真・恋姫無双〜正義の味方〜   作:山隼

9 / 71
2-2 宛攻略戦(1)

「それでは軍議を始めますねー」

 

全員が集まった所で、今日まで集めた

宛にいる黄巾党の情報確認と軍議が聖の声で始まった。

 

「じゃあ援里ちゃん、敵軍の詳しい情報をお願い。」

 

「はい・・・敵軍の大将は趙弘・・・副将は韓忠と孫夏・・・・

兵の数は三万ほどです・・・」

 

聖に促された援里が、今日まで密偵を使って集めた情報を話し出す。

 

「それと・・・張曼成がやられたせいで・・・士気がかなり下がっています・・・

けど・・・兵糧はそこそこあるみたいなので・・・篭城されると厄介です。」

 

「うん、ありがとっ。

水蓮ちゃんこっちの方はどうなってるの?」

 

「こちらは投降した兵や、新たに補充したのを合わせて約二万。

董卓の所は二万五千の兵で攻め込むみたいね。」

 

「董卓と合わせて四万五千か・・・

攻城戦を行う際は、攻め手は守りの倍の兵数を準備するのが基本だし、

多い方がいいんじゃないか?」

 

「はい・・・少ない位ですけど・・・・水蓮さん、玖遠さん、士郎さんがいますし・・・

こちらの方が士気もたかいですし・・・数の不利はどうにかなるかと・・・・」

 

士郎の意見に援里が答える。

 

「あの~私達が出たら、誰がこの街の守備につくんですかっ?」

 

「大丈夫よ玖遠。霍峻がいるし、私が連れてきた張允、文聘もいるから

陸や海からきても、そうやすやすとは負けないわ。」

 

霍峻は守戦がうまく、張允、文聘は水蓮直属の部下。

 

そこらの江賊では相手にもならないだろう。

 

仮に袁術が攻めて来たとしても、まずは江夏だろうし、

そもそもあっちも黄巾党の相手で、それどころではないだろう。

 

「うん。じゃあこれで軍議は終了するね。

準備が出来たら出陣しよう。」

 

聖の号令で軍議が終わり、各々は出陣の準備に取り掛かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新野を出てから数日、士郎達は宛城を朧げながら目視出来る所まで来ていた。

 

「あれが宛・・・・

なんか高い所にあるねー」

 

聖が宛を見て呆気に取られる。

 

宛は、北は長安、洛陽、陳留といった大都市があり、

東にも許昌という長安と同じクラスの大都市がある。

 

他にも、南に新野、南西に上庸があり、非常に戦が起きやすい都市だ。

 

その為、宛は小高い丘の上にあり、

道も東西南北に一本ずつしかない為、攻め難く、守りやすい。

 

しかも、西には武関という門があり、長安から攻めるとなると、

そこも突破しなければならない。

 

と、士郎が玖遠に説明しながら進んでいると、そこから西の方に軍があるのが見えた。

 

「確か董卓さんは上庸から来た筈だから・・・

あれが董卓さんの軍だね。行ってみようっ。」

 

聖の合図で董卓軍と思われる所に移動を開始し、

 

もし間違えて黄巾党だったら危ないので、士郎と水蓮が先行して近づいていった。

 

「なあ・・・ふと思ったんだけど・・・」

 

「なによ?」

 

士郎が自分の服装を指差しながら、

 

「さすがに怪しまれたりしないよな?これ?」

 

今、士郎の装備は毎度おなじみのアーチャー装備。

 

水蓮はそれを見ながら、

 

「・・・さすがにいきなり攻撃してくるような奴はいないと思うけど・・・」

 

そう、いくら怪しいからといっても、たった二騎でせめる馬鹿はいないし、

仮に敵だとしても、こういう場合なら普通、

何らかの交渉の使者と考えるのが当たり前である。

 

・・・・・そう普通の将なら・・・・

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!

