんの所だけじゃ数が少ないでしょ?

だから、私たちの軍も前線に加えて欲しいんだ。」

 

「私としては嬉しいですけど・・・他の人はそれでいいですの?」

 

他の諸侯にとっても、聖が戦う事で本当に仲間になるのかを見極める事が出来る為、

特に反対する人はいなかった。

 

「それでは劉備さん聖さん。

前線の方よろしくお願いしますわね♪」

 

そうして軍議は終わり、

各諸侯は各々の陣営に戻っていった・・・・・

 

 

 

 

軍議が終わり聖と水蓮は外に出て、士郎たちと合流しようと探していると、

背後から声をかけられる。

 

「貴女が劉表ね。」

 

「っ・・・孫策さん・・・・」

 

聖と水蓮が振り向くと、其処にいたのは先程視線を向けてきていた孫策と周瑜、

そして妙齢の女性の三人が立っていた。

 

「お母様の件では大変お世話になったわね。」

 

「仇討ちでもしにきたのかしら。」

 

水蓮が聖の前に出て牽制する。

 

「ここで騒ぎなんか起せるわけないでしょ。

・・・・やっぱり直に話しておかないと・・・って思ったのよ。」

 

スッ・・・と目を細めながら続ける孫策。

 

「どうしてこの連合に参加したのかしら?

貴女は確か他の国には攻め込まないんじゃないかしら。」

 

「・・・・・・・」

 

聖は答えられない。

 

聖が参加する大きな理由は、月の安否確認である。

 

ここでそれを話してしてまい、広まってしまうと、

連合内に不安が広がり、

最悪、他の全諸侯から攻撃される可能性があるからだ。

 

「今はまだ袁術の客将だけど、

独立した時には必ず・・・・・」

 

「なにをしているの。アンタは。」

 

不意に声を掛けられ、孫策が振り向くと、

其処には聖を探していた士郎たちがいた。

 

「・・・誰かしら?

貴女のような子供に知り合いは居ないんだけど。」

 

何か嫌な予感を感じた孫策は、声を掛けてきた鈴梅に向かって警戒気味に質問する。

 

「成人してるわよっっ!!」

 

子供扱いされ怒る鈴梅。

そんな様子を見て、横にいた蓬梅が話しだす。

 

「・・・・・貴女の本当の仇でしたら、私になりますです。」

 

「どういう・・・意味かしら・・・・・」

 

ゾクリと殺気が広がるが、

それを物ともせずに話し続ける蓬梅。

 

「私が考えた策に、まんまと嵌っただけです。」

 

「成る程・・・・・だったら貴女が蒯良ね。

その顔、覚えておくわ・・・・・」

 

ギロリと、憎しみが篭った目で見つめると、

 

「いい加減にしなさい!

アンタ、どの立場で話しかけてんのっ!」

 

「なによ・・・・・」

 

鈴梅に怒鳴られ、不機嫌そうな目を向ける孫策。

 

「アンタ何様なの?

たかだか袁術の客将の分際で、劉表さまや姉さまと対等に話せるつもりなの?

袁術の狗はとっとと下がりなさいっ!!」

 

「つ・・・・・・・言って・・・くれるじゃない・・・・・」

 

「やめなさいっ!雪蓮っ!」

 

孫策が思わず剣を抜きそうになるが、それを周瑜が止める。

 

「これは失礼しました。

私たちは主に呼ばれているので、これで失礼します。」

 

周瑜が強引に場を閉め、聖たちに背中を向けて去って行く。

 

「必ず・・・この借りは返すわっ!」

 

最後に孫策の叫びを残して・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 〜 孫策 side 〜

 

「冥琳、どうして止めたのよっ!」

 

周瑜に攻め寄る孫策。

まだ怒りが収まってないのだろう。

 

「あそこで騒ぎを起せば、確実に袁術に責められるわ。

・・・・そうなったら最悪、独立出来なくなるかもしれない。」

 

苦々しい顔を浮かべて答える周瑜。

彼女とて、親友の孫策があれだけ言われて気分がいい筈が無い。

 

「それにあの場で戦りあっても、

儂では後ろにいた弓使いを抑えるので精一杯じゃ。」

 

「あの長い髪の女性?」

 

黄蓋が言っているのは聖達と後から合流した紫苑のことである。

武器は持っていなかったが、同じ弓使いとして感じるものがあったのだろう。

 

「私と雪蓮だけじゃ、残りの五人相手にするのは時間が掛かりすぎるわ。」

 

あの場に居合わせたのは聖たちの方は聖、水蓮、蓬梅、鈴梅、紫苑に士郎。

黄蓋が紫苑の相手をすると残りは5対2になってしまう。

 

「・・・・・一人いた男、アイツは厄介な感じがしたわ。」

 

「・・・勘か?」

 

「ええ。でも、だからこそ戦って見たいのもあるけど・・・・」

 

自身の勘に絶対の信頼を持っている孫策。

その勘が危ないと告げているからこそ、あえて戦ってみたいと思うのは

武人としての性であるかもしれない。

 

「まぁいいわ。今回は我慢する。」

 

「ああ。いずれ私たちが独立した時に思う存分に戦うといい。

私はその為なら、どんな事でも貴女の力になるから。」

 

「ふふっ。ええ、頼りにしてるわよ冥琳。」

 

気分を入れなおした孫策は、幾分か軽い足取りで自陣に戻っていった。

 

さまざまな思惑が交差する連合軍。

向かうな難関の汜水関。

戦はまだ、始まってすらいなかった・・・・・


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