真・恋姫無双〜正義の味方〜   作:山隼

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4-5 邂逅相遇

――――――洛陽城 詠の部屋――――――

 

「汜水関が落ちたのっ!!」

 

「張遼さまと、華雄さまが出陣した隙に突破された模様です。」

 

兵からの報告を受けた詠は苦々しい表情を浮かべる。

 

「霞と藍は大丈夫なのっ!?」

 

「はい。帰って来ていますが、

多少、怪我をされてましたので、今は治療室に。」

 

「そう・・・取り敢えずは無事で良かった・・・・・」

 

ほっと一安心する。

 

「ありがとう。下がって良いわよ。

また何かあったら報告の方お願い。」

 

「分かりましたっ。」

 

そう言って部屋から出て行き、

部屋には詠だけが残る。

 

「・・・・・はぁ・・・・」

 

溜まった疲れを吐き出すようにため息を吐くと、

今まで部屋の外からざわざわと聞こえていた物音が、急に消える。

 

詠が部屋の隅に目を向けると、

其処には今までいなかったはずの男が立っていた。

 

「・・・・・・もうちょっと普通に出て来れないの?アンタは。」

 

決して好意的では無い口調で話しかける。

 

「すみませんね。ですが、聞かれては不味い話ですから。

・・・・お互いに。」

 

男は全く悪びれて無い口調で答える。

 

「月は無事なんでしょうね?」

 

「ええ。あなた方が戦って頂ければ私は構いませんから。」

 

「分かってるわよっ!」

 

「大丈夫ですよ。

しっかり戦って頂ければ董卓さんはきちんとお返ししますから。」

 

そう言って闇に消える男。

 

「月・・・・・・」

 

今此処にいない親友を心配しながら、

詠は戦の準備に取り掛かっていった・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――連合軍 宴会場――――――

 

「流石は聖さんですわっ!!

やはり私の目に狂いはないですわねっ!」

 

賑やかな宴会場、

隣に座っている聖に上機嫌で話しかける麗羽がいた。

 

連合軍の諸侯が皆集まっており、

ここには各諸侯の大将クラスの人が集まり飲んで騒いでいるようだ。

 

「あはははは・・・・・・

皆のお蔭だよう・・・・」

 

大分酔っており、絡み付いてくる麗羽に少し困った笑みを浮かべながら答える。

 

「袁術ちゃんの軍が早く門を破ってくれたしね。」

 

「そうなのじゃ!

やっぱり妾の軍は最強なのじゃ!!」

 

聖に言われ、上機嫌になる美羽。

 

雪蓮が美羽の客将である以上、

汜水関を破った最大の功労者は美羽たちになる。

 

「くっ・・・・・

次はっ!私の華麗な軍で虎牢関を落としますわっ!」

 

美羽には負けられないらしい麗羽。

 

「いいぞ姫ーー

これで次はあたいの出番だなっ!」

 

「はぁ・・・・苦労しそうだよぅ・・・・」

 

汜水関では戦えなかった為、テンションが上がっている猪々子とは対照的に、

ため息を吐いている斗詩。

 

「華琳さんも一緒に行きますわよっ!」

 

「なんで私もなのよ。

麗羽の軍がいれば十分じゃないっ。」

 

「ここは連合軍の威勢を見せ付けるときですわっ!

で・し・た・ら連合軍の総大将であるこの私と、

華琳さんで進めば士気も上がりますわっ!!」

 

「はぁ・・・・

しょうがないわね。」

 

麗羽からすれば、おそらくその方が目立つからなのだろう。

 

だが、華琳も今後の事を考えたら、ここで功を立てておく必要があるので、

渋々ながらそれを了承する。

 

色々と各人の思惑が交差しているのだったが、

そんな事とは関係なく、

他の武将達は気ままに交流を続けていた。

 

「くっ・・・・あそこで逃げられなければっ・・・・」

 

酒も飲まずに悔しそうにしているのは愛紗。

どうやら汜水関攻略の際、

霞に逃げられ、仕留められなかったのが悔しいようだ。

 

「そうなのだ。惜しかったのだっ。」

 

「幾らか手傷は負わせたのだろう?