 

「誰か近づいてくるな。」

 

士郎が董卓軍の方を見てみると、一騎の武将が近づいてくる。

 

なぜか大斧を構えながら・・・・

 

「まずいっ!!」

 

先に注意していた士郎はそれに気が付くが、水蓮はまだ意識が完全にそっちに向いていない。

 

「はあああああああっ!!」

 

近づいてきた武将の咆哮が聞こえる距離になった時、水連も気が付くが、

もう既に目の前まで近づいており、

敵?は反応が遅かった水蓮を最初の目標にしたようだ。

 

「えっ?」

 

一瞬、水連の思考が停止するーーーー

 

その時水蓮の目に写ったのは、

 

武器を振り上げ、

 

突撃の勢いのそのまま、

 

振り下ろされた一撃が、

 

水蓮の身に迫ってくる光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~ 水蓮 side ~

 

すべての動きが遅く感じる。

 

(これが走馬灯っていうやつかしら)

 

上から迫る斧を見るが、今からでは防御は間に合わないし、、

仮に間に合ったとしても、この勢いでは武器ごとやられるだろう。

 

(はぁ・・・・・しゃくだけど、士郎・・・聖の事、任せたわよ)

 

目を瞑り構えるがーーーー

 

グイッ!

 

(えっ?)

 

横から引っ張られ、何か暖かいものの上に着地した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫かっ!水蓮!」

 

ぎりぎりのタイミングで水蓮を抱き抱えるようにして助けた士郎は、

その体制のまま水蓮の怪我の確認をする。

 

「う、うん。」

 

急な展開に頭が真っ白になっているようだ。

 

(どうやら傷は無いみたいだな)

 

士郎が簡単に身体のチェックをし、そのまま抱き抱えて移動する。

 

全力の攻撃を空ぶったせいで大きくバランスを崩し、少し距離が出来たので

水連を移動させ、干将・莫耶を構える。

 

「はあーーーーっ」

 

「くっ!」

 

ギインッ!!

 

再度、突っ込んできた斧の一撃を下に流す。

 

さっき水蓮を助ける為に、馬から落馬しているので位置関係で見れば不利になる。

 

(さすがに重いな・・・)

 

そのまま斧の刃を士郎の方に向け、振るってくる。

 

士郎はバックステップ距離をとり、そのまま再度相手の方に跳び、馬に跳び蹴りを放つ。

 

「なにいっ!!」

 

強引に斧を振るっていたせいもあり、そのまま相手の馬が倒れる。

 

「ちっ!」

 

軽く舌打ちをして相手は地面に降り立ち、大斧を構え士郎を睨みつける。

 

薄紫の髪で、キツメの目付きをしている。

 

「いきなり何をする?」

 

「黄巾党の癖に何を言うか!

この華雄が居る限り月には指一本触れさせん!」

 

「なにか誤解をしているようだが、

私達は劉表軍の者だ。」

 

すると華雄は士郎の服装に目を向け、

 

「ふん、そんな変な服の奴が劉表軍のわけがないだろうっ!」

 

ブンッ!

 

横薙ぎに振るって来た斧を、士郎は下がってかわす。

 

「どうやら話し合いでは解決しないようだな。」

 

士郎が両手をだらりと下げながら答える。

 

「いくぞっ!!」

 

そう叫びながら華雄は斧を振り回してくる。

 

ヒュゴッ!

 

斧の重さも相俟って凄まじい音をたてながら、かわした士郎のすぐ傍を通過する。

 

しかしーーー

 

(膂力は中々だが、まだ武器に振り回されているな・・・)

 

攻撃せずに回避しつづける士郎。

 

「くっ・・・その武器は飾りかっ!」

 

「ふっ。当ててから言うんだな。」

 

(このまま避けていれば体力が無くなるだろうな・・・

そこを貰うか。)

 

そう考えながら何回か避けていると、だれか馬に乗って近づいて来ている。

 

(新手か?

だが少女もいるからそれは無いか・・・)

 

近づいてくるのは三人。

 

援理と同じくらいの身長で薄紫色の、

セミロングで毛先に軽いウェーブがかかっている娘と

腰まである緑の髪を三つ網にして、眼鏡をかけている娘の二人と、

華雄と同じくらいの身長で紫の髪で胸にサラシを巻き、薙刀を持っている三人だ。

 

その中の薙刀を持っている娘が叫ぶ。

 

「このアホッ!!何勝手に戦いよるんや!!」

 

すると華雄の動きが止まり、

 

「霞っ!」

 

「一昨日の軍議で言うとったやろ!

もう少しで劉表のとこが来るって。」

 

すると華雄はシュンと落ち込み、

 

「だけどこんな怪しい奴はそうそう居ないだろうっ!」

 

するとそれをみていた眼鏡の娘が、

 

「あのね、どこに二万以上の軍勢に二人で突っ込む馬鹿がいるのよ。」

 

「うっ・・・・」

 

士郎が、三人が言い合いしているのを見ていると、声をかけられる。

 

「あの・・・・」

 

「ん、きみは・・・?」

 

声をかけてきたのは小柄な薄紫の髪の娘だ。

 

「今回は私の部下が迷惑をかけてしまってすいません・・・・」

 

非常に申し訳なさそうな顔をしながら誤ってくる。

 

「私の軍と言う事は・・・・あなたが董卓さまですか?」

 

「あっ・・・はい。」

 

(これが後に暴君とまで言われた董卓なのか?

まったく繋がらないな・・・)

 

そうしていると、座っていた水蓮も近寄って来たので、士郎が声をかける。

 

「大丈夫なのか?」

 

「ええ・・・その・・・ありがとうね、士郎。」

 

「あ、ああ。」

 

(なんかいつもと反応が違う・・・)

 

「で、士郎は大丈夫・・・って怪我してるじゃない!」

 

少し赤くなった顔をごまかしながら、水蓮が士郎の後ろに回り込んで見てみると

手や首すじのあたりに血が滲んでいた。

 

「ああ、馬上から落ちたからな・・・・

まぁただのかすり傷だし大丈夫だろ。」

 

「まったく・・・・・?どうしたんですか董卓さま?」

 

水蓮が傷を見ていると、董卓が近づいてきた。

 

「あの・・・しゃがんで貰えますか?」

 

「あ、ああ。」

 

士郎がしゃがむと、董卓は自分の服の袖で士郎の傷口を拭き始める。

 

「と、董卓さまっ!私がしますからっ!

服が汚れます!」

 

それを見た水蓮が慌てて止めに入るが、

 

「いえ、私達のせいですから・・・・」

 

「ですが・・・・」

 

三人がそのまま会話していると、眼鏡の娘が近づいてくる。

 

「ちょっと!そこのアンタ、月に何させてるのよ!!」

 

「君は・・・?」

 

「ああっ!もう、月っ!服が汚れてるじゃないっ!」

 

そのまま董卓を止めに入ろうとするが、

 

「だめだよ詠ちゃん・・・・私達のせいで怪我させちゃったんだから。」

 

「う・・・・それはそうだけど・・・」

 

なぜか士郎を睨みつけたあと視線を逸らす。

 

「ほら・・・藍さんも・・・・」

 

すると、落ち込んでいる華雄が士郎と水蓮に近づいてきて、

 

「その・・・・すまんっ!」

 

「まあこっちも紛らわしい服装だったからな。」

 

「そうね・・・これから一緒に戦うんだし、水に流すわ。」

 

「そうか・・・ありがとう・・・」

 

「じゃあ・・・私達の駐屯地に行きましょう。」

 

董卓がそう促したので、士郎は聖達を呼び、駐屯地に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「災難だったねー」

「他に怪我は無いんですよねっ?」

 

聖達に心配されながら軍議の席に着く。

 

「とりあえず自己紹介からですね・・・私は董卓 仲穎 真名は月です。」

 

董卓の発言に周りがざわめく。

 

「月!真名をなんで真名を・・」

 

眼鏡の娘が慌てて止めに入るが、

 

「いいの詠ちゃん・・・・これから一緒に戦うんだし、

あんまり壁を作りたくないから・・・」

 

「はぁ・・・分かったわよ・・・ボクは賈駆 文和 真名は詠よ。」

 

「次はウチやな。ウチは張遼 文遠 真名は霞や。」

 

「私は華雄 真名は藍だ。」

 

「よろしくお願いしますね。私達は・・・・」

 

そのまま聖達も自己紹介を終わらせ、宛の攻略について話始めた。

 

「とりあえず・・・・今はどうなっているのかな?」

 

聖が現状を聞くと

 

「一度、ボク達で当たって見たんだけど・・・

あいつら城からまったく出てこなかったのよね・・・」

 

「あれはアカンわ。怯えてしもうとる。」

 

「ふん大方私の武に恐れを・・・「多分先の新野の戦いで奴らの大将が死んだからだな」

っておい士郎!私の話を遮るなっ!」

 

なんか怒ってる藍を無視して話を進める。

 

「このまま・・・・強引に押し通す事も出来ますけど・・・・

損害を考えるとあまりしたくありませんね・・・・」

 