だったら次で決着をつければ良いのでは?」

 

鈴々と星がそんな愛紗と話していると、

誰かが近付いて来る。

 

「あっ!兄ちゃんなのだ!」

 

「どうやら荒れてるみたいだな。」

 

手に幾つかの料理を持ってやって来たのは士郎。

 

それを見た鈴々は早速それにかぶり付く。

 

「ほう・・・

貴方が士郎どのですか。

私は劉備配下の将、趙子龍と申します。」

 

「貴女があの趙雲どのですか・・・・・」

 

やっぱり女性なんだよなと思いながら答える士郎。

 

「星で良いですよ。桃香さまも真名を許していますし。

それに・・・・士郎殿に覚えてもらえるとは、

私も有名になったものですな。」

 

星は黄巾の時の話を桃香から聞いていたので、士郎のことは知っている。

そんな士郎を見て、軽く笑みを浮かべていた。

 

「強い人のことは耳に入ってくるからな。

それで、何の話をしていたんだ?」

 

「愛紗が張遼に逃げられたのだーー」

当の本人が「うっ・・」と黙ってしまったので、

代わりに鈴々が、がつがつと食べながら答える。

 

「まぁ霞は「速さ」ならかなりのものだからな。

逃げに接されると、そう簡単には追いつけないさ。」

 

「確かに・・・力はともかく、速度は中々のものでした・・・・」

 

「それに俺も華雄に逃げられたしな。

お互い様さ。」

 

「士郎さんがですか!?」

 

思わず驚く愛紗。

 

自分よりも強い士郎ゆえに、その反応は当然だった。

 

「ふふふ。

最初から倒すつもりは無かったのでは無いですか?」

 

「見ていたのか!?」

 

星の発言に驚く士郎。

 

「どう言うことなのだ?」

 

「ちょうど士郎殿と華雄が戦っているのを見つけてな。

我武者羅に突っ込んでくる華雄の攻撃を、

完璧に捌いてたな。」

 

「見てたのか・・・・・」

 

士郎は軽くため息を吐き、

 

「黄巾の時、一緒に戦っていただろ?

藍が悪い奴じゃないのは知ってるからな。

出来れば捕獲するつもりだったのさ。」

 

ばつが悪そうに答える士郎。

勿論こんな事は同じ目的の桃香達にしか話せない内容である。

 

「それに、愛紗と違って士郎殿は殆ど怪我も負って無いようだ。」

 

「くっ・・・・まだまだ未熟というわけか・・・・・」

 

悔しそうにしている愛紗。

 

「士郎どのっ!

次に機会があったときは、手ほどきの方宜しくお願いしますっ!!」

 

ばっと凄まじい勢いで頼んでくる愛紗。

 

「あんまり人に教えるのは得意じゃ無いんだが・・・・・」

 

士郎が其れを断ろうとすると・・・・・

 

「だったら鈴々も一緒にお願いするのだ!!」

「ほう・・・ならば私もお願いしようかな。」

 

その後、結局三人に押し切られ、結局約束してしまう士郎だった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おにーーーちゃーーーんーーー」

 

そのまま四人で談笑していると誰かの声が聞こえてきた。

 

「この声は・・・・璃々っ!?」

 

近付いてきた璃々はそのまま士郎に飛び込んでくる。

 

それを落とさないようにキャッチする。

 

「お母さんは如何したんだ?」

 

「もう来ると思うよ~~」

 

璃々が走ってきた方向に目を向けると、

ちょうど紫苑ともう一人誰かが歩いてきていた。

 

「ふふふっ。士郎さん、今日はお疲れ様でした。

私たちも混ぜてもらってもいいかしら?」

 

「ああ。紫苑もお疲れ。

混ざるのはむしろ歓迎する位なんだけど・・・その人は?」

 

士郎は紫苑の横に立つ女性に目を向けながら答える。

 

「ああ。あたしは西涼の馬孟起だ。

よろしくなっ。」

 

にこやかに答える馬超。

 

「貴女が馬超殿ですか。

私は劉表軍の衛宮士郎です、宜しくお願いします。

・・・・・・・今大将たちはあっちで集まっていますが・・・・・」

 

士郎が指差した方向には、

ワイワイと大声で騒いでいる麗羽達がいる。

 

各軍の総大将は同じ場所に集まっており、

馬騰の代理である以上、馬超は本来なら其処に居るはずなのだ。

 

「いや、最初はいたんだけど・・・・・

・・・・・どうも場違いな感じがして・・・・・・」

 

あれだけ個性豊かな中にいれば、

確実に巻き込まれて事故るだろう・・・・・・・

正しくは無いが、賢い判断である。

 

「あと、敬語は止めてくれよ。

歳もあたしの方が下だし、代理ってだけなんだからさ!」

 

「了解した。」

 

苦笑しながら答える士郎。

 

その後、他のメンバーも互いに自己紹介を始める。

 

その間、士郎は抱っこした璃々に食事をあげながら

その様子を見ている。

 

(これってよく考えたら蜀の五虎大将軍が揃ってるんだよな・・・・・)

 

士郎のいた世界なら、確実に英霊として座にいるはずの武将たち。

 

(宝具も持ってないし、性別も違うけど、

どこか感慨深いものがあるよなぁ・・・・・)

 

酒に口をつけながら、思わずそう考える士郎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も賑やかに盛り上がる五人。

 

どうやら汜水関の話で盛り上がっているようだ。

・・・・女性が五人も集まって、

戦の話で盛り上がるのも如何かと思うが、

決して口には出さない士郎。

 

「で、やっぱり張遼って強かったのか?」

 

興味津々に愛紗に聞く馬超。

どちらかと言えば戦い大好きな性格なので、気になるようだ。

 

「はぁ・・・・・

あたしも戦いたいんだけどな・・・・・」

 

汜水関、虎牢関と関での戦いが続いている為、

邪魔になる騎馬兵の出番は殆ど少ない。

馬超の軍は殆どがその騎馬で構成されている為、

戦いに飢えているのだ。

 

「次も出番は無いし・・・・・

あたしを戦わせろーーーーっ!!」

 

大分酔っているようだ。

 

「ふふふっ。

虎牢関を突破すれば、洛陽攻略時に出番があるじゃない。」

 

「まぁ騎馬兵なら其処しか出番は無いですな。」

 

紫苑の意見に同意する星。

そんな二人を見て、更に落ち込む馬超。

 

「恐らくその時には呂布が出てくるだろう。

その時近くにいれば変わってあげるから。」

 

「そうなのだーーー

それまでは鈴々たちに任せるのだ。」

 

「はぁ・・・・・

其れまで我慢しなきゃいけないんだな・・・・・・」

 

何処かやりきれない感じの馬超。

 

士郎がそんな光景をゆっくり見ていると、

誰かが後ろから抱きついてくる。

 

「士郎さ~~~ん~~~~

何してるんですか~~~~~~」

 

ぐでんぐでんに酔っている玖遠。

・・・・・・関わったらいけないオーラがもの凄い。

 

「・・・・・・酔ってるのか・・・・・」

 

「酔ってませんよ~~~っ」

 

「・・・・酔っ払いのその意見は全く信用出来ないんだよ・・・・・」

 

「だったら~~~酔って無いから信用して~~~~」

 

「下さい~~~っ。」と言い切る前に、力尽きて更により掛かってくる。

 

「・・・・・・援里と水蓮は何処行ったのさ・・・・・」

 

「援里ちゃんは~~~昔の友達ろ~~~ぉ話してます~~~っ・・・

・・・・水蓮さんは・・・・・・・すぅ・・・・・・・・」

 

途中で力尽きる。

・・・・・多分二人とも逃げたんだろう。

 

「結局こうなるのか・・・・・・」

 

これからの事と、明日の朝の事を考えて頭が痛くなる士郎だった・・・・


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