宛を攻略しても戦いはまだ続くだろう。

援里の言葉に全員が頷く。

 

「じゃあどうするんですかっ?」

 

「攻城兵器を持って行くにも、あの坂を登ってたら

「的にしてください」って言ってるみたいなものだしね・・・」

 

玖遠と水蓮が頭を悩ます。

 

「ここはやっぱり埋伏させて城門を開けさせたほうがいいわね・・・

援里、密偵は何人位潜ませてるの?」

 

「だいたい・・・30人位ですね・・・」

 

「それならボクの所と合わせて50人位か・・・・

あとは誰か忍びこんで貰って指揮して貰えばいけるわね・・・・」

 

詠が回りを見回す。

 

「こっちは・・・・霞ね。頼んだわよ。」

 

「えーっ、ウチなん?

出来れば外で動きまわりたいんやけどーー」

 

「あのね・・・アンタ以外になると、あとは藍だけよ。

無理に決まってるじゃない。」

 

するとその話を聞いていた藍が、

 

「ちょっとまて!どういう意味だ!」

 

「アンタが忍び込めるわけ無いでしょうが!」

 

「なにっ・・・・」

 

「ほら・・・あの・・・・藍さんは最初に戦った時に威嚇してたから、

敵軍に顔がよく知られてるからだよ。」

 

藍が更に噛み付こうとすると、月がフォローする。

 

「詠ちゃんも喧嘩しちゃダメだよ・・・」

 

「ごめん月・・・・

それで、そっちの方は誰が出るの?」

 

援里は少し考えながら、

 

「軍のことを考えたら・・・・水蓮さんは残って貰いたいので・・・・

士郎さん、お願いできますか?」

 

「了解した。」

 

「えーーーっ、私も士郎さんと一緒がいいんですけどっ?」

 

玖遠が抗議するが、

 

「新野の戦いで張曼成を倒したのはキミだろう・・・」

 

「あ・・・そうでしたね・・・・」

 

士郎につっこまれる。

 

「それで・・・・いいですか・・・・聖さま・・・・」

 

「うん、大丈夫だよ。月ちゃんは?」

 

「はい・・・皆さんよろしくお願いしますね。」

 

そのまま軍議は終了し、

 

「あ・・・・士郎さんと・・・霞さんは黄巾党の服を渡しますから・・・・

後で来てください。」

 

援里にそう言われたので、士郎と霞は一緒に援里の部屋に向かって行く。

 

「明日はよろしくな。」

 

「よろしく頼むでー。確か士郎やったな。頼りにしとるでー」

 

士郎は苦笑を浮かべながら、

 

「まあ期待に答えれるようには頑張るさ。」

 

「いやーー藍との戦いはちょっとしか見れへんかったけど、

かなり出来るやろ。」

 

「そういう霞もだろ。」

 

「分かるんか?

また時間が出来たらウチと戦ろうで!」

 

「なるほど。少し戦闘狂なんだな。」

 

「やっぱし強い奴と戦うんはゾクゾクして楽しいやろ?

恋の相手するんは、ウチじゃちょっと力不足やったからなぁ・・・」

 

士郎は初めて聞く名前が出てきたので聞いてみる。

 

「その人は?」

 

「ああ、呂布って言う奴なんやけど、これが無茶苦茶強いんや。

今は涼州の韓遂って言う奴が反乱起こしてなぁ。

陳宮って言う軍師と、徐晃って言うウチと同じくらい強い奴と一緒に鎮圧にむかっとんや。

終わったらまたと合流するみたいやで。」

 

「そうなのか・・・・」

 

(三国志最強の武将呂布・・・どれ位の強さか気にはなるな・・・)

 

士郎が考えていると、

 

「ほら、ぼけーっとせんではよ行こうで!」

 

霞に手を引っ張られる。

 

「うわっと、あ、ああ。」

 

そのまま援里の部屋に行ったが、そこには援里に手をつないでいるのを見られ

「もう・・・そんなに仲良くなったんですか・・・」と、

じと目で見られた士郎がいた・・・




次は宛城への潜入→攻略になります。

地形や都市の位置関係は三国志11をベースにしています。

あと、華雄の真名ですが、董卓軍は陳宮以外は
全員一文字の漢字で二文字読みなので、それを考慮して、
猪突猛進な華雄のイメージ「乱」から「藍」にしてみました

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。